イングリッド・ヘブラーのフランス組曲



ここひと月ほど、ピアノの盤ばかりを記事に取り上げている。音盤棚の在庫確認の流れで同じ場所から芋づる式に引っ張り出しているからだろうか。きょうもその続きだが、未聴盤ではなく、一時期大いに気に入って繰り返し聴いていたこの盤を取り出した。


202308_Haebler_JSB_French_Suites.jpg

Ingrid_Haebler_1966.jpg


今年5月に93歳で亡くなったイングリッド・ヘブラー(1929-2023)が弾くバッハのフランス組曲。1979年ヘブラー50歳のときの録音。手持ちの盤は20年近く前にタワーレコードのヴィンテージ・コレクションという企画物として廉価で発売されたときのもの。CD2枚に全6曲が収められている。

モーツァルトやシューベルトなどで高い評価を受け、多くの録音に残しているヘブラーだが、その他のバロック期からウィーン古典派に至る作品も得意とし、C.P.Eバッハ、ハイドン、ベートーヴェンなどにも優れた録音を残した。バッハのフランス組曲を取り上げたこの盤も、世のバッハ弾きと称されるピアニストの録音に伍して、素晴らしい演奏を聴かせてくれる。

モーツァルトやシューベルトでみせる穏やかで中庸な表現をこのバッハでも聴くことができる。バッハというと対位法を駆使したフーガに代表される厳格なイメージが強いが、フランス組曲はバッハの他の舞曲系組曲(パルティータ、イギリス組曲)に比しても、より旋律的で全編美しいメロディーに溢れている。その旋律を歌わせようとすると、ときとして過剰な抑揚が付き、ロマンティックに寄り過ぎる演奏になりがちだが、ヘブラーはその辺りの塩梅が絶妙だ。
テンポ、アーティキュレーション、ディナーミクといった音楽表現の要素のいずれも、何かが突出するところがない。どこまでも安心して音楽に身を任せ、穏やかで暖かな雰囲気に包まれて音楽に浸ることができる。インパクト、驚き、新境地…そういった言葉とは無縁の演奏だが、今となっては貴重なアプローチだ。


■ 最後までお読み頂きありがとうございます ■
■↓↓↓ランキングに参加しています↓↓↓■
■↓↓ バナークリックにご協力ください ↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村



手持ちの音盤からアップしてみた。フランス組曲第2番からアルマンド。


同フランス組曲第4番からアルマンド。


YouTubeによって自動生成されるたイングリッド・ヘブラーのチャンネルには多くの録音がアップされている。以下はフランス組曲全6曲のプレイリスト



■ 最後までお読み頂きありがとうございます ■
■↓↓↓ランキングに参加しています↓↓↓■
■↓↓ バナークリックにご協力ください ↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村

ミハイル・ヴォスクレセンスキー(p)ショパン:ポロネーズ集


日本航空123便墜落事故から38年。事故の当日1985年8月12日、ぼくは北アルプス・白馬岳に登っていた。大雪渓経由で山頂に着き、白馬山荘で荷を解いた。夕食をとってひと休みしたあと、混雑したその日の小屋の片隅で寝袋に入ってラジオを聞いていた。山でラジオを聞く目的は翌日の天気を知るためだ。そのラジオが事故の第一報を告げていたのを記憶している。

さて、真夏の台風接近。少々日射が減って最高気温も控えめにはなるが、相変わらず30度超えで暑いことには変わりない。終日エアコンの助けを借りて蟄居し、音盤の在庫確認。きょうはこの盤と目が合ったので取り出した。


202308_Voskresensky.jpg

202308_Voskresensky2.jpg


ミハイル・ヴォスクレセンスキー(1935-)の弾くショパン:ポロネーズ全曲を収めた2枚組LP。1983年にリリースされたメロディアレーベル(発売元:ビクター音楽産業)の国内初出盤。1973年モスクワ録音。(ジャケットとライナーノーツにはBoskresensky=ボスクレセンスキーと記されている)

この盤を手に入れて初めてヴォスクレセンスキーの名を知った。もっとも手に入れたのは二十年近く前。ネットで箱買いしたLP盤数百枚の中に混じっていた。ぼくがピアノ音楽に疎いだけの話だが、ヴォスクレセンスキーは1935年にウクライナに生まれ、モスクワ音楽院でオボーリンに学んだそうだ。50年代からいくつかの国際コンクールで入賞している。その後も正統的なロシアンピアニズムの保守本流を歩み、モスクワ音楽院の重鎮としての地位を確固たるものにしていた由。何度か来日もし、演奏会やマスタークラスを開いている。最近では2020年のショパンコンクール第2位になった反田恭平氏の師として名前が上がった。

そんなヴォスクレセンスキーの40歳を前にしたキャリア創成期の記録。ショパンのポロネーズ全曲を2枚組アルバムでリリースするという姿勢からして、並々ならぬ志しと自信あってことだったろう。しかし、そうした自信を曲にのせて強く表出させるようなところはない。どの曲も実に丁寧で落ち着いた弾きぶりだ。テンポは全体にややゆっくりめ、それでいて重さを感じさせない。難易度の高そうな高速フレーズなどでは、よりテクニカルな演奏もあるだろうが、そうした場面でも物足りなさをまったく感じない。ありきたりの言葉を並べると、深く・優しく・豊かで自然で…そんな単語が浮かんでくる。少しネットで調べた限りでは、その後CD化もされなかったようで、今となっては貴重な記録だ。


■ 最後までお読み頂きありがとうございます ■
■↓↓↓ランキングに参加しています↓↓↓■
■↓↓ バナークリックにご協力ください ↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村



この盤の音源。ポロネーズ全曲。各曲のタイムスタンプは概要欄を参照。


教え子:反田恭平氏について語るヴォスクレセンスキー


2021年86歳のときモスクワでの演奏。シューベルトの即興曲、ショパンのポロネーズ他



■ 最後までお読み頂きありがとうございます ■
■↓↓↓ランキングに参加しています↓↓↓■
■↓↓ バナークリックにご協力ください ↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村


イーゴリ・ジューコフ(p)プロコフィエフ作品集



台風接近で不安定な天気が続く。気温は幾分低く35度には達しないが、湿度が滅法高く、閉口する。さて、気を取り直して音盤在庫確認。マイナーピアニスト路線…というわけではないが、きょうはこの盤を取り出した。


202308_Igor_Zhukov.jpg


セルゲイ・プロコフィエフ(1891-1953)のピアノソナタ第9番と「子供のための音楽」(ピアノための12のやさしい小品)が入ったLP盤。イーゴリ・ジューコフ(1936-)というピアニストが弾いている。かつて名前を聞いたことがある程度のピアニストだが、70年代に活躍。スクリャービンの全集を録音したことで知られているようだ。 もとよりプロコフィエフの熱心なファンでもなく、彼の作品の中核を占めるピアノ曲もほとんど聴いていないに等しい。この盤も例によって、ネットで箱買いした数百枚のレコードの中にあったもの。今となっては懐かしい「新世界レーベル」。日本国内の発売元はビクター音楽産業。70年代初頭の録音。

ピアノソナタの第9番は4楽章形式の大きなソナタだ。が、その曲想は規模の大きさとは裏腹に牧歌的で美しく、安息に満ちていて、明るい曲想ながら夜のとばりに聴くに相応しい。12曲の小品からなる「子供のための音楽」は平易な旋律と標題を通して語られる、子供たちへの深い愛情に満ちた珠玉の小品集だ。12曲には以下のような副題が付けられている。

 1.朝、2.散歩、3.おとぎ話、4.タランテラ、5.後悔、6.ワルツ
 7.きりぎりすの行進、8.雨と虹、9.鬼ごっこ、10.行進曲
 11.夕べ、12.月は草原の上にのぼる

子供の教育用に作られたため、手の拡張が必要なオクターブ音型がなく、ツェルニー30番程度の技量で演奏できると、ネットに記されている。副題をイメージしながらそれぞれの曲を聴くと、きっと小さな子供たちも情景を思い浮かべながら曲を楽しめるだろう。もちろん大人が聴いても楽しく、そして心やすらぐ。いくつかの曲はギターにアレンジしても楽しめそうだ。


■ 最後までお読み頂きありがとうございます ■
■↓↓↓ランキングに参加しています↓↓↓■
■↓↓ バナークリックにご協力ください ↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村



ピアノソナタ第9番第1楽章 この盤の録音から20年余。同じイーゴリ・ジューコフによる1996年のライヴ音源とのこと。


この盤の音源「子供のための音楽」全12曲。


「子供のための音楽」楽譜付き音源



■ 最後までお読み頂きありがとうございます ■
■↓↓↓ランキングに参加しています↓↓↓■
■↓↓ バナークリックにご協力ください ↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村


ホアキン・アチューカロ(p)ファリャ名曲集



久しぶりに道楽部屋の片付け。このところの暑さもあって諸々散らかり放題だったが、ようやく少しすっきりした。さて、気分をととのえ何日かぶりに未聴盤在庫の確認。きょうはこんな盤を取り出した。


IMG_4372.jpg


今年91歳になるスペインのピアニスト:ホアキン・アチューカロによるマヌエル・デ・ファリャ(1876-1946)の作品集。手持ちの盤は1976年国内初出盤。収録曲は以下の通り。ファリャ作品としてポピュラーな「四つのスペイン風小品」や「アンダルシア幻想曲」に加え、彼が10代だった頃の初期作品が収められているのが珍しい。

side_A
奇想曲風ワルツ
夜想曲
四つのスペイン風小品
side_B
アンダルシア幻想曲
デュカスの墓にささげる賛歌
セレナータ・アンダルーサ

ホアキン・アチューカロ(1932-)はアリシア・デ・ラローチャ(1923-2009)より少し年下ということになるが、ほぼ同じ世代といってよいだろうか。しかし70~80年代、ラローチャほど国際的でメジャーな存在とまではならず、誰もがその名を知るスペインのピアニストとなったのは、近年になってからではないだろうか。指揮者同様、高齢になっても現役として活躍する状況にいたり、にわかに多くの音楽愛好家の目に触れる存在になったように感じる。この盤はそんなアチューカロが40歳を迎えた頃の記録だ。録音データが記されていないが、おそらく70年代前半の録音と思われる。

先に記した通り、ファリャ作品としてポピュラーな曲に加え、ファリャが10代だった頃の作品が数曲収められていて興味をひく。ファリャは少年期にショパンに心酔していたそうだ。「奇想曲風ワルツ」や「夜想曲」にはショパン作品が影を落としていると、アチューカロ自身が語ったエピソードがライナーノーツに記されいる。

スペイン音楽に親しんでいる輩には今更の話だが、特にファリャの音楽は、スペインと聞いて一般的にイメージする「陽気」「情熱的」といったステレオタイプの印象とはかなり異なる。生まれ故郷である南スペイン(アンダルーサ)の民族的要素を備えながらも、そこに留まらず、20世紀に入ってすでに進展していた欧州音楽の新しい試みや要素を備え、またよく言われるスペインの光と影が色濃く表現されているように感じる。 近年も度々来日し、そのパンフレットには「伝説の」という接頭語が付いているアチューカロ。この盤はその壮年期の記録ながら、そんなスペイン情緒を十分に感じさせてくれる盤だ。


この盤の音源。ファリャ14歳のときの作品「奇想曲風ワルツ」


同 「夜想曲」


同 「セレナータ・アンダルーサ」


2016年来日時の様子。ファリャ:交響的印象「スペインの庭の夜」 ロペス・コボス&読売日響と。



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村

フェリシア・ブルメンタール(p)18世紀ポルトガル鍵盤音楽



月が改まって令和五年葉月八月。猛暑続く。めげずに未聴音盤の在庫確認。きょうはこの盤を取り出した。


202308_Blumental_2.jpg


少し前にベートーヴェン秘曲集を取り上げたフェリシア・ブルメンタール(1908-1991)による18世紀ポルトガルの鍵盤曲集。1976年3月ロンドン・チェルシーでの録音。手持ちの盤はオーディオ機器メーカー:トリオ(現JVCケンウッド)が当時立ち上げたレコード部門トリオレコードから出た国内盤。ジャケットデザインにはブルメンタールと交流のあった藤田嗣治が書いた彼女のデッサンが使われている(写真)。


202308_Blumental.jpg


18世紀ポルトガル音楽と言われても、一般のクラシック愛好家にはあまり馴染はないだろう。スペインと共にかつては世界に名を馳せたイベリア民族の国ではあるが、その伝統も近現代も音楽に関しては知られていない。ぼくももちろん予備知識はゼロの等しい。しかし音が出てみれば、その魅力的な響きにしばし時を忘れた。

この盤の収録曲でも過半を占めているのが、ぼくも唯一名前は知っていたカルロス・セイシャス(1704-1742)の作品。そしてそのセイシャスに当時の鍵盤音楽の流儀を伝えたのが、ナポリ生まれでその頃リスボンに音楽教師として招かれていたドメニコ・スカルラッティ(1685-1757)だった。D・スカルラッティは1719年から1729年までリスボンに滞在し、その後スペインへ移った。夭折したセイシャスはD・スカルラッティの弟子の中でも逸材だったようだ。 この盤に収められているカルロス・セイシャスの数曲のソナタはスカルラッティ由来のバロック風2部形式で、聴きなれたスカルラッティの作品に通じることはすぐに分かる。もっともスカルラッティが数百曲に及ぶソナタを書いたのはスペインに移ってからのことで、セイシャスとスカルラッティの関係が子弟だけでなく、相互に影響した可能性もあると、濱田滋朗氏がライナーノーツで記している。そしてセイシャスの作品ばかりでなく、収録されている他の作曲家の作品も短調作品が多く、一様に深い抒情をたたえていて美しい。

先回のベートーヴェン秘曲集同様、ブルメンタールのマイナー路線の一つであるかも知れないが、すでに50年代にスペインとポルトガルのハープシコード曲集と題した3枚組のLPを出していてることも考えると単なる思い付きではなく、彼女が常日頃から愛想してきた曲を最良の形で世の残したかったのだろう。


この盤の音源。カルロス・セイシャスのソナタ・ホ短調


同 ソーザ・カルヴァーリョのソナタ・ト短調


ブルメンタールが50年代に録音したスペイン・ポルトガルの鍵盤曲集


60代後半のブルメンタール。スカルラッティ、ベートーヴェン、ショパン等。日本風に言えば「明治生まれ」のブルメンタールはホロヴィッツやアラウ、リリー・クラウスなどと近い世代だ。この時代の演奏家にはやはり独自の風格がある。


カルロス・セイシャスの曲はスカルラッティ同様、ギターでも弾かれる。



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村

ペーター・トペルツェル(p)



先日来、ラファエル・オロスコ、フェリシア・ブルメンタール…と、今となってはほとんど話題に上がることのないピアニストの盤を聴いてきた。意図的に選んだわけではなく、音盤棚を眺めていて、これまで見過ごしてきた未聴在庫点検の結果だ。20年近く前、ネットの掲示板で知り合った方から数百枚のLP盤を廉価で譲ってもらった。何でも70~80年代を中心に膨大なデッドストックがあって、そこからランダムに箱詰めしたものというふれこみだった。大きな期待もなく手に入れたが、今となっては忘れられた演奏家も多く、半世紀近い年月を経て初めて触れる演奏は中々新鮮だ。さて、きょうもその流れを受けて未聴在庫の確認。こんな盤を取り出した。


202307_Toperczer.jpg


スロバキア出身のピアニスト:ペーター・トペルツェル(1944-2010)によるショパンのソナタ第2番変ロ短調「葬送行進曲つき」とシューマンの「ウィーンの謝肉祭」を収めた盤。1975年プラハ録音。手持ちの盤は1978年にビクター音楽産業から出た国内初出盤。

70年代当時、チェコスロバキアのピアニストといえばヤン・パネンカが知られていたが、それ以上の情報は一般にはなかった。トペルツェルは1944年生まれで、プラハ音楽アカデミーで学んだのち、1972年にブラティスラヴァのコンクールで優勝。その後、国外での演奏も始まった。この盤が出た頃にはすでに自国作品に加え、バルトーク、プロコフィエフ、リストなどの録音がリリースされていたようだ。

先ほどからB面に入っているシューマンのウィーンの謝肉祭を聴いている。一聴して、至極真っ当で素直な印象の弾きぶりだ。この曲を使って何かを強烈に印象付けようとか、訴えようといった気配はない。第1楽章は闊達なロンド主題といくつかの副主題(エピソード)が交錯するが、その切り替えもスムースで違和感がない。第2楽章ロマンツァでの感情表出も控えめで好感がもてる。ぼくはピアノの技術面にはまったく不案内だが、終曲の第5楽章などでは快速に飛ばしながらも、技巧のキレを聴かせるようなところはなく丁寧な弾きぶりだ。

ジャケット写真には当時30歳になったばかりのトペルツェルが大きく写っている。クラシックのアルバムで、これほど大写しのポートレート・ジャケットは珍しいのではないだろうか。その表情には何かつくったようなところがなく、穏やかな誠実さを感じる。録音当時はまだ冷戦時代。東欧という、いわば「向こう側」にいた有望なピアニストだったのだろうが、その後の冷戦終了や国際化の荒波の中でどのように過ごしたのか…。2010年に66歳で亡くなった。


この盤の音源。シューマン「ウィーンの謝肉祭」第1楽章アレグロ


同 第2楽章ロマンツァ


同 第5楽章フィナーレ



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村

ラファエル・オロスコ(p)のショパン



先回の記事でランキング・バナーのクリックお願いしまっせ!を書いたところ、いつになく多くの応援をいただいた。有難き善意のバナークリック… 願わくば記事の更新がないときもこの状態が継続しますように…クリックされた方にのみ幸いあれ (^^
さて、猛暑続きながら未だ梅雨明けとはならない関東地方。きょうもエアコン頼りに怠惰なリスニング。音盤棚を見回していたら、こんな盤を見つけて取り出した。


202307_Orozco.jpg


スペインのピアニスト:ラファエル・オロスコ(1946-1996)の弾くショパンのスケルツォ集。収録曲はスケルツォ全4曲とノクターン ホ長調OP.62-2、子守歌 変ニ長調OP.57。1975年5月ロッテルダムでのセッション録音。手持ちの盤は1979年の国内初出盤LPで、以前ネットで箱買いした数百枚の中に混じっていた。

スペインのピアニストいうとぼくら世代で真っ先に思いつくのはアリシア・デ・ラローチャの一択ではないだろうか。ラファエル・オロスコは60年代にスペイン国内のいくつかコンクールで優勝したのち、1966年第2回リーズ国際ピアノコンクールで優勝したことで、国際的なキャリアが始まったようだ。ぼくはこの盤で初めて知った。

ミントコンディションの盤にSPU-Gの針を降ろす。スケルツォ第1番ロ短調の激しいモチーフが劇的に飛び出してきた。淀みなく繰り出される技巧的なスケールが緊張感をもって続く。しかし力任せではなく、細部もあいまいなところがない。ポーランドのクリスマスキャロルが使われた中間部ではガラッと雰囲気を変える。そのギアチェンジの塩梅が素晴らしい。国際的に活躍し始めた当時、ウィーンでは「豊かな響きのレガート、歌い上げるようなタッチ、まろやかな和音」と評され、ロマンティック・ピアニストと自認もしていたそうだ。

70年代以降、カラヤン、ジュリーニ、マゼール他多くのマエストロとの共演を重ねたオロスコだったが1996年50歳の秋にエイズで亡くなった。存命であれば今頃、堂々とした風格あるロマンティック・ピアニストになっていただろう。


この盤の音源。スケルツォ全4曲が続く。



お国物のアルベニス「イベリア」から「エル・アルバイシン」を弾くオロスコ。



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

カレンダー
08 | 2023/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
最新コメント
カテゴリ
検索フォーム
月別アーカイブ
QRコード
QR
閲覧御礼(2010.10.01より)