今週もせっとと働き、迎えた週末土曜日。午前中は自治会用務少々。午後から所属している隣り町のマンドリン楽団の練習して、陽が傾く時刻に帰還となった。すっかり春の気配濃厚な夜。こんな盤を取り出した。

十年程前に入手したポール・トルトゥリエ(1914ー1990)ボックスセット中の1枚。disk#12。収録曲は以下の通り。
1. メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番ニ短調 Op.49
2. シューマン:ピアノ三重奏曲第1番ニ短調 Op.63
アンドレ・プレヴィン(ピアノ)、チョン・キョンファ(ヴァイオリン)
1978年12月11,12日、ロンドン録音
3 メンデルスゾーン:民謡(編:デ・ハルトマン)
4. ヴェーバー:アダージョとロンド(編:ピアティゴルスキー)
マリア・ドゥ・ラ・ポウ(ピアノ)
1975年10月4,5日、ロンドン録音
トルトゥリエに加え、アンドレ・プレヴィンにチョン・キョンファという豪華メンバーよるメンデルスゾーンのトリオを聴いている。ニ短調という調性と第1楽章冒頭のモチーフから悲劇的な曲想を想像するが、そこはメンデルスゾーン。穏やかなロマンティシズムに富む美しい歌にあふれる。第1楽章はagitatoの指定があるが差ほど激さず。第2楽章のtranquilloも品のいい歌心に満ちている。第4楽章は各パートのテクニカルな掛け合いが緊張感を高める。プレヴィンは滅法上手い。チョン・キョンファもこの頃はまさに売り出し中の若手筆頭。年功のトルトゥリエが要か。 シューマンのピアノトリオ、ウェーバーの「アダージョとロンド」もチェロの音色が美しく、またときにテクニカルな佳曲。トルトゥリエの弓さばきが冴える。
中村 紘子・海野義雄・堤剛@2007年。 かつてトリオを組んでいた三人。海野義男氏の例の事件で活動停止後、二十数年ぶりの復活ライヴ。
この盤の音源でメンデルスゾーンの第1楽章
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週半ばの木曜日。年度末納期の仕事も大詰めで、きょうも危ない橋を渡る気分で業務に精励(フ~ッ)。それでもそう遅くなく帰宅して一服。きょうの遅めの盤ご飯にと、この盤を取り出した。

パブロ・カザルス(1876-1973)が1961年秋、時のケネディ大統領に招かれて行なわれたホワイトハウスでのコンサートライヴ。モノクロの印象的なジャケット写真を見ると、中央にケネディー大統領、またこのジャケット写真では切れてしまっているが、夫人のジャックリーヌも写っている。この盤についてはこちらに詳しい。収録曲は以下の通り。
1.メンデルスゾーン ピアノ三重奏曲第1番ニ短調 作品49
2.クープラン チェロとピアノのための演奏会用小品
3.シューマン アダージョとアレグロ 変イ長調 作品70
4.カタロニア民謡(カザルス編) 鳥の歌
この演奏には学生時代からFMをエアチェックしたカセットテープで親しんでいた。手持ちの盤は80年代前半に再発されたLP盤。久々に針を落として、かつて聴き親しんだ懐かしい音がスピーカーから流れてきた。モノラルながら鮮明な音、そして愛器ゴフリラーから繰り出される立ち上がりのいい、しかし深みある音が素晴らしい。
いずれも一時代を成した演奏であり、ピアノのホルショフスキー、ヴァイオリンのシュナイダー共々、解釈がどうの、技術がどうのという言葉を差し挟む余地もなく、そういう気持ちにもならない演奏だ。熟練の老年に達したこのトリオが歌い上げる若きロマンにあふれるメンデルスゾーン、仏人チェリスト:バズレールがチェロ用に編曲したクープランの演奏会用小品、いずれも味わい深い。特にクープランは出だしのプレリュードからカザルスのチェロが悲しみをたたえた音で響く。
そして最後の曲「鳥の歌」。いつも冷静に聴こうと思うのだが、当時84歳だったカザルスの震えるような、しかし渾身の力を込めたボーイングと、低いうなり声と共についぞ帰ることのなかった故郷カタローニャへの想いのせた曲の運びに心打たれる。
この盤の音源。クープラン「チェロとピアノのための演奏会用小品」
同 シューマン「アダージョとアレグロ」
同 「鳥の歌」
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一月も半ば。年始気分もとうに失せ、すっかり平常運転。そろそろ年度末を見込んで予定を立てないと…などと考えながら本日も業務に精励。帰宅後、音盤棚を眺め、久しぶりにこの盤を取り出した。

メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲変ホ長調作品20。手持ちの盤は激安ボックスセットの雄:ブリリアント・クラシックスのメンデルスゾーン室内楽全集10枚組セットの一枚。ピアノ六重奏曲二長調作品110とカップリングされている。アマティ弦楽合奏団という団体の演奏。この曲は弦楽四重奏団を二つ合わせた編成が基本とのことだが、チェロの一方をコントラバスに代えたり、ときには弦楽合奏でも演奏されるようだ。曲は以下の4つの楽章からなる。
1. アレグロ・モデラート・コン・フォーコ
2. アンダンテ
3. スケルツ~アレグロ・レジェリッシモ
4. プレスト
実はこの曲を知ったのはほんの数年前のこと。フルート&チェロ両刀使いの知人から「メンデルスゾーンの弦パチ、いい曲だよ!」と紹介され、そういえばボックスセットにあったよなあ、と思い出して聴いたのが最初だった。メンデルスゾーンがまだ16歳のときの作品だが、30分を越す堂々たる構成。各主題の提示とその展開、そしてそれをつなぐ経過句や転調の妙など、まったく飽きさせない。さすが天才の名に恥じない名曲だ。第1楽章冒頭から若やいだ明るさと活力あふれるモティーフが続くが、時折り陰りのあるロマンティックな表情も交える。第2楽章は短調に転じ、より一層ロマン派の色合いを濃くするが、あまり深刻な表情は見せずに美しく歌われ、心打たれる。第3楽章も引き続き短調調性をとる。快速調スケルツォで、のちの交響曲などにも通じるフレーズが顔を出し、各パートはテクニカルに絡み合いながら進む。実際の演奏となると中々合わせにくいのではないか。終楽章も陽気に大団円という単純さはない。無窮動風のモチーフにのってテーマが進み、途中からフーガへと展開するところなどは、16歳の習作という域を完全に超えていて、充実度MAXの素晴らしい曲だ。
2ndチェロをコントラバスで弾くケースも多いらしい。当然、低音部の支えが堅固になり、一層ダイナミクスが拡大される。
オーケストラ編成による第3楽章スケルツォ。
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令和5年にちなんだナンバー5。5に引っ掛けて、第5番ではないが、「5」つながりということで、この盤を取り出した。

ブラームスの弦楽「五」重奏曲第2番ト長調作品111。ベルリンフィルメンバーによる1970年の録音。弦楽五重奏の1番と2番がそれぞれA面B面に収められている。手持ちの盤は1979年に<室内楽1300>と称されたフィリップス系廉価盤シリーズ中の一枚。演奏団体名はベルリン八重奏団としてクレジットされて、その中の以下のメンバーが参加している。土屋氏は1959年から2001年までBPO最初の日本人プレイヤーとして在籍。この録音は入団から10年を経った頃のもので、名実共に名門オケのヴィオラ奏者として活躍していた時期の記録となる。
アルフレッド・マレチェック(Vn)
フェルディナンド・メツガー(Vn)
土屋邦雄(Va)
ディートリッヒ・ゲルハルト(Va)
ペーター・シュタイナー(Vc)
ブラームスの五重奏ではクラリネット五重奏曲、ピアノ五重奏曲がまっさきに頭に浮かぶが、管もピアノもない弦楽五重奏曲、取り分けこの第2番もいかにもブラームスらしい渋さに満ちている。加えてこの曲には渋さゆえの難解さがない。全楽章とも穏やかな歌謡性を持ち、親しみ易い。ベートーベン最晩年の室内楽やピアノソナタが、深く瞑想的かつ常人を受け付けないようなところがあるのとは対照的だ。ぼく自身はブラームスの室内楽中、もっとも素晴らしいものの一つと感じる。
第1楽章、冒頭こそ明るいト長調で始まるが、決して陽光さんさんと降り注ぐ明るさではない。穏やかで平和的ながら、ほの暗い落ち着きも併せ持って曲が進む。2本のヴィオラによる響きは中音部が厚く、それでいて同じブラームスのチェロを2本にした弦楽六重奏ほどの重さはなく、程よく重厚で温厚に響く。
第2楽章と第3楽章はそれぞれニ短調、ト短調の短調に転じる。第2楽章はヴィオラの哀愁に満ちた主題で始まり、ヴァイオリンによって変奏されていく。最後に主題が回想され、長調に転じて終止するあたりは本当に美しい。続く第3楽章のレントラー風のメロディーも一度聴いたら忘れないほど印象的なものだ。哀愁に満ちた旋律を各パートが綾を成すように展開される。終楽章はブラームス得意のハンガリー風(ロマ風)のモチーフで始まる。途中、穏やかな副主題をはさみながらも、最後はラプソディックに盛り上がり曲を終える。
ベルリンフィルメンバーによる演奏は、昨今の、よりダイナミックかつアクティブな演奏スタイルに比べるとずっと内省的。1970年というと、ベルリンフィルはカラヤン施政下ですっかり近代的なオケになっていたと思うが、こうして室内楽と聴くと、個々の演奏者のベースにはまだまだひと昔前のスタイルが残っていたのかと実感する。
この盤の音源。第2番第2楽章アダージョ
以下の動画は2013年ヘルシンキ室内楽フェスティバルでの録音とのこと。セルシェル(G)とデュオのアルバムも出しているジャン・ワンがチェロを弾いている。少し調べてみると他のメンバーもみな素晴らしキャリアの持ち主。モダンかつシャープな演奏。当然だがBPOメンバーによる半世紀前の演奏とは印象がまったく異なる。
第2楽章12:12~ 第3楽章18:12~ 第4楽章23:30~
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冬型ながら穏やかな日曜日。朝から野暮用外出。三時過ぎに帰宅した。早い日の入り前のひととき、久しぶりにこんな盤を取り出した。

ドイツ生まれのリュート奏者ミヒャエル・シェーファー(1937-1978)による一枚。ハイドンの作品をベースにした「リュートと弦楽のための四重奏」他が収められている盤だ。80年代初頭にミドルプライスで出た際に買い求めた。収録曲のいずれも弦楽四重奏などの原曲を元にアレンジされたものではあるのだが、ハイドン自身の編曲ではない。またそもそも原曲がハイドン自身の作でないものもあるようだ。
ハイドンが活躍していた18世紀半ば、リュートは音楽史の表舞台からは姿を消していた時期だ。ハイドン自身がリュートに興味をもっていたとする資料もあるようだが、実際に残された作品があるわけではない。この盤収録の曲も当時のリュート愛好家が編み、古くから流布していた楽譜をベースのようだ。20世紀初頭には例のH.Dブルーガーやカール・シャイトによる版が出た経緯がある。いずれの曲も明るく屈託のない曲想で、穏やかな休日に聴くのに相応しい佳曲が並ぶ。
ミヒャエル・シェーファーは優れたドイツのリュート奏者だったが、残念なことに1978年41歳の若さで亡くなった。確か日本人の奥様がいたはずだ。このハイドンの四重奏の他、手元にはわずかながら彼の盤がある。いずれもリュートの持つ軽やかで典雅な、そしてときに内省的な響きをたたえた演奏だ。

社会人になってしばらくたった80年代初頭、国内で初めて発売された廉価なステューデントタイプの10コースリュートを手にしたことがあったが、結局ろくろく弾かずに手放した。楽器、楽譜、弦など、当時は情報がまだまだ少なかったことも疎遠になった一因だったかもしれない。その後、歴史的研究成果や熱心なファンの存在、そして古楽全般の隆盛もあって、今では当時とは比べものにならないくらい環境が整ってきた感がある。とはいえ、もはやリュートをあらためて手に取ることはないだろう。
この盤の音源。ニ長調のカルテットHob.III:8
ギターによるカルテット編成での演奏。カール・シャイト版だそうだ。
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関東地方は先週後半から、停滞する前線や台風の影響もあり、はっきりしない天気が続く。異例の早さだった6月の梅雨明け宣言もさきごろ修正され確定梅雨明けは7月となった様子。何だかいろいろ大変だ。さて、きょう日曜日は家内野暮用少々こなした以外は格別のこともなく一日終了。昼下がりの一服にこんな盤を取り出した。

ジャクリーヌ・デュ・プレ(1945-1987)の弾くベートーヴェンのチェロソナタ集。5曲のソナタに加え、ヘンデルの「マカベウスのユダ」の主題による12の変奏曲、モーツァルトの「魔笛」の主題による7つの変奏曲及び12の変奏曲が収められている。デュ・プレ25歳の1970年エジンバラ音楽祭でのライヴ。伴奏ピアノは夫君のダニエル・バレンボイム(1942-)。デュ・プレが輝やいていた最後の録音といっていいだろうか。
全5曲から成るベートーヴェンのチェロソナタ。マイ・ベストはアントニオ・ヤニグロとイェルク・デムスの盤だが、このデュ・プレ盤もときどき取り出す。先ほどから第2番ト短調を聴いている。5曲の中で唯一の短調曲。冒頭から6分近く続く瞑想的かつ叙情的な序奏で始まる。この序奏は独立した緩徐楽章と言えるほど充実していて、続くアレグロ・モルトの主部と、第2楽章のロンドとで、3楽章構成といってもいい程だ。
およそBGMにはなりにくい、深く強い感情移入に満ちた演奏。才気あふれる25歳。深々と腰掛けて遠く人生を思うような演奏になろうはずもない。音楽は前へ前へと進み、強烈なスフォルツァンドがこちらの老いかけた心に強く訴えてくる。
この盤の音源。第2番ト短調の第1楽章前半。
第2番全曲。この盤の録音と同時期の演奏と思われる。
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月があらたまって令和四年長月九月。このところ公私共にそこそこ忙しい。秋到来を実感するのはもう少し先だろうが、呑気に構えていると、あっという間に年の瀬を迎えそうだ。何だかすべてが呆気なく早い。 さて、週末金曜日。先日来、音盤タイムはチェロが続いているが、今夜もその流れでこんな盤を取り出した。

藤原真理(1949-)のデヴュー盤LP。チャイコフスキーコンクールで第2位となった1978年に発売された。収録曲は以下の通り。
1.白鳥(サン=サーンス)
2.夢のあとに 作品7の1(フォーレ/カザルス編)
3.フォーレの名による子守歌(ラヴェル)
4.コル・ニドライ(ブルッフ/ローズ編)
5.鳥の歌(カタルーニャ民謡/カザルス編)
6.シシリエンヌ 作品78(フォーレ)
7.ナナとホタ~<スペイン民謡組曲>より
8.エレジー作品24(フォーレ)
9.主よ、哀れみたまえ~<マタイ受難曲>BWV244(J.S.バッハ/川口義春編)より
藤原真理がチャイコフスキーコンクールで2位に入賞したのが1978年7月。数えると彼女が29歳のときだ。今の感覚で言えば少々遅咲きといえるかもしれない。確か本番のロココ・バリエーションで変奏曲の順番を間違えたために2位になったと聞いたことがある。DENON_PCMのロゴも懐かしいこの盤はその3ヵ月後の録音だ。サン・サーンスの「白鳥」に始まり、フォーレ「夢のあとに」「シチリアーノ」「エレジー」、ブルッフ「コル・ニドライ」など、チェロの定番曲が収めされている。
この盤で聴く彼女のチェロはどの曲も自然な表現と美しい音、正確な楽器コントロールと、申し分ない。フォーレ「エレジー」などは淡々とさりげなく弾き始め、徐々にたかぶっていく様にも不自然なところがなく、聴いているこちらの気分高揚とぴたりと同期している感じだ。惜しむらくは岡本美智子のピアノ伴奏があまりに控えめに過ぎ、室内楽としての感興に乏しい。もう少し積極的な伴奏であってもよかったろうと思う。録音は当時日本コロンビアの独壇場であったデジタル録音(PCM録音)の良さが出ていて、SN比がよく、チェロの音も適度な距離感で録られていて、文句なしの優秀録音だ。
この盤の音源。フォーレ「夢のあとに」
同 フォーレ「シシリエンヌ」
懐かしい<午後のリサイタル> この盤と同じ岡本美智子の伴奏によるショスタコーヴィチのソナタ。 ショスタコのあと25分過ぎからヴァレンティーニのチェロソナタ第1楽章抜粋が続く。
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