聖子とくれば明菜を聴かないわけにいかない。いやいや、そもそも順番が逆。まずは明菜だ…と、センチメンタルな晩秋の夜。取り出しのはこの盤だ。


中森明菜1986年リリースのアルバム「クリムゾン」。
このアルバムは彼女の盤歴の中で異彩を放つ。楽曲は竹内まりあと小林明子が提供しているものだけで構成されていて、「女性作家による女性の心模様を表現したものだ」と、ある資料にあった。時代はバブル突入前夜という頃。都会の女性たちは仕事を持ち、自ら歩き、恋をし、時代の空気が自分たちのものであることを感じていた頃だったろう。そうした中、デヴュー当時のアイドルポップスから抜け出て、大人の女性が共感する歌をうたう存在としての中森明菜が出来上がる。男の、しかもすっかりオジサンの人間がいささかの共感を持って聴くことができるアルバムだ。曲そのものもそうだが、アレンジも当時流行のフュージョンテイストをベースにしながら決して騒がず、ポップな和製AORという感じに仕上がっている。それにしても1986年リリースか…10年、20年ではなく、もう34年前。あっけない人生だったなあ…
この盤に収録された「駅」は何度聞いてもグッとくる名曲だ。曲を提供した竹内まりあも歌っているが、中森明菜の方が数段いい。この曲だけでもこのアルバムの価値は失せることがない。「難破船」同様、聴くたびにその後の彼女の数奇な運命と重ね合わせ、明菜がんばって~!と叫んでしまいそうになる。
この盤の音源「駅」
同「約束」
「駅」@ライヴ
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11月最後の週末金曜日。きょうも程々に業務に精励。帰宅後一服して音盤棚を眺めていたら、久しぶりにこの盤が目にとまったので取り出した。


松田聖子の「Seiko Train」。日本がバブル期に入る前の1985年、世にJPOPという言葉もまだなく、ニューミュージック、アイドル歌謡と言われていた頃にベスト盤としてリリースされたこのアルバムは、呉田軽穂こと松任谷由美が作った以下の10曲が収録されている。ジャケット帯にも記されている通り「ユーミン・コレクション」。トップアイドルともなれば、曲を提供する人、アレンジャー、スタッフ、いずれも一流の人たちがサポートすることになるが、松田聖子の場合もしかり。多くの優れた楽曲が素晴らしいアレンジと録音で残された。作詞はすべて松本隆。ジャケット写真は篠山紀信。
<Side-A>
1 赤いスイートピー
2 秘密の花園
3 小麦色のマーメイド
4 制服
5 時間の国のアリス
<Side-B>
1 Rock’n Rouge
2 蒼いフォトグラフ
3 渚のバルコニー
4 ボン・ボヤージュ
5 瞳はダイアモンド
ぼくは80年代アイドル全盛期すでにサラリーマン、加えてそこそこのクラシックファンだったので、リアルタイムで彼女らに血道を上げたわけではないのだが、当時のテレビやラジオから流れていたメロディは自然にインプットされてはいる。手元の何枚かの盤は後年リサイクルショップのジャンク箱から100円で捕獲してきものがほとんどで、この盤もその中の一枚だ。100円で拾ってきたものの盤質はほとんど未使用で、今でもスクラッチノイズもなく素晴らしい音で楽しめる。
どの曲も門外漢のぼくなどが説明する必要もない曲ばかりだろう。松田聖子の歌いっぷりは、多分意図的にかなり作った歌い方をしていて、30代以降の彼女のナチュラルな声と比べると、やはり随分と幼い印象と受ける。それでもハイトーンはきれいに抜けているし、音程が飛ぶときの安定感もいい。ユーミンの曲の良さもさることながら、伴奏のアレンジ・演奏がいずれの曲でも秀逸で、時代的には完全に80年代フュージョン全盛期の影響を受けていて懐かしい。いくつかの曲ではスラップ(チョッパー)ベースも出てくるし、16ビート系のアレンジではカシオペア風の16分音符裏拍のキメなどもあって思わず身体が乗り出す。更にほとんど曲でストリングスも入って、かなり厚い音作りではあるが、決してバックがうるさくなることはない。常にメインは松田聖子のボーカル。こうして10曲並べてみて、ぼくのお気に入りは「Rock’n Rouge」「時間の国のアリス」「瞳はダイヤモンド」「渚のバルコニー」あたりか。実は中森明菜の隠れファンではあるが、対極のような存在の松田聖子は聴いていてハッピーな気分になって、はなはだ心地いい。とりあえず今夜は「聖子いのち!」と叫んでおこう。
「Rock’n Rouge」
「Rock’n Rouge」と「ワンノートサンバ」の類似性についてのアナリーゼ。
ユーミンメドレー@2001 w/松任谷正隆
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お盆も終わって八月も後半へ。ぼくは暦通りで休みはなし。本日も業務に精励し、8時少し前に帰宅した。ひと息ついて、机まわりの片付けをしながら音盤棚と見回すうちの、この盤と目があったので取り出した。

高校時代からクラシックにどっぷり浸かった我が音楽道楽人生だが、クラシック以外の箸休めも歳を重ねるごとにメニュー拡大。日本の歌謡曲、それも80年代以前のものを好んで聴くようになった。手元には昭和歌謡のシングル盤が200枚程、LPアルバムも結構な数がある。さて、きょう取り出したのは写真の盤「エンカのチカラ」。十年程前にリリースされた企画盤。70年代のヒット曲を人気演歌歌手が歌っている。タイトルからしてケッコー、キテる。ジャケットにいたってはなんだかどうにでもなれという感じだ。収録曲は以下の通り。大御所が名を連ねている。
1.シクラメンのかほり / 都はるみ(布施明)
2.氷の世界 / ちあきなおみ(井上陽水)
3.神田川 / 島倉千代子(かぐや姫)
4.時には母のない子のように/ 美空ひばり(カルメン・マキ)
5.想い出まくら / 森昌子(小坂恭子)
6.わかれうた / 伍代夏子(中島みゆき)
7.わたしの城下町 / 大川栄策(小柳ルミ子)
8.硝子坂 / 長山洋子(高田みづえ)
9.夢先案内人 / 香西かおり(山口百恵)
10.ペッパー警部 / 石川さゆり(ピンク・レディー)
11.思秋期 / 坂本冬美(岩崎宏美)
12.季節の中で / 新沼謙治(松山千春)
13.いとしのエリー / 八代亜紀(サザンオールスターズ)
ジャケットの帯に「やっぱり、うまい。演歌歌手ならではの正確なピッチ、唸るコブシ…」とある。確かにうまい。どの曲もオリジナルの雰囲気を残しながらも、声質・歌唱の妙で聴かせてくれる。アレンジも丁寧になされている。
都はるみの「シクラメンのかおり」、これなどは何となく想像がつくし、実際想定の範囲内ではあるのだが、フレーズの歌い分け、細かなニュアンスの表出など、やはりうまいなあと感じる。「わたしの城下町」を大川栄策が歌ったら台無しだろうと思いきや、これが中々いい。太目のハイトーンで歌い上げ、どっしりとした立派な曲に変身だ。坂本冬美が歌う「思秋期」もやや濃い口の歌いっぷりだが、正確なピッチと伸びやかな声で楽しめる。中森明菜がカヴァーした「思秋期」とは違った味わいだ。びっくりたまげたは、石川さゆりの「ペッパー警部」。これはまずアレンジが秀逸。ファンキーでノリノリだ。もっとも歌だけ聴くとあまりリズムを意識せず丁寧に歌っている。八代亜紀の「いとしのエリー」は、笑ってしまうほど八代亜紀!…です(^^
手持ちの盤からアップした。
「わたしの城下町」大川栄策
「神田川」島倉千代子
「ペッパー警部」石川さゆり
「思秋期」坂本冬美
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手元の音盤も見回しながら概数をカウントしてみると三千から四千枚の間となる。一日一枚順番に聴いていくと次に聴くのは十年後。残り健康寿命を勘案すると、どれもあと二回ほどしか聴けない。実際には均等に聴くわけではないし、音楽ゼロの日も多い。結局、聴かずじまいで終わる盤もあるだろう。そんな中、年に一度あるいは二年に一度といったインターバルで確実に聴く盤も多い。きょうはそんな盤の一つを取り出した。

長谷川きよし(1949-)の<カスタム20>と称する、今でいえばベスト盤アルバム。1973年発売。この当時の彼の主だった曲が、<別れのサンバ>を筆頭に18曲収録されている。十数年前に近所のリサイクルショップで手に入れた。
長谷川きよしの代名詞というもいうべき<別れのサンバ>がリリースされたのが、1969年7月25日というから、ちょうど半世紀前。ぼくは中学3年。アポロ11号が月面着陸に成功し、三沢高校の太田投手が甲子園で人気になった、そんな夏だ。当時ぼくはまだコードをかき鳴らす以上のギターテクニックとは無縁だった。そんなときテレビで<別れのサンバ>を演奏する長谷川きよしを見て衝撃を受けた。こんなカッコいいギターがあったのか。それからせっせと彼の演奏をコピーした。といってもレコードは持っていなかったから、テレビやラジオから流れてくる曲をそのまま耳コピーするしかなかった。それでも練習の甲斐あって何とかそれらしくコードを押さえ、ギターに合せて下手な歌をうたうことが出来るようになった。年が明けて春には高校入学。入学からしばらくした頃、ギター・マンドリン部に入部しようと部室を訪ねると一人の先輩がいた。「何か弾いてみて」と言われたので<別れのサンバ>を弾いた。8小節のイントロをそれらしく弾き、続いてギターに合せて歌もうたった。すると先輩が「歌はいいよ(笑)スケール弾いて」ぼく「はあ?スケール…」先輩「スケール、音階、ドレミ」、ぼく「はあ…」 楽器の基本である音階(スケール)も知らずにいた田舎の高校生のクラシックギターとの出会いは中々笑えるエピソードで始まった。以来高校時代は日々スケール練習に明け暮れた。そして同時にギター伴奏で歌うことは止めた(笑)。その「スケール弾いてみて」とぼくに言った先輩が本ブログにも時々登場する旧友Y氏であった。彼とは結局大学も一緒だったが、その後音信不通となった。そして三十年余を経た2011年にふとしたことで再会を果たした。ぼくら世代には強烈な印象を残した<別れのサンバ>。あれから半世紀…。遥かに来てしまったなあと、妙に感慨にふける曲である。
別れのサンバ@2012with仙道さおり。変らぬ声とギター。今も元気に活動継続中だ。楽器は…サウンドホールからチラリと見えるラベルからすると、今もファンの多い70年代に人気だった田村廣のフラメンコギターようだ。
これも聴きもの<黒いオルフェ> 使用楽器はアントニオ・マリンかな。
https://youtu.be/hKoknP1O1rk
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土曜日の雨が上がり、きょうは気温上昇の日曜となった。終日野暮用外出。夕方五時過ぎに帰宅した。夜になって、部屋の片付けのBGMにと、こんな盤を取り出した。


ジュディ・オングが昭和歌謡をカヴァーしたアルバム<Last Love Songs>。2012年録音。収録曲は以下の通り。お馴染み昭和の定番ソングが並ぶ。
1. どうぞこのまま
2. 異邦人
3. つぐない
4. シルエット・ロマンス
5. 終着駅
6. あなたならどうする
7. 別離 わかれ
8. 手紙
9. グッド・バイ・マイ・ラブ
10. ラヴ・イズ・オーヴァー
11. 魅せられて ~ 2012 Version (ボーナストラック)
アルバムのサブタイトルが~人には言えない恋がある~。ジャケットの帯びには「エイジフリー・ミュージックを歌う熟恋歌の女王」とある。ブックレットには美熟女ジュディのポートレートがてんこ盛り。どこから見ても前期高齢者オジサンひっかけの企画物だ。本当は彼女が歌うジャズアルバムが欲しかったのがどうやら現在廃盤。仕方なく、とはちょっと照れ隠しの言い訳で、その実はひっかけ企画に素直にのって数年前に調達したもの。ワーナーミュージック社マーケティングの勝利!
ジュディ・オングはぼくらが物心ついた頃からテレビに出ていたから、ずっと年上かと思っていたのだが、1950年生まれというから、案外近い年代だ。かつてはポニーテイルのボーイッシュなイメージがあったが、例の<魅せられて>以来、すっかり路線変更。男性ばかりか、美を追求する中年女性にとってもカリスマ的支持があるらしい。
聴いてすぐに彼女と分かるジュディ節だが、どの曲もそつなく素直に歌っていて好感がもてる。芸歴、歌手歴共に半世紀を越えるのも伊達ではないと実感。またカヴァーアルバムでは、伴奏アレンジを懲りすぎてコテコテの失敗作になることもあるが、このアルバムのバックオケは原曲のイメージをほぼ残していて、これも素直で二重丸だ。う~ん、ジュディ・オング…イイんじゃな~い!
手持ちの盤からアップしてみた。テレサテンの「つぐない」
このアルバムのPV
「どうぞこのまま」を歌うジュディ@2016
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最近はもうほとんどテレビは観ない。ゴールデンタイムにチャンネルを回しても(あっ、押してもか…)、どこもかしこも井戸端会議のバラエティ。民放とNHKも区別がつかなくなった。最初に無くなってもいい家電の筆頭はテレビかもしれない。一方深夜放送・エアチェック世代のせいかラジオへの思い入れは強く、無くなっては困る家電の筆頭はラジオということになる。しかし、そんな分別臭いことをいうぼくも、かつてはそれなりにテレビを見ていた。特に社会人になってから何年かはテレビドラマの恋愛ゲームを観ては、そんなものには無縁な自分と照らし合わせて悶々としていたのだろう。遥か記憶の彼方だけれど。


1979年。TBS系列で「オレンジ色の愛たち」というドラマがあった。宇津井健、秋吉久美子らが出ていた都会派のドラマで、その後出てくるトレンディードラマの走りだったかもしれない。ドラマの中身はまったく記憶にないのだが、豊島たづみが歌うテーマ音楽「行き暮れて」と、オープニングに写る丸ノ内線が神田川の上を渡る御茶ノ水聖橋の光景だけはよく覚えている(写真下:この構図は本当に美しい)。テーマ曲の「行き暮れては」はその後ずっと気になっていて、十数年前にリサイクルショップのジャンクレコード箱からこの曲が入ったアルバムを見つけ、30年ぶりの再会を果たした。久々に針を落としてみたが、今聴いても新鮮だ。スローテンポの16ビートとボサノバを織り交ぜた曲調、時折りセンスのいいテンションコードも入った都会的なアレンジにのって、豊島たづみが肩の力を抜いて少し気だるく歌っている。アレンジのセンスがいいのでクレジットを見ると大村雅朗と記されていた。八神純子の「みずいろの恋」や松田聖子の「Sweet Memories」、渡辺美里「My Revolution」など数々のヒット曲の作編曲を手がけたが、1997年に46歳の若さで逝去したとWikipediaにあった。
その少し前になるが、同じテイストの都会的なボサノバ調の曲、丸山圭子の「どうぞこのまま」がヒットした。学生時代の終わり頃よく聴いたこを思い出す。この頃はまだ都会と田舎の差は大きく、当時地方都市で学生生活を送っていたぼくは、イメージとしての都会やそこでの恋愛を想像しながら、こんな曲を聴いていたのかもしれない。結局都会での生活も恋愛も経験することなく月日が過ぎた。豊島たづみも丸山圭子もぼくと同い年。二人は今もそれぞれのペースで活躍しているようだ。あれから30年余。遥かに来てしまったなあ…
豊島たづみ「行き暮れて」
丸山圭子「どうぞこのまま」
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アラフォーの女性ヴォーカリスト畠山美由紀(畠山みどりにあらず)。デヴューは随分前だが、メジャーになったのは十年程前からだろうか。ぼくも名前はかなり以前から知っていたが、初めて彼女の6作目というこのアルバムを手にしたのは数年前のこと。以降、恒例行事のごとく年に一度この季節に、やおら取り出して聴く。

極上の美声ではないし、CDで聴く限り声量もある方ではなさそうだ。舌を巻く巧さということでもない。がしかし、その声の幾ばくかのあやうさとはかなさに何ともひかれる。そして曲によってかなり多彩な表情を聴かせる芸域の広さもいい。すでに十分メジャーな存在だろうが、それを裏付ける魅力がある。あまりくどくど説明するのは本意ではないので、ここまでにしておこう。実は来月7月20日には当地で彼女のライヴも予定されている。
アルバムは何枚か出ていて、少し大きめの店なら置いてあるだろう。邦楽の<は>の棚を探すと、<畑中葉子ゴールデンベスト>の隣りあたりに見つかるはずだ(^^;。 もちろんAmazonにも。YouTubeにもかなり数の動画がアップされている。但し、圧縮されたオーディオフォーマットでは、彼女の声のニュアンスをとらえた素晴らしい録音の魅力は半減してしまうかもしれない。
このアルバムの中から「夜と雨のワルツ」。ありがちなノスタルジックなワルツかと思うと、中々凝った転調も仕組まれている。「あなたが思うよりも人生は短く、あなたが思うよりもはてしもない」…まったくだ。
震災の年の年末に出た第5作中の「わが美しき故郷よ」 気仙沼生まれの彼女が歌うから、こうした強い表現になるのだろうか。クラリネットのオブリガートが効果的だ。
小田急ロマンスカーTVCMソングも歌っている。
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