2015年述懐 <六弦編>
きのうに続き本年述懐。きょうは<六弦編>。マイ・ギターライフを振り返る。
クラシックギターを始めたのは1970年高校一年のときだから、足掛け四十年余ということになる。といっても長いブランクもあり、本格再開したのは50歳になってからのこと。再開後は遅れてきた道楽バブルよろしく、楽器調達に他流試合にと楽しく過ごしてきたが、昨年から今年はその流れに幾らか変化があった。
◇楽器あれこれ◇
ここ数年、様々なタイプ・時代の楽器を手元において楽しんできたが、もともと楽器蒐集の目当はない。最初から承知していたことだが、多くの楽器を手元においてもそれぞれの真価を発揮するまでに弾き込めるわけではないことをあらためて自覚し、ピーク時には二桁台数あった楽器の整理進めてきた。
中出敏彦、西野春平、中山修などはすでに数年前に放出、その後英国のデイヴィッド・ホワイトマンの楽器をハウザーモデルとオリジナルモデルの2台を入手。他に19世紀ギターのオリジナルも何本か手に入れた。かつての憧れだったハウザーも2年前に入手。その後も古いスパニッシュの味わいを求めて、事あるごとに試奏も重ねてきた。そんな中、手持ちの楽器は昨年来一気に更新が進んで以下の6本になり、現在に至っている。
ヘルマン・ハウザー3世 2006年
ホセ・ラミレス3世 1978年
田邊雅啓 2004年
ゲルハルト・オルディゲス 2008年
サイモン・マーティー 2006年
英チャペル社 1860年代

チャペル社の19世紀オリジナルとラミレス以外は2000年以降の新しい楽器ということになったが、いずれもそれぞれに味わい深い音で、手にするごとにその音に魅了される。
ハウザー3世は「今更?」の前評判に反して、基本に忠実でしっかりした音と作りに感心。いつ弾いても低音・高音とも太くよく通る雑味のない音で、曲の時代性に関わらず、モダンギターとしての万能性を発揮する。近代ギター製作の保守本流をいく趣きがあるし、1世以来、様々なトライアルは継続していると思うが、商品としては妙なラインアップやバリエーションを安易に作らないのも好感がもてる。
ラミレス3世は70年代後半ラミレス工房最盛期のもの。すでに製作者の名を表すスタンプは廃止された時期のものだが、ぼくの個体は内部に残された符丁からマヌエル・カセレス作のものと思われる。ラミレスは音の分離が悪いと言われることがあるが、おそらくハウザーあたりとの比較の問題で、よくある国産の楽器よりずっと明瞭で和音の調和・分離とも問題はないし、音もよく通る。そして何より高音の甘くたっぷりとした響きが魅力だ。
田邊ギターも完成から10年になった。低いウルフを伴ったたっぷりとした低音と、すっきりした高音で、手元の音量感以上に音はよく通る。工作精度や材料の扱いも完璧で、10年間弦は張ったままだが、ネックはまったく反りもなく指板・フレットともに、これ以上ない程の精度を維持している。
G・オルディゲスとS・マーティーの2本は昨年後半に出会って手に入れた。オルディゲスのハウザー1世モデルは、田邊ギターに華やかさと艶っぽさを加えたような音作り。高音はよく延びて歌うし、低音はふっくらとしたボリュームとよく通るエネルギーを併せ持つ感じだ。楽器店で試奏し5分としないうちに即決。今のところ死角が見当たらないほど惚れこんでいる。
サイモン・マーティーは、一昨年から始めたチェロやフルートとのアンサンブル用に音量感のある楽器を物色する中で行き着いた楽器だ。実は3年程前に一度オファーがあったが、そのときは音量を求める状況でもなくパスしていた。昨今、音量優先の楽器はいくつかの選択肢があるが、今回のS・マーティーは、音量感・エネルギー感とオーソドクスなギターの音色感を併せ持っている点が気に入った。
19世紀ギターはチャペル社製のオリジナル1台だけを残し、他のオリジナル、レプリカ共に手放した。19世紀ギターも仏系・独墺系・伊系と、それぞれに歴史経緯と音色感を持っていて魅力を感じるが、これ以上それらに関わるには、ぼくの素養が不足しているし、これからそれらを身に付けるのも難しいだろうなあと判断した。
◇アンサンブル◇
楽器は弾いてナンボ。2011年からmixiの集まりに時々出向いて下手なソロや旧友Y氏のギターとのデュオを楽しんできたが、一方で以前から、ヴァイオリンやチェロ、フルートとのクラシカルなアンサンブルをやりたいという気持ちがあった。運よく一昨年、チェロ弾き、フルート吹きのハイアマチュア2名と知り合い、ときどき合わせる機会を持つに至った。 今年2月には達者なチェロ弾き達の集まりに参加し、メンデルスゾーンのチェロとピアノための<無言歌>作品109で本番を経験した。また7月にはチェロ、フルートの仲間とトリオでピアソラを楽しんだ。ギターやマンドリンという以前から身近にあった楽器とのアンサンブルと違い、クラシカルな正統派楽器とのアンサンブルは実に楽しくもあり、勉強にもなる。

…というわけで、今年の述懐<六弦編>のあれこれ。楽器探しの放浪も一旦終息し、長期安定の見込み。アンサンブルに関しては相手に恵まれながら、夏以降、ぼくの個人的事情でお誘いに応じられず、残念な思いをしている。アンサンブルはソロ演奏よりずっと楽しいもの。またいずれトリオやデュオで遊べる日が迎えられるようにしたいと思っている。
今年楽しんだアンサンブルからいくつか。
篠原正志さん(g)とたのうち惠美さん(Vc)らが主宰するアンサンブル<たのシック>から楽譜提供を受けたピアソラ<チキリンデバチン>。
メンデルスゾーン<無言歌>作品109(抜粋)
チェロ相方と2月に川崎で演奏した曲。事前練習時の音源。
イベール<間奏曲>
フルート相方からは、不本意な演奏だから、とダメ出しされているのだが、ほとんど初見でこれだけ吹けるのだからと素晴らしい!と勝手に公開(^^;
以下は昨年までのもの。
チェロとのデュオ。
エルガー<夜の歌>(抜粋)
ジャズ・ボッサの名曲<ブルー・ボッサ>(抜粋)
フルート、チェロとのトリオ。
ピエール・ジャン・ポッロ(仏1750–1831)の三重奏曲。モーツァルトのヴァイオリンソナタK.304を元曲にしたもの。
-ギター工房訪問記-
庄司清英(大阪)
野辺正二(浦和)
中山修(久留米)
堤謙光(浦和)
廣瀬達彦/一柳一雄・邦彦(名古屋)
松村雅亘(大阪)
西野春平(所沢)
田邊雅啓(足利)
田邊工房2014年
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