なんて音楽を知らないのだろう…最近つくづくそう思い、我ながらいやになってしまう。世には多くの楽曲がある。例えそれをクラシックのある時代に限っても途方もなく、およそ盆暗サラリーマンの呑気な余技で手に負えるものではない。まあ、そんなことはとうの昔から分かっているし、分相応に自分の手に負える範囲で楽しむしかないのは百も承知だ。しかし、好き嫌い、わかるわからない以前に、知らないというのはまったく手の施しようがない。きょう取り上げたこの盤などを聴くと、あらためてそのことを痛感する。

ポール・パレー(1886-1979)とデトロイト響による19世紀フランス作品集。十年程前にタワーレコードの企画物として出た「ビンテージシリーズ」中のもの。50年代後半から60年代初頭にかけての録音。オリジナルは当時、米マーキュリーのリビングプレゼンスシリーズとしてリリースされたもの。収録曲は以下の通り。
Disk1
(1)交響曲変ロ長調OP.20(ショーソン)
(2)バレエ「ナムーナ」第1組曲(ラロ)
(3)歌劇「イスの王様」序曲(ラロ)
(4)歌劇「サムソンとデリラ」~バッカナール(サン=サーンス)
Disk2
(1)気まぐれなブーレ(シャブリエ)
(2)楽しい行進曲(シャブリエ)
(3)狂詩曲「スペイン」(シャブリエ)
(4)田園組曲(シャブリエ)
(5)歌劇「いやいやながらの王様」~ポーランドの祭り(シャブリエ)
(6)歌劇「グヴァンドリーヌ」序曲(シャブリエ)
(7)歌劇「いやいやながらの王様」~スラヴ舞曲(シャブリエ)
(8)交響詩「死の舞踏」Op.40(サン=サーンス)
(9)英雄行進曲OP.34(サン=サーンス)
(10)フランス軍隊行進曲OP.60-4(サン=サーンス)
大手販売店の企画物だからそこそこのセールス成績を見通してのことだろうし、それほど奇抜な秘曲・珍曲のたぐいではもちろんない。にも関わらずここにリストされた曲のうちぼくが知っている曲は三分の一ほどしかなかった。作曲者名やその代表作はみな馴染みがあるにも関わらずだ。もともと独墺系楽曲に偏重しているぼく自身の嗜好もあってフランス音楽は馴染みがないというのが大きな理由だが、ベートーヴェンやブラームスの同曲異演盤を何組も聴き漁る前に、まだ知らない曲に耳を傾けなくてはいけないと痛感した。
ショーソン唯一の交響曲変ロ長調は以前FMで聴いたことがある。そのときの記憶はもう残っておらず、この盤であらためて聴き直した。第1楽章冒頭の憂愁かつ荘重なイントロダクションが印象的だ。主部に入るとフランス物という先入観をくつがえす厚い響きと構成。どこかフランクの交響曲ニ短調に通じる響きやワグナー「ラインの黄金」に似たフレーズがあるなあと感じていたら、ショーソンはフランクに学びワグナーにも傾倒してバイロイトへもよく通ったとWikipediaに書かれていて納得した。随所に魅力的なメロディーがあふれ、もっと演奏されてもいい曲だろう。
ラロのバレエ曲や序曲はこの盤で初めて聴いた。曲を聴いているとそのまま華やかな舞台をイメージできる楽しい曲だ。シャブリエは狂詩曲「スペイン」ばかり有名だが、この盤で取り上げられている元はピアノ曲の組曲「スペイン」や他の序曲・小品はいずれもリズムの扱いが巧み、かつ色彩的なオーケストレーションが印象的だ。シャブリエ作品の中心をなすピアノ曲もまとめて聴いてみたくなる。
ぼくにとっては馴染みの薄いフランス物だが、以前記事に書いたピエール・デルヴォーの盤なども忘れた頃に取り出して聴いてみると、文句なしに美しく楽しい。理詰めで建造物を構築する感のあるドイツ物とは少々異なり、知覚した印象をそのまま音のパレットに広げたようなフランス物には独自の魅力があることはよく分かる。音盤棚にあふれる独墺系の盤を少し整理して、フランス物やイタリア物あるいは古楽に触手を伸ばそうかと考えてしまう。
この盤の音源。ポピュラーなシャブリエ「狂詩曲スペイン」
同 ショーソン「交響曲変ロ長調」第1楽章
同 サン=サーンス「英雄行進曲」
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先回の記事で取り上げたエルガー。その続きというわけでもないが、音盤棚を眺めていて見つけたこの盤を取り出した。

イ・ムジチ合奏団が弦楽合奏のための近現代作品を取り上げた一枚。1985年録音。時代はCDへ移行の真っ最中。新譜アルバムのアナログ盤リリースが無くなり始めた頃だろうか。この盤も蘭フィリップスの輸入原盤に日本語の解説シートを付す形でリリースされている。収録曲は以下の通り。イタリアあり、アメリカあり、イギリスありのユニークな選曲だ。
レスピーギ :リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲
バーバー :弦楽のためのアダージョ(弦楽四重奏曲ロ短調op.11より)
ニーノ・ロータ:弦楽のための協奏曲
エルガー :弦楽セレナード ホ短調op.20
この盤にはバーバーとエルガーの弦楽合奏の名曲が入っているところが気に入っている。映画音楽で有名なニーノ・ロータの作品も珍しい。イ・ムジチにとってはお国物というところか。エルガーはパーセル以来途絶えて久しかったイギリス音楽における中興の祖をいわれる。ときに近現代的な和声感、ときに穏やかなロマンティシズム、それらが同居する作風。針を落とした弦楽セレナーデは、その穏やかなロマンティシズムの方を代表する作品だろう。
アレグロ・ヴィヴァーチェの指定ながら、どこか憂いを秘めた第1楽章、深い抒情に満ちた旋律が歌われる第2楽章、軽快なフレーズに揺れるうちに、第1楽章の主題に回帰する第3楽章。美しいイギリス音楽の見本のような曲だ。イ・ムジチの演奏は音響的な美しさに関しては文句なしの出来栄え。もっと渋めの演奏を聴きたくもなるが、これはこれで十分素晴らしい。
エルガー作品はこのセレナーデをはじめ、チェロ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲、エニグマ変奏曲、序奏とアレグロ、2つの交響曲など、いずれも傑作揃い。「愛の挨拶」と「威風堂々」ばかりではエルガーも可哀相だ。メディア・演奏者共、もっと広く取り上げてほしい。
この盤の音源。エルガー:弦楽セレナーデ 第2楽章
同 第1楽章
全楽章 コロナ禍に誕生したデュラーレ・チェンバー・ストリングス・アンサンブルという団体。
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あす6月23日は「はげ山の一夜」にちなむ日…ということらしい。何でもこの曲の背景として「聖ヨハネ祭(6月24日)の前夜に不思議な出来事が起こる」というヨーロッパの伝承があるあり、その伝承による「はげ山に地霊チェルノボグが現れ手下の魔物や幽霊、精霊達と大騒ぎするが、夜明けとともに消え去っていく」というロシア民話がベースになっているとのこと。ぼくのような極東の片田舎のオジサンにはとんとお呼びでない史実だが、まあそんなものかと合点して、今夜はこの盤を取り出した。

エルネスト・アンセルメ(1883-1969)と手兵スイスロマンド管によるロシア管弦楽曲集。
今さら解説するまでもないだろうが、エルネスト・アンセルメは元数学者にして、のちにフランス物やバレエ音楽を得意とする指揮者として活躍した。特にスイスの仏語圏(スイスロマンド)を代表するオーケストラであるスイスロマンド管弦楽団を振って英デッカに残した一連の録音はステレオ初期の名盤として人気を博した。今夜取り出した盤はタイトル通りロシア近代の管弦楽曲を集めたもので、収録曲は以下の通り。
1. 交響詩「はげ山の一夜」(ムソルグスキー-リムスキー=コルサコフ編)
2. 歌劇「サルタン皇帝の物語」~くまんばちは飛ぶ(リムスキー=コルサコフ)
3. 序曲「ロシアの復活祭」(リムスキー=コルサコフ)
4. 歌劇「ルスランとリュドミーラ」序曲(グリンカ)
5. 同「イーゴリ公」~ダッタン人の踊りと合唱(ボロディン-リムスキー=コルサコフ編)
6. 交響詩「中央アジアの高原にて」(ボロディン)
7. 歌劇「三つのオレンジへの恋」~行進曲とスケルツォ(プロコフィエフ)
久々にフルボリュームで聴いてみたが、60年代英デッカ黄金期を伝える実に鮮やかできらびやかな音質にあらためて驚いた。ゴージャスという言葉がぴったりだ。日本では東京オリンピック以降60年代後半から70年代にかけてステレオ装置が一般家庭にも普及し出したが、英デッカ録音は独グラモフォンの重厚さや米コロンビアのやや乾いた音質に比べ鮮烈に響いたに違いない。この盤もマイクロフォンを各パートごとに設置してそれぞれ楽器の音は明確にピックアップした上でミキシングするという、英デッカのマルチポイント録音の特徴がよく出た録音だ。コンサートホールで聴くオーケストラのバランスとは明らかに違うのだが、これはこれで再生音楽としての楽しみを堪能させてくれる。
「はげ山の一夜」で鳴るグランカッサの音は、音というよりは部屋の空気を静かに揺すぶるように響き、不気味な妖怪達のうごめきや周囲を吹き抜ける冷ややかな風をイメージさせる。但し、これ(コンサートホール聴くグランカッサの空気感に近いイメージ)を実感するには40Hz程度の低音域まで素直に出るオーディオシステムが必要だ。こういう録音を聴くと作曲家や演奏家の意図をきちんと理解するには相応のオーディオシステムが必要だと思ってしまう。ほどほどのシステムだと、どうしても耳につきやすいメロディーや中音域のハーモニーだけに神経がいきがちだ。従来この曲はもっぱらリムスキー・コルサコフ編曲の版が演奏されてきたが、近年はその他の版でも演奏されるようになってきた。その辺りの事情は「展覧会の絵」に似ている。下記に貼ったアバドによる演奏が一つのサンプル。
アンセルメが1969年に亡くなったあとスイスロマンド管弦楽団は長らく低迷。一方英デッカは80年代のデジタル録音時代を迎えてフランス物・ロシア物の色彩的な管弦楽曲の再録音を迫られ、アンセルメと同じくスイス生まれのフランス系指揮者シャルル・デュトアと手兵;モントリオール交響楽団のコンビに白羽の矢を立てて録り直すことになる。
この盤の音源。アンセルメとスイスロマンド管。14秒過ぎからのグランカッサの響きが出ればオーディオの低域再生能力は及第か。
原典版の演奏。例によって!マークが出るが、「YouTubeで見る」をクリックするばOK。
ジャズ・フュージョン界の大御所ボブ・ジェイムスによって70年代半ばに大ヒットした版。
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週末日曜日。新年度ということもあって、朝イチそして夜も町内自治会の用事があり、あたふたと日が暮れる。ひと息ついて、さて今夜はこんな盤を取り出した。

ビゼーの管弦楽曲を集めた一枚。チョン・ミョンフン(1953-)指揮パリ・バスティーユ管弦楽団による演奏。1991年録音。手持ちの盤はグラモフォンから廉価盤で出たときに手に入れたもの。「カルメン」組曲、管弦楽のための小組曲 「子供の遊び」、「アルルの女」 第1・2組曲が収められている。このうち「カルメン」組曲は以下の通り。
1.闘牛士、2.前奏曲、3.アラゴネーズ、4.衛兵の交代
5.間奏曲、6.セギディーリャ、7.アルカラの竜騎兵、8.ジプシーの踊り
かのバブル期にはオペラも随分と盛ん上演され、にわかオペラファンも増えた。お目当ての彼女(もちろんワンレン・ボディコンの)をオペラ「カルメン」に誘い、男は終演後「さすが!やっぱ、オペラは本場イタリアだよね!」と得意そうに胸を張った。残念!「カルメン」はスペインが舞台のフランス語のオペラでした…というオチ(^^;
さてこの盤。チョン・ミョンフンは1989年に新設されたパリ・バスティーユ・オペラの音楽監督に就いたものの、その後内紛に巻き込まれ1994年に解任された。もっとも、その後の彼の活躍をみると、むしろその方がよかったと言えなくも無い。この盤はそうしたゴタゴタの前の蜜月時代に録られた。
CDプレイヤーのプレイボタンを押すとお馴染みのメロディーが次々に出てくる。ぼくはオペラはまるで知らないのだが、こうした組曲形式やさわりの有名な曲などは、かれこれ半世紀になるクラシックとの付き合いに中で、聴くともなしに聴いてきたのだろう。おおよそは耳に馴染んだ曲ばかりだ。 チョン・ミョンフンの表現はさぞエネルギッシュで情熱的で…そう予想していたのだが、意外にも音楽は控えめと感じるほど冷静かつ整然としている。もちろんそれはネガティブな意味ではない。テンポはやや速めですべての音が軽やかに響き渡り、フレーズのあちこちも決して滞ることなくスッキリと進む。弦楽群は決して重くならず、その響きにのって木管群のソロがとりわけ美しく鳴り渡る。さすがフランス!と拍手を送りたくなるほどだ。新設されたオペラ座のピットの入ることになった若き俊英たちは「音楽は騒ぎ立てればいいってもんじゃないぜ」とでも言っていたに違いない。
「世界の」藤村実穂子との「カルメン」抜粋 2013年東京。フランス放送フィルハーモニー.。所々映像と音声がずれる。
ラトビアのアコーディオン奏者クセーニャ・シドロワ。 これはちょっと…音楽が耳に入ってこないなぁ(^^;
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週明け月曜日。本日も業務に精励。今年度末の業務案件も片付き、新年度に向けた準備など少々。そしてホワイトデイ…一切関係なく帰宅。ひと息ついて、今夜はこんな盤を取り出した。

「ノルウェイ・ヴァイオリン名曲集」と題されたNAXOSの一枚。1997年録音。NAXOS専属の録音専門オケ:ラズモフスキー交響楽団による演奏。ビャルテ・エンゲストという指揮者が振り、ヘンニング・クラッゲルードという1973年ノルウェイ生まれのヴァオリニストがソロを弾いている。タイトル通りノルウェイの作曲家、それもブル、シンディング、スヴェンセン、ハルヴォルセンといった、グリーグほどの知名度を持たない作曲家の作品が収められている。主な収録曲は以下の通り。
オーレ・ブル:羊飼いの少女たちの日曜日。憂うつ。協奏曲ホ短調からアダージョ。
クリスティアン・シンディング:古風な様式の組曲 Op. 10
スヴェンセン:ロマンス ト長調。
ハルヴォルセン:ノルウェイ舞曲第1番、第2番。乙女の歌。老漁師の歌。結婚行進曲他
グリーグ:2つの悲しい旋律。君を愛す。
何ともロマンティックで美しいメロディーの曲を集めたものだと感心する。グリーグの抒情小曲集などに親しんでいる向きには、その路線といったらわかりやすいだろうか。ロマンティクというヨーロッパの歴史に深く根ざした概念など、ぼくはとんと理解していないのだが、つたない理解で言葉を当たるなら、ノスタルジックあるいはメランコリーといった方が相応しいかもしれない。いずれの曲も穏やかでゆるやかなメロディー、心地よいが単純ではない和声、控え目なダイナミズムに彩られ、限りなく美しい。こちらの心中が満たされているときに聴けば、幸せが倍増するだろうし、反対に憂いを抱えているときに聴くと少々あやうくなるかもしれない。知名度の高いグリーグの曲も2曲入っていて、さすがに一層際立った美しさだ。
オーレ・ブル(1810-1880)はパガニーニやリストとも親交があったヴァイオリンのヴィルティオーゾとしても知られ、当時の名声も作曲家としてよりはヴァオリニストとして確立された由。残された曲はそう多くはないが、ここに収められている元は歌曲の「羊飼いの少女たちの日曜日」はよく演奏されるようだ。ヴァイオリン協奏曲ホ短調は同じNAXOSに全曲盤があり、手元にあるのでまた聴いてみよう。
オーレ・ブル「羊飼いの少女の日曜日」オリジナル歌曲の歌詞を知らないが、このYouTubeに添えられた絵を見ていると、ノルウェイの片田舎の村から出ることなく日々の労働と食事とわずかな休息だけを繰り返していたであろう少女に思い巡らし、胸が苦しくなる。
この盤にも入っているよく知られたグリーグ「君を愛す」。チェロで弾くと一層深く美しい。
スヴェンセン:ロマンスト長調
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三月最初の週末日曜日。所用あって昼前から外出し、夕方近くに帰宅した。北関東自動車道と東北自動車道を1時間ほど走ったが、道中見える景色はまだ冬枯れだが、どことはなし春らしい空気を感じる。 帰宅後一服。少し時間があったのでアンプの灯を入れ、先日のドヴォルザークの続きでこんな盤を取り出した。

ヴァーツラフ・ノイマン(1920-1995)がチェコフィルを振って1985年に録音したドヴォルザークのスラブ舞曲集。日本コロンビアの廉価盤シリーズCREST1000の中の一枚で、同曲の第1集と第2集がすべて収められている。
70年代半ばから80年代初頭にかけて、ノイマン&チェコフィルは日本で大そう人気を博した。ドヴォルザークの8番や9番のレコードはベストセラーになったし、ノイマンも度々来日していた。美しい指揮ぶりは今でも目に焼きついている。一方で玄人筋には少々辛口の評を受けることが多かったノイマンとこの時期のチェコフィルだが、現代的で颯爽としたところと、お国物としての共感あふれる演奏はこの盤でも十分楽しめる。
ドヴォルザークのスラブ舞曲について解説する必要もないだろうが、お馴染みのブラームス「ハンガリー舞曲集」と常に対比あるいは並べて論じられることが多い。ボヘミア起源の民族的なリズムやメロディー、形式を素材にしているわけだが、このスラブ舞曲には各曲に舞曲名が付され、それもフリアント、ドゥムカ、ポルカに始まり、更にポーランド起源のマズルカやポロネーズにまで及ぶ。いまこうして聴くとブラームスのハンガリー舞曲集よりも多彩で、より深みをもつ音楽に仕上がっているように感じる。
CDプレイヤーに盤をセットして再生ボタンを押すと第1曲ハ長調フリアントのリズムが立ち上がる。<2+2+2+3+3>の変則的なリズムが躍動感をいっそう際立たせる舞曲だ。ノイマン&チェコフィルの演奏はお国物だけに郷愁たっぷりに歌い抜くかと思いきや、意外にもテンポは速めの設定で進む。フリアントの中間部もあまりテンポを落とさない。あくまで舞曲としての扱いだ。そういえば隣り町のマンドリン楽団で以前、パイレーツ・オブ・カリビアンのテーマを取り上げた際、合奏練習で2拍子系と3拍子系の複合するリズムの処理に手を焼いていたことがあった。ぼく自身は即座にこのスラブ舞曲のフリアントのリズムを感じて難なく演奏することが出来たことを思い出す。第2曲のホ短調のドゥムカ、第3曲のポルカ、第4曲のソウセツカーと、愛らしく曲が続く。第2集ではボヘミアのリズムに加えポーランド系の舞曲も入り、より多彩に楽しめる。よく知られた第2番(通し番号では10番)ホ短調はやはり取り分け美しい。
チェコフィルの音色は、60年代のアンチェル時代にはまだ残っていた独特の金管のヴィブラートや弦楽群の際立った音色感はやや後退し、悪く言えばやや没個性で平凡、よく言えば現代的で普遍的な音だ。すでにデジタル録音の技術もこなれていた時期でバランスも良好だ。
この盤の音源。第1集・第1曲ハ長調 フリアント
同 第2集の第8番変イ長調 ソウセツカー
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二月最初の週末日曜日。あれこれ野暮用で日が暮れる。夕方近くなってようやく一服。久しぶりにこんな盤を取り出した。

シベリウスの組曲「カレリア」。コリン・デイヴィス( 1927-2013)指揮ボストン交響楽団による演奏。組曲「カレリア」の他、同じシベリウスの「ポヒュラの娘」「悲しいワルツ」「伝説」が収録されている。1979年から80年にかけての録音。組曲「カレリア」は元々は野外劇のための作られたが、シベリウス本人がその後改編し、現在はカレリア序曲と3つの曲からなる組曲「カレリア」として残っている。
第1曲「間奏曲」の出だし、まるでブルックナー開始のようなざわざわとした弦のトレモロで始まるが、付点音符の明るいフレーズがホルンで提示されるすぐに、これはブルックナーではないなあと分かる。ほどなく打楽器も伴ったリズミックな主部に入る。音楽は明るく大らかだが、決してドンチャン騒ぎではなく、どこかほのぼのとした風情を残し、最後にホルンのフレーズが回顧されて曲を閉じる。
第2曲「バラード」はこの曲の中心といってよい。木管楽器によって哀愁に満ちた主題が提示され、やがて弦楽群に引き継がれて切々と歌われる。シベリウスが書いた最も美しい旋律の一つだろう。最後はコールアングレが美しいソロを取る。第3曲<行進曲風に>では再び音楽は活気を取り戻し、リズミックな曲想と親しみやすいフレーズが続く。
コリン・デイヴィスはボストン交響楽団とシベリウスの交響曲全曲や管弦楽曲を録音し、後年ロンドン交響楽団とも再録もしている。シベリウスを得意にした指揮者の一人だ。ハイレベルなボストン響をとらえたフィリップスの好録音も素晴しい。
シベリスは20世紀半ばまで存命した作曲家。交響曲などではやや難解な作風も示すが、当然19世紀的なロマンティックで抒情的な側面も強く、ポピュラリティーや民族色の強い、しかし品格のある美しい曲も多く残した。この組曲などその典型だろう。
この盤の音源。第1曲「間奏曲」
同 第2曲「バラード」
ピアノ独奏版による全曲
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