モリトール ソナタイ短調 作品7
春到来を感じさせる日が続き、ようやく楽器を取り出すのも億劫ではなくなってきた。仕事が一段落ついてこともあって、きょうは休みを取って、終日ダラダラと過ごす。午前中はギターを取り出し、この曲をさらった。

シモン・モリトール(1766-1848)のソナタ・イ短調作品7。実は少し前のこと、所属している隣り町のマンドリン楽団の練習のとき、指導者の新井貞夫先生から「与太さん、この曲は弾いたことある?」と楽譜を渡された。モリトールの名と、代表作としてのこのソナタがあることは手持ちの古い本で知ってはいたが、楽譜を手にするのは初めてだった。「技術的にはさほど難曲というわけではないが、古典的フォーマットを知るには格好の教材」とのことで、その場で初見でポロポロと弾いてみると確かに、中上級者なら初見で7割程度は通せそうだし、出てくる音もカルリやカルカッシ、ジュリアーニらで馴染んだイディオムが多い。言い換えれば、新鮮味や面白みには少々欠けるとも言える。
この作品を弾く価値は、程々の技術的難易度ながら、4楽章形式の古典派ソナタの典型に触れられるということだろう。第1楽章は序奏付きのソナタ形式。第1主題、第2主題、展開部、再現部と、それこそ絵に描いたように明解に書かれている。第2楽章は穏やかなアンダンテ、第3楽章はトリオ付きのメヌエット、第4楽章は6/8拍子のロンドと、まったく教科書的な構成。一般の弦楽器やピアノならば、学習初級者向けの古典派ソナタも多くあるだろうが、ギター曲となると限られ、このモリトールは貴重な作品だ。
クラシックギター学習者は、古典派の教則本や小品を少しやったあとソナタに進まず、ロマン派や近現代の作品に飛ぶことが多い。何をどう弾こうが勝手だし、何も教条的になる必要はないが、他のクラシカルな楽器愛好者や音楽愛好者と交流する際、共通言語としての古典形式の会得はやはり必須と思う。そのためのサンプルとして、このモリトール作品は技術的難易度も音楽的な感興も万事程々で少々物足りなくもあるが、古典様式のお手本として良い教材だと思う。
楽譜付き音源。全4楽章
モリトールはギターを含む室内楽もいくつか残している。
以下は作品6の三重奏から第3楽章ポロネーズ
IMSLPでモリトールの作品が10曲ほど見られる。
https://imslp.org/wiki/Category:Molitor,_Franz_Simon
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