ブラームス(シェーンベルク編)ピアノ四重奏曲ト短調



昨夜の雨があがり、穏やかな土曜日。昼をはさんで野暮用外出。その足で隣り町のマンドリンアンサンブルの練習に参加。ひとしきり楽器遊びに興じて帰宅した。ひと息ついて夜も更けて…。先日来のブラームス押しで、今夜もこんな盤を取り出した。


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アルノルト・シェーンベルク(1874-1951)によるブラームス(1833-1897)ピアノ四重奏曲ト短調の管弦楽編曲版。若杉弘(1935-2009)指揮ケルン放送交響楽団による演奏。1978年のライヴ録音。数年前にALTUSレーベルからリリースされたもの。同じくブラームスの悲劇的序曲がカップリングされている。

若杉弘は70年代から90年代にかけてドイツに根を下ろして完全に現地のスタイルを身に付け、溶け込んで活躍した。音楽や言葉はもちろん、ドイツやヨーロッパの歴史、文化など様々なものに精通し現地の人をも驚かせたという。「指揮者とは音楽的教養だ」と言ったのは誰だったか。 彼こそは日本人にしてその資格を持ち合わせた指揮者だった。この盤には1980年前後、彼がケルンを本拠地としてコンサート指揮者として、また歌劇場のシェフとして活躍を本格化させた時期の録音が収められている。

まったく隙のない、整然とし、かつ深くドイツの伝統に根ざした演奏だ。まずケルン放送交響楽団の音が素晴らしい。弦楽群を中心にすべての音がよく溶け合い、どこかのパートが突出することはない。同時にそれらのブレンドされた音響が決して肥大化してぼってりとはならず、溶け合いながら同時に分離もよい。タクトポイントに対してやや遅れて入ってくるアインザッツがいかにもドイツ風で鳥肌が立ちそうになる。オケのメンバーが互いによく聴き合っているのだろうし、そもそもドイツの音楽、それもブラームスをどう演奏するかを身体で知っているに違いない。そしてもちろんそれらを統率して彼らの力を引き出している若杉弘のコントロールによるところも大きい。

この曲に限らずブラームスの交響曲や管弦楽曲は後期ロマン派ながら構成としては古典的かつ室内楽的に作られていると思うのだが、ついドイツ的重厚長大さを前面に出して、重く肥大化させてしまう演奏も多い。それはそれで一つの魅力ではあるのだが、この若杉弘とケルン放響きの演奏を聴くと、これが本来のブラームスだと納得する。シェーンベルクのアレンジは総じてよく出来ていて、違和感なく楽しめる。原曲のピアノ四重奏版ももちろん渋く素晴らしいが、こうして管弦楽版を聴くと、見落としがちなモチーフや経過句にもスポットライトが当たったようにクローズアップされてくる。スコアを見るとごくシンプルに書かれてはいるが音の響きが厚く、いかにもブラームスだ。また四分音符を刻むパートと一緒に、付点音形や三連符が同時進行するブラームスの特徴的な音形。渋い第1楽章、歌にあふれる第3楽章も印象的。全編これブラームスを聴く楽しみに満ちている。


台湾国立交響楽団による演奏。冒頭から鬱々としたブラームスらしい主題の提示が続き2分10秒過ぎから印象的な第2主題へつながる。その後も息も付かせない充実した音楽が続く。


2011年PROMS。トレヴァー・ピノックのあとを受け、イングリッシュ・コンソートのリーダーとなったアンドルー・マンゼの指揮するBBCスコティッシュ交響楽団による演奏。


若杉 弘×大賀典雄



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チャイコフスキー 管弦楽組曲第3番



不覚にも風邪をひいてしまった。
まず喉がやられ、さらに鼻、気管へ。きょうは一日鼻水ズルズル、咳もゴホゴホ。仕事にも集中できず。少し早めに退勤し、かかりつけの医者で薬を処方してもらってきた。まったくもって冴えない一日だった。
…というわけで、こんなどうでもいいような与太ブログなど更新せずに床に就くのが賢明なのは承知しているが、たまたまきょうの通勤途上で聴いた曲が気になったので、ちょっとだけヨ~と、この盤を取り出した。


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チャイコフスキーの管弦楽組曲第3番ト長調作品55。例のアンセルメボックスのロシア音楽編全33枚中の1枚。
Disc1,2
・チャイコフスキー:『くるみ割り人形』全曲 Op.71
・チャイコフスキー:管弦楽組曲第3番ト長調 Op.55
・チャイコフスキー:管弦楽組曲第4番ト長調 Op.61『モーツァルティアーナ』
という具合で、管弦楽組曲第3番はナッツクラッカーの続きと、組曲第4番と共にDisc2に収められている。何箇所かで顔を出すヴァイオリンソロは、ルジェーロ・リッチが弾いている。

チャイコフスキーの熱心なファンでも何でもないぼくにとって、管弦楽組曲はこのアンセルメ盤以外に手持ちはない(おそらく…)。つまり、ごく最近までこの曲をFM等で聴き流すことはあっても、まともに対峙して聴いたことはなかった。この曲の評価は様々あるようだが、こうしてあらためて聴いてみると、中々立派な曲。少なくてもチャイコフスキーの個性は十二分に出ていて、楽しめる佳曲だ。
第3番は4つの楽章からなる。第1曲は<エレジー>の副題が付くが、エレジーというほどの悲痛さはない。甘口のセンチメンタルなメロディーと10秒と聴かないうちにチャイコフスキーと分かる管弦楽手法で作られている。第2曲<憂うつなワルツ>は、これもいかにもなチャイコフスキーのワルツ。第1曲<エレジー>よりもメランコリック度数は強いだろうか。第3曲はテンポを上げてスケルツォとなり、第4曲は主題と12の変奏曲から成る。どこかロココヴァリエーションを思わせる雰囲気。前半は型通りに調や楽器を変えた変奏で進むが、中盤以降は少し凝った構成となって、様々な管弦楽技法が繰り広げられ、最後はこれもまたチャイコフスキーらしい華麗なポロネーズで大団円となる。

アンセルメ&スイスロマンドのこの録音はアンセルメ晩年の1968年のもの。他の60年代録音とかなり音の録り方が違っていて、この録音は各楽器の音像が大きめかつ手前に張り出し、少々独自な音響イメージを提示する。年代的には少し古い50年代終盤から60年代中盤までの、自然な広がりを感じる録音に比べると、やや不自然さを感じるのだが、クレジットされている録音技師の名前が異なることから、担当したエンジニアの趣向が反映された音作りになっているものと思う。演奏の細部に聴き耳を立てると、技術的に少々怪しいところや、アンサンブルのカジュアルな部分が気にならないわけではないが、明快な音で起伏に富んだ演奏で悪くない。


ロジェストヴェンスキー指揮アイスランド交響楽団による演奏。ロジェストヴェンスキーといえば70年代のチャイコフスキー交響曲の録音が印象的だった。ナクソスに多くの録音があるアイスランド響とともにいい演奏を聴かせてくれる。


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ドビュッシー小組曲



関東地方は相変わらずぐずついた天気が続く。野菜の値上がり、天候不順による経済損失2400億…そんな記事が出始めた。もっとも来月が猛暑になるやもしれず。万事程々に願いたいものだ。 さて、それはともかく…本日も業務に精励。帰宅後ひと息ついて、きょうも続くアンセルメ盤の検分。ぼちぼち本丸フランス近代へ。


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アンセルメとスイスロマンド管によるフランス音楽集の4枚目を取り出した。収録曲は以下の通り。

Disk4
・ドビュッシー:バレエ音楽『おもちゃ箱』(カプレ編)
・ドビュッシー:小組曲(ビュッセル編)
・ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
・ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ
・ラヴェル:道化師の朝の歌

このディスクの聴きものはラヴェルだろうが、その前に今夜はドビュッシー(1862-1918)の小組曲を選んでプレイボタンを押した。小組曲は、小舟にてEn Bateau/行列Cortège/メヌエットMenuet/バレエBalletの四つの曲からなり、演奏時間も15分とかからない文字通りの小組曲だ。元々はピアノ四手連弾用に書かれた、ドビュッシーがまだ二十代の頃の作品。その後、ドビュッシーの友人だったアンリ・ビュッセルが管弦楽用に編曲した。
この曲にはちょっと思い出がある。まだ二十歳になったばかりの学生時代。所属していたマンドリンアンサンブルでこの曲を演奏した。高校時代から同窓だった一年上の旧友Y氏が編曲した。当時70年代半ばは、全国津々浦々の大学・短大にマンドリンアンサンブルのサークルがあっていずれも大所帯の隆盛期だった。ぼくのいた大学でも少なくても60名以上いたと記憶している。20世紀初頭のイタリアマンドリンオリジナル曲を中心に、クラシックの編曲物や委嘱作品を含む邦人現代作品などを取り上げ、そしてポピュラー物は一切やらずと、いま振り返っても青臭いほどに志は高かった。この小組曲(そして六つの古代エピグラフも)もそんな取り組みの中から旧友Y氏のフランス好みもあって演奏曲目となった。

小組曲はドビュッシー作品の中でももっともポピュラリティーが強い曲の一つだろう。形式は簡素で、メロディーや和声も平易。のちの彼の作品からは想像できないほど甘口といってよい。それでも各所に印象派と称されるに相応しいたゆたうような雰囲気があって、安直なサロン音楽にはなっていない。アンセルメとOSRの演奏は、そのただよう雰囲気にはジャストミートの響きで、軽みのある弦楽群と魅力的な管楽群とが上質な音楽を奏でてくれる。いくつか聴いたドイツ物とは音の作り方がまるで違い、オケは決して大声を上げず、響きの純度を大切にしているのがよく分かる。小舟にてで聴かせる控えめな歌いっぷり、メヌエットやバレエでの思わずステップを踏みたくなる軽快なリズム処理など、このコンビの真骨頂だ。


この盤の音源。


オリジナルのピアノ四手連弾。ラン・ランとエッシェンバッハ。コンチェルトのあとのアンコールだろう。「小舟にて」と「バレエ」



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アルベニス<スペイン組曲>



きょうも暑い一日。先日来の流れで、今夜もスペイン物で暑気払い。こんな盤を取り出した。


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イサーク・アルベニス<スペイン組曲>の管弦楽編曲版。フリューベック・デ・ブルゴス指挿ニューフィルハーモニア管による60年代中庸の英デッカ録音。この盤は先年80歳で亡くなったブルゴス(1933-2014)が残した御国物の一つで、管弦楽編曲もブルゴス自身によるもの。手持ちの盤は10年ほど前に廉価盤で出た際に買い求めた。原曲ピアノ、そしていくつかはギターへの編曲でも知られた曲が色彩豊かな管弦楽で奏され、スペイン物ファンでなくても一聴して楽しめるだろう。収録曲は他に、ファリャ/恋は魔術師、グラナドス/ゴエスカス間奏曲。

まったくぼく個人の感覚だが、クラシックギターの世界でスペイン物と聞いて真っ先に思い起こすのは、近代以降のアルベニスやグラナドス、ファリヤ、モンポウ。彼らのオリジナル作品やいくつかの編曲物だ。もちろんビウエラ時代の作品までさかのぼる系譜はあるだろうが、<スペイン物>という呼称・愛称からは遠い。またその後20世紀以降では、スペイン文化の色濃い中南米のギター音楽もあるにはあるが、スペインという独自の風土からは遠く感じる。

クラシックギターを始めた高校時代、同僚がマラッツの<スペイン風セレナーデ>(原曲はピアノ曲)を盛ん弾いていた。ぼくは「どこがいいの?その曲」と、まったく関心を持たなかったし、アルベニスやグラナドスの編曲物もー向に弾きたいと思わずにいた。それがどうしたことか、この歳になってからスパニッシュLOVE。最近はコテコテのスペイン物が無性に弾きたい。
アルベニスやグラナドスというと決して大曲を残した作曲ではないし、近代音楽の系譜からすれば、本通りから少し入った路地に咲いた花、ちょっとローカルなサロン風音楽といった域を出ないかもしれない。しかし、親しみやすいメロディーとスペイン色満載のリズムや和声感などは独自の魅力にあふれる。かつてはそれほど魅力とも思わなかったそうした資質がこの歳になって妙にシミのだ。 だが、アルベニスやグラナドスのギター編曲物をいざ弾こうとするとこれが中々手ごわい。特に左手の難易度が高い。アルベニスの<スペイン組曲>からは何曲もギターにアレンジされているが、いずれもアマチュア上級以上向けだ。<グラナダ>をゆったり弾こうと思うが、ハイポジションの連続は、ちょっとした押え具合で高音弦の音程が不安定になる。華やかな<セヴーリヤ>は以前少しトライしたが、そのままだ。昔は何とも思わなかった<カディス>は現在もっとも弾いてみたい曲の一つだが、よく出回っているニ長調版はハイポジションの扱いで苦労するので、最近イ長調版で様子うかがい中。日頃から19世紀の古典ギター隆盛期の良さを唱えているが、やはり近代スペインの音楽もギター弾きには魅力的な世界だ。


ブルゴス&デンマーク放響の演奏。アルベニス<スペイン組曲>管弦楽版から<セヴィーリャ>


同曲のギター版


マラッツ<スペイン風セレナーデ>の弦楽オケ版


同曲のギター版



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アンセルメ&OSRの<三角帽子>



連日の猛暑。関東地方では梅雨はどこに行ってしまったのか状態だ。あさって辺りから曇りがちになるとの予報だが、どんな塩梅だろうか。 さて、プチ夏休みを終えて週明け月曜。ちょっとややこしい案件に手こずりながらも定時に終業。7時を少し回って帰宅した。ひと息ついて道楽部屋のエアコンをオン。程々に冷えたところで音盤タイム。きのうに続いて、こんな盤を取り出した。


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アンセルメ&スイスロマンド管弦楽団によるファリャのバレエ音楽<三角帽子>。メゾソプラノはテレサ・ベルガンサ。歌劇<はかなき人生>から間奏曲と舞曲がカップリングされている。このコンビはステレオ初期の50年代後半から60年代にかけて、英デッカの看板楽団の一つとして、主にスペイン・フランス・ロシア等の色彩的な管弦楽作品を多数録音した。英デッカの鮮明な録音とも相まって、そのいずれもがベストセラーとして長らく定番の評価を受けていた。手持ちの盤はきのうの<イベリア>同様、十年程前に大阪東梅田の中古レコード店で見つけた1962年リリースの国内初出盤。60~70年代を通じて名盤として評価が高かった盤だ。

久々に針を落として、あらためてその音の良さに驚いた。曲冒頭のティンパニーの連打、突き抜けるようなトランペット、空間に飛散するカスタネットの響き。半世紀前の音とは思えないほど鮮烈だ。アンセルメ&スイスロマンドの一連の録音が素晴らしいばかりに、同コンビの来日公演で実演に接した日本のファンは、録音との落差にがっかりしたという話もうなづける。確かに耳をそばだてると、少々アンサンブルの甘さがのぞくところもあるし、管の音程があやしいときもある。弦楽群もやや響きが薄い。しかし、華やかで色彩的な管楽器の音色、弦楽群のスッキリした歌いっぷりなど、総じてこうした曲に相応しい音響で文句はない。

実はこのコンビによるデッカ録音のボックスセットが少し前から気になっている。フランス音楽編ロシア音楽編、それとヨーロピアン・トラディションとしてベートーヴェンやブラームス、スペイン物を集めた、計3セットが出ている。全部で100枚を越えるセット。確か数年前にリリースされたと思うがまだ在庫有り。アンセルメのベートーヴェンやブラームスも実に面白いことから、手に入れるなら3セットを大人買いのつもりなのだが、さてどうしものかと思案中だ。


この盤の音源スコア付き


ムーティ&VPOによる<粉屋の踊り>


ギター版<粉屋の踊り> イケメンお兄さんミロシュ・カラダグリッチ。



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アンセルメ&OSRの<イベリア>



この三日間、連日気温上昇。きょうも梅雨空どこへやら、朝から暑い一日となった。少々早いプチ夏休みを終え、あすから仕事復帰の予定だが、あまりの暑さにこのままリタイアした気分。まあ、そうもいかないよなあと思いつつ、数日ぶりの音盤タイムは異国情緒で暑気払い。こんな盤を取り出した。


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エルネスト・アンセルメ(1883-1969)とスイスロマンド管弦楽団(OSR)によるスペイン物。アルベニスの<イベリア>とトゥリーナの<幻想舞曲集>を収めた盤。1960年録音。手持ちの盤は1964年に出た国内初出盤。この時代の盤らしいブルーバックの裏面ジャケットも懐かしい。記憶に間違いがなければ、例によって十年ちょっと前、出張の折に大阪東梅田の中古レコード店で手に入れたはずだ。収録曲は以下の通り。

アルベニス(アルボス編):イベリアより
  エヴォカシオン/セヴィリアの聖体祭/トリアーナ/港/坂の多い町
アルベニス(アルボス編):ナバーラ
トゥリーナ:<幻想舞曲集>作品22
  エグザルタシオン/夢/酒宴

<イベリア>は全3巻12曲からなるアルベニス晩年のピアノ曲。生涯の集大成として評価も高く、ドビュッシーをして「音楽がかくも多様性をもち、しかも色彩豊かで印象的であったことはかつてなかった」と言わしめた傑作。その色彩的な曲想をさらに生かすべく、アルベニスの親友だったフェルナンデス・アルボスによって5曲が管弦楽に編曲された。いずれもスペイン、とりわけ南部地方アンダルシアのもっとも民族色の色濃い情緒が盛り込まれている。ギター弾きにはお馴染みの<スペイン組曲>と比較すると、作曲年代の違いもあってだろうが、明らかに音楽が成熟している。<スペイン組曲>は明快で親しみやすいポピュラリティーが耳をとらえるが、<イベリア>の各曲は同じように民族的要素をベースにしながらも、ひとひねり加えられ、渋い味わいだ。
ホワキン・トゥリーナ(1882-1949)の<幻想舞曲集>は原曲のピアノ版をトゥリーナ自身が管弦楽にアレンジしたもの。トゥリーナはギター曲もいくつか残しているが、この幻想舞曲集でもそこここにギター的なフレーズが出てきて、いかにもスペイン的な情緒を盛り上げている。

アンセルメ&OSRの演奏は、このコンビの録音といえば説明不要のセオリーが思い出されるように、優秀な英デッカ録音によって色彩的な管弦楽の魅力が存分に楽しめる演奏。アンサンブルの乱れや管楽器群の音程など、重箱の隅をつつこうと思えばネタには事欠かない録音ではあるが、明るく響き渡る管弦楽、コントラバスやグランカッサの最低音など、半世紀前の録音であることが信じられない音響を前に、些細なクレームを唱える気にならなくなる。 スペイン物の明るく華やかな曲想や、ときに憂いをたたえた抒情は夏のこの時期に相応しい。アルベニス、ファリャなど、次々と聴きたくなる。


この盤の音源



本ブログではお馴染みの名手ホルヘ・カヴァレロのギターによるイベリア<エヴォカシオン>
メトロポリタン美術館での演奏。使用楽器は同館所蔵のハウザー1世。



オリジナルのピアノ演奏。
イベリアからエヴォカシオン/港/セビリヤの聖体祭の3曲が弾かれている。



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テンシュテット&BPO ワグナー管弦楽曲集



先日のカラヤン<指環>抜粋盤の記事中、ワルキューレのYOUTUBE音源を貼った部分で、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウのヴォータンと書いたが、正しくはトーマス・ステュアートのヴォータン。実はこの盤、<ラインの黄金>と<ワルキューレ>でヴォータンの配役が変わっていることを見落としていたのだ。さる同好の輩よりご指摘いただいた(多謝!)。 さてさて、今宵の音盤タイム。今夜も先日来の流れで歌物をと思ったが、ふと音盤棚の隅にこんな盤を見つけて取り出した。


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クラウス・テンシュテットとベルリンフィルによる<歌なし>ワグナーアルバム。1980~83年録音。手持ちの盤は十年程前に廉価盤で再発されたときのもの。収録曲は以下の通り。

<ディスク1>
1. 楽劇「ワルキューレ」~ワルキューレの騎行
2. 楽劇「神々の黄昏」~夜明けとジークフリートのラインへの旅
3. 楽劇「神々の黄昏」~ジークフリートの死と葬送行進曲
4. 楽劇「ラインの黄金」~ヴァルハラ城への神々の入城
5. 楽劇「ジークフリート」~森のささやき
6. 楽劇「ワルキューレ」~ヴォータンの告別と魔の炎の音楽
<ディスク2>
1. 歌劇「タンホイザー」序曲
2. 歌劇「リエンツィ」序曲
3. 歌劇「ローエングリン」~第1幕への前奏曲
4. 歌劇「ローエングリン」~第3幕への前奏曲
5. 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」~第1幕への前奏曲

ディスク1の<指環>抜粋編も魅力的だが、今夜はディスク2に序曲・前奏曲編をプレイヤーにセットし、プレイボタンを押した。 タンホイザー序曲が木管のアンサンブルで静かに始まる。ゆったりとしたテンポで木管群がテーマを吹き終えると弦の副旋律が絡んでくる。そして迎える最初のクライマックス。ここまで聴いただけでテンシュテットとベルリンフィルとのこの演奏の素晴らしさに納得する。遅めのテンポ設定、息の長いフレージング、深いアインザッツ、いずれもがワグナーの演奏に相応しい。後年、カラヤンの跡を継いた某指揮者によって骨抜きにされたと揶揄される以前のベルリンフィルの音が堪能できる。分厚い弦の響き、よく溶け合う管楽器群、ここしかないという絶妙のタイミングで入るティンパニーの一打。いずれもドイツの権化;ワグナーの演奏に相応しい。EMIの技術陣もデジタル録音の場数を踏んだためか、アナログ期からデジタル期への移行時期に録られた同じテンシュテットのマーラー全集に比べると混濁感が少なく、ずっとよい録音だ。続く「リエンツィ」序曲。もちろんこの曲自体は昔から知ってはいたが、テンシュテットの演奏によって初めてこの曲の魅力が分かったといってよい。この演奏も前半の抑えた表情とゆったりとしてテンポ、そして後半のエネルギッシュな前進との対比が素晴らしい。金管群が吹くフレーズごとに内在するエネルギーがどんどん膨れ上がり、それが最後に爆発的にほとばしる。トライアングルが入って突進する大団円も決して軽くならず重量感を保ったままだ。

腕利きの指揮者とオーケストラの多くがワグナーの管弦楽集を録音する。フルトヴェングラー以来、幾多の名盤があって、手元にも十指を下らない盤がある。しかし、どれか1枚と言われたら、今なら迷わずこのテンシュテット盤を推すだろう。


1988年のロンドンフィルとの来日公演時の一連のワグナー・プログラムから<リエンツィ序曲>。ベルリンフィルとのCDに劣らず素晴らしい演奏。開始から1分20秒過ぎ、低弦群が断続的な音形を繰り返しながら進み、1分40秒過ぎで主題が確立する。もうここで参ってしまう。そこからおよそ1分間弦楽群が主題を奏でる。コンマスがネックを上げて感じ入ったように心を込めて弾いている。3分20秒あたりから金管群の寄せては返す繰り返しで盛り上がり、3分45秒でトゥッティで主題が確立。4分2秒、ティンパニの一打も絶妙のタイミングだ。4分20秒あたりからの弦の装飾音風の音句を強めに響かせ、金管群の奏でる主題と有機的に調和していく。…と、こんな風に聴いていくと音楽的感興に満ちあふれた12分間があっという間に過ぎる。テンシュテットはこのときすでに咽頭癌に侵されていた。前年には休養と取っているほどの状態だったという。額の汗そして終演直後の表情からは演奏を終えた喜びより、本当に辛そうな表情が見て取れる。まさに身を削っての演奏だったのだろう。



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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