ハウザー2006年の弦交換 2023年夏



先日のアグアドの弦交換のあと、事のついでに他の楽器もケースを開き弦の状態を点検。昨日は久しぶりにハウザー2006年作のケースを開けたところ、5弦がサドル部で切れているのを発見した。思い起こせば随分長いこと弦を替えていなかったなあと反省。さっそくこちらも交換となった。 弦交換はギター弾きのちょっとしたお楽しみ。手持ちの弦を物色して、さてどれを使おうかと思案。先日のアグアド同様今回も、今どきの定番弦ではなく、これまで使っていなかった少しマイナーなものを使ってみようと、この弦を取り出した。


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「ラ・ベラ」ブランドのEliteシリーズ900番。だいぶ前に現代ギター社に行った際、営業担当K氏の薦めもあって手に入れた。ラ・ベラは古くからあるアメリカのブランド。ぼくがギターを弾き始めた70年代には割とポピュラーだったと思うが、その後あまり見かけなくなっていた。近年になって新しいシリーズにリニューアルされたこともあって、再び日本でもバリエーション含めて流通している。今回選んだEliteシリーズ900番は、低音弦がゴールドのメッキ仕様で、かつ表面が研磨されているのが最大の特徴だ。金色のメッキ色はその昔よくあったが、昨今はシルバー色のものが多くゴールド色はマイナーな存在だ。高音弦も低音弦に合わせるように黄金色に着色されていて、全弦金色仕様はちょっとしたインパクトがある。例によって張ってから二日ほど置き、音出し確認となった。


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低音弦の研磨やコーティングは、巻線での左手フィンガーノイズ低減のため昔からあるものだが、ぼく自身はあまりいいイメージがなく使ったことがなかった。今回あらためてのその音とノイズ低減効果を検分したのだが、結論としては音質への影響よりフィンガーノイズ低減の効果の方によりメリットを感じ、決して悪くない選択だと認識した。研磨なしの低音弦に比べれば僅かに高次倍音が少ないと思うが、音量やサステインは平均的で特に劣るところはない。もちろんビーンというメリハリのある低音を好む向きには物足りないかもしれない。

高音弦は通常のナイロン弦を変わらない組成と思われるが、その色合いの見た目の印象に影響されるのか、芯のある音で明快に鳴るように感じる。手触りもやや柔らかい感じの低音弦に比べて、しっかりとした印象。右手・左手とも指先への応答がいい感じで返ってくる。3弦のハイポジションはナイロン弦の宿命でどうしてもサステインは短めとなり、鳴り方もボケた感じになるものだが、そうしたネガティブな要素も控えめで、いつもなら3弦だけはカーボン弦に替えたくなるのだが、この弦はそのままでも許容できる印象だ。

初めて使ったラ・ベラELITE900番。低音弦のノイズ低減効果は絶大。高音弦も好印象のセットだった。アグアド使いのレオナルド・ブラーボ氏がブラックナイロン高音弦の900Bを愛用していると聞いた。機会があればそちらもアグアドで試してみよう。


低音弦のフィンガーノイズを比較してみた。
アグアドに張ったルシエールとハウザー2006年に張ったLaBella ELITE 900


いつもながら参考にならない音源でスミマセン。



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アグアドの「再」弦交換 ノブロック→ ルシエール



つい先日、弦を張り替えたエルナンデス・イ・アグアド。そのとき使ったノブロック社エリサカス弦について…3弦5フレット以上の音色、鳴り方が楽器や自身の感性にマッチすれば良い選択肢になると思う…と結論めいたことを書いたが、結局アグアドとは今一つマッチせず、気分が上がらないまま弾き続けるのもナンだなあと思い、数日も経たないうちに取り外してしまった。やれやれと思いながら張り直し。選んだのはこの弦。


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ルシエールのPopular Supuremeというモデル(ミディアムテンション)。ルシエールはもともとアメリカのメーカーだったが、数年前に創業者が亡くなり一旦事業を停止。幸いその後ほどなく、設備他をスペインに移設しmade in Spainの弦として再出発となった。ルシエール弦はフラメンコ用として重宝されていた弦で、ぼくもフラメンコギターに熱心な下北沢フォルテ楽器へ行った際、一度使ってみようかと思い手に入れた。

弦自体はフラメンコ用として何か特別な仕様になっているわけではない。パッケージにもClassical/Flamencoと記されている。高音弦は透明度の高いナイロン弦、低音弦は銀巻線で、いずれもごく一般的な外観だ。いつも通り3弦のみカーボン弦(例の釣り糸)に替え、二日ほどおいて初期の伸びが収まったところで音出し確認となった。

第一印象としてはごく標準的なミディアムテンションのナイロン弦という感触だが、少し弾いているとややテンションは低めで、手触りのゲージもやや細く感じる。高音の発音はすっきりと明快でサステインも良好。低音も反応よく明快で、太く重い低音ではない。総じて軽快で立ち上がりがよく、音量感も十分。成程これならフラメンコ用と言われるのもっともだと感じた。もちろん、クラシックギターとのして使うことに何の問題もないだろう。 外してしまったノブロックのエリサカスとは高音も低音も対照的な音色。ぼくのアグアドにはこの弦(通称ルシエールの赤)はよくマッチするようで、しばらくこのまま使ってみるつもりだ。


例によって参考にならないチョイ録り音源。楽器と弦の相性の良さの現れとして、1弦ローポジション、2弦中位ポジション、3弦ハイポジションとで同じフレーズを弾いた際、タッチの工夫でポジションに関わらず、かなり近い音色で発音させることができる(以下の動画の1分39秒から2分3秒あたり)。3弦ハイポジションだけ明らかに音色が変化してしまうことがなく、使いやすい。もっとも下記の音源では上述の通り3弦のみカーボン弦にしている。



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アグアドの弦交換 2023年夏



数日前の昼下がり、気分転換兼ねて手持ちギターの弦交換。手に入れてから4年になるエルナンデス・イ・アグアド(通称アグアド)を取り出した。


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クラシックギター用の弦はヴァイオリン属のそれと比べると安価だ。昨今、ご多分に漏れず値上がり傾向ではあるが、二千円前後で多くの種類が手に入る。素材の樹脂を供給するメーカーが限られることから、実質は同じあるいは類似の弦が、パッケージやうたい文句を変えて様々なブランドで流通している。今回も買い置きした手持ち在庫から、あまりメジャーではない製品を取り出し、さてどれにしようかと品定め。だいぶ前に手に入れながらずっと使っていなかったノブロック社の「エリサカス」弦を取り出した。


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ノブロック社のギター弦を知ったのは数年前だったろうか。他の弦メーカー同様、素材が異なる複数の製品バリエーションがあるようだが、今回選んだのはエリサカス:Erithacus=ヨーロッパコマドリをリアルに描いたパッケージが印象的なセット。高音弦にはバイオナイロンを採用している由。バイオナイロンといえばアクイーラ社「ぺルラ」弦が知られているが、下記の印象からしても、おそらく実質同一の弦だろう。パッケージには張替え後、最低でも12時間できれば72時間おくようにと記されている。初期の伸びが安定した頃がベストな状態ということだ。その指示に従い張り替えてから三日おいて音出し確認となった。

印象的なのは高音1~3弦の音。for guitarist who need a natural,warm and round sound…とパッケージに記されている通り、基音主体の発音で太く穏やかな鳴り方だ。爪のざらつき等によるタッチノイズも目立たない。ゲージ自体は一般的なナイロン弦と同じレベルだが、乳白色の見た目もあって少し太く感じる。弾き手の感じ方、楽器との相性もあるので一概には言えないが、マイルドなその音は場合によってはボケた音という印象にもなるだろう。サステインも短めだ。ぼくの場合1、2弦はそうした特徴の良さを実感できるが、3弦に関しては少々ネガティブな印象で、特に7フレット以上のハイポジションでは音の明瞭度、サステインともに不足気味に感じる。低音4~6弦も金属的な音とは無縁で太くふっくらとした鳴り方だ。こちらはモノフィラメントの高音弦のようなネガティブな要素は感じなかった。音量感もサステインも不足はない。

高音弦に同じバイオナイロンを使ったアクイーラ社のぺルラ弦を以前、パコ・サンチャゴ・マリンにつけたことがあったが、明るく軽やかに鳴るマリンとは楽器と弦の性格が補い合って好印象だった。ぼくのアグアドも音色としてはもちろん明るく大らかなキャラクターだが、一本調子の明るさとは異なる繊細さやよりピュアな音色をもつということもあって、1~2弦はメリットを実感するものの3弦に関してはややミスマッチだと感じるのだろう。

少ない費用で音の変化を楽しめる弦交換は、ギター弾きにはちょっとしたお楽しみ。気分転換には最適だ。ノブロック社エリサカス弦はアクイーラ社ぺルラ弦と同様、高音弦のバイオナイロンが特徴的で、一般的なナイロン弦に比べて明らかな音色変化が期待できる。3弦の5フレット以上の音色、鳴り方が楽器や自身の感性にマッチすれば良い選択肢となると思う。


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逆光に中でダラダラと音の確認。駒側の弦端末が未処理ではなはだ見苦しい(スミマセン)。こういう録音で弦の個性が分かるとは思えないが、まあちょっとしたお遊びということでご容赦の程を…


もっともポピュラーな弦の一つダダリオ:プロアルテEJ45とノブロック:エリサカスの比較。但し、このエリサカスのセットは高音弦はQZナイロンという素材。上記バイオナイロンとは違う。低音弦は同じ仕様。



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田邊ギターの弦交換



季節もよくなり、楽器を取り出す時間も少し増えてきた。楽器道楽にシーズンインという言葉はないだろうが、気分転換も兼ねてギターの弦交換。手持ちギターのうち、きょうはしばらく張り替えていなかった田邊ギターを取り出した。


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本ブログには度々登場している田邊雅啓氏に作ってもらったロマニリョスモデル。2004年作。長野県上田市の石井栄工房での年季が明け、栃木県足利市に工房を構えた直後に知り合って注文。2年程待って出来上がった。田邊氏ご本人が「初期の傑作」と自認する良品で、現代ギター2004年11月増刊「クラシック・ギター銘器コレクション」にも記載された。
弦の選択は楽しくも悩ましい作業だ。昨今、値段が上がりつつあるのもの、一般の弦楽器に比べるとひと桁安い価格で様々な種類のものが流通している。今回は手持ちの中からサバレス社のカンティーガ・クリエーション(ノーマルテンション)を選んだ。強い個性はなく、テンションも程々。明るく明快な発音で、モダンギター用としては今どきの弦の中ではほぼ定番と言える選択だろう。


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ぼくの田邊ロマニの駒は3ホール仕様。サドルと駒木部との取り合いは写真の通り。3ホールを使わず、1ホール使用でもサドルとのタッチは十分な角度が得られる。駒木部から出るサドルはほぼ直線状で、低音弦側から高音弦側への傾斜は付いていない。低音弦と高音弦の弦高セッティングは、指板の厚みを低音側に向けて薄くすることで行っている。少し前にサドルを下げてもらい、現在の弦高は1弦2.6㎜、6弦3.6㎜(いずれも12フレット上)。少々強めのタッチでもビビりはない。 ネックの反りは皆無。ネックの反りはギターの不具合のうちもっとも神経を使う。「多少の順反りは問題なし」とされることが多いが、ぼく自身はとても気になる。田邊氏によれば、これまでの修理経験でネック反りの原因の一つとして、指板とネック材の接着がゆるいケースがよくあったとのこと。自身の作でネック反りはほとんど経験していないそうだ。

例によって張り替えてから一日おき、初期の伸びが収まったところで音出し確認。古い弦との違いは低音弦で顕著。量感と深みのある低音が飛び出してきた。高音もサバレス弦らしい明るくハリのある音色。もともと木質系の穏やかな音色のぼくの田邊ギターにキラキラ感を少し足してくれる感じで良いマッチングだ。 弦も張り替え気分一新。さあ、練習に精出そう。


田邊ギターで弾いた再生リスト.。佐藤弘和氏の小品3曲。



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4減1増



「4減1増」…当地の議員定数問題で…なんて話ではなく、手持ちのギターの話。
かねてより終活に向けて手持ちの品々を漸減させようと思案し、その対象のうち最も課題の多いギターの整理に着手した。まあ、コレクター的視点で言えば5本や10本、物の数ではないわけだが、真っ当な市民感覚ではやはり問題だ。そこで昨年秋、意を決して4本を放出。委託販売をお願いした店がネットには載せずにすでに2本が売済みとなった。残る2本も全力営業中の様子。1本は苦戦しそうだが、いずれ4減が実現する見込みだ。しかし話はそれで終わらない。4減はいいとして1増って…


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悪いことに?!手持ちの2本が想定より高値で売れてしまった。こと道楽に関しては宵越しの金を持ってはいけない。そう思っているところへ、某販売店サイトにあがった1本のギターが目にとまった。ハウザー3世1990年作。サイトの紹介文曰く…

「…通常のセゴビアモデルでは設置されている2本のクロージングバー(ボトム部で扇状力木の先端を受けとめるようにハの字型に配置される)がなく、扇状力木がボトム近くまで伸びています。レゾナンスもハウザーとしては低めのF~F#に設定されています…」
「…低いレゾナンス設定ゆえのどっしりとした重心感覚を備えており、太い低音からきりっとしたシャープな高音へと繋がってゆくバランス感はこの時期の3世ならでは。またやはりスペイン的でロマンティックなニュアンスを豊富に含んだ音色も大変に魅力的…」

いかん、いかん、これはいかんやつじゃないか、放っておけないだろ…というわけで早速試奏に赴き、そして即決。1増ってハウザーしかも2本目の…マジか! そう自問しながらも心は決まり手持ち4本の放出転じて1増となった次第。自宅で手持ちのハウザー2006年と比べるとキャラクターはかなり異なる。音の均一性、凝縮感は2006年作に分があるが、今回手に入れた1990年はよりスパニッシュで開放的。レゾナンスがF~F#と低く、ボディーも軽め。高音はカリカリと明瞭に立ち上がる。こんな3世は初めて。まるで50年代の2世か、それ以前の1世を思わせる雰囲気だ。前所有者によりかなり弾き込まれているようで、少々キズはあるが音は文句なしに素晴らしい。材料もいつもながらのハウザー。表板の目はつんでいるし、横裏は板目の真正ハカランダだろうか。ネックや指板の状態、ナットやサドルのセッティングも当面そのままで行けそうだ。 4減転じて1増…まあ、3減は間違いないので、ひとまずこれで良しをしよう。ひとまずは…


逆光の中、ゆるゆると音出し確認。



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田邊三兄弟



忙中閑あり。仕事の追われているだの何だとといいながら先日、都内での仕事を早めに切り上げ、上野下谷の六弦聖地アウラへGo!となった。


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(田邊三兄弟:左から…ハウザーモデル、アルカンヘルモデル。サントスモデル)

少し前にギター製作家田邊雅啓氏より連絡があり、サントスモデルの新作が出来たので試奏しますか?とのお誘い。あいにくぼくの都合が付かず、工房へお邪魔するタイミングを逸し、結局先日、納品先のアウラにて試奏となった。折しもアウラには現在、田邊氏の以下の3本を在庫していて、それらを比較試奏することが出来た。印象がホットなうちに備忘を記しておこう。

(1)サントス・モデル 2022年新作
(2)アルカンヘル・モデル 2022年新作
(3)ハウザー1世・モデル 2018年中古

(1)サントス・モデル 2022年新作
先週末に入荷したばかりの新作。きょう現在まだアウラHPにも出ていない。田邊氏のサントスモデルは数年前に初号機が出来たとき以来、何度か弾いている。今年5月にも新作を弾き、非常に好印象だった。今回の作品も出来上がった直後に田邊氏より連絡があって「とてもいい感じに出来上がった。特に6弦は過去最高かも」との自信あふれるメッセージが届いていた。
さて、実際に弾いてみると…田邊氏自身が自ら絶賛していた低音はもちろんだが、高音もカリッと立ち上がり、音量・サステインも十分。ちょっと鳴り過ぎか?と思う程、開放的にカーンと音が抜けてくる。5月に弾いた前作より更に良くなっている。低音のボディレゾナンスはF#付近。6弦5フレット以下の量感は十分だ。低音レゾナンスのオクターブ上、5弦9フレットF#がデッドトーン気味になるのは宿命ながら、タッチで対応できるレベルで問題ない。簡単な曲を少し弾いてみると、低音・高音のバランス良く、いきなり音楽的に響いて驚いた。これまで見た田邊サントスはいずれも極めてレベルの高い出来上がり。首をかしげたくなるところは皆無。これなら店在庫、注文とも安心してチョイス出来るだろう。

(2)アルカンヘル・モデル 2022年新作
このアルカンヘルモデルは今年9月に行われたイーストエンド国際ギターフェスティバル出品作。弾き比べコンサートでは、あのホルヘ・カバジェロが弾いている。ぼくはフェスティバルには行けなかったのだが、イベント終了後、楽器が田邊工房に戻ってきた際にうまくタイミングが合って工房にお邪魔して弾くことが出来た。
この作品は田邊氏が1985年製アルカンヘルを横に置きながら製作したもので、そのオリジナル個体の色合いがよく反映されている。サントスモデルを弾いたあとだと、マイルドで落ち着いた感じを受ける。軽いタッチで楽々鳴る楽器ではなく、スイートスポットを探るように慎重に弾き進めると、深みのある音が出てくる。そういう意味ではやや通好みかもしれない。おそらく何年か弾き込んで音がこなれてくると素晴らしい楽器になるに違いない。

(3)ハウザー1世・モデル 2018年中古
このハウザーモデルは性格こそ異なるが、サントスモデルと並んで好印象だった。低音ウルフはやや高めながら6弦ローポジ全体に十分なボリュームがあり、不足感なし。高音はサントスモデル並みに反応良く、音量・サステインとも十分だった。その上で全体としてはサントスモデルよりクラシカルな雰囲気。2018年作でわずか4年経過ながら、指板や表板の感じから前所有者はかなり弾き込んでいたようで、全体に音がこなれていて発音がスムースだった。表板の塗装もやや濃い目で適度な焼け具合もあり、ビンテージ風の味わい。少々キズが多いからか価格は44万円。これは超お買い得だろう。

この日は上記田邊三兄弟の他にもいくつか興味深いギターを拝見した。しかし、あえて言おう。田邊サントスモデルを越えて興味を引くギターはなかった。田邊氏の自信作だけのことはある。近日中にアウラHPに出るだろうが、もはやそのときにはSOLDになっている可能性も高そうだ。


上記の田邊ギター:アルカンヘルモデル2022年 


上記の田邊ギター:ハウザーモデル2018年 録音レベルが少々小さいのが残念


横裏メイプルの田邊ギター2012年


クロサワ楽器在庫(現在は無し)の田邊ハウザー2018


マイ田邊ギター:ロマニリョスモデル2004年



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オルディゲスの弦交換2022年夏



先週末の日曜日、少し前のハウザーに続きオルディゲス作のギターを取り出し、久しぶりに弦を交換した。


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オルディゲスを手に入れたのは2014年。前後して何本かのオルディゲスを弾いた中で、一昨年閉店したカリス@恵比寿で出会ったのが2008年作の個体。音は一度で気に入った。いくつか細かい箇所で気になるところがあって、その後少々手を入れ、現在はベストな状態になっている。これまでごくノーマルなナイロン弦を張っていたが、少し個性を変えてみようと思い立ち、今回はアクイーラ社のアラバストロ弦を張ることにした。

ギター弾きにとって弦の選択は楽しくもあり悩ましくもある。楽器そのものと比べたら無視できる程の価格で(ヴァイオリン属に比べるとずっと安い)かなりの種類の弦が手に入ることもあって、あれこれ試したくなる。ぼくもそのくちではあるが、実際のところは「素材が同じなら、どれを選んでもそう変わらない」という印象をもっている(某著名プロ奏者も同じようなことを言っていたなあ…)。 音の記憶は実に曖昧で、弦を張り替え、すなわち何分かの時間をおいて、記憶を頼りに微妙な音の違いを区別できる能力はぼくにはない。カーボン弦と釣り糸の比較をやったときのように、同じ楽器に比較すべき弦を並べて張って弾き比べないと分からない。オーディオの聴き比べに近い状況だ。もっとも客観的に白黒つけなけばならない話ではないし、本人が感じるままに気分よく納得して弾ければそれで事済む話なので、これ以上詮索するつもりもなく現在に至っている。 一方、素材が違う場合は、記憶にはっきり残るくらい音が変化するのはぼくにも分かるし、誰しも認めるだろう。通常のナイロン弦に対して、カーボンを配合したものや組成が違うものなどは、はっきりと判別がつく。


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アクイーラ社の弦は従来のナイロン弦やカーボン入り素材と異なる素材を使った弦が何種類かラインナップされている。これまで同社のアルケミア、ペルラ、アンブラを使ったことがあるが、それぞれが中々個性的で明らかに弦で音が変わるという実感をもつものが多い。今回のアラバストロもそうした違いが実感できる弦の一つだ。 これまで張っていたナイロン弦に比べ、アラバストロを張ったオルゲディスは、この楽器が範としたハウザー1世が作られた時代の響きを感じさせる。全体に反応よく軽快に音が立ち上がり、よく鳴る。同社のペルラほどではないが、通常のナイロン弦に比べるを少し余韻は短めのようで、タッチのアタックにエネルギーがのる。音の反応はいいが、カリカリした音色ではなく、ペルラほどではないものの、やはり少し古風な響きだ。もっとも張り替え直後ゆえ、このあと初期の伸びが落ち着き、馴染んでくると、また変化するだろう。

アクイーラ社の弦が日本に入ってきたのは20年程前と記憶している。当初はその価格の高さに驚いたものだが、その後バリエーションの拡充や価格改定もあって、現在は他のメーカーとさほど変わらない価格設定になっている。一般的なナイロン弦やカーボン入り素材から変化を求めるにはいい選択かと思う。


オルディゲスで弾いた音源から4曲ピックアップした再生リスト。弦は通常のナイロン弦です。



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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