ゴットシャルク:ピアノと管弦楽のためのグラン・タランテラ



きょうも蒸し暑い一日。昼過ぎから霞ヶ関某庁にて小一時間の面談。アクセスの地下鉄は一段と暑く、汗だくだ。打ち合わせは予定通り終了。 帰宅後ひと息ついてクールダウン。きのうのタランテラ続きで、こんな盤を取り出してみた。


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19世紀アメリカの作曲家:ルイス・モロー・ゴットシャルク(1829-1869年)他の管弦楽作品を集めた一枚。アブラヴァネル指揮ユタ交響楽団の演奏。米ヴァンガード盤。録音データが記されていないが、このコンビの録音が集中した60年代中庸と思われる。収録曲は以下の通り。

 ゴットシャルク/交響曲<熱帯の夜>
 ゴットシャルク/<ピアノと管弦楽のためのグラン・タランテラ>
 モートン・グールド/<ラテン・アメリカ・シンフォニエッタ>

ゴットシャルクは幼少期からピアノの神童と言われ欧州にも名を馳せたようだが、作曲したいくつかの曲は、楽譜の多くが失われたこともあって、あまり演奏されることはない様子。そもそもこの時代ロマン派のアメリカの作曲家といってもまったく思いつかない。ゴットシャルクの名前こそ知ってはいたが、その音楽に触れたのはこの盤が初めてだ。

交響曲<熱帯の夜>は6/8拍子アンダンテと2/4拍子アレグロモデラートの二つの楽章からなる。キューバや南米での生活も長かったようで、19世紀中庸の様式にラテンアメリカの民族的要素が加わった、ロマンティックで分かりやすい作風だ。第1楽章アンダンテは冒頭から美しいメロディーが続き、それを受けてトランペットのソロが印象的に歌い…と中々聴かせるのだが、そのあとはやや持て余して展開の妙を欠く。第2楽章はラテン風のリズムにのってシンフォニックな展開を示し、中々楽しい。一方、併録されている<ピアノと管弦楽のためのグラン・タランテラ>は、ピアノのヴィルティオーゾだったゴットシャルクらしい闊達な曲。短いながらも目まぐるしく変わる曲想が面白い。熱帯物といういかラテン物というか、この手の曲は暑いときの処方箋としてまことに相応しい。


この盤の音源で<ピアノと管弦楽のためのグラン・タランテラ>


ゴットシャルク/交響曲<熱帯の夜>第1楽章


ゴットシャルク/交響曲<熱帯の夜>第2楽章



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イッポリトフ=イワノフ 組曲<コーカサスの風景>



終日小雨が降ったりやんだりの一日。週半ばの水曜日。連休明けから仕事のペースを上げ、本日も業務に精励。8時少し前に帰宅した。ひと息ついて、部屋の片付けをしながら、音盤チョイ聴き。こんな盤を取り出した。


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組曲<コーカサスの風景>。その名の通り、コーカサス地方の民謡や土地の光景をモチーフにロシア近代の作曲家イッポリトフ=イワノフ(1859-1935)が1895年に管弦楽作品として発表した。曲は以下の4つからなる。

 第1曲;峡谷にて 第2曲;村にて 第3曲;モスクにて 第4曲;酋長の行列

オーケストラの編成は各種打楽器や木管群も持ち替えでピッコロやコールアングレなどが入る大規模なもので、イワノフとしては色彩的な表現を狙ったのだろう。第1曲ではホルンや弦楽群によって峡谷や川の流れが雄大に表現される。第2曲のやや低い音域のコールアングレとヴィオラによって奏され、中間部ではオリエンタルな雰囲気のリズムを伴った哀愁に満ちたメロディーが印象的だ。弦楽器を一切使わず、木管楽器群と打楽器で奏される第3曲は平和な祈りの調べか。終曲「酋長の行列」はこの組曲で最も有名で、単独で演奏されることも多い。第1曲から第3曲までの比べメロディーが明確かつ印象的で、ピッコロで奏される主題は一度聴いたら忘れないだろう。古くから伝わる有名なオスマントルコ軍の行進曲のモチーフも顔を覗かせる。

ナクソス盤最大のヒットアルバム、カリンニコフの交響曲でも演奏していたウクライナ交響楽団をアーサー・フェイガン(1949-)というアメリカ生まれの指揮者が振っている。アーサー・フェイガンは名伯楽スワロフスキーの教えを受けたということだが、スワロフスキー(1899-1975)にとっては最後に弟子という年代だろうか。1995年の録音で、豊かなホールトーンと共に遠近感もよく出ていて音質上々。どの曲も落ち着いた運びで、妙に色彩的にならないところがむしろいい。特に「酋長の行列」では、終始ゆったりとした遅めのテンポでスケール大きな曲の運びが素晴らしい。 この盤には同名の第2組曲のほか、イワノフの他の管弦楽作品も併録されている。第2組曲の終曲「グルジア行進曲」は「酋長の行列」に劣らず壮大なマーチ。作品62の「トルコの断章」もエキゾチックで印象的なメロディに満ち、オリエンタルムードが漂う佳曲だ。

これら一連の曲やボロディン作品などでイメージする広大で悠久な中央アジアも昨今どうもきな臭い。極東の小市民が憧れと異国情緒をもってイメージする光景は遠くなりにけりなのか。


吉田正記念オーケストラによる「酋長の行列」


故・佐藤弘和氏ほか平倉信行・竹内永和・毛塚功一ら中堅名手によるギター四重奏による「酋長の行列」。


「酋長の行列」のオリジン?有名なオスマントルコの行進曲:ジェッディン・デデン(Ceddin Deden)



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冨田勲の<惑星>



何気なくネットを見ていて思い出した。きのう5月5日は冨田勲の命日だった。ちょうど一年前2016年5月5日に84歳で亡くなった。そうか、もう一年か…と思い起こしつつ、彼の代表作の一つであるこの盤を取り出した。
…おっと、その前に業務連絡(^^。 只今動画サイトGYAO!で例のアレを無料配信中とのこと。5月19日までの限定。アレって、アレ…孤独のグルメ。今回はSeason2全12話。以前見逃した方はこの機にどうぞ。


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さてグスターヴ・ホルスト作曲・冨田勲編の<惑星>。
この作品が発表されベストセラーになった1977年当時ぼくはまだ学生で新譜レコードを買うこともままならず、この演奏もFM放送で聴くに留まっていた。手持ちの盤はそれから20年以上経ってから、例によってリサイクル店の百円ジャンク箱から救済してきた。ベストセラーになった盤らしく、この盤とはジャンク箱で度々遭遇。よりきれいな盤に当ればいいなあと買い求め、結局3枚同じ盤が手元にある。説明不要の演奏だが、実際久々に聴いてみても中々新鮮だ。

第1曲「火星」に入る前のイントロは、宇宙船コックピット内の会話を模した擬音から始まり、ジェットエンジンが轟音と共に点火する様子が展開する。この出だしからして70年代SFのイメージ満載でわくわくしてくる。「惑星」というともっぱら第4曲「木星」ばかりが取り上げられるが、「火星」や「金星」も劣らず素晴らしい。この曲は冨田勲が一人スタジオにこもってモーグ・シンセサイザーを操り、ダビングを重ねて作ったわけだが、シンセサイザーならではの大胆なダイナミズムや音像の定位など、オーディオ的観点からも見ても今だ素晴らしい音質を聴かせてくれる。最新のリマスタリングされたCDも聴いてみたくなる。


組曲<惑星>~イントロ・火星~


これも冨田勲の代表作<新日本紀行>のテーマ。
なお1969年まで使われた旧テーマ曲はこちら



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シャルパンティエ 組曲<イタリアの印象>



日頃音楽を聴く時間は帰宅後の夜ということになる。いきおい聴く音楽も夜志向だ。たまの休日にはお天道様の下で明るい曲を聴かないといけないなあと思い、こんな盤を引っ張り出した。あっ、ブラ1はちょっとおやすみ(^^;


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フランスの指揮者ピエール・デルヴォー(写真 1917-1992)がパリのオケを振って入れたシャルパンティエとマスネの管弦楽曲。
実のところクラシックを聴き始めて40年余。手持ちの盤も三千から四千枚ほどになるがフランス音楽にはほとんど馴染みがない。開国以来の日本クラシック音楽の系譜に従っているのかどうか自分では分からないが、やはり独墺系ばかり聴いてきた。この盤も十年程前の出張時に大阪梅田の中古レコード店でみつけ、たまにはフランス物も聴かんとアカンなあと思ってピックアップしたものだ。

ギュスターヴ・シャルパンティエ(1860-1956)の組曲<イタリアの印象>はもともと交響詩<ナポリ>という曲を書き、サン・サーンスに絶賛され、それに気をよくしてこの交響詩<ナポリ>を終曲に据えた組曲を書いたとのこと。今では彼の代表作の一つだ。構成は以下の通り。

 第1曲 セレナード/第2曲 泉のほとりで/第3曲 ロバに乗って
 第4曲 山の頂きにて/第5曲 ナポリ

第1曲「セレナーデ」冒頭、チェロパートが68小節に渡り延々と美しい旋律を歌う。これは中々印象的で、窓辺で恋人に恋心を切々と歌う男の歌そのものだ。第3曲「ロバにのって」でも曲半ばで印象的なチェロの旋律が光る。イタリアの風景という題名からするともっとにぎやかで陽気な曲想をイメージするが、総じて穏やかで抑制が効いていて美しい。
ジュール・マスネ(1842-1912)の組曲<絵のような風景>も同様に、描写的であるもののすべてが中庸で、題名の通り静かに絵に描かれたような風景を遠めで見ている感がある。どの曲も美しい旋律にあふれ、終曲「ジプシーの祭」では華やかに歌い踊るが、土俗的な印象はなく洗練されている。先日のアルベルト・ポンセ同様、フランスの音楽、フランスの演奏家の資質は、ラテン民族の感性がベースにありながら、明らかにイタリヤやスペインとは異なることを実感する。


この盤の音源があったので貼っておく。シャルパンティエの組曲の第1曲、第2曲。
チェロパートのみによる68小節の長い旋律で始まる。


続きはこちら。第3曲、第4曲 ⇒ https://youtu.be/VTjRokK6QdM
さらにこちら。元曲ともいうべき交響詩<ナポリ>にあたる第5曲 ⇒ https://youtu.be/2g2oXC5MiNE

マスネ組曲<絵のような風景>から単独で演奏されることも多い「ジプシーの祭り」 現代電子オルガンの威力やいかに。



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トーマス・ビーチャムのディーリアス



天気下り坂との予報だったが、一日雨も降ることなくもちこたえた。
夕方、仕事を少し早く切り上げて退勤。ちょっとした野暮用を済ませて9時少し前に帰宅した。ひと息ついてPCを眺めていたら、きょうは英国の指揮者トーマス・ビーチャムの誕生日と出ていた。…ならば、と取り出しのはこの盤だ。


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サー・トーマス・ビーチャムは現在まで続く製薬会社の子息として1879年のきょう生まれ、1961年3月に81歳で没した。当時の裕福な家庭の常として教養としての音楽教育を受けたが、それが高じてオペラ劇団やオーケストラを私費で設立するにいたった。特に手兵ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団を指揮した多くの録音は彼の名を広めた。中でもイギリス近代の作曲家ディーリアスの管弦楽曲を集めたレコードは今もスタンダードな名演されている。手持ちの盤はセラフィムレーベルのLP輸入盤。ロイヤルフィルハーモニーを指揮した晩年のステレオ録音だ。確か70年代半ば、大学3年のとき手に入れた。ディーリアスの曲が一部のクラシックファンの間で、その穏やかな曲想から話題となり始めた頃だったと思う。

この2枚のLPには「春初めてのカッコウの声を聴いて」、「ブリッグの定期市」、「楽園への道」といったディーリアスの代表的な管弦楽曲が収められている。いずれの曲も、曲名からイメージできるような描写的な曲想が繰り広げされる。近代フランス印象派を連想するような部分や、フランス以外の近代ラテン系作品(スペインのファリャ、アルベニス、イタリアのレスピーギ等)、またイギリスの伝統的で穏やかかつ保守的な音使い、そういった要素が織り成す、ともかく気持ちのいい、それでいて表層的だけでない音楽だ。「ブルックの定期市」では冒頭、ハンガリー田園幻想曲を思わせるペンタトニックのフルートの旋律が出てきて、少々驚く。その後穏やかな曲想の変奏曲が続き、とりわけ管楽器のソロが彩りを添える。<春初めてのカッコウの声を聴いて>は、まさに春のまどろみの中で、ふと聴こえてきたカッコウの声に心躍るひとときと、少々気だるい春の空気感をよく表現している。


この盤の音源。<春初めてのカッコウの声を聞いて>


民謡をベースにした変奏曲<ブリッグの定期市>。穏やか曲想だが編成は大きく、コールアングレやバスクラリネット等も加わった三管編成。秋山和慶指揮する洗足学園のオケ。管楽器のソロもみな立派!


ビーチャムへのインタビューと練習風景。 (こちらは最晩年シカゴ響との演奏



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カラヤン&VPO1987年ニューイヤー・コンサート



きょうも穏やかで過ごしやすい一日だった。連休を前に世間も平穏。みな仕事に精出しているのかな…
音楽の季節要因というのは人それぞれにあると思うが、ぼくの場合この時期になると聴きたくなる音楽の一つにウィンナワルツがある。多くの日本人には新春のニューイヤーコンサートがすり込まれているだろうが、春本番を迎え、学校も仕事も新年度が始まるこの時期にも、明るくおおらかなウィンナワルツは中々相応しいと思う。と、そんなことを考えつつ、今夜はこの盤を取り出した。


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ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908-1989)が生涯にたった一度だけその指揮台に立った1987年ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートのライヴ盤。1987年・昭和62年…ニューイヤーコンサートの元旦中継もすっかりお馴染みになりつつあった頃、世間はバブル経済のお祭り騒ぎに突入する前夜、あれからもう三十年。歳もとるはずだ。

さてこのレコード。ウィーンフィルが奏で、ムジークフェラインに響く音はまことに立派で非の打ちどころがない。テンポ設定や歌いまわしも極めて自然。どこをとっても不自然さはない。反面これはという面白さやハッとする解釈はほとんどなく、この演奏でなければ…というものがあるかと問われると答えに詰まる。ぼくはカラヤンに対してはシンパでもアンチでもないのだが、世間的あるいは業界内での圧倒的な人気を博しながら、もうひとつ玄人筋にウケがよくないのはそのあたりのカラヤンの資質ゆえだろう。まあ、ニューイヤーコンサートというお祭りだ。解釈を四の五のいうこともない。飛び切りの美音でシュトラウスの豊かな歌にひたれればそれで十分だろう。

この年のニューイヤーはカラヤンが振るということに加え、ソプラノのキャスリーン・バトル(1948-)の登場も話題になった。この盤では彼女が歌う<春の声>が最後のトラックに収録されている。当時のバトル人気はすごかった。黒人ソプラノ歌手ということでは先駆者はもちろんいるが、彼女は取り分けヴィジュアルも物腰もチャーミングで日本でも大そうな人気を得た。
このニューイヤーを振ったカラヤンは2年後の1989年7月に逝去。日本のバブル景気はピークを向かえる。何万円もするクラシックコンサートのチケットが売れ、にわか景気に浮き立った人々がブランド物のスーツを着込んでサントリーホール集う光景。しかしそれも2年後には幕となる。二十数余年も前のことかと思いながらこの盤を久々に聴くと、この先二十年後はと考えてしまう。


ポルカ<観光列車><ピチカート・ポルカ>と続く。


バトルが歌う<春の声>



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マルケヴィッチのロシア物



週末金曜日の昨晩、ブログ記事を書きながら<夜食テロ>を迎撃しているうちに記事をアップするのを忘れてしまった。少々間抜けだが、あらためてアップしよう。先日来の流れで今夜もしつこくロシア音楽。


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音盤のジャンルとして管弦楽小品集というものがある。腕利きの指揮者やオーケストラが、その実力のほどを示すために管弦楽曲を何曲か収録することが多い。ポピュラー小品を集めたもの、オペラの序曲や間奏曲を集めたもの、国単位でまとめたドイツ管弦楽曲集、フランス近代管弦楽集といった感じだ。当然ロシア管弦楽集というものもある。お国物ということでロシアの指揮者、オーケストラの盤が多いのは当然だが、それと並んでフランス系の指揮者、オーケストラの盤が多い。近代ロシアの管弦楽曲が色彩的な管弦楽手法を駆使していることから、フランスの系譜に通じるのだろう。かつてのアンセルメ&スイスロマンド管弦楽団、英デッカがアンセルメの後継者として売り出したデュトワ&モントリオール響、そして今夜取り上げるイーゴル・マルケヴィッチがラムルー管弦楽団を振った盤が思いつく。マルケヴィッチ(1912-1983)はウクライナのキエフ貴族家系の出だ。幼いときにパリへ出たので、この盤のように仏系オケとの協演も多いが、身体にはロシアの血が流れている。

一目見たら忘れないようなジャケットデザインがある。指揮者マルケヴィッチを正面からとらえたこのジャケット写真も相当インパクトがあると思うが、どうだろう。眼光鋭いようで、実は不敵な笑みを浮かべているようにも見える。一言で言えば、イケてるを通り過ぎてイッてしまっている。50年代終盤の録音。収録曲は以下の通り。

1.歌劇≪ルスランとリュドミラ≫序曲
2.交響詩≪中央アジアの草原にて≫
3.交響的絵画≪ヨハネ黙示録から≫
4.序曲≪ロシアの復活祭≫作品36
5.歌劇≪五月の夜≫序曲
6.組曲≪金鶏≫(4つの音楽的絵画) 序奏とドドン王の眠り
7.組曲≪金鶏≫(4つの音楽的絵画) 戦場のドドン王
8.組曲≪金鶏≫(4つの音楽的絵画) シュマハ女王の踊り-ドドン王の踊り
9.組曲≪金鶏≫(4つの音楽的絵画) 婚礼の行列-ドドン王の死-終曲

ロシア管弦楽集でのお約束通のように、グリンカ作曲「ルスランとルドミュラ」序曲で開始。ムラヴィンスキー&レニングラードフィル盤には及ばないが、切れ味鋭い展開。しかもこの盤は予定調和的には終わらない。途中、一般にはメゾピアノ程度で叩かれるティンパニのフレーズがフォルテで強打されギョッと驚く。次に同じパターンが出てくるときに、二度目は驚かないぜと身構えていると、今度はふっと抜いてピアノで叩く。そのときジャケット写真のマルケヴィッチを見ると、不気味な笑みに見えてドキッとするのだ。3曲目のリャードフ作曲;交響的絵画「ヨハネ黙示録から」は多彩な表現を秘めたいい曲だとあらためて感心した。6分弱の小品だが、曲の後半は弦楽器群、管楽器群が交互に短いフレーズでクレッシェンド・ディクレッシェンドを繰り返しながら進行し、一聴してマーラー交響曲の一節かと思うほどだ。他の収録曲、リムスキー・コルサコフの序曲「ロシアの復活祭」や歌劇「五月の夜」序曲、組曲「金鶏」もオーケストラの機能と多彩な音色を駆使して聴き応え十分。マルケヴィッチは色彩的なこれらの曲を明晰に描き出す。もう少し演奏される機会があってもいいように思う。

この盤のマイナスポイントを挙げるとすれば録音状態だろうか。マルケヴィッチの意図なのか録音セッションの条件(複数のホールで収録されている)なのか不明だが、低音が薄く中高音が張り出した音響バランスで驚く。中高音が勝っているため各楽器間の分離はよく、確かにマルケヴィッチの分析的な曲の組立と意図が一致しないでもない。録音エンジニアのクレジットがないで不明だが、フランス人の音響バランスはこんなものなのだろうか。60年代前後の低音の充実したドイツグラモフォン録音とは思えない音作りだ。このCDは2006年に「マルケヴィッチの芸術」と称して発売されたシリーズ中の1枚。マルケヴィッチは音盤セールス上マイナーな存在かもしれないが、指揮者としての実力、楽曲の分析力など極めて高く評価されていて、このロシア管弦楽名曲集でもその実力のほどが垣間見られる。


ボロディン<中央アジアの平原にて> 下のグリンカもそうだが、手持ちの盤とは音響バランスがかなり違う。マスタリングの異なる音源なのかな…


グリンカ<ルスランとリュドミラ序曲>


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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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