ここ数日、寒波到来で寒い日が続いている。電気料金アップ対応で拙宅ではエアコン暖房禁止令が出され、アラジンストーブが全開運転中。おかげで灯油はガンガン消費する。お得なのはいずれか…怪しいところだが、ひとまず原始的に化石燃料直接消費の一択で残る厳寒期を乗り切る計画だ。 さて一月最後の週末。少し時間があったのでギターを取り出し、久しぶりに録音を試みた。

弾いた曲はフェルナンド・ソル(1778-1839)の練習曲作品33の22。日本では「月光」の名で親しまれている一曲だ。クラシックギターを始めて初級から中級に差し掛かる段階で、ほとんどの人がこの曲をさらう。ロ短調4分3。淡々としたアルペジオが続く一見単純な曲だが、同じモチーフを繰り返し提示しながら、その都度ちょっとした和声の変化を施すあたりがソルらしく、多くのギター愛好家に好まれる。特にアンドレス・セゴビアが編んだ「ソルの20の練習曲」ではオリジナルのアレグレットの指定を変えてモデラートとし、ロマンティックな解釈でこの曲のイメージを定着させた。 ぼくがこの曲を初めて弾いたのは、ギターを始めて半年ほどたった頃だったように記憶している。その後しばらく好んで弾いていたが、あまりにポピュラーで、いささか手垢が付き過ぎた感じがし、その後は弾くことはなくなってしまった。

久々にこの曲を意識したのは3年前のこと。コロナ禍になる直前に発刊された佐藤弘和氏の小品集「音楽のおもちゃ箱」の中に「フェルナンド・ソル賛」としてこの曲のオマージュ作品があったからだ。このオマージュ作品が中々の秀作で、原曲と同じ規模の小品ながら、多様な和声感によって古典的な原曲を現代風に色付け、大いに楽しめる作品だった。そうして、あらためてソルの原曲を眺めると、練習曲という性格から、簡素な形式と限られた技法の範囲を守りながらも、学習者に古典的素養を備えさせようとする意図がよくわかる。
ソルの練習曲作品33-22。例によって深夜の食卓テーブルでチョイ録。 何年ぶりかと思うほど久しぶりに弾いた。あれこれミスを修正する気力なく、弾きっぱなしのお粗末です。
こちらは佐藤弘和氏によるオマージュ作品。以前撮ったものを貼っておく。
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少し前から興味もっているアーネスト・シャンド(英1868-1924)の作品。その後、運よく楽譜も手に入れ、時々弾き散らかして楽しんでいる。

昨年、左手人差し指が不調になってから、まともに練習をする気にならなくなり、このまま我がギター道楽人生もフェイドアウトするのか…と、いささか意気消沈していたのだが、その後指の状態も一進一退で、ならばと最近になってまた楽器を意識的に手に取るようになった。そんな折に、これまでほとんど接することがなかったアーネスト・シャンドの作品に触れた。
程々の難易度、明解でキャッチ―なメロディーラインと定石ながら気の利いた和声進行。品のいいサロン風の親しみやすい曲想で、弾くのも聴くのも心地いい。初見大会で遊んでばかりではナニかなと思い、一曲選んで久々に録音でもしてみようと、弾きやすそうでかつ親しみやすい曲として「Legende」作品201を選んだ。
この曲は難所というほど技術的にややこしいところはないが、何カ所からあるポジション移動であわてないよう注意が必要だ。テンポの加減速やメロディーの抑揚は、曲想にそっていけば自然とついてくる。いくつかある大胆な転調は十分意識して緊張しながら楽しむ…まあ、そんなところだろうか。
まず最初は楽譜を手に入れた翌日の晩、初見で探り弾き。当然あちこちミスを連発しているが(特にポジション移動のところで)、少しさらえば弾けるかなあという感触。ハウザー・ヴィエナモデルの楽器でピッチA≒415Hz
その後、時折り弾いているうちに要所を何となく暗譜したこともあり、カジュアルに通して弾いてみた演奏。ポジション移動でミス有り。メロディーラインのタッチもあいまいで和声に埋もれたり、凸凹があったり…
上の録画をした翌日、テンポを少し下げ、ポジション移動とタッチの改善を目指して再録音。足台も使って少しきちんと臨んだが、つまらない演奏になってしまった。それと演奏開始前にエアコンをオフにしたのだが、その影響で室温がわずかに上がり、高音弦のチューニングがずれてしまった。
…というわけで、ほぼ一年ぶりの録音は課題を残しつつ、ひとまず終了。折をみて他のシャンド作品にもトライしてみようと思う。
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昨年後半あたりから、ギターを弾いているとき左手人差し指に違和感を感じるようになった。今年の春先頃にはその違和感がはっきりした痛みに変わり、人差し指を曲げようとすると第一関節に痛みが走るようになった。しばらく様子を見ていたが改善しない。道楽ギター人生もこれまでか…。心配になって整形外科を受診すると「へ―バーデン結節」確定診断。レントゲンを見ると、人差し指第一関節の軟骨が減っていて、対向する骨が直接当たっている状態だった。比較的初期段階のようで、今のところ指の変形などはない。但し明確な治療法はなく、現状より悪化させないように付き合っていくしかないというのが現実のようだ。
これまで何十年もギターを弾いてきて、今になって指の故障に見舞われるとは思いも寄らなかった。元々練習熱心でもなく、ここにきて急に練習量が増えたわけでもないが、昨年秋以来、時間があれば朝練に精出していたのが要因の一つかもしれないし、もちろん加齢もあるだろう。まあ、よく分からないが現実問題として付き合っていくしかないなあと、いささか意気消沈の日々が続いているが、しかし、このままではいけないと、不調の指をかばいつつも先日来楽器を取り出し、指の負担を考慮しながらギターを弾いている。


数年間から時折りさらっているカルカッシ「25の練習曲」作品60。特に昨年、コロナ禍で在宅時間が増えたこともあって、これまであまり手を付けていなかった後半の曲をひと通りさらった。そして練習曲という枠を越え、古典的な小品として十分楽しめることも今更ながらに確認した。マッテオ・カルカッシ(1792-1853)の教本や練習曲はクラシックギター愛好家のほとんどの人が古典のテキストとして取り組む課題だろう。一方、修得が進むとあまり面白くないなあとも感じ、より充実した和声感をもつフェルナンド・ソルなどに興味が移るのが一般的だ。確かのその通りではあるが、カルカッシの教本や練習曲、特に作品60「25の練習曲」は中々捨てがたい。若い頃に一度接して、その後疎遠になっている輩も、もう一度取り組んでみると、ぼくと同じような感慨をもつかもしれない。
楽器を取り出したので、ついでも録音もしてみた。これまで録音していない2曲選んでチョイ弾き@深夜の食卓テーブル。例によってテイクを重ねる気力もないので、あちこち制御しきれていない音やミスもあるがご容赦を。
第16番ヘ長調。
第8番イ長調。
数年前に録音したものも含めた「25の練習曲」から9曲の再生リスト。
https://youtube.com/playlist?list=PLjAvYRun0efNzj41ayqkwX7nnC_lymnUN
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数ヶ月前から左手人差し指の調子が悪く、時折り第一関節に痛みを感じるようになった。バネ指の前触れかと思い整形外科を受診すると、なんと「へバーデン結節」確定診断。レントゲンをみると人差し指第一関節部の軟骨部がほとんど無く、対向する骨が直接接している状態と分かった。ギター弾きあるあるの症状で、今のところ程度は軽いが用心しないといけない。ひとまず、なるべくギターは弾かず、気休めのテーピングも施しながら様子見が続いている。そんな状態ではあるが、昨晩、楽器を手にして弾いてみると痛みもほとんどなく調子がいい。それじゃあと、チョイと宅録。こんな楽譜を広げて遊んでみた。

80年代初頭に出た江部賢一編曲のポピュラー曲集「華麗なるギター・ソロ・アルバム(1)」。現在まで多くのポピュラー系編曲の曲集を出している江部氏だが、この曲集はまさに出世作とも言うべきものだった。発売当時、クラシックギタースタイルの初めて「使える」ポピュラー曲集として人気を博した。当時のポピュラーアレンジというと、メロディーラインに簡単なコードをぶら下げた程度の安直なもの、つまりは「使えない」曲集が多かったが、この江部編の楽譜はテンションノートを含むほとんどの音が記譜されていて、きちんと弾けば十分な感興が得られる初めての出版だった。しかし代償として難易度は高く、アマチュア中級レベルでは「使える」が「弾けない」アレンジでもあった。その後、難易度を下げた第2集が出たが、今度は面白みがなくなってしまった。
この楽譜を手に入れてからかれこれ40年になるが、今でも時折り引っ張り出して楽しんでいる。収録されている27曲は、映画音楽、ボサノバ、ジャズスタンダード、ヒットポップスなど、いずれもぼくら世代には懐かしく、また今でも定番曲として親しまれている曲ばかりだ。先に記した通り、クラシックギタースタイルとして記譜された通りにきっちり弾くには中々手強いが、少々音を省いたり、バックにリズム隊がいる気分になってポロポロを弾くだけでも楽しめる。クラシックギター弾き向けの気の利いたポピュラーアレンジの数少ない好著の一つだ。
先日同様、深夜のダイニングテーブルに楽譜を広げてチョイ弾き。70年代にヒットした「IF」。今でも時々耳にする。この曲集の中では一番難易度が低い(^^)。 例によってあちこちほころびがあるが、ご容赦下さいませ。
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手持ちのギターの中の1本、南ドイツ・ライスバッハのハウザー工房1921年作が今年ちょうど百歳を迎える。

3年程前に手に入れたハウザー・ヴィエナ(ウィーン)モデル。入手当時大きな不具合はなかったが製作から100年を経過し、細かな部分で気になるところがあってあちこち手を入れた。現在はベストな状態になって味わい深い音を奏でてくれている。少し間から左手の指の調子が悪いこともあって、このところ通常のモダンギターより張力の低いこのギターに手が伸びることが多い。楽器の詳細は以下の記事に書いた通り。
http://guitarandmylife.blog86.fc2.com/blog-entry-1921.html
http://guitarandmylife.blog86.fc2.com/blog-entry-1949.html
20世紀初頭というとすでにスペインを中心に現在の一般的なクラシックギターと同形状のギターが作られていた時期になる。当時ハウザー工房ではドイツ伝統のシュタウファー系列のギターやドイツラウテ、チターなど多様な楽器を作っていたが、ちょうどその頃にスパニッシュスタイルのモダンギターも作り始めたようだ。セゴビアがハウザーのギターに出会ったのもその頃だった。
大雑把な言い方をすると、いわゆる19世紀ギターと現代のモダンギターの中間的な特性をもつように感じる。このヴィエナモデルに最初に出会ったときはその特性から、相性のよい楽曲分野との兼ね合いが今ひとつ分からずに、入手に二の足を踏んでいた。しかしその後数年たった2018年に再び出会った際は、その独自の風貌やネック調整機構のギミックなどもあって、音は二の次で手に入れた。 手に入れてしばらく弾いているうちに、最初に出会ったときの懸念は払拭された。モダンギター程ではないが、19世紀ギターに比べ表板の面積が大きいことからずっと豊かに鳴る。何より高音と低音のバランスがいいので、静まり返った夜半に軽いタッチで弾いていても不満なく楽しめる。
弦はガット弦を模して作られているアクイーラ社のアンブラ800(19世紀ギター用ローテンション)を張っている。高音側3本の表面に僅かなざらつきがあり、その手触りと擦過音が古風な音色を醸し出す。おそらく爪を切って指頭奏法で弾いた方がこのギターにはマッチするように思う。いずれトライしてみよう。
夜半のダイニングテーブルに楽譜を広げて2曲弾いてみた。例によってあちこち弾き損じがあるが大目に見て下さいませ。
ソルの練習曲作品35-17。楽譜はこちらのオリジナル版。広く使われているセゴビア編といつくかの相違がある。
バッハのチェロ組曲第1番のサラバンド。
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当地関東平野北部は穏やかな正月。朝晩はこの時期相応に冷え込むも、日中の陽射し暖かく、南に面した道楽部屋の昼下がりは極楽至極だ。柄にもなく、年末に仕事の資料を持ち買ってきたが、予想通り鞄の中で年越しステイ。ボーッと過ごすのもいいが、年の初めに今年の六弦道楽満願達成を祈念して楽器を取り出した。

相変わらず広げる楽譜は小品集ばかり。ここ数年まったく変わっていない。少しは気合を入れ、しっかりした構成の古典期ソナタや旋律をたっぷり歌わせる近代スペイン物にチャレンジしようと思うが結局のびのび先送り。そんな現状を打破しようと思いつつ…がしかし、きょうも取り出したのは佐藤弘和氏の小品集。ややこしい運指やポジショニングにあまり気を使わずに初見+アルファで楽しめる気安さと、小品ながら程よいモダンな和声感や機能和声に基づく曲想は、音楽表現のイロハを会得するには格好のテキストだと思う。
ページを開いたのは、ちょうど一年前に出た「音楽のおもちゃ箱」。副題として「初心者のための40のやさしいギター小品集」と記されている。副題の通り、収録曲の多くは音数少なく、ローポジションで弾けるものだが、短い曲でもどこか気の利いた和声やカラクリが仕込まれていて、中上級者でも飽きずに楽しめる。少し前にも何曲か弾いてアップしたが(こちら、こちらも)、きょうは以下の2曲を弾いてみた。
佐藤弘和「音楽のおもちゃ箱」から「クリスマス・ケーキ」
Alla marciaと指定されている通り、楽しい行進曲。小規模ながら中間部にはトリオ相当の部位もある型通りの構成。その中間部では定石通り下属調へに転じる(この曲の場合ニ長調D→ト長調G)。
同「フェルナンド・ソル賛」
ギター弾きにはお馴染みのフェルナンド・ソルの練習曲Op.35-22通称「月光」を下敷きにしたオマージュ作品。原曲と同じロ短調を取り、アルペジオの音形や旋律線の取り方などは原曲に順じているが、各所に気の利いた転調を組み入れられていて飽きさせない。
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少し前に佐藤弘和「音楽のおもちゃ箱」の紹介兼ねて1曲アップしたが、きょうはその続き。

写真は近年、現代ギター社から発刊された佐藤弘和氏の作品集だ。佐藤氏が50歳の若さで亡くなったのが4年前、2016年の暮れだった。佐藤氏の楽譜は以前、ホマドリーム社から多く出版されていたが、同社の事業が停止となってから、その行方が心配されていた。幸い現代ギター社によって以前の出版譜の多くが復刻され、またいくつかの新しい楽譜が立て続けに出てきて、胸を撫でおろした輩も多いのではないだろうか。
写真の4冊はおおむねアマチュア初級から中級レベルを想定したと思われる内容。中では「青空の向こうに」が少し難易度が高い曲が並んでいる。いずれも見開き1ページか2ページの小品で、楽譜をサッと開いてサクサクと弾いて楽しむには絶好の曲集だ。
ひと昔前まで初級者向けの小品というと、19世紀古典ギター全盛期のカルリ、ジュリアーニ、ソルなどの作品、下って19世紀末から20世紀初頭のタレガ他のロマン派スタイルの小品と相場が決まっていた。それらの作品の良さも価値も十二分に認識しているつもりだが、現代の新しい感覚でギターに向かう、特にクラシック音楽そのものに格別の関心がない層にとっては、そうしたかつての曲が「つまらない」ものと感じられ、やがてギターから離れてしまうケースがあることも理解できる。佐藤作品はそんな状況に対する得難い処方箋にように感じる。ド素人のぼくなどが論評する立場ではないが、佐藤氏の作品に登場する多くのフレーズ、和声、展開は、現代の世に同様のサンプルがあふれている「よく耳にする」ものが多い。それをギターという制約の多い楽器で、しかも初心者向けに限られた技巧レベルの範囲で実現しているところが、一連の佐藤作品とくに小品群の素晴らしいところだと思う。
今回は今年初め2020年1月に出た「音楽のおもちゃ箱」から3曲を選んで録音してみた。いずれも1分前後の小品。初級者が少しトライすれば演奏できる技巧レベルながら、今風の響きが織り込まれ、十分楽しめる作品になっている。
「愛の歌」
開放弦の響きを生かし、少ない音数ながら和声の移ろいを感じて楽しめる。
「アルバムの綴り」
初級者には少し練習が必要かもしれない。この曲も開放弦の余韻を生かしたアルペジオにのせて、ごくシンプルなメロディが流れる。
「ブルーベリー・ワルツ」
現代版「金鳳花ワルツ」といった感じ。
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