ノリントン&LCPの第九



ちょっとわけあって、きょうは当地市中のど真ん中にある天然温泉に行って暖まってきた。JR駅前わずか300メートル程だろうか。かつて地元では唯一高級オーディオも扱っていた有力電気店が廃業し、その店舗跡を掘ったら温泉が出てきたというもの。湯量・泉質とも上々の街中のいで湯だ。さて、暖まった身体が冷えないうちに布団に入ってゆっくり寝れば日頃の疲れも…というところだが、そこはどっこい道楽与太郎。先日来の流れの続き。こんな盤を取り出した。


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ロジャー・ノリントンとロンドン・クラシカル・プレイヤー(LCP)によるベートーヴェンの交響曲第9番ニ短調。ベートーヴェンの交響曲全9曲とメルヴィン・タンがソロを弾くピアノ協奏曲全5曲が一緒になった激安ボックス中の一枚。感覚的には最近の演奏と思っていたが、すでに30年以上前、80年代終盤の録音。これだから年寄りの感覚は当てにならない。「最近」が20年前…って

このコンビの名前から想像する通りの展開だ。しかし一方で、エキセントリックなピリオド演奏、きっとつまらないだろうという、根拠のない個人的予想は見事に外される。活気と生気に満ち、推進力にあふれるこの演奏が、重厚長大の典型である第九にこれほど相性がいいとは思ってもいなかった。

ノリントンの解釈もこの盤の頃と現在では当然変化しているのだろうが、このLCPとのベートーヴェン、取り分け第九はいい演奏だ。第九の魅力をまったく損なわないばかりか、第九の持つ力感や推進力を再認識させてくれる演奏だ。対向配置の弦楽群は、その運動性能の良さと速めのテンポ、短めに切り上げるフレージングとも相まって、曲全体をグイグイを進める推進力となっている。木管群はよく全体の響きに溶け込み、金管群は突き抜けるように響き渡る。そして要所要所で強烈なアクセントを打ち込むティンパニーの雄弁さも他に類をみない。特に第1、2楽章は素晴らしい。聴いていて、あれ?と思うようなところがない。ほとんどのフレージングやアーティキュレーションは違和感なく、あるべき姿の第九として響いてくる。一方後半二つの楽章、取り分け終楽章はやや精細を欠く。やろうとしていることが曲想にマッチしているのかどうかよく分からないのだ。ただの風変わりに聴こえてしまうところがある。もっともこの曲に関しては、大方の好事家の間では終楽章そのものに対して評価が低いのだが(ぼくも同様だ)。…といいながらも、全曲62分を一気に聴いてしまったのも事実。やはり新たな時代を切り開いた偉大な指揮者に違いはない。


この盤の音源で第1楽章。2楽章以降も順次再生される。


ノリントンとN響のライヴ(おそらく2012年)



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ブロムシュテットの第九@1985年ライヴ



先日聴いた第九。聴き始めるまでは、まあ年末気分を盛り上げようか…程度の気持ちだったが、聴き始めてみれば、そこはやはり名曲。一気に全楽章を聴いてしまった。そして今夜も勢い止まらず。この盤を取り出した。


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今年95歳、ヘルベルト・ブロムシュテット(1927-)とシュターツカペレ・ドレスデンによるベートーヴェンの第九交響曲ニ短調。1985年ドレスデン・ゼンパー・オーパーでのライヴ。手持ちの盤は90年代初頭に手に入れた米デルタミュージックによるもの。

このジャケットに見覚えのある輩も多いのではないだろう。思い起こせば80年代後半CD導入期の頃、四千円近いその価格から、音盤道楽もレコード時代にようにはいかなくなると思っていた。そんな状況下で一時期活況を呈したのが「駅売りCD」だった。文字通り駅構内のコンコースに店を広げ、クラシックからポップス、ジャズまで千円前後の値付けで販売されていた。値段にひかれ何枚か買ったものの、LP盤からの板起こしや、版権の怪しいコピーまがいなどが多く、まともに聴けるものは少なかった。そんな中にあって、この盤は例外的に好録音かつ演奏自体も素晴らしかった。あとになって、この演奏が復興されたゼンパー・オーパー(ドレスデン国立歌劇場)の柿落としの一環として演奏されたライヴ盤であると知った。ワグナーやR・シュトラウスなど多くの作品の初演でも知られる名門ゼンパー・オーパーは1945年に連合国軍のドレスデン大空襲で破壊され、70年代後半に復興が始まり1985年に復興完成となった。

同歌劇場付きのドレスデン国立歌劇場管弦楽団(SKD)。ブロムシュテットは同団とベートーヴェン交響曲全集をセッション録音で完成させ、SKDの音色を味わえる名盤とされているが、加えてこの第九はライブ特有に熱気と緊張感にあふれた素晴らしい演奏だ。第1楽章冒頭からやや速めのテンポ設定で進みながら静寂と熱気のあいだを行き来する。燻し銀と称されたSKD弦楽群の味わい深くも引き締まった響き。その間隙をぬうように名手ゾンダーマンと思われるティンパニーの強打、ホルンやトランペットの強奏が演奏全体を引き締める。第2楽章も軽々しさとは無縁で腰の据わった低重心のスケルツォ。第3楽章はドレスデンの弦楽群の響きがこの上なく美しく、そして木管群とよく調和する。手持ちの第九の中でも最も美しい演奏の一つだ。録音状態はややデッドで左右の広がりも控えめ。そのためか響きがより凝縮され、ライヴとしての熱気を伝えるには過不足ない。このコンビのセッション録音ではうかがい知れない姿が再現される。


この演奏の音源。第1楽章6分35秒過ぎから展開部佳境に入り、7分5秒を過ぎたあたりからヴァイオリン群と低弦群の拍節が交錯するくだり、終盤12分30秒過ぎから低弦群のピチカートにのって次第に緊張を高め13分10秒のクライマックスへ。


2015年ブロムシュテット88歳。ライプツィッヒゲヴァント管弦楽団とのライヴ。独唱陣に藤村実穂子。



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フリッチャイ&BPO ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調



仕事に追われながらも、師走感ゼロのきょうこの頃。気分だけでも少しは年末を感じようと、今夜はこの盤を取り出した。


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フェレンツ・フリッチャイ指揮ベルリンフィルハーモニーによるベートーヴェンの第9交響曲ニ短調。1957~58年録音。手持ちの盤は20年前近く前に輸入盤のワゴンセールで手に入れた。70年代LP廉価盤時代から繰り返しリリースされているお馴染みの録音だ。フリッチャイ(1914-1963)とベルリンフィルとのベートーヴェンは3番・5番・7番・9番がステレオ録音されている。もしかしたら全曲録音を前提にセッションが進んでいたのかもしれない。残念なことにフリッチャイが病魔に冒され、それはかなわなかったが、ベートーヴェンの代表作が良好な音質で残っただけでよしとしよう。ちょうどこの頃はベルリンフィルのシェフにカラヤンが決まって間もない時期。以降カラヤンとベルリンフィルによる膨大な録音セッションが始まることになる。

フリッチャイとベルリンフィルの一連のベートーヴェン録音からは、ベルリンフィルがまだカラヤンに飼いならされる前の、戦前からのフルトヴェングラー時代を通してつちかわれたドイツ的なベルリンフィルの音が聴ける。この録音から数年後の60年代初頭、カラヤンとベルリンフィルによる最初のベートーヴェン全集が録音されるのだが、それと聴き比べると実に興味深い。録音年月はカラヤン盤が数年あとだが、録音場所は共にベルリン・イエスキリスト教会、プロデューサーもオットー・ゲルデスで同じだ。録音技師(トーンマイスター)だけがフリッチャイ盤ではヴェルナー・ヴォルフ、カラヤン盤はギュンター・ヘルマンスと異なる。しかし、その演奏・音響は随分と違っていて、このフリッチャイ盤の方が明らかに音が硬質で引き締まっている。録音も優秀。解像度が高く各パートがよく分離して、それぞれ何をやっているかがよくわかる。

第1楽章はフリッチャイ盤では極めて整ったアンサンブルと筋肉質の音色で、聴いていると正にこちらの身も引き締まる感がある。一方カラヤン盤は、音響がやや肥大していてグラマラスだ。音楽の運びも前のめりで、いささか落ち着きがない。それをもって「現代風な…」ということになるのだろうが、どう聴いてもフリッチャイ盤に軍配が上がる。
フリッチャイは終止落ち着いた曲の運びで、これでオケが貧弱だと単に迫力のない地味なだけの演奏になるところだが、そこはベルリンフィルだ。控えめな表現で落ち着いたテンポながら緊張感に満ちた音楽を展開する。第3楽章のアダージョ・モルト・エ・カンタービレは、このコンビの特質がよく出ている。各パートの音の分離が明確で、変奏曲ごとに繰り出される各パートの組ひものような絡み合いが実によく表現されている。木管や金管の音も落ち着いていて、ややほのぐらい弦楽器群の音色と共に、この第3楽章の美しさを引き立てている。第4楽章でバリトンパートを歌うのはディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ。意外なことにフィッシャー=ディースカウが第9を歌っているのは、このフリッチャイ・ベルリンフィル盤が唯一ということだ。フリッチャイはこの第4楽章に限って、やや速めのテンポを取っている。コアなクラシックファンの中には、第9はこの第4楽章で価値を下げているという人もいるのだが、こうして速めのテンポと取ることで、例えばテノールがマーチ風の伴奏にのって歌ったあとの管弦楽の掛け合い部分などは素晴らしく緊張感あふれる展開となっている。そして最後の最後、コーダでの一気呵成のアチェルランドで曲を閉じている。フリッチャイは本当に素晴らしい指揮者だった。一連のベートーヴェン以外にも新世界やチャイコフスキーの悲愴など名演を残した。


この盤の音源。全4楽章。



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カラヤン&VPO ブラームス交響曲第3番ヘ長調



11月もきょうで終わり。過行く秋を惜しみつつ、きょうも渋くブラームス第三。取り出したのはこの盤だ。


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ブラームスの交響曲第3番ヘ長調。カラヤンとウィーンフィルによるデッカ盤。記憶が正しければ80年代初め、石丸電気の輸入盤コーナーで手に入れたはずだ。第3番と悲劇的序曲がカップリングされている。1961年録音。

60年代初頭のカラヤンはベルリンフィル、ウィーン国立歌劇場双方のシェフとなり、まさに欧州クラシック音楽界の頂点に立った。ウィーンとはその後1964年に関係を一旦絶つことになるが、この盤はその間1959から1964年にウィーンフィルと残した一連の録音の一枚。ぼくら世代には1973年ベルリンフィルとの来日の際、これら一連のデッカ録音が白いジャケットの廉価盤で発売されたことで記憶に残っている。手持の盤は<Ace of Diamonds>シリーズの輸入盤。

ぼく自身は格別のカラヤンファンでもアンチでもないが、ウィーンフィルとのデッカ録音をとても好ましく感じていて、むしろベルリンフィルとの録音よりも高くかっている。まず録音のコンセプトがDGとまったく違う。デッカサウンドの特徴がよく出ていて、各パートが鮮明に分離し、リアルな音が目前に展開する。DGのイエスキリスト教会での録音に代表されるピラミッドバランスと長めの残響を伴った響き(良く言えば雰囲気のある、悪く言えば曖昧模糊とした…)とは対極といってもいい。もちろんウィーンフィルの持ち味もあるだろう。DG録音でもムジークフェラインでのウィーンフィル録音は明るく明瞭だ。 本来のデッカサウンドはもっとクリアで鮮明だと思うが、おそらくカラヤンの意向もあるのだろう、生々しいマルチ録音という感じはない。木管群などは少し遠く録られている。この第3番にもそうした美点が生きていて、まことにしなやかで美しい演奏だ。

当時は現代的なスタイルと言われていたカラヤンだが、こうしてあらためて半世紀を経て聴くと、十分にオーソドクスかつロマンティックで、ゆったりとした歩み。ベルリンフィルとの60年代のブラームス録音ではもっと剛直で重厚な演奏を展開するが、このウィーンフィルとの第3番はまったくそういう気配がない。ウィーンフィルの弦楽パートの艶やかな音色とカラヤンの指示に従ったレガートな歌いっぷりが素晴らしい。管楽器ではやはりホルンに耳がいく。ウィンナーホルン特有のネバリのある突き抜けるような、しかも柔らかい音色が随所で楽しめる。


この盤の音源。


第3楽章 ジャパニーズ・カンタービレ!



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カイルベルト&バンベルク交響楽団 ブラームス交響曲第3番ヘ長調



訳あって一週間ぶりの更新。相変わらず晩秋のブラームス詣。きょうはこの盤を取り出した。


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ドイツの指揮者ヨーゼフ・カイルベルト(1908-1968)によるブラームス。手持ちの盤は70年代半ば出ていた廉価盤シリーズの一枚。四十数年前、大学4年のときに手に入れた。安い盤ながら往時をしのばせる独テレフンケンのロゴがオーラを放つ。帯裏の広告をみるとこのシリーズでは、ベートーヴェンほか随分多くのカイルベルトの代表的な録音が出ていた。カイルベルトは1968年に亡くなったので、ぼくらより少し上の世代のクラシックファンには馴染み深い指揮者だろう。亡くなるほんの少し前まで来日してN響を振っている。 この盤には第3番と第4番が入っているがオケが異なり、演奏の印象も随分と違う。今夜針と降ろしたのはバンベルク響との第3番。第4番はハンブルクフィルハーモニーとの演奏。60年代初頭の録音。

正に味わい深い演奏。出だしから流麗とは程遠いごつごつとした肌触りの音楽が流れてくる。ブラームスそして特にこの曲では重要な付点音符や三連符の扱いがきっちりとしていて、そのごつごつ感を際立たせている。オケの音色も地味。バランスも周到に準備した録音セッションというよりはライヴに近く、いい意味での荒さが残っている。まさに質実剛健。ドイツ魂の権化といった響きだ。おそらく今日的視点ではダメ出し確実の演奏かつ録音状態だろう。 むかし聴いていた記憶では、そうした素朴さに何となく物足らなさと田舎臭さと感じていたものだが、いまこうして聴くとどうして、重量感も十分で聴き応えがある。もっと冴えない録音という記憶もあったが、SPUで聴く独テレフンケンの音はコントラバスの低音もしっかりとらえていて、この演奏の目指すところとピタリと合っている。

1908年生まれというからカラヤンと同い年だったカイルベルトの盤はCD時代になってからまとめて出たこともあったが、このところ見かけない。2006年に突然英デッカ蔵出しの1955年バイロイトのステレオライヴ録音がCDとLPで出て話題になった。


この盤の音源。全4楽章



ベルリンフィルとの第2番終楽章 さすがにベルリンフィル。アンサンブル、流麗なフレージング感等申し分ない。



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バーンスタイン&VPO ブラームス交響曲第3番ヘ長調



深まりゆく秋。朝晩も冷え込むようになった。晩秋の色濃いこの時期に聴くとなれば、やはりこの曲だろう。


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ブラームスの交響曲第3番ヘ長調。レナード・バーンスタイン指揮ウィーンフィルハーモニーによる演奏。1981年ムジークフェラインでのライヴ録音。

ぼくがクラシックを意識して聴き始めた70年代初頭、バーンスタインといえばアメリカの指揮者でありアメリカの象徴のような存在でもあった。そのバーンスタインが70年代の終わりからヨーロッパの伝統を背負って立つウィーンフィルと集中的に録音を始めた。ベートーヴェン、ブラームス、シューマン…。両者の相性がこれほど良いとは、一連の録音を聴くまで予想しなかった。ウィーンフィルの艶やかな音色と豊かなカンタービレが、バーンスタインのやや粘着質の歌い口によっていっそう際立った。このブラームスのLP盤全集は発売早々に4枚組9千円で購入。学生時代からもっぱら廉価盤ばかりで、社会人になってもその貧乏気質が抜けなかった当時のぼくには珍しいことだった。

演奏はいずれも素晴らしい。当時すでに聴いていたカラヤン&VPOやケンペ&MPO、その後のヴァントやチェリビダッケ、スウィトナー等、手元にある十数種の盤に中でももっとも気に入っている演奏の一つだ。4曲あるブラームスの交響曲だが、バーンスタインはそれぞれの性格をはっきりと意識して振り分けている。今夜聴いている第3番は、ひと口にいえば秘めたるロマンティシズムといったところか。決して歩みを速めずにじっくりと弾き込む第1楽章。室内楽的な静けさの第2楽章。いつ聴いても万感胸に迫る第3楽章。雄渾な第4楽章。バーンスタインのロマンティシズムにウィーンフィルが全力で応えていく名演だ。


地味といわれる第3番だが、聴きどころはいくつもある。第1楽章の終盤14分00秒からの1分間。14分20秒あたりはフルトヴェングラーなら猛烈なアチェルランドをかけるところだ。第2楽章のやはり終盤24分2秒から24分45秒まで。第3楽章(27分から)は終始歌にあふれる。第4楽章はブラームス独特の三連符のメロディが続く35分50秒からがいい(39分33秒からも)。そしてコーダ(42分過ぎから)は夕映えの美しさだ。


ブロムシュテットとベルリンフィル 第4楽章の一部。2021年6月ブロムシュテット94歳を目前にした頃。


ブロムシュテットをコンセルトヘボウによる演奏が以下にある。
https://youtu.be/jZIHMTUsypk



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ハイドン 交響曲第84番変ホ長調



お盆休みも終わって日常再開…といってもぼくの場合は今年もこの時期休みはなく、せっせと仕事。暑さが少し癒えたら休みを取ろうかと思っているが、そういえば昨年も一昨年も同じように考えていながら、結局仕事にアップアップしてまともに休めなかった。まあ、いいけど…。さて週末金曜日。少し前に聴いたハイドンの続きを聴くことにした。


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取り出した盤は数年前に手に入れたエルネスト・アンセルメ(1883-1969)による一連のボックスセット中のEuropean_Tradition。この中にハイドン作品を収めた3枚のディスクがある。少し長くなるが以下に記しておく。

Disc15
ハイドン:交響曲第82番ハ長調「熊」
ハイドン:交響曲第83番ト短調「雌鶏」
ハイドン:交響曲第84番変ホ長調
Disc16
ハイドン:交響曲第85番変ロ長調「王妃」
ハイドン:交響曲第86番ニ長調
ハイドン:交響曲第87番イ長調
Disc17
ハイドン:交響曲第22番変ホ長調「哲学者」
ハイドン:交響曲第90番ハ長調
ハイドン:トランペット協奏曲変ホ長調 Hob.VIIe-1
 パオロ・ロンジノッティ(トランペット)
フンメル:トランペット協奏曲変ホ長調
 ミシェル・クヴィット(トランペット)

いわゆるパリ・セットと称される第82番から87番の交響曲が並ぶ。後年のロンドン・セット(ザロモン・セット)に比べるとやや小ぶりながら、いずれもハイドンの熟練の技が光る曲ばかりだ。録音は1957~1968年。スイスロマンド管弦楽団の本拠地ジュネーヴ・ヴィクトリアホールでのセッション録音。きょうはこのうちDisk15をプレイヤーにセットし、ハイドンの交響曲第84番変ホ長調を選んでプレイボタンを押した。

アンセルメとその手兵スイスロマンド管弦楽団(OSR)と言えばもっぱらフランス・ロシア物の色彩豊かな演奏を思い出し、独墺系の曲のイメージは薄かった。あるときアンセルメ&OSRのブラームスを聴いたとき、そうしたかつてのイメージはまったく作られたものだと合点した。重厚長大にして激渋のブラームス…ではないが、堂々として推進力に満ちた演奏は立派のひと言だった。アンセルメの独墺系侮りがたし…そんな気持ちになって、このボックスセットも手に入れた経緯がある。

ハイドンの交響曲第84番はパリセットの他の曲のように副題もなく演奏頻度も少ないようだが、全4楽章貫禄十分の構成で他の曲に勝るとも劣らない。第1楽章は穏やかな序奏で始まる。低弦群が中々雄弁な響きを聴かせる。主部はチャーミングで軽やかに始まり、各声部が掛け合いながら進む。時折り転じる短調フレーズが印象的だ。展開部と再現部も推進力は衰えない。第2楽章はゆったりとした4分の3拍子を取る変奏曲。短調に転じた変奏では深い感情表現が聴かれる。第3楽章は型通りのメヌエット。堂々とし過ぎず、この曲全体に通じるチャーミングな曲想だ。終楽章はソナタ形式を取り、ハイドンの技巧が冴える。目まぐるしい転調を繰り返しながら常に推進力を維持し活力にあふれて素晴らしい効果を上げている。

アンセルメ&OSRの陽性の演奏とそれを捉えた英デッカの明解な録音はこの第84番の曲想にぴったりだ。ピリオドスタイル普及以前のそして伝統的な独墺系路線とも異なる、大らかで伸びやかなハイドンで捨てがたい。


この盤の音源。全4楽章


パーヴォ・ヤルヴィ&パリ管弦楽団による演奏。



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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