東京コレギウム・ムジクム合唱団第7回定期演奏会



知人から演奏会の案内有り。所属する東京コレギウム・ムジクム合唱団の定期演奏会がきたる11月19日にあるとのこと。


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東京コレギウム・ムジクム合唱団TCMCは、30名ほどのメンバーからなるアマチュア合唱団。1975年に大阪ハイリッヒ・シュッツ室内合唱団を創立し、ルネサンスから現代音楽まで広く活躍して高い評価を受けている当間修一氏が主宰している。なんでも当間氏による合唱講座に端を発して2010年に創立されたそうだ。 今回の次第は以下の通り。ご都合つく方はぜひどうぞ。

日時:2016年11月19日(日)
開場:15:30 / 開演:16:00
会場:かつしかシンフォニーヒルズ アイリスホール
   (京成線青砥駅下車 徒歩5分/京成立石駅下車 徒歩7分)
指揮:当間修一 / ピアノ:小枝佳世
<演奏曲目>
◇ハインリッヒ・シュッツ 宗教的合唱曲集より
  Die mit Tränen säen (SWV378)
  So fahr ich hin zu Jesu Christ (SWV379)
  Unser Wandel ist im Himmel (SWV390)
  Selig sind die Toten (SWV391)
◇アントン・ブルックナー モテット集より
  Locus iste/Os justi
  Christus factus est/Virga Jesse
◇混声合唱曲集「にじ色の魚」
◇混声合唱とピアノのための「良寛相聞」

合唱にはとんと縁なく、プログラム中で察しがつくのはブルックナーのモテトくらい。それもブルックナーのテデウムやミサ曲からの勝手な想像だ。あらためて自分の音楽体験の偏狭さに恥じ入る。案じた知人が貸してくれたCDを聴くと、日頃ギターを相手に<平均律+若干の補正>でお茶を濁すチューニングで良しとしている耳に、合唱のピュアなトーンは新鮮に響き、まさに心洗われる。新調したオーディオセットで聴くと一段と解像度高く、人の声のもつポテンシャルの高さとそれを引き出す合唱技術の奥深さを感じる。


木下牧子「にじ色の魚」


以下の音源ではブルックナーのモテトから6曲が歌われている。7声を基本に書かれているとのこと。彼の交響曲の分厚い響きと異なるところ、共通するところ、双方を感じ取れる。



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バッハ BWV48 <われ悩める人、われをこの死の体より>



きょうの関東地方は先週末から続いていた雨もあがり、久しぶりに晴れ間がのぞく。気温も幾分上昇したが、相変わらず平年より低め。あすは再び雨模様となって気温も数度低くなるとのこと。さらに週末にかけて台風接近の予想もあって、秋の好天は一体どこへやら…だ。 さて、週半ばの水曜日。本日も程々に業務に精励。通勤車中にYOUTUBE音源で聴いたこともあって、こんな盤を取り出した。


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バッハのカンタータ第48番<われ悩める人、われをこの死の体より>。教会暦によれば、今度の日曜日は三位一体主日後第19主日とのこと。この日のためにバッハが作った曲はBWV5、48、56とされいる。その中の一曲。例によってブリリアント版バッハ全集中の一枚。曲は以下の7曲からなる。

 第1曲 コラール
 第2曲 レシタティーヴォ(アルト)
 第3曲 コラール
 第4曲 アリア(アルト)
 第5曲 レシタティーヴォ(テノール)
 第6曲 アリア(テノール)
 第7曲 コラール

第1曲のコラールは<ため息>音形を奏でる弦楽群によって始める。ほどなく合唱が入るが、かなり頻繁に転調を繰り返しながら進み、ため息音形によって強調される倚音と共に、どこか落ち着きのない不安が表現される。 続いてアルトのレシタティーヴォとコラール。ここでも次々と転調を繰り返し不安さは変わらない。第4曲アルトのアリアになって音楽はようやく落ち着きと安堵を取り戻す。ここではオーボエのオブリガートが終始寄り添い、それを下支えするチェロのフレーズと共にこのカンタータ中もっとも美しい曲が響く。続いてテノールがレシタティーヴォを語り、そのあと同じくテノールが第6曲のアリアを歌う。譜面を確認していないのではっきりしなが、このアリアは3/4拍子と基調としながら3/2拍子がヘミオラ風に入り組む。しかもここでも転調が頻繁に行われ、不思議な浮揚感がある。

ブリリアント版バッハ全集でカンタータを担当しているピーター・ヤン・ルーシンク指揮ネザーランド・バッハ・コレギウム他の演奏は、例によって細かな精度でメジャー団体には及ばない。器楽と独唱陣はおおむね及第だと思うが、ボーイソプラノがときに不安定となるのが残念。しかし、ヨーロッパの日常的なバッハ演奏として聴けば、これはこれで貴重な演奏だろう。


ベルギーの古楽団体Le Concert d'Anversによる雰囲気のある演奏。



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ファリャ<七つのスペイン民謡集>



好天に恵まれた連休も格別のことなく終了。あすはまた社会復帰だ。夜も更けてきたところで渋茶を一杯。音盤棚を見渡し、こんな盤を見つけたので取り出した。


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テレサ・ベルガンサがスペイン・ラテン系歌曲を歌った<The Spanish Soul>と題された3枚組。もともとクラヴェスレーベルから出ていたものを、例によってブリリアントレーベルがライセンスを受けてリリースした盤。指揮者ヘスス・ロペス=コボスの盤を探しているときに出くわして手に入れた。DISC1にはファリャ:「代官と粉屋の女房」と7つのスペイン民謡、DISC2はスペイン歌曲集としてグラナドス「トナディーリャス(昔風のスペイン歌曲集)」から数曲と、トゥリーナ「サエタ」、DISC3には南米歌曲集としてヴィラ=ロボス、ブラーガ、グァスタビーノといった作曲家の歌曲が収められている。伴奏はフアン・アントニオ・アルバレス・パレホというピアニスト。「代官と粉屋の女房」ではヘスス・ロペス=コボス指揮のローザンヌ室内管弦楽団がバックと務めている。1980年代半ばの録音。今夜はその中からファリャの7つのスペイン民謡集を聴いている。7つの曲は以下の通り。

1. ムーア人の織物
2. ムルシア地方のセギディーリャ
3. アストゥーリアス地方の歌
4. ホタ
5. ナナ(子守歌)
6. カンシオン
7. ポロ

題名通りの歌曲集で、スペイン各地に伝わる民謡や踊りのリズムなどを元に7つの小品に仕立てた曲集だ。極東の彼方からスペインを眺めると、どうも画一的なイメージを持ってしまうが、おそらくスペイン人にとっては、歴史的に諸王国の集まりであった経緯もあって、それぞれの地方でアイデンティティがあり、「一緒にしてくれるな」と言い出すのだろう。折りしもスペイン国内州独立の動きが伝えられていることからもそれは分かる。この7つ民謡集はスペインのほぼ東西南北に渡る地方からモチーフが採られている。陽気な歌あり、内に秘めた情熱あり、歌詞も他愛のない民衆の戯言から成るようだ。オリジナルのピアノ伴奏歌曲以外にチェロやヴァイオリン等によるもの、伴奏をギターに置き換えたものなどが古くから知られていて、スペイン歌曲というジャンルとしてももっともポピュラーな曲の一つだろう。15分で巡るスペイン民謡紀行という趣きの佳曲だ。


ベルガンサによる60年代の録音音源。


ギター伴奏による歌唱。


チェロとギターによる「ナナ」 人気のフランス人チェリスト:フェリー・ガイヤール。



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バッハ カンタータ BWV130<主なる神よ、われらみな汝を讃えん>



十月スタート。
昔なら、学生の制服やサラリーマンの服装も一斉に変わる時期。会計年度も下期に。万事に季節感が乏しくなったが、合理性視点からの要不要はともかく、こういう区切りを<時節>として楽しむべきかと思いますね。
さて、先週の土曜日9月29日は教会暦で、悪魔と戦い勝利した<大天使ミカエルの祝日>ということになっている。そういえば確か…とこの盤を取り出した。


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少し前に手に入れたアンセルメのボックスセット。その中の<欧州編>にバッハの作品がいくつか収録されていて、<大天使ミカエルの祝日>のためにバッハが作ったカンタータの一つBWV130があったのと思い出した。アンセルメとスイスロマンドによるバッハのカンタータは数曲が残されているようだが、このうちこのセットにはBWV67とBWV130が入っている。

BWV130はトランペット3本、オーボエ3本、ティンパニを要し、以下の5曲からなる。悪魔と戦い勝利したミカエルと天使らを讃える祝祭的な雰囲気に満ちている。

第1曲:コラール
第2曲:アルトのレチタティーヴォ
第3曲:バスのアリア
第4曲:ソプラノとテノールのレチタティーヴォ
第5曲:テノールのアリア
第6曲:コラール

第1曲から活気と喜びに満ちた響き。合唱のソプラノパートがテキストを高らかに歌い、その後ろでは他のパートがメリスマで支え、それにトランペットとティンパニが加わって気分を盛り上げる。第2曲アルトのレチタティーヴォのあと、この曲のメインともいうべき第3曲のバスのアリアが続く。終始トランペットの華やかで技巧的なパッセージが続き、それと呼応してバスも力強く、果敢に戦いに挑む様を歌う。第4曲では一転してソプラノとテノールにより、内省的な短調による短くも美しいレシタティーヴォが歌われ、戦いの終わりが示される。続く第5曲は印象的なフルートを伴ったテノールのアリア。ガヴォット風のリズムにのって明るく穏やかに天使を讃えるテキストが歌われる。終曲は壮麗なコラール。トランペットとティンパニが合唱の後押しをするように高らかに響き、天使を讃える。15分余の比較的小規模な曲だが、全編を通じて典礼的・祝祭的な明るい曲調。日本人気質かどうかわからないが、バッハというと深遠さを追い求めがちだが、こういう曲調もバッハの一面だろう。

アンセルメのバッハカンタータというと少々意外な感じもするが、以前も書いたようにアンセルメ=近代ロシア・フランス物という構図は、甚だ作られたイメージだ。バッハは至極真当。1968年の録音だが、重苦しく引きずるような19世紀的解釈は皆無。各パートともすっきりと分離し、透明な響きが確保され、解釈共々古さを感じさせない。


長らくバッハのスタンダードだったカール・リヒターによる音源。バスパートをフィッシャー=ディースカウが歌っている。


第5曲 フルートを伴ったテノールのアリア…ガンバレ!(^^;



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バッハ カンタータBWV78<イエスよ、汝わが魂を>



きのうからきょう未明にかけて台風が足早に駆け抜けた。幸い当地に被害はなく、きょうは台風一過の快晴となった。三連休最終日。これといったこともなく一日を終え、さてあすは仕事という晩。そういえば最近聴いていないなあ、バッハのカンタータ…。とふと思い出し、こんな盤を取り出した。


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きのう9月17日日曜日は、教会暦では三位一体主日後第14主日にあたると知り、この日のためにバッハが書いたカンタータから、BWV78<イエスよ、汝わが魂を>を聴くことにした。例のブリリアント版バッハ全集の一枚。このカンタータは、いわゆるコラールカンタータの中でも名曲として知られ、以下の7曲からなる。

第1曲 コラール合唱『イエスよ、汝わが魂を』
第2曲 二重唱『われは急ぐ』
第3曲 レチタティーヴォ『ああ、われ罪の子』
第4曲 アリア『わが咎を消し去る御血潮』
第5曲 レチタティーヴォ『傷、釘、荊、墓』
第6曲 アリア『今や汝わが良心を鎮むべし』
第7曲 コラール『主はわが弱きを助くと信じたり』

第1曲冒頭から半音階の下降音形による印象的なフレーズが始まる。曲はこの冒頭の音形によるシャコンヌ(パッサカリア)として進行する。第2曲ではイエスの元へと急ぐ足取りが、低弦(指定はヴィオローネ)のピチカートと無窮動風のオスティナートで表現され、それにのってソプラノとアルトが伸びやかに歌う。テノールのレチタティーヴォとアリア(フルートのオブリガートを伴い美しい)に続き、第5曲バスのレチタティーヴォ。そしてオーボエとバスによる二重協奏曲を思わせる第6曲バスのアリアへと続く。数あるバッハのカンタータの中でも名曲として知られ、人気も高い曲だけに、構成するいずれの曲も機知に富みまったく飽きさせない。特にチャーミングな第2曲と、対照的なバスによる第5曲のレチタティーヴォと第6曲のアリアは印象的だ。

ところで、ブリリアント版のバッハ全集は数年毎に新盤がリリースされている。最初のリリースは確か2000年だった。最新版は2014年に出たものが現在も流通している。先日パソコンもネットも無縁という知人が欲しいというので、代行してアマゾンで取り寄せた。一部の演奏が最新版に入れ替わっていたが、声楽曲は以前のものと同じようだ。特筆すべきは再編集によって枚数が140枚とダイエットされ、パッケージも一層コンパクトになったこと。カンタータに関しては、メジャーな録音に比べると見劣りすることもあるが、ヨーロッパで日常的に演奏されている雰囲気を楽しむにはむしろ好適かもしれない。何しろ、ちょっとした飲み代程でバッハ全集が手に入るのは有難い。


独ヴルツブルクのバッハカンタータクラブという団体よる演奏。動画コメントによれば指揮者とソプラノ、バスは日本人とのこと。


こちら方面はまったく疎いのだが、今やマタイ魔笛も歌う初音ミクによる第2曲ソプラノとアルトのアリア。



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モーツァルト<魔笛>



きょうの関東地方は朝からムッとする熱気。きのうに続き、各地で真夏日を記録した。天気予想では台風3号が接近中とか。いよいよ梅雨も後半に入って本気モードか…。 さてさて、七月もスタートし、本日もけな気に業務に精励。8時少し前に帰宅した。ひと息ついてエアコンオン。部屋も程々に涼しくなったところで音盤タイム。このところの声楽物の流れで、こんな盤を取り出した。


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モーツァルトの歌劇<魔笛>全曲盤。オットマール・スウィトナー指揮ドレスデン国立歌劇場管弦楽団による1970年のセッション録音。手持ちの盤は写真のジャケット帯でも分かるように、昭和55年1980年の来日を記念して出たLP三枚組のセット。就職して三年目、給料日には勇んでレコード屋に向かっていた頃に手に入れた。手元にある数少ないオペラ全曲盤の一つだ。主なキャストは以下の通り。

 ザラストロ:テオ・アダム
 タミーノ:ペーター・シュライアー
 夜の女王:シルヴィア・ゲスティ
 パミーナ:ヘレン・ドナート
 パパゲーノ:ギュンター・ライプ
 パパゲーナ:レナータ・ホフ

このレコードを買ってきてターンテーブルにのせて音を出したときのことをはっきりと覚えている。当時すでにN響に度々来演していたスウィトナーのことは知っていたし、モーツァルトの交響曲録音を何枚か持ってはいたが、彼に対するイメージは決してよくなく、ちょっと地味な東独の指揮者…くらいの印象しかなかった。あまり期待もせずにこの盤を手に入れたと記憶しているが、針を降ろして出てきた音に驚いた。 冒頭の序曲の素晴らしい管弦楽の響き。弦は柔らかく、管楽器はその弦楽とよくブレンドされ、一体的に響く。コントラバスの基音がしっかしと全体を支える完全なピラミッド型のバランス。そして、そうした響きが鈍重にならないようドライブするスウィトナーの運び…。序曲を聴いただけで完全にノックアウトされてしまった。

この盤は当時もそして今でも、スウィトナーの代表盤であると同時に<魔笛>の最良の演奏の一つとして評価が高い。実際、HMVのサイトでも絶賛のコメントが多い。オペラの配役をうんぬんするほどの眼力はないが、当時の東独オールスターズを配したキャストも文句なしで、特にテオ・アダムの深々としたバスが印象的だ。夜の女王は現代ならもっとドラマティックなアプローチを採るのかも知れないが、この盤で聴くシルヴィア・ゲスティの、夜の女王にしてはいささか楚々としている歌いっぷりも、スウィトナーの音楽全体の作りと調和していて悪くない。

きのうの記事にも書いた通り、言葉の壁があるオペラに関してはまったく手付かずのまま来てしまったが、そんな中で、この<魔笛>は何度も通して聴いて親しんだ。実際の舞台に接したことはないのだが、この盤を聴いていると、その音楽だけで十分に満たされるところもあって、その先に進んでいないのが現状だ。


この盤が来日記念盤となった1980年スウィトナー&ベルリン国立歌劇場来日時の舞台。第1幕。


ルチア・ポップが歌う<夜の女王のアリア> 過激な歌詞!


クラシックギター曲の定番、フェルナンド・ソルによる<魔笛>変奏曲の主題は、第1幕第17場<なんと素晴らしい鐘の響き>による。この音源では1分40秒あたりから始まる。



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カラヤンの<指環>抜粋盤



午前中、肌寒いかなと思っていたら一転。昼前後から一気に気温上昇し、久々の真夏日となった。
きのう同様、きょうも所在無く過ごす。夕方近くなって、夏の夕べのトワイライト音盤タイム。先日の記事の続きで、こんな盤を取り出した。


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ワグナー<ニーベルングの指環>の抜粋盤。カラヤン指揮ベルリンフィルハーモニーによる演奏。手持ちの盤は数年前に2枚組廉価盤で発売されたときのもので、1967~69年にかけて録音された<指環>四部作全曲盤から代表的な場面を集めて150分程にまとめられている。ワグネリアン諸氏からは、こんな抜粋盤でお茶を濁してブログ記事を書くなどもってのほか…と大ひんしゅくを買いそうだが、その点についてはまったくその通り。ひたすら頭を下げるしかない。

クラシック音楽を聴き出し、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスと時代を下りながら次第に大規模な曲、複雑な構成や和声の曲に興味が進むというのは、まあ順当な音盤愛好家のたどる道だ。その行き着く先、あるいは途中の分岐点で、ブルックナー派、マーラー派、ワグナー派、あるいはフランス近代派と分派するのも典型的な様相だ。ぼくも似たような道をたどったが、生来の与太郎気質ゆえか、どれかに徹底することなく、ちゃらんぽらんの道楽人生となった。ワグナーに関しては、学生時代にまず序曲・前奏曲といった管弦楽集に親しみ、その後楽劇全体にも興味をもつに至って、NHKFMで放送されるバイロイトのライヴ音源をせっせとカセットテープに録音した。しかし、いかんせん言葉の壁を前に登山口にたどり着いた程度で終わり、あとは山の大きさを仰ぎ見るだけとなって今に至っている。そんなわけで、いくつかの全曲盤を手元に置くようになった今も、結局は二十歳の頃のレベルから抜け出せず、この盤のような抜粋盤で聴いた気になっているわけだ。しかし、抜粋盤に取り上げられる箇所はさずがによく出来ていて、ぼくのような素人でも飽きることなく聴き通せるし、さらには、抜粋でこんなに素晴らしいのだから全曲はさぞや…と更なる探求への足がかりにもなる。

このカラヤン&BPOのダイジェストも中々よく出来ていて、四部作の聴きどころがコンパクトに収録されている。ちょっとワグナー気分…というときにはうってつけだ。特に<ワルキューレ>と<神々の黄昏>からの抜粋はいずれも昔から単独でも取り上げられることの多い<ヴォータンの別れ><魔の炎の音楽><ジークフリートの死と葬送行進曲><ブリュンヒルデの自己犠牲>といった場面が収められており、1時間で指環をという、なんちゃってワグネリアンに手頃な定食メニューになっている。
カラヤン&BPOによるワグナーの全曲録音は昔から賛否あるのだが、こうして聴くとさすがの出来栄え。ベルリンフィルの重厚かつやや暗めの音色と充実した歌手陣の堂々とした歌いっぷり、そして60年代DGの低重心な録音バランス等、非の打ち所がない。手元にある全曲盤としては、ベームのバイロイトライヴ1961年とショルティ&VPOのデッカ録音、ギュンター・ノイホルト指揮のカールスルーエ歌劇場でのライヴ盤があるが、ワグナーらしい物理的音響という点ではカラヤン&BPOが最もマッチしているように感じる。ベームのバイロイト盤はややデッドで乾いた音だし、ショルティ盤はデッカの録音ポリシーもあって、やや音色が明る過ぎるように感じる。ぼくはこれからまた指環の全曲盤をさらに増やすつもりはないが、もしこれからという輩は、カラヤン&BPOも有力候補かと思う。


カラヤン&BPOによる<ワルキューレ>の抜粋。ワルキューレの騎行は6分25分から。12分40秒からヴォータン(トーマス・ステュアート)の歌う<さらば、勇みある輝かしき子よ>(ヴォータンの別れ)続く<魔の炎の音楽>と佳境となる。


先日の記事で取り上げたクナッパーツブッシュ&VPOによる<ヴォータンの別れ>と<魔の炎の音楽>。この演奏の前には、カラヤンもショルティも顔色を失う。


テンシュテットとロンドンフィルによる1988年来日公演から<ジークフリートの死と葬送行進曲>。 5分50秒、誰か居眠りでもしていたのか、テンシュテットが靴を踏み鳴らし喝を入れる。渾身の力で応えるロンドンフィル。カラヤンが自らの後継者をして考えていただけのことはある素晴らしい演奏だ。



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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