チョイと宅録 弾き初め二題



当地関東平野北部は穏やかな正月。朝晩はこの時期相応に冷え込むも、日中の陽射し暖かく、南に面した道楽部屋の昼下がりは極楽至極だ。柄にもなく、年末に仕事の資料を持ち買ってきたが、予想通り鞄の中で年越しステイ。ボーッと過ごすのもいいが、年の初めに今年の六弦道楽満願達成を祈念して楽器を取り出した。


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相変わらず広げる楽譜は小品集ばかり。ここ数年まったく変わっていない。少しは気合を入れ、しっかりした構成の古典期ソナタや旋律をたっぷり歌わせる近代スペイン物にチャレンジしようと思うが結局のびのび先送り。そんな現状を打破しようと思いつつ…がしかし、きょうも取り出したのは佐藤弘和氏の小品集。ややこしい運指やポジショニングにあまり気を使わずに初見+アルファで楽しめる気安さと、小品ながら程よいモダンな和声感や機能和声に基づく曲想は、音楽表現のイロハを会得するには格好のテキストだと思う。

ページを開いたのは、ちょうど一年前に出た「音楽のおもちゃ箱」。副題として「初心者のための40のやさしいギター小品集」と記されている。副題の通り、収録曲の多くは音数少なく、ローポジションで弾けるものだが、短い曲でもどこか気の利いた和声やカラクリが仕込まれていて、中上級者でも飽きずに楽しめる。少し前にも何曲か弾いてアップしたが(こちらこちらも)、きょうは以下の2曲を弾いてみた。


佐藤弘和「音楽のおもちゃ箱」から「クリスマス・ケーキ」
Alla marciaと指定されている通り、楽しい行進曲。小規模ながら中間部にはトリオ相当の部位もある型通りの構成。その中間部では定石通り下属調へに転じる(この曲の場合ニ長調D→ト長調G)。


同「フェルナンド・ソル賛」
ギター弾きにはお馴染みのフェルナンド・ソルの練習曲Op.35-22通称「月光」を下敷きにしたオマージュ作品。原曲と同じロ短調を取り、アルペジオの音形や旋律線の取り方などは原曲に順じているが、各所に気の利いた転調を組み入れられていて飽きさせない。



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チョイと宅録 佐藤弘和「音楽のおもちゃ箱」より



少し前に佐藤弘和「音楽のおもちゃ箱」の紹介兼ねて1曲アップしたが、きょうはその続き。


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写真は近年、現代ギター社から発刊された佐藤弘和氏の作品集だ。佐藤氏が50歳の若さで亡くなったのが4年前、2016年の暮れだった。佐藤氏の楽譜は以前、ホマドリーム社から多く出版されていたが、同社の事業が停止となってから、その行方が心配されていた。幸い現代ギター社によって以前の出版譜の多くが復刻され、またいくつかの新しい楽譜が立て続けに出てきて、胸を撫でおろした輩も多いのではないだろうか。

写真の4冊はおおむねアマチュア初級から中級レベルを想定したと思われる内容。中では「青空の向こうに」が少し難易度が高い曲が並んでいる。いずれも見開き1ページか2ページの小品で、楽譜をサッと開いてサクサクと弾いて楽しむには絶好の曲集だ。

ひと昔前まで初級者向けの小品というと、19世紀古典ギター全盛期のカルリ、ジュリアーニ、ソルなどの作品、下って19世紀末から20世紀初頭のタレガ他のロマン派スタイルの小品と相場が決まっていた。それらの作品の良さも価値も十二分に認識しているつもりだが、現代の新しい感覚でギターに向かう、特にクラシック音楽そのものに格別の関心がない層にとっては、そうしたかつての曲が「つまらない」ものと感じられ、やがてギターから離れてしまうケースがあることも理解できる。佐藤作品はそんな状況に対する得難い処方箋にように感じる。ド素人のぼくなどが論評する立場ではないが、佐藤氏の作品に登場する多くのフレーズ、和声、展開は、現代の世に同様のサンプルがあふれている「よく耳にする」ものが多い。それをギターという制約の多い楽器で、しかも初心者向けに限られた技巧レベルの範囲で実現しているところが、一連の佐藤作品とくに小品群の素晴らしいところだと思う。

今回は今年初め2020年1月に出た「音楽のおもちゃ箱」から3曲を選んで録音してみた。いずれも1分前後の小品。初級者が少しトライすれば演奏できる技巧レベルながら、今風の響きが織り込まれ、十分楽しめる作品になっている。


「愛の歌」
開放弦の響きを生かし、少ない音数ながら和声の移ろいを感じて楽しめる。


「アルバムの綴り」
初級者には少し練習が必要かもしれない。この曲も開放弦の余韻を生かしたアルペジオにのせて、ごくシンプルなメロディが流れる。


「ブルーベリー・ワルツ」
現代版「金鳳花ワルツ」といった感じ。



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佐藤弘和「音楽のおもちゃ箱」



週末土曜日。野暮用あって午前中から外出、夕方近くに帰宅した。
夜になってようやく一服。今夜は音盤タイムはお休み。代わってギターを取り出して、ひとしきり楽しんだ。相変わらず、まとまった練習時間は取れず、朝の出勤前にストレッチ代わりのスケール練習をしたり、今夜のように少し時間を見つけては細切れ練習が続いている。練習といっても、暗譜して指板上の運指を覚えて…ということはほとんどやらない。弾ける曲、弾けない曲、いずれも楽譜から目を離さず、楽譜だけを頼りに弾き通す。まあ、練習というよりは、やはりお楽しみタイムだ。このところは、少し前に手に入れたまま手付かずだったこの曲集を開いて楽しんでいる。


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今年1月に出た佐藤弘和(1966-2016)の小品集「音楽のおもちゃ箱」。副題に「初心者のための40のやさしいギター小品集」とある。副題の通り、初心者が取り組むに相応しい技術レベルを想定し、音数は少なめ、規模も1頁に収めてある。しかし佐藤氏らしく、曲のコンセプトが明確で、4つで一組の組曲を成し、組曲が全部で10あって合計40曲の小品が収められている。

佐藤氏は作曲のモットーとして、「弾き易くわかり易くメロディックであること」また「楽器としてのギターを弾くことだけに偏りがちな傾向を打破するために、普遍的な音楽の中でのギターというものを考えていきたい」と表明している。技巧的に無理のない、シンプルで音数の少ない小品でも、豊かなメロディーと気の効いたモダンな和声が施され、弾いていて気分のよくなる曲が多い。この小品集「音楽のおもちゃ箱」もその方針は貫かれていて、初心者向けの限られた技術レベルの範囲を守りながらも、音楽として感興に富む。副題に引きずられず、中上級者も手に取れば、初見でほぼ通せるレベルながら十分楽しめるに違いない。


ページを開いてざっと通して弾いた中で、ト短調のこの曲が印象に残ったので録音してみた。「4つのロマンティックな歌」という組曲の中の第1曲「悲しい花」 楽器はエルナンデス・イ・アグアド1973


同曲 楽器をゲルハルト・オルディゲス2008に替えて。


ここ数年で録音した佐藤作品の再生リスト。全部で25曲。録音条件いろいろ、楽器もいろいろ、下手くそ変わらず…



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チョイと宅録 佐藤弘和・小品集



先週までの肌寒さはいずこへ。関東では一昨日には一気に真夏日到来。昨日も少し動くと汗ばむほどの天気だった。連休入りするも平時と変わらず。少々の野暮用と日常雑務で日が暮れた。今年に入ってから楽器を手にする時間が少し増えたのだが、その勢いで先日またまたチョイと宅録。取り出した楽譜はこれ。


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佐藤弘和「音楽のエッセイ~ギターソロのための24の小品集~」。佐藤氏が亡くなった翌年2017年春に現代ギター社より出たもの。そのタイトル通り24曲の小品から成る曲集。少し前にもこの曲集から何曲か弾いてアップした。この曲集の成り立ちについては、そのときの記事に書いた通り。佐藤氏の死後いくつかの小品集が出ているが、その中では技術的な難易度は低めで、アマチュア中級レベルなら初見で程々に弾けるだろう。より大きな曲に取り組んでいる上級者にはよい箸休めとして、気分転換以上の楽しみを与えてくれるに違いない。きょうは先日の続きで24曲の中から以下の3曲選んで弾いてみた。

「鳥が飛ぶ」 「過ぎ去りし風景」 「古風なロマンス」

この曲集の収録曲には佐藤氏による作品解説が付されている。それによると…
「鳥が飛ぶ」…鳥がすばしっこく、あっという間に飛んでいくようにすぐに終わってしまう曲。明るい南国の島のイメージ。ホ長調8分の3拍子。
「過ぎ去りし風景」…自分の好みのスタイルを意識して作った。<素朴な歌>もそうだが、揺れるような3拍子、モード(旋法)風な和声を使用。イ短調4分の3拍子。
「古風なロマンス」…出だしですぐわかるように、これは”禁じられた遊び”の真面目なパロディー。原曲そのもののイメージで。ホ短調4分の3拍子。

今回は以前から使っているZOOM社のお手軽レコーダーQ2HDを使用。何となく置いたアングルのまま録音。決して右手メインに見せようなどという意図はありません(^^; 同じ室内にあるwifiルータの影響でジーっと唸るような雑音が混じってしまった。弾き損じ共々ご容赦下さいませ。使用楽器は田邊雅啓ロマニリョスモデル2004年。前日、弦交換をしたばかりだったが、どっしりとした低音、張りと艶のある高音とで気持ちよく鳴ってくれた。もう少しきちんと弾かないと、楽器に申し訳ない気分だ。


「鳥が飛ぶ」


「過ぎ去りし風景」


「古風なロマンス」



これまで録音した佐藤弘和作品全25曲の再生リスト。録音時期・状態、使用楽器等まちまち。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLjAvYRun0efOcNIGHTFQEPoaBXUEPc4qE


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チョイと宅録 F・ソルの練習曲その2



先回に続き宅録連投!

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ソルの練習曲も難易度・長さ様々だが、ぼくのような自称初級・中級レベルの愛好家が気軽に弾ける曲はいずれも1分前後で、調性もギターでよく使われるものばかりなので譜読みで難儀するような曲はない。練習曲であるから曲ごとに練習の目的となる技術的なポイントがあるが、指の鍛錬よりは古典的な機能和声のイロハを感じる作品として好適だ。クラシックギター愛好家を自認する向きにも様々な嗜好があるだろうが、ソル作品に代表される古典作品はやはりその様式と楽しみを会得しておきたい。以下に作品31から2曲を貼っておく。例によって楽譜を広げてお気楽に弾き散らかし。楽器は前回同様、ハウザー・ヴィエナモデル1921年。スマートフォンによる録音で、かなり歪っぽい音になってしまった。弾きミス共々録り直すほどの気力もないので、諸々ご容赦下さいませ。


作品31-8。アンダンテの穏やかな曲想、ソルらしい古典的な和声が好ましい。16分音符の三度ダブルストップ下降パッセージがやや難しい。


作品31-17。アルベルティ・バスにのったピアノ曲を思わせる曲想。


以前のものも含めて全8曲(作品35-3,4,9,14,18 作品31-8,11,17順不同)の再生リストを作った。


うまく連続再生されない場合は以下のリンクをクリック。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLjAvYRun0efMkTcydcHolwga6eHzSaCbE

フェルナンド・ソルのオリジナル楽譜アーカイブは以下を参照。
https://www.guitareclassiquedelcamp.com/partitions/fernandosor.html


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チョイと宅録 F・ソルの練習曲



在宅勤務・休暇取得・週末休日…と#STAYHOMEが続く。仕事や野暮用の時間を差し引いても、自由になる時間が幾らかでも増えたのは幸いと、このところギターの練習に熱が入る。


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といっても、今更…の感もあり、そうそう大きな曲に取り組む気力もない。もっぱら「弾けそうな」楽譜を開いて、その日の気分で弾き散らかして楽しむばかりで進歩がない。先日の記事でフェルナンド・ソルとディオニシオ・アグアドの練習曲をさらったと書いたが、その流れで先日、やはりソルの練習曲をいくつか録音してみた。

ソルが残した練習曲集の中から作品31と35を選び、そこから何曲かピックアップ。かなりの数にのぼるソルの練習曲にあって、作品31と35に収録されている曲はおおむねアマチュア中級者向けのレベルだろうか。セゴビアが選んだ20編などに比べると技術的難易度は低く、取っ付きやすい。

以下に作品35から4曲を貼っておく。やはりスマートフォンでの録音は歪っぽく冴えない。次回からは少しはましなレコーダーを使いましょう。 楽器は先回同様、ヘルマン・ハウザー1世時代のヴィエナ(ウィーン)モデル。一昨年手に入れたあと、いくつか問題があったので昨年、例によって田邊さんにメンテナンスをしてもらった。田邊さん曰く「平成最後の大修理(笑)」となった内容だったが、おかげで現在絶好調。ガット弦を模した使用弦アクイーラ社アンブラ800のザラっとした感触が音にも反映されて、時々擦過音が混じるが、それも味わいとして楽しんでいる。弾き損じのアレコレはどうか大目に見て下さいませ。


作品35-3 Larghetto指定のイ短調4分の3。沈鬱と幾ばくかの明るさとが交差する。


作品35-4 穏やかなト長調4分の3。いかにもギター的な古典曲。


作品35-9 イ長調4分の4。カルカッシの練習曲を思わせる曲想。


作品35-18 ホ短調4分の2。七の和音が挿入されるなど時々モダンな響きが耳を引く。



フェルナンド・ソルのオリジナル楽譜アーカイブは以下を参照。
https://www.guitareclassiquedelcamp.com/partitions/fernandosor.html


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チョイと宅録 やさしめの練習曲その2



#STAYHOMEにジョインしよう…というわけではないが、先回の続きで、やさしめの練習曲のおさらい。広げたのはこの本。


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いつものギター練習ルーチンで時々開くディオニシオ・アグアド(1784-1849)の教則本。盟友だったフェルナンド・ソル同様、ギターの特性を生かしながら古典的な味わいに富む曲が多く、今も時々コンサートプログラムに載るアグアド作品。この教則本にも初歩的な約束事の記述やメカニックな練習フレーズ、さらにやさしめの練習曲から始まり、終盤には難易度の高い曲も載っている。いつもの練習ルーチンではその中からさほどややこしくない数曲を選んで弾いている。

先回同様、譜面台に楽譜と一緒に並べたスマートフォンで撮った音源を貼っておく。自分の意図が実際の音にどれ程反映されているかのチェックには、やはり録音して聴いてみるのが一番だ。 ギターの録音ではスマートフォンを楽器の前、数十センチ位まで近づけて置くと、比較的よい状態でピックアップできるようだ。音質はモノラルながら確認用には十分かなと感じる。音質を向上させても演奏自体が向上するわけではない。今回も譜面台にポンとおいて逆光MAX。「あってはならない」弾き損じも有り。自分で思っている以上に下手くそだとよく分かる…嗚呼

楽器:ハウザー・ウィーンモデル 1921年作
弦:アクイーラ社 アンブラ800 ピッチ:A≒415Hz

アグアド教則本のレッスン番号No.109(下記25曲選のNo.1) 可愛らしいワルツ。久しぶりに取り出した使用楽器が身体に馴染んでおらず、ハイポジションの押弦ミス多発…ゴメンナサイ。


アグアド教則本のレッスン番号No.132(下記25曲選のNo.9) 弱起の曲でフレーズをどう取るかがポイントかな…


アグアド作品のリンク以下。教則本(Méthodes pour guitare)も含まれている。
https://www.guitareclassiquedelcamp.com/partitions/dionisioaguado.html
教則本の中から25曲を選んだ楽譜が以下。
http://wayback-01.kb.dk/wayback/20101028103544/http://www2.kb.dk/elib/noder/rischel/RIBS0010.pdf


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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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