F・ベルワルド ヴァイオリン協奏曲ハ短調



先回の記事に書いたクラウスの盤他、一時期せっせと買い漁ったナクソス・レーベル。ぼくの音盤棚にもそのシンプルなパッケージが程々の占有率で並んでいる。もっとも音盤自体の購入が減り、またナクソス盤に頼りべきマイナー作品にもあまり興味が無くなり…と、昨今は新たな追加はない。きょうもそんな私的音盤小史を思いながら音盤棚を眺めつつ、ふと目にとまったこの盤を取り出した。


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「スウェーデンのロマンティック・ヴァイオリン協奏曲集」と題されたナクソス盤の一枚。先回のクラウス同様、スウェーデン室内管弦楽団の演奏。ニコラス・ヴィレンという指揮者が振り、ヴァイオリンソロはトビアス・リングボリ(最近は指揮者としても活躍している様子)という奏者。1997年録音。収録曲は以下の通り。

フランツ・ベルワルド/ヴァイオリン協奏曲嬰ハ短調
ヴィルヘルム・ステンハンマル/2つの感傷的ロマンス
トゥール・アウリン/ヴァイオリン協奏曲第3番ハ短調

ナクソス盤らしい選曲の一枚。先ほどからフランツ・ベルワルド(1796-1968)のヴァイオリン協奏曲を聴いている。ジャケット帯にはこんな風に書いてある…18~19世紀の変わり目の頃の作品だけあって、ベートーヴェンやパガニーニの協奏曲を髣髴とさせる初期ロマン派の香りが楽しめる…。全楽章その言葉通りの展開で、金太郎飴の如くどこを切り取っても「美しい」と素直に感じさせるフレーズに満ちている。第1楽章は嬰ハ短調ながらそれほど悲劇的でなく、どこか穏やかさを感じさせる。短い序奏に続いて主・副の主題が提示され、程なくソロが入ってくる。この辺りの導入部の雰囲気がベートーヴェンのV協を思わせるということだろう。 しかし、さすがにその後の展開は定番名曲に比してやや弱く、先に記した美しいフレーズの陳列に終止する感がある。せっかくいいモチーフを使いながら、それを構成力で展開させ、聴く者を引き込むほどの魅力にはやや乏しいといったところだろうか。 第2楽章は長調に転じて2分半程の短いアダージョが奏でられる。第3楽章は印象的なフレーズで始まるロンド。といっても快速調に技巧を披露する気配はなく、ここでも曲想は穏やかに進む。 こうして聴いてみると、ロマン派の協奏曲でイメージしがちな、オケとソロのエキサイティングなバトルという要素は少なく、先に記したジェケットのうたい文句通り、初期ロマン派の穏やかな香りを味わうべき佳曲だ。


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この盤の音源。ベルワルドのヴァイオリン協奏曲 第1楽章


同 第3楽章


ステンハンマル/2つの感傷的ロマンス イ長調の第1曲とヘ短調の第2曲。



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ゲザ・アンダ(p)ブラームス ピアノ協奏曲第2番変ホ長調



かつての記憶では、お盆を過ぎると朝晩は幾分しのぎやすくなるものだったが、今はそんな気配はどこへやら。相変わらず熱帯顔負けの日が続く中、きょうはちょいと暑気払い。涼しげな曲もいいが、ときにはガツンとショック療法。分厚い響きのこの盤を取り出した。


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ブラームスのピアノ協奏曲第2番変ロ長調。ゲザ・アンダ(1921-1976)のピアノとフェレンツ・フリッチャイ(1914-1963)の指揮するベルリンフィルによる盤。1960年5月録音。手持ちの盤は90年代終わりにフリッチャイ・エディションと称して出たシリーズ中の一枚。マルグリット・ヴェーバーが弾くラフマニノフのパガニーニ狂詩曲とのカップリング。

2曲あるブラームスのピアノ協奏曲。若い時期に書かれながら味わいとしては中々渋い第1番と比べると、第2番は渋さと甘さの塩梅よく人気が高い。もちろん後世のぼくらがブラームス的と感じる要素がすべて揃っている。とりわけこの曲は4つの楽章を持ち、ほとんどピアノ付き交響曲といえる構成と充実度だ。

ゲザ・アンダは録音当時40歳を目前にする頃で、もっとも充実していながら更に上昇するエネルギーを持っていた時期だろうか。フリッチャイ&ベルリンフィルによる雄渾で重厚な運びに合せて力強く堂々とした弾きぶり。アンダはのちの60年代後半にカラヤンとこの曲を再録している。手元にその盤がないので分からないが、ゴツゴツとした肌合いの重厚なブラームス像としたら、おそらくこのフリッチャイ盤の方が上をいくだろう。チェロの美しいテーマで始まる第3楽章のアンダンテも、終始厳しい表情を崩さない。終楽章も弾き飛ばすことなく丁寧に弾き進める。名曲にして名演也。


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この盤の音源。量感と力感を併せ持ちながらも、透明感のある音色のゲザ・アンダ。フリッチャイ&BPOの素晴らしい響き。これぞブラームス!


チェリビダッケ&ミュンヘンフィルとバレンボイムによる演奏@1991年ミュンヘンガスタイク。
チェリのオーケストラコントロールが素晴らしく、すべての音が意味深く響く。



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スピヴァコフ(vn)のチャイコフスキー



気付けば七月もきょうで終わりかつてのように納期仕事に四苦八苦することはなく、呑気な月末。 少し前から始めた音盤棚の未聴在庫確認。きょうはこの盤を取り出した。


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ロシア(旧ソ連)出身のウラディミール・スピヴァコフ(1944-)によるチャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調。小澤征爾指揮フィルハーモニア管弦楽団がバックを務める。1981年ロンドン・アビーロードスタジオでの録音。同じチャイコフスキーの「イタリア奇想曲」も収められている。この盤も例によって20年程前、頻繁に大阪出張のあった時期に梅田の中古レコード店で買い求めた。

スピヴァコフは60年代からコンサート活動をしていたようだが、1970年のチャイコフスキー国際コンクールでギドン・クレメルに次いで第2位(藤川真弓と同位)になったことで、本格的なキャリアをスタートさせた。70年代の終わりにはすでに指揮者としてもデビューしていて、その後はヴァイオリニストと指揮者の二刀流、あるいはむしろ指揮者としての活動の方が目立ったかもしれない。詳しいことは知らないが、一貫してロシアに腰を据えて活動しているようだ。

この盤はスピヴァコフの名が世間に浸透し、名うてのテクニシャンとして活躍していた時期の録音。第1楽章終盤の技巧的な場面や第3楽章全般の闊達な表現など、快速調ながら技巧の余裕があるのだろうか、さらりと弾き切る。適度な熱っぽさはあるが、汗臭さや悪戦苦闘ぶりは感じられない。ロシア伝統の濃い口の弾きぶりとも無縁で、いずこの旋律もすっきりと美しい歌いっぷりだ。
小澤征爾もこの時期すでにボストン響のシェフとして名実共に世界的な活躍の最中。フィルハーモニア管への客演では同団のしなやかで整った響きを得て、スピヴァコフの個性を好サポートしている。


この盤の音源。第1楽章。落ち着いたテンポで開始されるが、全体にすっきりとした弾きぶり。徐々に温度感を上げ、コーダは快速で駆け抜ける。



同 第3楽章



ブラームスのハンガリー舞曲を弾くスピヴァコフ。おそらくこの録音と同時期のものと思われる。


スピヴァコフの今



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フェリシア・ブルメンタール(p)ベートーヴェン秘曲集



少し前に節操なくおねだりしたランキングバナークリックへの協力依頼。お陰様で順調にカウント数を伸ばし、一桁台の下の方から少しずつ上位に上がってきた。しかし、やはりカンフル剤のごとく、数日経つと再び下降傾向に転じてしまう。どうか引き続きご協力の程を。 なお、<クラシック音楽鑑賞>のバナーをクリックするとランキングが表示されるサイトに飛ぶので、そこまでまた本ブログ<六弦音曲覗機関>をクリックすると本サイトに戻る仕組みになっている。行って戻って…これでワンルーチン。どうか引き続きご支援の程をお願いいたします。

さて…
2010年秋に始めた本ブログ。これといった趣向もなくダラダラと手持ちの盤を記事にしている。その数、いかほどになったか確認する程のものでもないが、音盤棚を見渡すと手つかずの盤、記事にしていない盤が相当数ある。健康寿命も幾ばくか残っているうちに、意識して未聴盤の在庫確認をすべきかなあと、最近ようやく思い始めた。あくまで自分のための備忘。ご紹介、おすすめ、といった視点はゼロだが、思いついたときに少しづつ記事に残そうと思う。そんな視点できょうはこの盤を取り出した。


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ワルシャワ生まれのピアニスト:フェリシア・ブルメンタール(1908-1991)がほとんど弾かれることのないベートーヴェンの作品を取り上げた盤。「秘曲集」というのはぼくが勝手に付けたタイトル。あまりメジャーではない二つのオーケストラ(イルジー・ワンドハンス指揮ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団、アルベルト・ツェダ指揮プラハ新室内管弦楽団)が伴奏を付けている。1972年に日本コロンビアからのリリース。この盤も以前ネットで箱買いした数百枚の中に混じっていた。収録曲は以下の通り。

1. ピアノ協奏曲 変ホ長調 WoO.4
2. ピアノ協奏曲 ニ長調 (未完)HESS15
3. ロマンツァ・カンタービレ
4. ロンド 変ホ長調 WoO.6

この盤がリリースされたのは70年代初頭。ライナーノーツにある当時の研究成果やブルメンタールがこれらの作品を取り上げた背景、使用楽譜等についての記載は、現在の視点で見ると書き改めるべき内容が多々あるかもしれない。実際、 WoO.4、WoO.6、HESS15といった記述は本盤にはない。ぼくがネットで少し調べて追記した。しかし、ぼくもそれ以上に仔細を確認する能力もないし、単に作品を聴くという視点からはあまり重要でもないだろうと思い、それ以上の追跡調査はしていない。

世に秘曲、珍曲の類いは様々あるし、それらを追いかける愛好家もいる。道楽はマニアックに楽しんでこそのものだろうが、万事に中途半端なぼくなどは、そこまで徹する気概なく、ときたまこうした盤を見つけても、まあそんなものかで終わってしまう。そんなわけでこの盤も長いこと針を降ろすことなくきたが、きょうようやく陽の目を見ることになった。

ピアノ協奏曲変ホ長調は第0番と称されることもあるベートーヴェン14歳のときの作品。もちろん後年のようなベートーヴェンらしい個性は希薄だが、全3楽章で30分近い堂々たる規模をもっていて、まだ年端のいかぬ少年が書いたとは俄かには信じられない。ピアノ協奏曲ニ長調は第5番「皇帝」が書かれたあとに着手したものの未完に終わった作品。この盤では1890年にブライトコップ&ヘンテルによって出版された版を使い「第1楽章」として演奏されている。円熟期の作品とあって、随所にベートーヴェンらしさを感じさせる。

ソロを取っているブルメンタールはワルシャワで学んだあと南米に移り住み成功した。ヴィラ・ロボスは彼の第5ピアノ協奏曲を彼女にささげたそうだ。ワルシャワ音楽院伝来のテクニシャンながら、他のピアニストが手がけないピアノ作品を発掘して録音に残した。この盤もそうした彼女の業績の一つだ。


この盤の音源。ピアノ協奏曲 ニ長調 HESS15


同 ピアノと管弦楽のためのロンド 変ロ長調 WoO.6


ベートーヴェン14歳のときの作品。ピアノ協奏曲変ホ長調



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ハイドン ホルン協奏曲・フルート協奏曲



休日の朝をさわやかに迎えたいとき、聴くべき音楽はモーツァルトのホルン協奏曲…と何かの本で読んだ。梅雨も明けて暑い一日になりそうな日曜日。セオリー通りに同曲をと思って音盤棚を見回したところ、同じホルンながら、しばらく聴いていなかったこの盤をみつけて取り出した。


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70年代に人気の高かったコレギウム・アウレウム合奏団によるハイドンの協奏曲集。ホルン協奏曲ニ長調とフルート協奏曲ニ長調の2曲が収められている。ホルンはエーリッヒ・ペンチェルという奏者、フルート(トラヴェルスフレーテ)はお馴染みのハンス・マルティン・リンデが吹いている。手持ちの盤は70年代終わり頃、ミドルプライスで出ていたときのもの。1966年録音。

100曲以上の交響曲を始め、弦楽四重奏、ピアノ曲など多作で知られるハイドンだが、実はホルン協奏曲は4曲、フルート協奏曲にいたってはわずか2曲、しかもハイドンによる自筆譜が残っているのはそのうちの一部だそうだ。この盤のホルン協奏曲(現在は第1番と称されるもの)は真作、フルート協奏曲は同時代のレオポルド・ホフマンの作とのこと。しかし、学究目的でもハイドン命でもないので、ここはうるさいことは言わず、この時代、ウィーン古典派の整った響きを楽しもう。

いずれの曲も古典の様式感をもった3楽章からなり、ソナタとしての形式もしっかり踏んでいる。どちらの曲も独奏楽器の扱いは比較的穏やか、すわなちあまりに技巧的なパッセージや合奏から独立した扱いはない。ホルン協奏曲では第1ヴァイオリンとのユニゾンも多い。もともとコルノ・ダ・カッチャのために書かれているようなので、使える音にも限りがあったのだろう。フルート協奏曲もモーツァルトのような華麗な独奏パートはない。献呈した貴族の子息の練習には最適なレベルだったのかもしれない。それでも時折短調に転調にして陰りもみせる。コレギウム・アウレウムの弦楽合奏も明るく伸びやかに、よく歌う。録音もアナログ全盛期の名録音で素晴らしい。

(上記の記述はいずれも本盤のライナーノーツによっているが、この盤のリリースから半世紀近く経過し、その後のハイドン研究によると、いくつかの相違があるようだが、ここでは当時の情報をそのまま記しておく。)


この盤の音源。ホルン協奏曲ニ長調



同 フルート協奏曲



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潮田益子のチャイコフスキー



きょう5月28日はヴァイオリニスト潮田益子の命日。ふと思い出して、この盤を取り出した。


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前橋汀子(1943-)と同世代で、小野アンナ~レニングラード音楽院~シゲティといったキャリアも共通する潮田益子(1942-2013)が弾くチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ニ長調。彼女がチャイコフスキーコンクールで第二位となった1966年の2年後、1968年に録音された。手持ちの盤は10年程前にコロンビア(DENON)からミドルプライスで発売されたコロンビア・ヴィンテージ・シリーズの1枚。バルトークの2番協奏曲とのカップリング。

1966年のチャイコフスキーコンクールではヴァイオリン部門で潮田益子が第二位、そして佐藤陽子が第三位、またチェロ部門は安田謙一郎が第三位に入った。当時は今ほどにはこうしたコンクールでの活躍が一般に報じられなかったのかもしれない。1966年といえばそろそろ学園紛争が社会問題なっていた時期だ。この盤が録音された1968年は東大入試が中止された年。1969年はアポロ月面着陸があり、三沢高校の太田幸司が夏の甲子園決勝で松山商の井上明投手と投げ合って18回で引き分け、翌日の再試合で敗れた。まあ、そんな時代だ。

潮田益子の音色は録音のせいかやや硬質な響きだ。しかしその音色が音楽を引き締め、格調高いものにしている。音楽の運びはまだ20代前半の若者らしいきびきびとしたもので、もってまわった歌いまわしやコブシもなく好感が持てる。技巧の切れは十分で不安なところはないし、第3楽章も快速に飛ばしている。森正指揮の日本フィルハーモニーもしっかりしたサポートだ。分裂して新日本フィルと日本フィルとに別れる前のいい時期だったのかもしれないが、日本のオーケストラ水準が格段に上がった現在からみても高水準といえる。録音も半世紀前とは思えないもので十分クリアに録られている。結果この演奏は、当時の日本を象徴するかのように真面目で厳しく、妙な甘さを配した格調高い演奏となった。現代ではこうした演奏はもてはやされないだろう。指揮者もオケももっとイケイケで派手に伴奏を付け、ソリストは甘く切々と、あるいは色気たっぷりの歌いまわしで媚びのかもしれない。

潮田益子はその後国内外に活動を広げ、近年はサイトウ・キネン・オーケストラや水戸室内管弦楽団などで活躍していたが、10年前2013年5月28日に亡くなった。71歳だった。


手持ちの盤からアップした。第1楽章



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ハインツ・ホリガー「イタリア・オーボエ協奏曲集」



きょうで四月も終わり。ほんの少し前に年が明けたと思っていたら、もう今年の三分の一が終わった。もう何が何だか分からない…嗚呼。さて週末日曜日。部屋の片付けをしながら、この盤をプレイヤーにセットした。


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ハインツ・ホリガー(1939-)のオーボエとイ・ムジチ合奏団によるイタリア・オーボエ協奏曲集。1986年録音。手持ちの盤は当時リリースと同時に買い求めたもの。収録曲は以下の通り。

マルチェルロ:オーボエ協奏曲ニ短調
サンマルティーニ:オーボエ協奏曲第1番ヘ長調
アルビノーニ:オーボエ協奏曲ト短調作品9-8
ロッティ:オーボエ・ダモーレ協奏曲イ長調
チマローザ:オーボエ協奏曲ハ長調

チマローザ以外はイタリアンバロック隆盛期の面々。とくにマルチェルロは映画「ベニスに死す」で使われたこともあって、70年代から80年代にかけて実によく耳にしたものだ。他の曲もいかにもイタリアらしいのびやかな旋律美にあふれている。中でも短調作品のマルチェルロとアルビノーニの憂いに満ちたメロディーは印象的で、バッハが憧れをもって自ら編曲したイタリア作品の典型ともいえる。

久しぶりに針を落としたのだが、当時すでに手馴れてきたデジタル録音と、アナログ盤最終期の高い技術レベルもあって、音質、SNともまったく文句のない録音状態。バックのイ・ムジチの音色が思いのほか渋く落ち着いていることも今回あらためて確認した。手馴れた曲ゆえに、もっとあっけらかんと明るい音を聴かせるのかと思っていたが、さすがはイ・ムジチ。中々懐が深い。

思えば、オーボエが一般愛好家の目にとまり、オリジナル作品のみならず様々な編曲物のアルバムまで発売されたのは、このハインツ・ホリガーにして最初ではないだろうか。当時フルートならランパル、ゴールウェイなど広く知られる存在だったし、トランペットならモーリス・アンドレがいた。そうした面々と片を並べてホリガーの人気は高かった。おかげでアルビノーニやマルチェルロのオーボエ協奏曲が市民権を得たともいえる。 予想外に渋めの音を奏でるイムジチをバックに、ハインツ・ホリガーのオーボエも過度な抑揚を排した吹きぶりで好感がもてる。オーボエそのものの魅力的な音色と、イタリアンバロックの旋律美に身を任せられるよいアルバムだ。


この盤の音源。マルチェルロ オーボエ協奏曲ニ短調 第1楽章


同 アルビノーニ オーボエ協奏曲ト短調作品9-8 第1楽章



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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