ケンブリッジ・バスカーズ



週末にかけて大荒れ予報の天気だが、きょうは昼過ぎから晴れ間がのぞいた。
ここ数週間引っ掛かっていた飛び込み案件が本日収束。これで万事一件落着ならいいのだが、飛び込み案件に手を焼いているあいだに、元々の計画業務が遅れ気味となり、あすからはそのリカバリーが必要だ。とはいえ、ひとやま越えてまずは休心。ホッとひと息リスニングタイム。音盤棚を眺めていたらこんな盤を見つけて取り出した。これもだいぶ前に一度記事にしていたので再掲しておく。


ケンブリッジ・バスカーズ  ケンブリッジ・バスカーズ


ケンブリッジ・バスカーズ。1970年代後半から80年代にかけて笛とアコーディオンの大道芸的演奏パフォーマンスのデュオとして人気を博した。久しく関心から離れていたら80年代後半にメンバーチャンジがあって、名前もクラシック・バスカーズと変わっていた。写真のLPはもちろん以前のコンビによるもので1983年の録音。クラシックの名曲、それも大管弦楽であろうが何であろうが、笛とアコーディオンでやっつけてしまう。参考までに収録曲をあげておこう。

01. 1812年序曲(チャイコフスキー)
02.セビリアの理髪師(ロッシーニ)
03.ジュピター交響曲(モーツァルト)
04.新世界交響曲(ドヴォルザーク)
05.未完成交響曲(シューベルト)
06.交響曲第4番(マーラー)
07.軽騎兵序曲(スッペ)
08.春の祭典(ストランヴィンスキー)
09. 古典交響曲(プロコフィエフ)
10.カリレア(シベリウス)
11.ヴァイオリン協奏曲(メンデルスゾーン)
12.チューニング
13.交響曲第1番-第9番(ベートーヴェン)
14.ツァラトゥストラはかく語りき(R.シュトラウス)
15.威風堂々(エルガー)
16.ペール・ギュトン(グリーグ)
17.セレナーデ(ハイドン)
18.鱒(シューベルト)
19. なき女王のためのパヴァーヌ(ラヴェル)
20.”アコーディオン”協奏曲第1番(チャイコフスキー)
21.大学祝典序曲(ブラームス)

1時間ちょっとの間にこれら21曲が演奏される。ベートーヴェンの9曲の交響曲をつなげてあっという間に聴かせる妙、メンデルスゾーンでの超絶技巧、春の祭典での意外な迫真感、まさにエンターテイメントの花咲くひとときだ。物まね、声帯模写のたぐいと同様、このデュオを楽しむには元ネタを熟知しておく方がよい。そうでないと彼らの仕掛けの半分も気付かずに終わってしまうだろう。例えばベートーヴェンの全交響曲9曲をつなげるとっても、元の曲を知っているのと知らないのとでは、笑うにしても腹のかかえ方が違うというものだ。この手のパフォーマンスは、古くはモンティ・パイソンやミスター・ビーンなどに通じる英国流のユーモア、ナンセンス、ギャグの系譜だろう。音楽でも1950年代からホフナング音楽祭なる抱腹絶倒のイベントがあった。フックド・オン・クラシックの元祖だ。

このクラシック・バスカーズ、ネットでみると近年も活動を続けている様子。しかし現役のアルバムは少なく、この盤もプレミアムが付いていて驚いた。最近はこの手の健全なユーモアは人気もなく、売れないのだろうか。


無茶にもほどがあるというワグナー;ワルキューレだが、原曲を知る者には抱腹絶倒だ。しかし、どうみてもミスター・ビーンのノリである。


1987年。来日公演の様子。
最高傑作はこの盤にも収録されているベートーヴェン交響曲全曲。28分50秒から35秒間のお楽しみ。



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スジガネ入りのリスナーが選ぶ <クラシック名盤この1枚>



先日の記事に書いた、石原俊著『音楽がもっと楽しくなるオーディオ粋道入門』同様、この十年間、折に触れ見返している本がある。『スジガネ入りのリスナーが選ぶ<クラシック名盤この1枚>』(光文社・知恵の森文庫2003年刊)


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あまたある名曲案内のたぐいの中にあって、この本は中々ユニークな一冊だ。多くの案内本は、音楽評論家やその道のコアな達人の手になるもので、その書き手の意向と嗜好で曲が選ばれ、その曲を収録したディスクのお薦めの1枚が紹介される。オーディオ評論やレヴュー同様、時としてそれらの記述は、音楽レーベル会社の提灯記事になることもある。あるいはプロモーターが売り出し中のアーティストの盤が優先的に◎評価されることもあるだろう。これはクラシックばかりではなくすべての音楽ジャンルに共通した傾向だ。その点、この本は決定的に異なる。

音盤を推薦する記事を書いているのは、プロの演奏家、制作者、評論家ばかりでなく、ジャーナリスト、アマチュア音楽家、大手メーカー役員、教員、銀行マン、普通の会社とバラエティーに富む。共通しているのは只一点、音楽が好きで好きで仕方がない連中ということだ。記述内容も、その音盤との出会いを思い出話のように懐かしく語るものあり、その盤の演奏のどこが素晴らしいかを分析的に語るものあり、あるいはその盤の演奏によっていかに慰められ勇気付けられたかを語るものありと様々だ。そのいずれもが誰から頼まれたものでもなく、提灯を持たされたわけでもなく、兎にも角にもその盤が自分にとっていかにかけがいのない1枚かと熱っぽく綴っている。

従って、当然ながらその内容は時にマニアックで、ごく有り体の案内本を期待する向きには、濃すぎる内容もあるだろう。それでもこの文庫は、先んじて単行本で出たものを大幅に書き改めて、というと聞こえはいいが、実態としてはマニア度を薄めて(手心を加えて)出来たとのこと。長年に渡る愛好の結果のマニアであるから、執筆者の年齢は総じて高く、紹介されている音盤には現在では入手困難な古い盤も少なくない。それをもって、案内本の資格無しというなかれ。人を感動させる演奏は、日進月歩ばかりではないことの証明でもある。ぼく自身、この本で知り、出会った何枚かの盤があって、そのいずれをも、この十年間実によく聴いたものだ。発売直後の2003年に手に入れ、数多くの出張を共にしたため、背表紙もはずれかかっているが、同じページを何度読んでも、その時々で興味深く、今もときどき見返している。


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私家版 作曲家年表2014年版


2年ほど前に作って一度公開した作曲家年表(のようなもの)を少しアップデートした。FC2ブログではPDF形式をアップできないので、仕方なくJPEGでのせることにした。A3版でプリントアウトすれば日常的に使えるだろうか。一般家庭ではA3版プリントは難しいだろうから、コンビニ受け取りのネットプリントの利用が便利かと思う。

  こちらからどうぞ ⇒⇒⇒ ◆私家版 作曲家年表◆

日頃接しているクラシックギターやマンドリン音楽の愛好家が、そのベースとなっているクラシック音楽全般の潮流に無頓着であるのを見るに見かねて作った…というと生意気なようだが、実のところはぼく自身も一度確認しておきたかったというのが本音だ。
ごく私的な確認目的に作ったもので、それ以上の価値もない。思いつくまま作曲家の名前を思い浮かべてリストアップし、wikipediaで生没年を調べて書き加えただけの安直なもの。思わぬ大家の抜けがあるかもしれない。表中の矢印は、特にクラシックギターやマンドリン(ここでは19世紀末からのものに限定)音楽への影響を示したもの。異論があることは承知だが、一つの目安にはなるだろう。


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今年の10枚


今夜もNHK-FMのバイロイト特集を聴きながらPCに向かっている。今夜はパルジファルだ。重厚で息の長いフレーズ、ゆっくりと時間をかけたクレッシェンド、ボリュームを絞り気味にしたステレオから深く静かで巨大なワグナーの世界が広がる。

さて今年の10枚…
年末なので、テレビの企画よろしく、今年聴いたベスト10を選んでみようと思ってこんな記事のタイトルを付けてみたのだが、さて音盤の棚を見回してみて実は驚いた。10枚が選べないのだ。選択に迷うのではなく、よく聴いたなあというアルバムが見当たらない。へヴィーローテーションの少ない1年だったというのが正直なところだ。そんな中、明らかに複数回聴いた記憶のある盤を選んだ結果が以下の通りだ。新譜でもないし、購入してから年月を経ているものもある。単に今年比較的よく聴いた盤、といったほどのものであることを最初にお断りしておこう。


今年よく聴いた10枚


<1> ブラームス;間奏曲集 グールド(pf)
<2> ショパン;4つのバラード他 ツィマーマン(pf)
<3> バッハ;パルティータ第2番ほか ペライア(pf)
<4> ハイドン;交響曲全集 フィシャー指揮オーストリアハンガリアンハイドン管弦楽団
<5> 「バトゥカーダ-ジャズボッサ」 平賀マリカ(vo)
<6> 「スウィングの空の下で」 アンジェロ・ドゥバール(g)
<7> 「ブラッサム・ディアリ」 ブラッサム・ディアリ(vo)
<8> 「オータムインニューヨーク」 タル・ファーロウ(g)
<9> ブルックナー交響曲第8番 チェリビダッケ指揮ミュンヘンフィル
<10> ピアソラ;フルートとギターのための作品集


<1> ブラームス;間奏曲集 グールド(pf)
今年、NHK教育テレビで坂本龍一が紹介してにわかに注目された盤だ。若きグールドがブラームスの静かな世界を素晴らしく克明に描き出している名盤。仕事に疲れた深夜によく聴いた。

<2> ショパン;4つのバラード他 ツィマーマン(pf)
ツィマーマンのショパンについては以前このブログでも書いた。いわゆるショパン名曲集のたぐいとは別世界のショパンを聴かせてくれる。<1>同様、深夜によく聴いた。

<3> バッハ;パルティータ第2番ほか ペライア(pf)
以前紹介したアルバム。ペライアのバッハは音色が美しく表現も中庸で、いずれも現代のリファレンスとして安心して聴ける。

<4> ハイドン;交響曲全集 フィシャー指揮オーストリア・ハンガリー・ハイドン管弦楽団
ハイドンの交響曲全104曲33枚のボックスセット。数年前に入手してポツリポツリと聴いていたが、今年は少しまとめて聴いた。ハイドンの交響曲は初期のものでも古典的な構成感と躍動が素晴らしく、どれを聴いても、いつ聴いても楽しい。

<5> 「バトゥカーダ-ジャズボッサ」 平賀マリカ(vo)
人気の平賀マリカが歌う、ボサノバアルバム。半ば「ジャケ買い」の1枚ではあったが、歌も演奏も楽しめた。彼女についてはこちらを

<6> 「スウィングの空の下で」 アンジェロ・ドゥバール(g)
ジャンゴ・ラインハルトのこと以前書いたが、その系譜を受け継ぐのマヌッシュギターの一人者。競演するルドヴィク・ベイエのアコーディオンも素晴らしく、ご機嫌なスウィングと哀愁あふれる歌が楽しめる、いいアルバムだ。

<7> 「ブラッサム・ディアリ」 ブラッサム・ディアリ(vo)
この盤についても、ブログ開設直後の記事に書いた。今年後半もっともよく聴いたアルバムかもしれない。

<8> 「オータムインニューヨーク」 タル・ファーロウ(g)
白人ジャズギタリストのタル・ファーロウは、ぼくの好きなジャズギタリストの一人だ。抜群のテクニックとよどみなく繰り出されるアドリブフレーズは何度聴いても飽きない。

<9> ブルックナー交響曲第8番 チェリビダッケ指揮ミュンヘンフィル
1990年チェリビダッケ晩年の来日公演のライブ。80年代後半以降一連の来日公演ライブのアルバムは賛否あるようだが、ぼくはいずれも素晴らしいと思う。チェリビダッケの作り出す音響バランスと、曲の隅々にまで行き届いた眼力に感服だ。

<10> ピアソラ;フルートとギターのための作品集
フルートとギターのための作品「タンゴの歴史」とお目当てで入手したナクソス盤。ボーデル1900、カフェ1930、ナイトクラブ1960、コンサート現在、いずれも哀愁と機知にあふれていて美しい曲。


最初に書いた通り、今年はあまりレコードもCDも聴かなかった。あるいはこれは長期的傾向で、だんだん音盤を聴く時間も少なくなっているようにも感じる。棚に収まったまま陽の目をみない盤も多い。だったらいっそ整理して、お気に入りの100枚だけを残してスッキリ片付けたいとも思う。昔は棚にぎっしりと並んだレコードコレクションが憧れだったが、もうそういう気分でもなくなってきた。単に年をとったということだろうか。


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FM放送 エアチェック 吉田秀和


いまFM放送の認知度というのはどれほどのものなのだろう。かつて70年代半ばは、60年代後半からNHKが進めていたFMステレオ放送のネットワークが完成し、またカセットテープの普及もあって、FM放送の音楽番組をカセットテープに録音する「エアチェック」が全盛を極めた。週刊FM、FMfan、レコパルといったエアチェック専門雑誌が相次いで刊行され、音楽好きの金欠学生はレコードが買えない分、せっせとエアチェックに明け暮れた。当時カセットデッキとFMチューナーを揃えると5、6万円はかかったろうか。モノラルのラジカセも2万円くらいはした。カセットテープも60分のノーマルテープが300円、90分の少しグレードの高いテープは600円ほどした。学生のバイトが一日2,500円の時代だ。

ちょうどその時期1974~1977年がぼくの学生時代と重なっていて、当時録音したテープ数百本も、つい数年前まで押入れで眠っていた。いつか聴くこともあるだろうと思いつつ四半世紀が過ぎ、観念して一気に処分した。エアチェックしたものの中には、欧州の放送局からNHKに提供されていたカラヤン、ベーム、チェリビダッケ他の当時の貴重なライブ録音や、パトリス・シェローの演出で話題になった1976年バイロイトのライブなどもあった。がしかし、オリジナルのレコード盤が30年たった今でも新鮮な音でぼくを楽しませてくれるの対し、カセットの山はそれを残そうという気持ちにならなかった。廃棄処分した自分の判断ではあるが、やはり結局はコピーなのだ。そういう結論に至った。思えばテープを買ってエアチェックなどせず、その数分の1でいいからレコードを買っておくべきだったと後悔している。


白水社 吉田秀和全集


最近もFMはよく聴く。クラシックの番組では、毎晩夜7時半からの「ベストオブクラシック」が内外のライブ録音を中心に、ひと晩のコンサートをそのまま楽しめる。早く帰宅して夕食を済ませ、7時半にスピーカーの前に陣取りたいのだが、中々そうも出来ず、帰宅の車中で聴くことが多い。他には土曜の夜9時からの「名曲のたのしみ」。この秋で97歳になった音楽評論家吉田秀和の以前と変わらない声が楽しみだ。写真の本はその吉田秀和の全集。学生時代に買い集めた(何故か欠番があるなあ)。吉田秀和とこの「名曲のたのしみ」についは、ここに的を得た説明がある。まさにこの説明の通りの1時間番組だ。

他には土曜の朝、ピーター・バラカン司会の「ウィークエンドサンシャイン」と、それに続くゴンチチ司会の「世界の快適音楽セレクション」もよく聴く。「ウィークエンド…」はポップス、ジャズ、オールデイスからアフリカや中南米の曲まで、広くワールドミュージック全般の良質なコレクションが楽しめる。「世界の快適…」はクラシック、ポップスから現代音楽、歌謡曲まで、いかにもコアな切り口でノンジャンルの音楽を聴かせてくれる。

いずれもう少し歳をとったら、レコードもほんの少数を残して処分し、音楽はFMだけにし、その時々に提供されるものを聴く楽しみを味わおうかと考えている。100枚のレコード、100冊の本、100枚の楽譜、1本のギター、シンプルなオーディオセット、小さな机、それ以外に何もないというのがぼくの理想の空間だ。今はまだ俗な欲望とガラクタがあふれていて、理想にはほど遠い。
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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