カラヤン&VPO ブラームス交響曲第3番ヘ長調



11月もきょうで終わり。過行く秋を惜しみつつ、きょうも渋くブラームス第三。取り出したのはこの盤だ。


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ブラームスの交響曲第3番ヘ長調。カラヤンとウィーンフィルによるデッカ盤。記憶が正しければ80年代初め、石丸電気の輸入盤コーナーで手に入れたはずだ。第3番と悲劇的序曲がカップリングされている。1961年録音。

60年代初頭のカラヤンはベルリンフィル、ウィーン国立歌劇場双方のシェフとなり、まさに欧州クラシック音楽界の頂点に立った。ウィーンとはその後1964年に関係を一旦絶つことになるが、この盤はその間1959から1964年にウィーンフィルと残した一連の録音の一枚。ぼくら世代には1973年ベルリンフィルとの来日の際、これら一連のデッカ録音が白いジャケットの廉価盤で発売されたことで記憶に残っている。手持の盤は<Ace of Diamonds>シリーズの輸入盤。

ぼく自身は格別のカラヤンファンでもアンチでもないが、ウィーンフィルとのデッカ録音をとても好ましく感じていて、むしろベルリンフィルとの録音よりも高くかっている。まず録音のコンセプトがDGとまったく違う。デッカサウンドの特徴がよく出ていて、各パートが鮮明に分離し、リアルな音が目前に展開する。DGのイエスキリスト教会での録音に代表されるピラミッドバランスと長めの残響を伴った響き(良く言えば雰囲気のある、悪く言えば曖昧模糊とした…)とは対極といってもいい。もちろんウィーンフィルの持ち味もあるだろう。DG録音でもムジークフェラインでのウィーンフィル録音は明るく明瞭だ。 本来のデッカサウンドはもっとクリアで鮮明だと思うが、おそらくカラヤンの意向もあるのだろう、生々しいマルチ録音という感じはない。木管群などは少し遠く録られている。この第3番にもそうした美点が生きていて、まことにしなやかで美しい演奏だ。

当時は現代的なスタイルと言われていたカラヤンだが、こうしてあらためて半世紀を経て聴くと、十分にオーソドクスかつロマンティックで、ゆったりとした歩み。ベルリンフィルとの60年代のブラームス録音ではもっと剛直で重厚な演奏を展開するが、このウィーンフィルとの第3番はまったくそういう気配がない。ウィーンフィルの弦楽パートの艶やかな音色とカラヤンの指示に従ったレガートな歌いっぷりが素晴らしい。管楽器ではやはりホルンに耳がいく。ウィンナーホルン特有のネバリのある突き抜けるような、しかも柔らかい音色が随所で楽しめる。


この盤の音源。


第3楽章 ジャパニーズ・カンタービレ!



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カイルベルト&バンベルク交響楽団 ブラームス交響曲第3番ヘ長調



訳あって一週間ぶりの更新。相変わらず晩秋のブラームス詣。きょうはこの盤を取り出した。


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ドイツの指揮者ヨーゼフ・カイルベルト(1908-1968)によるブラームス。手持ちの盤は70年代半ば出ていた廉価盤シリーズの一枚。四十数年前、大学4年のときに手に入れた。安い盤ながら往時をしのばせる独テレフンケンのロゴがオーラを放つ。帯裏の広告をみるとこのシリーズでは、ベートーヴェンほか随分多くのカイルベルトの代表的な録音が出ていた。カイルベルトは1968年に亡くなったので、ぼくらより少し上の世代のクラシックファンには馴染み深い指揮者だろう。亡くなるほんの少し前まで来日してN響を振っている。 この盤には第3番と第4番が入っているがオケが異なり、演奏の印象も随分と違う。今夜針と降ろしたのはバンベルク響との第3番。第4番はハンブルクフィルハーモニーとの演奏。60年代初頭の録音。

正に味わい深い演奏。出だしから流麗とは程遠いごつごつとした肌触りの音楽が流れてくる。ブラームスそして特にこの曲では重要な付点音符や三連符の扱いがきっちりとしていて、そのごつごつ感を際立たせている。オケの音色も地味。バランスも周到に準備した録音セッションというよりはライヴに近く、いい意味での荒さが残っている。まさに質実剛健。ドイツ魂の権化といった響きだ。おそらく今日的視点ではダメ出し確実の演奏かつ録音状態だろう。 むかし聴いていた記憶では、そうした素朴さに何となく物足らなさと田舎臭さと感じていたものだが、いまこうして聴くとどうして、重量感も十分で聴き応えがある。もっと冴えない録音という記憶もあったが、SPUで聴く独テレフンケンの音はコントラバスの低音もしっかりとらえていて、この演奏の目指すところとピタリと合っている。

1908年生まれというからカラヤンと同い年だったカイルベルトの盤はCD時代になってからまとめて出たこともあったが、このところ見かけない。2006年に突然英デッカ蔵出しの1955年バイロイトのステレオライヴ録音がCDとLPで出て話題になった。


この盤の音源。全4楽章



ベルリンフィルとの第2番終楽章 さすがにベルリンフィル。アンサンブル、流麗なフレージング感等申し分ない。



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バーンスタイン&VPO ブラームス交響曲第3番ヘ長調



深まりゆく秋。朝晩も冷え込むようになった。晩秋の色濃いこの時期に聴くとなれば、やはりこの曲だろう。


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ブラームスの交響曲第3番ヘ長調。レナード・バーンスタイン指揮ウィーンフィルハーモニーによる演奏。1981年ムジークフェラインでのライヴ録音。

ぼくがクラシックを意識して聴き始めた70年代初頭、バーンスタインといえばアメリカの指揮者でありアメリカの象徴のような存在でもあった。そのバーンスタインが70年代の終わりからヨーロッパの伝統を背負って立つウィーンフィルと集中的に録音を始めた。ベートーヴェン、ブラームス、シューマン…。両者の相性がこれほど良いとは、一連の録音を聴くまで予想しなかった。ウィーンフィルの艶やかな音色と豊かなカンタービレが、バーンスタインのやや粘着質の歌い口によっていっそう際立った。このブラームスのLP盤全集は発売早々に4枚組9千円で購入。学生時代からもっぱら廉価盤ばかりで、社会人になってもその貧乏気質が抜けなかった当時のぼくには珍しいことだった。

演奏はいずれも素晴らしい。当時すでに聴いていたカラヤン&VPOやケンペ&MPO、その後のヴァントやチェリビダッケ、スウィトナー等、手元にある十数種の盤に中でももっとも気に入っている演奏の一つだ。4曲あるブラームスの交響曲だが、バーンスタインはそれぞれの性格をはっきりと意識して振り分けている。今夜聴いている第3番は、ひと口にいえば秘めたるロマンティシズムといったところか。決して歩みを速めずにじっくりと弾き込む第1楽章。室内楽的な静けさの第2楽章。いつ聴いても万感胸に迫る第3楽章。雄渾な第4楽章。バーンスタインのロマンティシズムにウィーンフィルが全力で応えていく名演だ。


地味といわれる第3番だが、聴きどころはいくつもある。第1楽章の終盤14分00秒からの1分間。14分20秒あたりはフルトヴェングラーなら猛烈なアチェルランドをかけるところだ。第2楽章のやはり終盤24分2秒から24分45秒まで。第3楽章(27分から)は終始歌にあふれる。第4楽章はブラームス独特の三連符のメロディが続く35分50秒からがいい(39分33秒からも)。そしてコーダ(42分過ぎから)は夕映えの美しさだ。


ブロムシュテットとベルリンフィル 第4楽章の一部。2021年6月ブロムシュテット94歳を目前にした頃。


ブロムシュテットをコンセルトヘボウによる演奏が以下にある。
https://youtu.be/jZIHMTUsypk



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ハイドン 交響曲第84番変ホ長調



お盆休みも終わって日常再開…といってもぼくの場合は今年もこの時期休みはなく、せっせと仕事。暑さが少し癒えたら休みを取ろうかと思っているが、そういえば昨年も一昨年も同じように考えていながら、結局仕事にアップアップしてまともに休めなかった。まあ、いいけど…。さて週末金曜日。少し前に聴いたハイドンの続きを聴くことにした。


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取り出した盤は数年前に手に入れたエルネスト・アンセルメ(1883-1969)による一連のボックスセット中のEuropean_Tradition。この中にハイドン作品を収めた3枚のディスクがある。少し長くなるが以下に記しておく。

Disc15
ハイドン:交響曲第82番ハ長調「熊」
ハイドン:交響曲第83番ト短調「雌鶏」
ハイドン:交響曲第84番変ホ長調
Disc16
ハイドン:交響曲第85番変ロ長調「王妃」
ハイドン:交響曲第86番ニ長調
ハイドン:交響曲第87番イ長調
Disc17
ハイドン:交響曲第22番変ホ長調「哲学者」
ハイドン:交響曲第90番ハ長調
ハイドン:トランペット協奏曲変ホ長調 Hob.VIIe-1
 パオロ・ロンジノッティ(トランペット)
フンメル:トランペット協奏曲変ホ長調
 ミシェル・クヴィット(トランペット)

いわゆるパリ・セットと称される第82番から87番の交響曲が並ぶ。後年のロンドン・セット(ザロモン・セット)に比べるとやや小ぶりながら、いずれもハイドンの熟練の技が光る曲ばかりだ。録音は1957~1968年。スイスロマンド管弦楽団の本拠地ジュネーヴ・ヴィクトリアホールでのセッション録音。きょうはこのうちDisk15をプレイヤーにセットし、ハイドンの交響曲第84番変ホ長調を選んでプレイボタンを押した。

アンセルメとその手兵スイスロマンド管弦楽団(OSR)と言えばもっぱらフランス・ロシア物の色彩豊かな演奏を思い出し、独墺系の曲のイメージは薄かった。あるときアンセルメ&OSRのブラームスを聴いたとき、そうしたかつてのイメージはまったく作られたものだと合点した。重厚長大にして激渋のブラームス…ではないが、堂々として推進力に満ちた演奏は立派のひと言だった。アンセルメの独墺系侮りがたし…そんな気持ちになって、このボックスセットも手に入れた経緯がある。

ハイドンの交響曲第84番はパリセットの他の曲のように副題もなく演奏頻度も少ないようだが、全4楽章貫禄十分の構成で他の曲に勝るとも劣らない。第1楽章は穏やかな序奏で始まる。低弦群が中々雄弁な響きを聴かせる。主部はチャーミングで軽やかに始まり、各声部が掛け合いながら進む。時折り転じる短調フレーズが印象的だ。展開部と再現部も推進力は衰えない。第2楽章はゆったりとした4分の3拍子を取る変奏曲。短調に転じた変奏では深い感情表現が聴かれる。第3楽章は型通りのメヌエット。堂々とし過ぎず、この曲全体に通じるチャーミングな曲想だ。終楽章はソナタ形式を取り、ハイドンの技巧が冴える。目まぐるしい転調を繰り返しながら常に推進力を維持し活力にあふれて素晴らしい効果を上げている。

アンセルメ&OSRの陽性の演奏とそれを捉えた英デッカの明解な録音はこの第84番の曲想にぴったりだ。ピリオドスタイル普及以前のそして伝統的な独墺系路線とも異なる、大らかで伸びやかなハイドンで捨てがたい。


この盤の音源。全4楽章


パーヴォ・ヤルヴィ&パリ管弦楽団による演奏。



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ハイドン交響曲第22番変ホ長調「哲学者」



今月も残り少なくなった。関東地方は先週末から暑さが戻り、二度目の梅雨明けの様相。きょうも律儀に仕事をして定時に退勤。帰宅後ひと息つき、しばらく前から通勤車中で聴いていたこの盤を取り出した。


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ちょっと久しぶりのハイドン。交響曲第22番変ホ長調「哲学者」。デニス・ラッセル・デイヴィス指揮シュトゥットガルト室内管弦楽団による例の全集ボックス中の一枚。初期交響曲として第13番、21番、23番が併録されている。

この曲は初めて聴いたのはいつだったろうか。随分前の確かFM放送。ハイドンの典型的な交響曲を予想して聴き始めると闊達な第1楽章が一向に始まらない。どうしたものかと思っていたら、そのまま最初の楽章が終わり、続いて急速調の次の楽章が始まった。ん?と思い調べると、第1楽章がアダージョ。続く第2楽章がプレストという構成だった。ハイドンの交響曲にはいくつか同じような構成があるようだ。古い教会ソナタの形式を踏襲しているとも言われる。

アダージョの第1楽章はホルンとコールアングレ(イングリッシュホルン)の掛け合いで始まる。バックの弦楽群のきざみにのって奏でられるそのフレーズは、哲学者が穏やかにしかし深く思索しながら逍遥するようでもあり、賢者の問答のようでもあり、なるほどと感じさせられる。途中から弦楽群がユニゾンで美しく長いフレーズを奏する下りも印象的だ。第2楽章はいきなり急速調のフレーズで始まる。これが第1楽章でもまったく不思議はない。実際この第2楽章を冒頭の楽章に配した版もあるそうだ。第3楽章は定石通りのメヌエット。ここでもホルンとコールアングレが活躍する。そして第4楽章は再びテンポを上げ、時折りホルンが狩りを告げるように響き渡り快活に進む。


この盤の音源。第1、2楽章。手持ちの盤からアップした。


全4楽章。イタリアのリコーダー奏者で指揮者のジョヴァンニ・アントニーニと彼が組織したイル・ジャルディーノ・アルモニコによる演奏。!マークがでるが、「YouTubeで見る」をクリックすればOK。



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ブルックナー交響曲第2番ハ短調



異例に早い梅雨明けで驚いたが、気付けば暦も今年前半が終わった。暑い暑いと言いながらも夏は過ぎ、やがて秋風が…というのはさすがに少々気が早いか。 さて七月最初の週末土曜日。例によって野暮用少々。あたふたと一日終える。節電を気にしながらもエアコンをオン。ひとしきり冷えたところで、こんな盤を取り出した。


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ブルックナー交響曲第2番ハ短調。オイゲン・ヨッフム(1902-1987)がバイエルン放送交響楽団とベルリンフィルを振って1960年代半ばに作った交響曲全集中の一枚。第2番のオケはバイエルン放響で1966年ミュンヘン・ヘラクレスザールでの録音。ノヴァーク版。手持ちの盤はかれこれ三十数年前、知人がウィーン旅行の土産にと現地で買ってきてくれたセット。荷物が大きくなる海外旅行でこんな全集セットのLP盤を持ち帰ってくれたことに感謝している。お馴染みの黄色のレーベルにはMade in Austriaの文字が刻まれていて、今となっては貴重な思い出の盤だ。

ブルックナーの2番交響曲というと、余程熱心なブルックナーファンでもない限り馴染みは少ないだろう。多少順番の前後はあるにせよ、大方は第4番に始まり第5番、そして7,8,9番と進み、次の選択肢は第3番あたりというのがクラシックファンの歩む道だ。かくいうぼくも二十代前半にそんな順序で聴いてきた。第2番も学生時代にFMエアチェックしたテープで聴いていたとは思うが、格別印象に残ることもなかった。あらためて通して聴いたのは後年このヨッフム盤を手に入れてからだ。そんなこんなで、たどり着くには少々時間がかかるのが常の第2番だが、こうして聴いてみるとやはり中々面白い。

ブルックナーの交響曲はしばしば田園の逍遥に例えられる。大きな変化や絶景があるわけでもない、ありふれた田舎道を歩きながら、道端に咲く素朴な花々や鳥たちのさえずり、小川のせせらぎや深い森のしんやりとした空気、そうしたあれこれを五感で感じる…そんな例えを持ち出されることが多い。この第2番はそうした例えに、他の人気曲以上に相応しいのではないかと、こうしてあらためて聴きながら感じる。
第1楽章はハ短調の調性ながら曲想は明るく変化に富んでいて、聴いていて気分が軽快になる。初めてブルックナーに触れる人も違和感なく楽しめるように思う。第2楽章はまさに田園の逍遥だ。歩を進めるような音形にのって穏やかな旋律が歌われ、時折り自然界からの便りを思わせるフレーズが聴こえてくる。第3楽章のスケルツォはいかにもブルックナーと思わせる曲想で単純な構成ながら飽きることがない。

先回の記事に書いた「草津音楽アカデミー」今年8月のコンサート(及び高崎でのプレコンサート)で、この曲が取り上げられる予定だ。


この盤の音源。第3楽章スケルツォ


同 全4楽章。手持ちのLP盤より格段にクリアな音だ。


パーヴォ・ヤルヴィとNDRエルプフィルハーモニー管(北ドイツ放響)による演奏。2019年



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豊田耕児&群馬交響楽団 メンデルスゾーン交響曲第4番イ長調「イタリア」・ウェーバー「オベロン序曲」



テレビ番組の影響か、昨今おらが群馬の評価はイマイチだ。民度が低いの、山と温泉しか思い浮かばないのと見当違いの認識が流布されている。実は県民は200万人(ほぼ)いるし、勤労者のほとんどは県内で雇用されている。農業県としてもちろん第一級だが、工業製品出荷も中々のものだ。走り屋ご用達の水平対向エンジン搭載のスバルは当地の産。日本で食べられるハーゲンダッツアイスクリームは国内唯一の当県工場で作られている。戦後の宰相を福田(父)・中曽根・小渕・福田(子)と四人も輩出した。そして何よりの誇りは地方プロフェッショナルオケの草分けである群馬交響楽団があることだ。 きょうは先回の記事に続き、地元では群響「グンキョウ」の名で親しまれている群馬交響楽団の録音を取り上げる。取り出したのは1980年録音のウェーバーとメンデルスゾーンが収録されたLP盤だ。


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群馬交響楽団の旧本拠地:群馬音楽センター。アントニン・レーモンド設計の名建築だ。
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群響の歴史は戦後間もなくの頃にさかのぼる。映画「ここに泉あり」(昭和29年・1954年)の世界だ。しかし高度成長期の60~70年代の活動は正直なところ低迷が続けた。ぼくが高校の頃、70年代初頭の定期演奏会は、ステージ上の団員と客席の聴衆が綱引きをしたら客が勝つのではないかというほどの入りのこともあった。取り上げるプログラムも古典派から初期ロマン派に限られ、より大規模で複雑な後期ロマン派や近現代の曲が取り上げられることはほとんどなかった。そんな群響に転機が訪れたのが70年代から80年代に移ろうとしているときだった。当時ベルリンで活躍していたヴァイオリンの豊田耕児(1933-)が指揮者に迎えられた。彼の本場ドイツ仕込みの音楽を群響に徹底的に教え込んだという。そうした結果の最初の成果がこのレコードだ。

もう40年近く前のことになるが、このレコード聴いたとき、そしてこのコンビの演奏会を聴いたとき我が耳を疑った。これがあの群響かと。それまでぼくの知る群響は、ともかくひと通り演奏できるというレベルで音に精細はなく、管楽器はいつも音がひっくり返りという印象しかなかった。ところが豊田耕児の指揮する群響は颯爽として弓をひき、アンサンブルは引き締まって整い、弦と管がよくブレンドしてバランスのよい響きだった。きょう久々にこのレコードの針を落とし、当時のそうした懐かしい思いがこみ上げてきた。

ぼくの大好きなオーケストラピースの筆頭であるウェーバーのオベロン序曲。いまの感覚で聴くと確かにいくつか気になるところもないではない。弦はもっと艶やかに、そして表情豊かに歌ってほしい、第2主題を吹くクラリネットはもっとたっぷり吹いたらどうか、ピアニシモで入ってくる管楽器群の音程がいささかあやしい等々。しかし、当時としては格段の進歩だったし、世に残る録音をこれをきっかけに何枚も出すという、大きな節目の時期の演奏だ。メンデルスゾーンのイタリア交響曲は、開放的な曲想ゆえか群響の面々もリラックスしているのが分かる。弦楽群の音が明るく思い切りがいい。豊田耕児の音楽作りはアンサンブルをよく整え、各パートのバランスを細かに指示して、楽曲そのものに語らせるているのだろう。無理がなくナチュラルでフレーズがよく流れる。このレコードのあと豊田耕児と群響のコンビは、当時ベルリンフィルの首席だったカール・ライスターを招いて一連のレコーディンやコンサートを行うなど、80年代初頭の第一期黄金期ともいうべき時期を迎えることになる。


この盤の音源。メンデルスゾーン交響曲第4番「イタリア」第1楽章 1980年録音


同 第3楽章


ウェーバー「オベロン序曲」



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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