アルベルト・ポンセ(G)



雨が降ったりやんだりの日曜日。風邪はほぼ収束するも、何かする気力もなく、終日所在なく過ごす。夕方近くになって何気なく音盤棚を見回し、こんな盤を取り出した。


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フランスのギタリスト:アルベルト・ポンセ。
ポンセ(1935-)は演奏家としてよりは指導者としての印象の方が強いだろう。パリ・エコールノルマル音楽院の教授を務め、ローラン・ディアンスはじめ、福田進一、村治佳織などパリで学んだギタリストの多くはポンセに教えを受けている。取り出した盤は十数年前にネットで箱買いしたLP盤数百枚の中に入っていたもの。1976年仏ARIONレーベルの盤。ポンセはこの頃同レーベルから数枚のアルバムを出していたようだが、今となっては少し珍しいものかもしれない。

収録曲はA面にリョベートやプジョール、B面にはピポー、デ・ラ・マーサ、ブロウエル、ヴィラ・ロボス、セルヴァンテス、カルレヴァーロの作品が入っている。A面冒頭のリョベート;スケルツォ・ワルツから切れのいい技巧と抜群のリズム感、そして流れるような曲の運びだ。プジョールの小品(Cubana,Tonadilla,Tnago,Villanesca,Scottish mandrileno)も美しいメロディーを趣味のいい歌い口で聴かせる。ピポーの歌と踊り第1番もあっさりとした軽みのある演奏、デ・ラ・マーサのハバネラやヴィラ・ロボスのショーロもラテン演歌調にならず趣味がいい。
この盤は総じてラテン系のメロディアスな曲が収められているが、こうしてポンセの演奏で聴くと、ラテンという言葉からイメージするイタリアやスペイン、中南米系の系譜ではなく、『ラテンの雄;フランスの薫りかくや』と思わせる。強烈なタッチやヴィブラートとルバートで押してくるようなラテン系譜とはかけ離れていて、リズムやアーティキュレーションの切れがよく、歌い方も粘らず実に趣味がいい。久々に聴いたが、いいアルバムだ。


この盤録音と同時期1975年の映像。こういう右手タッチの形も最近は見られなくなった。



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プチ本番予定



mixiのコミュニティーに<クラシックギター・プチ発表会>というものがある。人前で弾く機会をもって、日頃の成果を発表するもの。練習の励み、場慣れ、といった副次的目的もある。主催者が適当な会場を押さえ事前告知、参加希望者はエントリーして当日現地集合。15~20分の枠で好きなように弾く。参加者は演奏者であると同時に聴衆。互いに弾き、聴くという、ごく内輪の地味といえば地味な企画だ。それでもギター人口の多い関東一円では京浜地区を中心に毎週何箇所かで開催されている。ぼくは2011年にひょんなことからmixiに入ったのをきっかけに何度か参加したのだが、ここ数年すっかりご無沙汰。たまたま今月末に当地で開催の報があったので久々にエントリーすることにした。


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…とはいっても、日頃の練習もしていないし、常備している手持ちの曲もない。20分の時間枠を埋めるべく、何とか楽譜を追いながら止まらずに弾ける曲でいこうかと思案中だ。楽譜の棚をざっと見回し、過去に弾いた曲もあたり、バッハのチェロ組曲第1番の抜粋をメインにすることにした。プレリュードとサラバンド、それとメヌエット1・2。これで9分程度。あとは昨年いくつか演奏動画をアップした佐藤弘和氏の小品か、あるいはソルの小品をいくつか弾こうかと考えている。

チェロ組曲をギターで弾くにあたっては、まず楽譜の選択が必要だ。全曲版として手元にあるのは、40年以上前に世界に先駆けて出た小船幸次郎版、同じく日本人の佐々木忠による十数年前に出た版、Melbay社のイェーツ版、それと原曲チェロ版(ベーレンライター版)がある。原曲のチェロ版からの編曲に当たってはギターでの調の選択と、ポリフォニックな処理としての音の付加が鍵になる。先日来それらの版を見比べながら第1番を弾いているのだが、どの版にしようか決めかねている。佐々木忠版は原曲ト長調に近い一音違いのイ長調を選び、更に低音の音域確保のためイ長調ながら6弦をDに下げている。その結果、全体に落ち着いた響きでチェロによる原曲の音響イメージ近い。イエーツ版はハ長調。原曲への付加音が比較的少なくすっきりした印象で悪くないが、ハ長調という調性はギターでは案外弾きにくいところがある。今のところ全曲版先駆への敬意を込め、小船幸次郎版で弾こうかと思っている。本当は第1番全曲を弾きたいのだが、小船版のアルマンド、ジーグは付加音された音がかなり多く、しかもそれらの不自然さがどうしても気になってしまいパス。上記の3曲に留める予定だ。


数年前にmixiの集まりで弾いたときの音源。このときも第1番から抜粋でプレリュード・サラバンド・メヌエット1/2を弾いた。途中何度も止まって弾きなおすという<あってはならない>失態を繰り返してしまった。こっぱずかしいけど貼っておこう(^^; 楽器は英チャペル社オリジナルの19世紀ギター(1860年頃)。アクィーラ社の19世紀ギター用ナイルガット弦(アンブラ800)を使用。室内騒音多し。クッション付きの椅子の座り心地が演奏には最悪で、往生した記憶がある。



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バッハで初見練習



ギター弾きの中には、ソロを弾いているときはかなりの難易度の曲を弾きこなしているにも関わらず、ちょっと二重奏で遊びましょ、と楽譜を広げて合わせると思いのほか弾けない輩が多い。あれだけ弾けるなら、このくらいの二重奏は初見でいけるだろうという当てがまったくはずれることがしばしばだ。他の弦楽器や管楽器の連中に比べ、ギター弾きの初見能力が格段に低い現実をみると、彼らとの差を痛感する。


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初見に強くなる方法については、おそらくネットに様々なアイデアやノウハウが出ているだろうから、それらを参考にするのもよいだろうが、やはり基本は多くの楽譜に触れることだろう。以前、スケール練習についての記事を書いた。その中では、マンドリンやヴァイオリン向けの教則本に出いているエチュードも有効だと記したが、先日YOUTUBEでこれはいいかも…というものを見つけた。まあ、もったいつけるほどの話ではない。以下の貼った楽譜付きの音源に合わせて、その楽譜を弾くというもの。

例えばこれ。バッハの協奏曲ト長調BWV980。画面上に流れる大譜表の上段を音源に合わせてギターで弾く。調性もギターで弾きやすい調だし、ほとんどがローポジションで弾ける。旋律楽器のエチュードに比べ、和音を基本とした音形が多く、ギター曲によくあるパターンが盛り込まれている。余裕があれば、下段の低音も所々入れる。32分音符の速いパッセージなどは飛ばしてもよいだろう。多声になっているところ、密集した和音などで無理がある部分は、とっさの判断で重要度の低い音を省略する。


もう一つこれはどうだろう。同じくバッハの協奏曲ロ短調BWV979。こちらもギターで扱いやすい調性だし、音域も低い。ここでも、多声になっているところ、密集した和音などは、いくつか音を省略してもいいだろう。



いずれも、音源と同じ速さで、ともかく止まらずに弾き通す。画面では赤いマーカーがあるので、落ちることはないだろう。ぼくなりの判定基準では、この2曲が音源のテンポで一緒に弾き通せれば(もちろん初見で)、<初級に近い中級レベル>は合格かなと思う。ソルのやさしい二重奏程度は初見で合わせられるだろう。おそらくまともなプロ奏者なら、二段譜を合わせて程々に音の取捨選択をして、適切なテンポで独奏曲として弾けるに違いない(もちろん初見で)。

以下はヤマハが設定した初級の初見課題例。初級者なら一応音を間違えずに出すレベル。中級者なら、曲の構成(形式)、テンポ等を30秒程で把握し、曲想は弾きながらナチュラルに引き出す…という感じかな。
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カリン・シャープ(G)



先日の記事に書いたアナベル・モンテシノス。彼女のCDと一緒に知人U氏からお借りした盤がもう一枚あった。…U氏、どうみてもジャケ買いだな(^^;


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ドイツ生まれで現在オーストラリア在住のカリン・シャープ(1973-)のギター。独白(Soliloquy)と題された盤。彼女のデビュー盤にあたる。1995年に録音され2002年にリリースされている。収録曲は以下の通り。

1. 深想(バリオス)
2. ワルツ第3番(作品8より)(バリオス)
3. ワルツ第4番(作品8より)(バリオス)
4. ソナタ(ホセ)
5. ステレ(記念碑)(ホートン)
6. 舞踏礼讃(ブローウェル)
7. ギターのための4つの気晴らし(ブラカニン)
8. ダンサ・ブラシレーラ(ブラジル舞曲)(モレル)

このブログではもっともらしくギター弾きを自認して与太記事を書いているが、ぼくは昨今のギター事情にはまったく疎い。今をときめく人気ギタリストについてもまったく不案内。カリン・シャープも今回この盤で初めて聴いた。1995年の録音からすでに20年余が経っていること、またこのデビュー盤のあともコンスタントにアルバムをリリースしていることから、すでに中堅奏者という位置付けになるだろう。彼女はドイツで生まれ、5歳で母親の手ほどきでギターを弾き始めたそうだ。8歳のときオーストラリアに移り住み、10代でいくつかの国際コンクールで入賞して世界的なキャリアが始まったと、この盤のライナーノーツに記されている。この盤に収められている曲は、いずれもギターの特性を生かした技巧が盛り込まれているが、どれも高いレベルで難なく弾き切っていて、世界的にもトップレベルの一人であることがすぐに分かる。

収録曲のうち、19世紀的手法で書かれているバリオス作品をのぞくと、いずれも20世紀の音楽。ブローウェルは前衛的要素を含むが、それ以外は調性感もしっかりしたモダンな和声と、ギター特有の技法を盛り込んだ佳曲が並んでいる。モーリス・ラヴェルに賞賛されながら、スペイン内乱で短い命を終えたアントニオ・ホセ(1902-1936)のソナタはレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサが1934年に第1楽章のみ初演を行ったものの、その後忘れた存在だったが、1990年に楽譜が出版された。このカリン・シャープの録音がこのソナタの世界初録音だと、何かで読んだ記憶がある。曲の規模、内容からしても、20世紀のギターソナタとして定着しつつある曲の一つだ。イリーナ・クリコヴァも2009年録音のナクソス盤でこのソナタを録音している。ホールトン、ブラニカンという二人のオーストラリア人作曲家の作品は、いずれもこの盤で初めて聴いた。このアルバムに付された「独白」というタイトルをそのまま音にしたような作品。ともに4つ楽章から構成され、それぞれが異なる心象風景を語るような作品。調性感は強く聴きやすい佳曲だ。

この盤を聴き、そしていくつか見たYOUTUBE音源から、彼女の技巧レベルが極めて高いことが分かる。この盤でも、高速パッセージ・ポジション移動・トレモロ等、いずれもまったく不安を感じさせない。優秀な録音がとらえたその音も、いかにも現代的なクリアーでキレがあり、また低音から高音まで豊かな響きに包まれ、申し分がない。ライナーノーツによれば使用楽器はサイモン・マーティーの1995年作とのこと。偶然だが、イリーナ・クリコヴァそして先日記事に書いたアナベル・モンテシナスも同じサイモン・マーティーの楽器を使っていて、90年代終わりから現代までサイモン・マーティーの楽器はプロ奏者御用達の一つとして定着している感がある。もっとも、たまたま見たカリン・シャープの動画によると、最近になってアナ・ヴィドヴィッチと同じジム・レッドゲートに変えたようだ。


アルベニス<アストリアス> 音を聴く限り、何箇所か編集カットされているようだ。


歌伴も


カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲


アントニオ・ホセのソナタ



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アナベル・モンテシノス(G)



昨年秋に拙宅へ遊びに来てくれた知人U氏が、「与太さん、これ聴いてみてよ。」とCDを貸してくれた。


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スペイン出身で現在オーストリー在住のアナベル・モンテシノス(1984-)のギター。2011年録音のナクソス盤。ナクソスはかねてより若手ギタリストの録音に積極的で、国際コンクールで優勝した奏者へのインセンティブという形でCDを製作し、新人実力派の発掘に尽力している。アナベル・モンテシノスは2002年タレガ国際コンクール、2010年ミケーレ・ピッタルーガ(アレキサンドリア)国際ギターコンクールで優勝、それを受けて最初のアルバムを2003年に、そして今回の録音と、共にナクソスからリリースしている。YOUTUBEでは以前から彼女の演奏に接していたが、きちんとCDで聴くのは今回初めて。二作目のこの盤の収録曲は以下の通り。

グラナドス~モンテシノス:詩的なワルツ集、ゴヤのマハ
ファリャ~ベーレント:代官の踊り
リョベート:クリスマスの夜、盗賊の歌、聖母の御子
ロドリーゴ:スペイン風の3つの小品(ファンダンゴ、パッサカリア、ザパテアード)
キローガ~トレパト:タトゥー、おおマリア、緑の瞳
ソル:魔笛の主題による変奏曲Op.9
プホール:トナディーリャ、タンゴ、グアヒーラ

王道のスペイン物が並ぶ選曲。中ではキローガの作品が少し珍しい。ソルを除きいずれもスペイン近代の作品ではあるが、曲想は19世紀ロマン派プラス20世紀のスパイス少々。唯一古典期作品のソルが少々違和感がないでもないが、古典の解釈も聴けるという意味では悪くない選曲だ。

国際コンクール優勝者らしい切れのいい技巧とブリリアントな音。スピーカで聴いていると、サイモン・マーティー製ギターの特性もあってか、ふと二重奏かと錯覚するほど響きが豊かだ。表現としてはかなりロマンティックで、テンポ・音色とも積極的に変化させている。古典期での作品でこれをやられると鼻に付くところだが、ことスペイン物をモダン楽器で弾くということであれば十分納得の解釈。技巧に難があると、そうした解釈が<ごまかし>に聴こえることもあるが、その点はさすがに不安はない。 スペイン物らしいキャッチーなメロディーとリズム、わずかに効いた近代的な和声のスパイス。高い技巧と豊かな響き。モダンクラシックギターの今を聴くには好適のアルバムだ。


この盤の冒頭に入っているグラナドスの詩的ワルツ。おそらくこの盤の録音セッションでの光景。


同。ファリャの三角帽子から<代官(市長>の踊り>。ジークフリート・ベーレントの版を使用。


ビジュアルも一級のラテン美女だ。


アナベル同様ミケーレ・ピッタルーガ優勝者で夫君のマルコ・タマヨと。
う~ん、仲良すぎるゾォ~!(^^;



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フェルナンド・ソル/ソナタ ハ長調作品15-2



数日前から手を焼いていた案件がようやく収束見通しとなり、ルンルン…まではいかないが、少々安堵して退勤。ホッとひと息の週末金曜日となった。 そういえば、このところまともに楽器を触っていないなあと思い、今夜の音盤タイムは取り止め。やおらギターを取り出した。


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昨年から今年年頭にかけて、小品を気ままに宅録して遊んだが、その後、演奏録音はすっかりご無沙汰だ。そもそも楽器に触れることが少なくなってしまった。時間がないわけというのは言い訳にもならないだろうが、楽譜をみて初見プラスアルファで弾けるような小品ばかりなぞっていないで、少しは気合入れてチャレンジするような曲に取り組もうとも思うが、それから先が進まない。まあ意欲減退という感もある。…と、ブツブツ言ったところで始まらないなあと思い、今夜はソルの作ったソナタから作品15-2をさらってみた。

フェルナンド・ソル(1778-1839)はいくつかの重要なソナタを残しているが、その中で作品15-2ハ長調のこの曲は、単楽章ながらセオリー通りのソナタ形式を踏襲し、しかも中級程度の技巧レベルで何とか楽しめる貴重な作品だ。全体と通してストレートな古典的表現が貫かれ、ソルの真骨頂である多彩な和声感には乏しい。モダンギターで弾くと手の小さいぼくなどは左手の拡張で少々難儀するところがあるが、その他は何とか通せるレベル。弦長640mm以下の19世紀ギターなら、ずっと弾きやすくなりそうだ。
曲はハ長調の明快な主題で始まる。そのまま弦楽四部で弾けばカルテットで成立しそうな曲想。程なく柔和な第2主題がト長調で現れ、一旦終始してから展開部へ移る。初めて弾いても曲の構成が一度で理解できるほどで、ソナタ形式の入門にはうってつけの曲だ。

少し前の記事に書いたマティエカのソナタやジュリアーニのいくつかのソナタ、そしてこのソルの作品15あたりは、自称中級のギター弾きが古典様式を実感しつつ楽しめる曲。流行りのカッコいい曲あるいは弾けそうにない大曲ばかり追いかけないで、こうした古典中の古典のアレグロをしっかり弾くたしなみも大切だろう。


Boijeコレクションにある楽譜はこちら

セルシェルの音源。


少々録音状態に難有りで残念だが。



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イリーナ・クリコヴァ(G)-続き-



きのうに続き、イリーナ・クリコヴァの盤を聴いている。


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ロシア出身のギタリスト;イリーナ・クリコヴァ。十年近く前からいくつかのコンクールで優勝し話題になっている若手ギタリストで、ナクソスレーベルから3枚のアルバムが出ている。きょう取り上げる盤はそのうちの最初の盤で、2011年11月に録音されている。収録曲は以下の通り。申しわけ程度の付いている<アルハンブラの思い出>に違和感を覚えるが、他はそれぞれに聴かせどころの多い楽しめるプログラムだ。

・J.S.バッハ;無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV 1007
・フェルナンド・ソル;ファンタジア第7番 Op. 30
・マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ;ギター・ソナタ ニ長調 Op. 77
・ホセ・マリア・ガジャルド・デル・レイ;カリフォルニア組曲
・フランシスコ・タレガ;アルハンブラ宮殿の思い出

ひと昔前のギタリストの演奏は曲の難所あるいは肝心なところで必要な音が確保できずに、聴く側も本来の音楽に安心して耳を傾けられないことも多かった。しかし最近の若いプレイヤーにはそういう心配は極めて少ない。クリコヴァもその例にもれず技巧的なレベルが極めて高く安定していて音楽そのものに傾聴できる。更に彼女の愛器;サイモン・マーティーから繰り出される音には浸透力とパワーがあり、しかもそのパワーをよくコントロールしている。

バッハは静かで思慮深い趣きのプレリュードで始まる。この開始を聴くだけでクリコヴァが単なるパワーと技巧だけの奏者ないことは十分わかる。やや遅めのテンポで息の長いフレージングで悠々と奏でられるプレリュードは、まさにプレリュードの名に相応しく、そのあとに続く舞曲群への期待が高まる。よくこのプレリュードを朗々と歌い切ってしまう演奏があるが、ギターであろうとオリジナルのチェロであろうと、やはりここは抑制を効かせて弾くべきだと思うがどうだろう。続くアルマンドも一音一音つぶ立ちのいい音でゆったりと弾き進める。クーラントは技巧の切れの良さがよくわかる弾きぶりで、ときどき繰り出すフォルテも余裕があって好ましい。サラバンドもかなり遅めのテンポで、深い呼吸を感じるフレージングだ。

ソルの幻想曲。やはり名曲。序奏に続く変奏曲も、同時代の凡百の変奏曲とは一線を画す。各変奏が単なる技巧的なバリエーションに終わらず、多彩な和声に彩られ美しい。クリコヴァはもちろん余裕をもってこの曲を弾き進めるが、こうした和声の移ろいも十分感じ取っているのがよく分かる演奏だ。後半のアレグレットでの重要な付点音符の扱いもいいし、長い休符前後の間合いなども配慮が行き届いている。

テデスコのソナタはボケリーニへのオマージュという副題が付いているように前古典的色合いの濃い名曲。ここではクリコヴァの技巧レベルの高さとパワフルな音が全開。古典へのオマージュという観点では違うアプローチもあるだろうが、この曲の持つモダンな側面を完全に表現し切っているし、決してパワーで押し切る感じはなく、各楽章の性格もよくその違いを表現していて不足はない。

レイのカリフォルニア組曲は少し前にmixi仲間の発表会であるメンバーが弾いたのを聴いて初めて知った。1985年に書かれた作品で、第1曲のプレリュードなどは一聴してバッハ;無伴奏チェロ組曲を模していると分かる。バロック期の組曲スタイルながら、後期ロマン派から現代ポピュラーへつながる和声を感じていたら、ライナーノーツにバッハとラフマニノフにインスパイアされた曲と記されていて納得。現代風のポピュラリティーの強い曲で、近年人気曲の一つだ。

ついでながら…この盤のジャケットにはクリコヴァが優勝した2008年のアルハンブラ国際ギターコンクールのロゴが入っている。このコンクールはスペインの量産ギターメーカーであるアルハンブラ社がスポンサーについている。どうりで、もう1枚のCDには使用楽器としてサイモン・マーティーの名が記されているがこの盤にはその記載がない。楽器メーカーであるスポンサーへの配慮だろう。


ドイツのギター販売会社Sicca社の動画。2008年作のホセ・マリンで弾くトローバのソナチネ。軽く発音するホセ・マリンだとクリコヴァの強いタッチに負け気味。もっとも、この曲はもう少し軽く洒脱に弾く曲かとも思うが…


ショパンの編曲物もタレガ以来いくつかが知られるが、これくらい安定した技巧で弾かれればギターでも楽しめる。米国のギター販売会社GSI社の動画。セゴビアが使用した1969年ラミレス3世ギターとのこと。


カリフォルニア組曲から<プレリュード>


同組曲の<ワルツ> 1929年製ハウザー1世による演奏。



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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