METのコレクション



実はアメリカは未だ見ぬ国の一つ。仕事でもプライベートでも縁なく今に至っている。もし彼の地を訪れたら行きたい場所の一つがメトロポリタン美術館(MET)だ。


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METには多くの美術工芸品、歴史的遺産があるが、それらに混じって楽器類のコレクションも多い。その数が世界の他の美術館、博物館に比べ多いのか少ないのかは寡聞にして不案内ではあるが、幸いなのはそれらの楽器を使った美術館内での演奏をYOUTUBEで公開していることだ。楽器も名器、演奏者も名手。 そのいくつかを以下に貼っておく。


1940年ハウザー1世。ホルヘ・カヴァレロによる演奏。
バッハの無伴奏フルートパルティータBWV1013からアルマンド。


ラベルにフェルナンド・ソルのサインが入ったラコート(ジュリアン・ブリーム所有)による演奏。
スタロビンによるマティエカのメヌエット。


クリストファー・パークニングが使っていたラミレス3世。



クラシックギター全部のプレイリスト
https://www.youtube.com/watch?v=2LimbuditYM&list=PL8HAkqKX065D5z2aREqWjjvKFLh27IRfq


17世紀のオリジナルリュート他によるプレイリスト。
https://www.youtube.com/watch?v=0QD1rEuqL3A&list=PL8HAkqKX065DON5asamLyu4ptRmqkA7Og


MET全体のプレイリスト
https://www.youtube.com/user/metmuseum/playlists


ギターのコレクション
http://www.metmuseum.org/art/collection/#!?q=guitar&perPage=20&sortBy=Relevance&sortOrder=asc&offset=0&pageSize=0



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糸巻き



ギターネタを続けましょう(^^;
ギターを構成する部品のうち重要なものの一つに糸巻きがある。ギター用糸巻きにはヴァイオリン族と同じような木ペグ仕様もあるが、現代のクラシックギターの多くは、メーカー製のギア式メカのものが取り付けられる。星の数ほどではないにせよ、糸巻きも様々なメーカー・モデルがある。ギターを買うときは糸巻きも付いているのでそれを使うわけだが、故障で交換したり、オーダー楽器の際に糸巻きも指定する場合は、多くの選択肢から選ぶことになる。糸=弦を巻くという本来の機能に装飾性も加わって、ギターの価値を高めるアクセサリーでもある。その選択は中々楽しくも悩ましい。以下、手元にある(あった)楽器の糸巻きの写真とインプレッション。


米国スローン社製。10年以上前のモデル。当時としてはデザイン・性能とも評判が高かった。
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米国スローン社製。近年のもの。以前とギア仕様が変わった。巻き心地が向上。
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ギルバート。サイモン・マーティーに標準装備。いかにもメカニックで極めて堅牢な作り。巻き心地はまずまず。
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独ライシェル社製。ハウザーに標準装着されている。やや硬めながら確実なアクション。
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独ルブナー社製。シンプルなデザイン、価格も低めだが、やや硬めながら悪くない。これに似た独シェラー社製(下記シャラーではない)のものがある。
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独シャラー社製の廉価なモデル。見た目、使い心地とも価格相応。
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後藤ガット製。当地が世界に誇るトップメーカー。フステロ風の王冠付きデザイン。螺鈿細工の天使が舞う。
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西フステロ社製。昔からラミレス他スペイン製ギターの多くに標準装着されていた。同社は2011年に営業を停止。市場にはまだ流通在庫がある模様。
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19世紀ギター;仏ラミー社の楽器に付いていたもの。極めて滑らかかつ確実な使い心地。
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19世紀ギター;英シャペル社の楽器についていたもの。これも素晴らしい巻き心地。この時代のツマミはもちろん象牙。王室御用達のマークも。
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真打!ロジャース。シンプルながら気品あるデザイン。気持ち悪いほど滑らかな巻き心地。少し前までは最高級糸巻きといえばロジャース一択だったが、最近は、アレッシー、バルジャック等選択肢が増え、また古くからあるメーカーもハイエンドモデルを次々に出し始めている。
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糸巻き交換の様子




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NHKBSプレミアム<美の壺>ギター特集



先日、懇意にしているギター製作家:田邊雅啓さんからメールがあった。
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与太さん、こんばんは。
毎週金曜日午後七時半より、BSプレミアムにて『美の壺』という番組があります。来週21日はギターが特集で、私もクラシックギターの製作家として、短時間ですが、出ることになりました。もし可能ならば見て頂けると嬉しいです。実演等は準備の成果もあり。良い出来と思いますが、コメントはうまく話せずにボツになったか、ナレーターか、代弁してくれているのではと思います(^^;
===============================

…とのこと。<美の壺>はぼくもちょくちょく見る番組の一つ。定かではないが、楽器が取り上げられるのは初めてではないだろうか。番組HPには「クラシック・ギターからエレキ・ギターまで、使いやすさや豊かな音を求めた独特のフォルムを紹介。杢(もく)と呼ばれる模様を持つ、貴重な木材を使ったものや、精緻な貝の装飾など、芸術の域に達したギターが勢ぞろい!日本各地のギター工房でギターの造形美に迫りながら、ギタリストの村治佳織と渡辺香津美が、演奏とともにギターの美しさを語る。」とあった。番組紹介のショートムービーには村治佳織がトーレス(おそらく)を弾く姿も…。

美の壺「ギター」
http://www4.nhk.or.jp/tsubo/x/2017-07-21/10/19686/2418231/



ギターに馴染みのない方は意外と思われるかもしれないが、装飾性という観点からみると、ギターは楽器の中で最も見どころのあるものの一つだ。弦楽器という枠組みでみても、機能美に徹したヴァイオリン族とは対照的に、ギターは古来、様々な意匠性のある装飾が施されてきた。おそらく今回の番組では、その辺りにスポットを当てたものになるだろうと、楽しみにしている。


そんなこともあって、三連休最終日の日曜日のきょう、ことのついでに今手元にある楽器の装飾、とくにサウンドホール周りの通称ロゼッタといわれる部分の写真を撮ってみた。様々な色や模様は1mm以下の細かな木片が組み合わされて出来ている。日本の箱根細工と似た技法だ。その昔、何も知らないガキの頃は、印刷したラベルでも貼ってあるのかと思っていた(^^; 昨今は、デザイン、色合いとももっと意匠性にこだわったギターもあるが、ぼく自身は伝統的で地味な木質系デザインが好みだ。


サイモン・マーティー:2006年
SMarty (560x560) DSCN5999 (560x560)

ゲルハルト・オルディゲス:2008年
G_Ordiges (560x560) DSCN6002 (560x558)

ホセ・ラミレス3世:1978年
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ヘルマン・ハウザー3世:2006年
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英チャペル社:1860年代
こちらは貝殻を使った螺鈿。胴周りの白いパーフリングは鯨の髭。
Chapple (560x560) DSCN6008 (560x558)

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以下は美の壺に出演予定の田邊さんのマイギター。どこもかしこも高い工作精度で作られていて、いつ見ても惚れ惚れする。もちろん音も極上だ。
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ロゼッタの作成


ギターの製作を10分で紹介



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オーガスチン弦の怪(再掲)



先日知人から、以前のアノ記事がもう一度見たいのだが、見つからない…との問い合わせがあったので再掲する。この記事を書いた数年前の時点では多くのギター愛好家には初耳の話で、mixiの仲間内でも少々話題になったもの。現時点では多少アップデートが必要な内容もあるが、そのまま記しておく。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-

◆ 黒・赤・青の高音弦はまったく同じもの
ギター用ナイロン弦の元祖;オーガスチン社の弦には古くから黒・赤・青のパッケージがあり、この順番でテンションが強くなる…というところまでは70年代からの共通認識であったと思うが、実はこの3種類の高音弦はまったく同じもの。テンションの違いはそれぞれの低音弦の違いだということに1年ほど前に気付いた。このことを話すと多くのギター弾きから「えっ?そうなの」と言われる。


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最近オーガスチン弦の黒・赤・青はダダリオ社プロアルテ弦の様なパッケージに変り、裏面には弦のゲージが記されている。高音弦の数字は3種類とも同じ。販売店でのバラ売り価格も同じ。同社HPによれば、この3種に使われている高音弦は<Classic>と称し、ローテンションだと記されている。その上のテンションに<Imperial>があり、さらにその上に<Reagal>があるとも書かれている。一方低音弦には<Black><Red><Blue><Gold>がある。この低音弦<Black><Red><Blue>が高音弦<Classic>と組み合わされてお馴染みの3つのパッケージが出来上がっている。これは最近になってそうなったのか、昔からそうなのかはよく分からない。

最新の弦テンション情報。2017年5月5日現在:Classic・Regal・Imperialの三つの使い分けがはっきりした。この表によると、Classic・Regal・Imperialの区分けは高音弦による。低音弦はClassic・Regal・Imperialとも各テンションごとに同じもの。つまり高音弦3種類、低音弦4種類の組み合わせで12種類のパッケージが出来上がっている。現代ギター社ならこれら組合せパッケージがすべて入手可能なようだ。
詳細はこちら → http://www.albertaugustine.com/classical

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◆ 不良弦が多いと言われるが…
また不良弦と多いと言われるオーガスチンの高音弦だが、その理由は「音質重視のため、古いデュポンの成型機を使い続け、音程を整えるための研磨を一切していないからだ」とAria創業者;荒井史郎著「ギターに魅せられて」に書かれている。しかし、最近のオーガスチン高音弦をみるといくらか乳白色に見えて、完全なクリアナイロンとは違うように感じる。もしかすると音程確保の研磨工程が入っているのではないかと思ってしまう。それにそもそも弦自体の音程不良より、押弦時の力の入れ具合による音程の変動の方がずっと大きいと感じていて、私自身は音程に関してオーガスチンの高音弦を気にせずに使っていた。

◆ 結局どうなのよ
この話、オーガスチン弦の黒・赤・青パッケージの高音弦は<Classic>という名のローテンション仕様でみな同じという件について決着をつけるべく、オーガスチン社のサポート宛にメールで問合せたところ早速返信があった。問い合わせた内容は「以前は黒・赤・青の高音弦はそれぞれ別物だったように記憶しとるが、いつから変ったんじゃい?」「ナイロンがやや乳白色に見えるが、以前はクリアで透明だったんちゃう?」という2点。以下がオ社からの返信だ。

Dear Maestro YOTA
Thank you for your message. No, the Classic trebles have always been the same. We merely added the information you saw online so that we might help our customers avoid confusion.
Also, we have not changed the Classic nylon formula, and yes, it is a bit milky. If you would like a crystal clear Augustine String, I suggest you try our Regal and Imperial trebles, coupled with your favorite Augustine basses!
Warm regards,
Stephen

…昔から同じだヨン。みんなが混乱しないようにサイトに追記したまでよ。仕様も変っていないヨン。クリアがよけりゃ、リーガルかインペリアル買ってチョ。…まあ、そんな内容だ。ちなみに国内ディーラー元締めの荒井貿易にも問い合わせてみた。以下が荒井貿易からの返信。

マエストロ与太様
お問い合わせいただきましてありがとうございます。
オーガスチン黒・赤・青の高音弦ですが、基本的に同じ物です。(リーガルはまた別です。)
これは以前からそうなのですが、オーガスチンがRED1弦などバラ弦もカラー別にパッケージを用意している事から別物という認識がされている場合が多いのが現状です。(当社も一時期まで別物という認識を持っていた時期もございました。)  色に関しましては、製造方法に関しては変更されておりませんので材料の微妙な変化だと思われます。ご参考になりましたら幸いです。

…基本的には同じ物です…<基本的には>少し前からよく使う常套句だが、じゃ<応用的には>どうなのよと突っ込みたくなるなあ。いずれにしても荒井貿易も気付かないで別物として扱っていたということがはっきりした。仕様についてもよくわかっていない様子。 そんなこととはつゆ知らず、長い間、大方の愛好家は黒・赤・青の高音弦は別物と思っていて、雑誌のコメントでもそれらしい表現があったり、我々もその違いを実感するような感覚を抱いてきた。クラシックギターの弦の評価に関してはオーディオ評論に近い、かなり怪しい世界のように思うことしきりだ。


◆ 更なる疑惑
その後同社のパッケージを見ていてまたぞろ疑問が出てきた。本当だとしたらかなりショッキングなので小声で言おう。実はオーガスチン高音弦<Classic>はダダリオ社プロアルテ弦のノーマルと同じではないだろうかと疑い始めている。そう思い始めている根拠は以下の3点。


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(1)パッケージが酷似
以前オーガスティンのセット弦パッケージは透明ビニール製の袋に入っていた。ところが1年程前からプロアルテのエコパッケージのような紙製の袋に入っている。しかもその形状、外形・切り欠き形状などがそっくりなのだ。但しパッケージの中の1本1本弦の包装は異なる。

(2)ゲージが酷似
プロアルテは以前からパッケージにゲージを表記している。一方オーガスチン弦はついこの間までゲージ表示をしていなかったが、(1)の紙パッケージになってから表示を始めた。インチ表示において小数第3位を四捨五入するとまったく同じ表記になる。

(3)弦の見た目が酷似
手持ちのデジカメで二つの会社の3弦を接写してみた。左からプロアルテ・オーガスチン、そして参考用にハナバッハの3弦を並べた。ハナバッハが完全なクリアナイロンなのに対して、プロアルテとオーガスチンはやや乳白色が混ざっていて、その度合いもほどんど区別できない。 もっともこんな素人のデジカメ写真で判定できるものではないが…


以上3点。もちろんいくらでも異論は出るのは承知だ。以前に記事にも書いた通り、オーガスチン社は弦の仕様は昔から変えていないというのだが、どうもクサい。売れ筋の廉価ノーマル弦に限ってプロアルテとオーガスチンは共通仕様でコストダウンを図っているのではないかと。 もちろん音が違うという意見が山ほど出てくるだろう。品質が比較的均一と思われる楽器(例えば河野ギターやヤマハ等)を2本用意して、同時比較出来ればその判定も可能だろうが、オーディオのブラインドテスト同様、音の記憶に頼る判定は中々難しいと思う。 


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中出ギター在庫確認



少し前の話になるが、昨年末から今年始めにかけて、中出敏彦ギターの都内販売店在庫をほぼ全数確認してきた。前後して中出氏とも数年ぶりに電話で話をし、近況を伺った。日本におけるギター製作草分け中出阪蔵氏の次男中出敏彦氏は1932年生まれ。国内の製作家の中での最長老の一人だ。ちなみに兄の輝明氏は数年前80歳になったのを期に完全引退した。


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今回試奏したのは全部で4本。音はいずれも良好。30年ほど所有していた1983年製の同氏の楽器と比べるとずっと男性的でパワフル。以前に比べ低音もよく出るようになっている。かつては120号、160号、200号という価格設定をし、実際には大幅値引きという二重価格のような状態だったが、現在は正常化?して40号・50号(横裏板インドローズ)、60号・80号・100号(ハカランダ)というラインナップ。ただし100号はほぼ特注品としてヘッドの装飾等と入れたもので、実質的には80号が最上位モデル。また豊富な材料在庫もすでに<良材しか>残っていない様子で60号で十分良質な印象だ。高い値付けで売れないよりは、60号でたくさん売れる方を選択し、手持ちの材料を使い切ってより多くのギターを作り、世に出したいという意向のようだ。試奏した4本の印象は以下の通り。

(1) 60号 松・ハカランダ 650mm 都内某A店
横裏のハカランダ材はいかにも真性ハカランダという感じの漆黒の板目良材。サウンドホールから除くとセンター両脇にも裏打ちの板があることから、裏板は4ピース構成と思われる。セラック塗装の仕上げはほどほどの鏡面状態。音質良好。低音も力があり、高音も明るく鳴る。以前所有したいた同氏の楽器と比べると、ずっと男性的。弦の張りはやや強く感じる。

(2) 60号 松・ハカランダ 650mm 都内某B店
横裏のハカランダ材はやや明るい茶色ながら柾目の良材。こちらの裏板は2ピースのブックマッチ。表板、横裏板とも、セラック塗装はきれいな仕上がり。音は今回確認した中では一番良かった。低音もしっかり出ているし、高音も艶やかに伸びて良好。

(3) 60号 松・ハカランダ 650mm 都内某C店
(4) 60号 松・ハカランダ 640mm 都内某C店
2本とも横裏ハカランダは某A店同様の漆黒の板目真性ハカランダ材。セラック仕上げも某A店在庫品と同レベル。640mmの(4)はボディーもやや小ぶり。ネックもやや細め(50.5mm)で弾きやすい。音は明るく鳴り、手元の音量感は650mmよりある感じ。少し離れて聴くと(3)650mmの方がエネルギー大。音は某A店とほぼ同じ感じで良好。ただ、低音がやや弱い印象だったが、同日・同条件の比較でないので確かではない。

…と、ざっとこんな感じだ。調査時点からすでに2ヶ月ほど経過しているので、現時点での在庫状況は変化していると思われる。
敏彦氏というと、必ずエルナンデス・イ・アグアドのもとで学びと紹介されるが、同工房にいたのはごく短期間であってその工法をすべて学び、帰国後再現しているわけではない。実際、敏彦氏の作った楽器でアグアドと同じボディシェイプのものは見たことがないし、その音ももちろん違う。アグアドをトレースするなら他の楽器の方がいいとぼくは感じている。しかし、現代の若手製作家がうらやむような良材を使い、高い工作精度で堅実に作られた中出ギターの音が悪かろうはずはない。また幾多の改良を経て、70年代80年代の個体よりは2000年以降のものは確実に音がよく、特に低音が充実しているように感じる。

中出氏との電話やり取りでは、ギターを作っているときが一番体調がいい、休んでどこかへ出かける方が疲れる、あさ明るくなると起きて製作に取り掛かり、夕方暗くなる時間には終了とのこと。仕事の手も圧倒的に早く根っからの職人気質の敏彦氏。父親の阪蔵氏(1906-1993)が最晩年まで製作を続けていたこともあるし、敏彦氏は体型や風貌も父親によく似ていることから、まだまだ元気で製作を続けてくれることだろう。


父中出阪蔵氏についてはこちらを

かつてのNHK教育テレビ<ギターを弾こう>でのひとコマ。アントニオ古賀が講師をつとめた1983年当時の映像。敏彦氏の父中出阪蔵氏がゲスト出演した



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マイ・ギター海を渡る



ぼくの手持ち楽器のうち2本が海を渡った。
実は少し前に話があり、シンガポールでアマチュアギタリストによるちょっとしたイヴェントに参加することになり、先日楽器2本を事前搬送ということで……というのは作り話(おいおい、冗談にもほどがあるぞ)。
送った先は一昨年からたびたびコメントを寄せてくれていた<みっちゃんさん>のところ。渡ったのは東シナ海ではなく玄界灘、いや関門海峡(^^;。当地を出て二日後には福岡県某所のみっちゃんさん宅に無事到着した。なんでまた。


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熱心なギター愛好家であるみっちゃんさんとのコメントのやり取りがメール交換に発展。ギターの話題でいろいろと交流を深めてきた。その過程で、ぼくの持っている楽器を彼の元に送って弾いてもらおう、知ってもらおうと考え、ぼくの独断で手持ちの<ゲルハルト・オルディゲス><田邊雅啓>の2本を強制送付した次第。 彼の持っている楽器との比較、周囲の仲間の楽器との比較や試奏インプレッションなど、ぼくとしても興味あるところだった。相手の顔が見えないネット上のやり取りであっても、次第に人柄や感性は伝わってくるものだ。みっちゃんさんとはそのあたりの共振周波数が合った。

写真はみっちゃんさん宅に、きょうまでに揃ったギター6本。左から…
 ・丸山太郎
 ・寺町誠
 ・独ハニカ社
 ・ケネス・ヒル
 ・ゲルハルト・オルディゲス
 ・田邊雅啓

近々みっちゃんさん宅にてご友人の楽器も更に加わり<ギター弾き比べの儀 in 福岡>の盛大なバトルが催される予定。ぼくも参加したいところだが、ちょっと遠いなあ…。みっちゃんさんからは報告をいただける見込みなので、届いたらこのブログで紹介したい。乞うご期待。


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ヤマハCG192…その後



昨年秋、必要あって調達したヤマハの量産ギターCG192のその後について記しておく。


201701_Yamaha_CG192.jpg


手に入れてから4ヶ月。この間、自宅で使ったり、知人に貸し出したり、あるいは合奏で使ったりと、それなりにこの楽器について見聞が進んだ。入手時に書いた記事では、少々リップサービスも含めて、この<つるしのギター>を絶賛したのだが、その後手持ちの楽器と弾き比べた結論としては、全体的な好印象は変わらないものの、さすがにまともに作られたハンドクラフト製には、一歩も二歩も譲るというのが偽らざるところだ。

入手時に張ってあった<ヤマハハイテンション弦>というヤマハのカタログにはない弦(おそらくサバレス社のアリアンス弦)では音量感はあるものの、杉表板との相性もあってか、高音の透明感が乏しく、やや濁ったような響きが気になっていた。しかしサバレスのカンティーガ・クリエーション(1・2弦=ニュークリスタル、3弦=アリアンス、4~5弦カンティーガ)のノーマルに変えてそれはかなり改善された。それでも、手持ちの他の楽器、田邉雅啓氏のロマニリョスモデルやオルディゲス、ハウザー3世などと比べると響きの純度は劣る。CG192を弾いたあとで、そうした楽器で同じフレーズを弾くと、一気に艶やかで広がりのある響きに包まれ、そりゃそうだよな、と納得する。単純な音量感も特に低音域で見劣りする。どっしりとしたピラミッドバランスの低音をもつ田邉ロマニやオルディゲスとはもちろん比較にならないが、CG192とほぼ同じG#付近の低音ウルフを持ち、摩天楼型音響バランスのハウザー3世やラミレスとの比較でも、力強さ、音のエネルギーとも劣る。そしてもちろん、量産品ゆえの全体の作り、工作のしつらえなどは、目をつぶらざるをえず、丁寧に作られたギターが放つ存在感、風格はない。そうした音以外の要素も、弾き手の<気分をあげる>要素として重要だ。

…とネガティブな面ばかりを書き連ねたが、先回の記事に書いたこのギターへの好感は変わらない。つまり、量産ギターとしては異例といっていいほど丁寧に作られ、低音から高音まで均一に鳴り、サステインも良好といった、基本的な要素については十二分に及第点をあげたい。日常的に座右において気軽に扱えるギターがほしいという向きには選択肢の一つとして有力だろう。


正月の弾き初めにはこのCG192を使った。一つだけ貼っておく。他はこちらこちらも。他のギターと弾き比べた録音もそのうちまた。


ヤマハの中国生産拠点での量産ギターラインの様子。ぼくのような量産品のメーカー勤務経験がある者にはギター量産の様子もまったく違和感はない。工場はいずこも同じだなあという印象だ。


こちらは浜松工場でのグランドカスタムGCシリーズの生産模様。一般の個人製作家と変わらない。



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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