中出ギター在庫確認



少し前の話になるが、昨年末から今年始めにかけて、中出敏彦ギターの都内販売店在庫をほぼ全数確認してきた。前後して中出氏とも数年ぶりに電話で話をし、近況を伺った。日本におけるギター製作草分け中出阪蔵氏の次男中出敏彦氏は1932年生まれ。国内の製作家の中での最長老の一人だ。ちなみに兄の輝明氏は数年前80歳になったのを期に完全引退した。


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今回試奏したのは全部で4本。音はいずれも良好。30年ほど所有していた1983年製の同氏の楽器と比べるとずっと男性的でパワフル。以前に比べ低音もよく出るようになっている。かつては120号、160号、200号という価格設定をし、実際には大幅値引きという二重価格のような状態だったが、現在は正常化?して40号・50号(横裏板インドローズ)、60号・80号・100号(ハカランダ)というラインナップ。ただし100号はほぼ特注品としてヘッドの装飾等と入れたもので、実質的には80号が最上位モデル。また豊富な材料在庫もすでに<良材しか>残っていない様子で60号で十分良質な印象だ。高い値付けで売れないよりは、60号でたくさん売れる方を選択し、手持ちの材料を使い切ってより多くのギターを作り、世に出したいという意向のようだ。試奏した4本の印象は以下の通り。

(1) 60号 松・ハカランダ 650mm 都内某A店
横裏のハカランダ材はいかにも真性ハカランダという感じの漆黒の板目良材。サウンドホールから除くとセンター両脇にも裏打ちの板があることから、裏板は4ピース構成と思われる。セラック塗装の仕上げはほどほどの鏡面状態。音質良好。低音も力があり、高音も明るく鳴る。以前所有したいた同氏の楽器と比べると、ずっと男性的。弦の張りはやや強く感じる。

(2) 60号 松・ハカランダ 650mm 都内某B店
横裏のハカランダ材はやや明るい茶色ながら柾目の良材。こちらの裏板は2ピースのブックマッチ。表板、横裏板とも、セラック塗装はきれいな仕上がり。音は今回確認した中では一番良かった。低音もしっかり出ているし、高音も艶やかに伸びて良好。

(3) 60号 松・ハカランダ 650mm 都内某C店
(4) 60号 松・ハカランダ 640mm 都内某C店
2本とも横裏ハカランダは某A店同様の漆黒の板目真性ハカランダ材。セラック仕上げも某A店在庫品と同レベル。640mmの(4)はボディーもやや小ぶり。ネックもやや細め(50.5mm)で弾きやすい。音は明るく鳴り、手元の音量感は650mmよりある感じ。少し離れて聴くと(3)650mmの方がエネルギー大。音は某A店とほぼ同じ感じで良好。ただ、低音がやや弱い印象だったが、同日・同条件の比較でないので確かではない。

…と、ざっとこんな感じだ。調査時点からすでに2ヶ月ほど経過しているので、現時点での在庫状況は変化していると思われる。
敏彦氏というと、必ずエルナンデス・イ・アグアドのもとで学びと紹介されるが、同工房にいたのはごく短期間であってその工法をすべて学び、帰国後再現しているわけではない。実際、敏彦氏の作った楽器でアグアドと同じボディシェイプのものは見たことがないし、その音ももちろん違う。アグアドをトレースするなら他の楽器の方がいいとぼくは感じている。しかし、現代の若手製作家がうらやむような良材を使い、高い工作精度で堅実に作られた中出ギターの音が悪かろうはずはない。また幾多の改良を経て、70年代80年代の個体よりは2000年以降のものは確実に音がよく、特に低音が充実しているように感じる。

中出氏との電話やり取りでは、ギターを作っているときが一番体調がいい、休んでどこかへ出かける方が疲れる、あさ明るくなると起きて製作に取り掛かり、夕方暗くなる時間には終了とのこと。仕事の手も圧倒的に早く根っからの職人気質の敏彦氏。父親の阪蔵氏(1906-1993)が最晩年まで製作を続けていたこともあるし、敏彦氏は体型や風貌も父親によく似ていることから、まだまだ元気で製作を続けてくれることだろう。


父中出阪蔵氏についてはこちらを

かつてのNHK教育テレビ<ギターを弾こう>でのひとコマ。アントニオ古賀が講師をつとめた1983年当時の映像。敏彦氏の父中出阪蔵氏がゲスト出演した



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マイ・ギター海を渡る



ぼくの手持ち楽器のうち2本が海を渡った。
実は少し前に話があり、シンガポールでアマチュアギタリストによるちょっとしたイヴェントに参加することになり、先日楽器2本を事前搬送ということで……というのは作り話(おいおい、冗談にもほどがあるぞ)。
送った先は一昨年からたびたびコメントを寄せてくれていた<みっちゃんさん>のところ。渡ったのは東シナ海ではなく玄界灘、いや関門海峡(^^;。当地を出て二日後には福岡県某所のみっちゃんさん宅に無事到着した。なんでまた。


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熱心なギター愛好家であるみっちゃんさんとのコメントのやり取りがメール交換に発展。ギターの話題でいろいろと交流を深めてきた。その過程で、ぼくの持っている楽器を彼の元に送って弾いてもらおう、知ってもらおうと考え、ぼくの独断で手持ちの<ゲルハルト・オルディゲス><田邊雅啓>の2本を強制送付した次第。 彼の持っている楽器との比較、周囲の仲間の楽器との比較や試奏インプレッションなど、ぼくとしても興味あるところだった。相手の顔が見えないネット上のやり取りであっても、次第に人柄や感性は伝わってくるものだ。みっちゃんさんとはそのあたりの共振周波数が合った。

写真はみっちゃんさん宅に、きょうまでに揃ったギター6本。左から…
 ・丸山太郎
 ・寺町誠
 ・独ハニカ社
 ・ケネス・ヒル
 ・ゲルハルト・オルディゲス
 ・田邊雅啓

近々みっちゃんさん宅にてご友人の楽器も更に加わり<ギター弾き比べの儀 in 福岡>の盛大なバトルが催される予定。ぼくも参加したいところだが、ちょっと遠いなあ…。みっちゃんさんからは報告をいただける見込みなので、届いたらこのブログで紹介したい。乞うご期待。


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ヤマハCG192…その後



昨年秋、必要あって調達したヤマハの量産ギターCG192のその後について記しておく。


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手に入れてから4ヶ月。この間、自宅で使ったり、知人に貸し出したり、あるいは合奏で使ったりと、それなりにこの楽器について見聞が進んだ。入手時に書いた記事では、少々リップサービスも含めて、この<つるしのギター>を絶賛したのだが、その後手持ちの楽器と弾き比べた結論としては、全体的な好印象は変わらないものの、さすがにまともに作られたハンドクラフト製には、一歩も二歩も譲るというのが偽らざるところだ。

入手時に張ってあった<ヤマハハイテンション弦>というヤマハのカタログにはない弦(おそらくサバレス社のアリアンス弦)では音量感はあるものの、杉表板との相性もあってか、高音の透明感が乏しく、やや濁ったような響きが気になっていた。しかしサバレスのカンティーガ・クリエーション(1・2弦=ニュークリスタル、3弦=アリアンス、4~5弦カンティーガ)のノーマルに変えてそれはかなり改善された。それでも、手持ちの他の楽器、田邉雅啓氏のロマニリョスモデルやオルディゲス、ハウザー3世などと比べると響きの純度は劣る。CG192を弾いたあとで、そうした楽器で同じフレーズを弾くと、一気に艶やかで広がりのある響きに包まれ、そりゃそうだよな、と納得する。単純な音量感も特に低音域で見劣りする。どっしりとしたピラミッドバランスの低音をもつ田邉ロマニやオルディゲスとはもちろん比較にならないが、CG192とほぼ同じG#付近の低音ウルフを持ち、摩天楼型音響バランスのハウザー3世やラミレスとの比較でも、力強さ、音のエネルギーとも劣る。そしてもちろん、量産品ゆえの全体の作り、工作のしつらえなどは、目をつぶらざるをえず、丁寧に作られたギターが放つ存在感、風格はない。そうした音以外の要素も、弾き手の<気分をあげる>要素として重要だ。

…とネガティブな面ばかりを書き連ねたが、先回の記事に書いたこのギターへの好感は変わらない。つまり、量産ギターとしては異例といっていいほど丁寧に作られ、低音から高音まで均一に鳴り、サステインも良好といった、基本的な要素については十二分に及第点をあげたい。日常的に座右において気軽に扱えるギターがほしいという向きには選択肢の一つとして有力だろう。


正月の弾き初めにはこのCG192を使った。一つだけ貼っておく。他はこちらこちらも。他のギターと弾き比べた録音もそのうちまた。


ヤマハの中国生産拠点での量産ギターラインの様子。ぼくのような量産品のメーカー勤務経験がある者にはギター量産の様子もまったく違和感はない。工場はいずこも同じだなあという印象だ。


こちらは浜松工場でのグランドカスタムGCシリーズの生産模様。一般の個人製作家と変わらない。



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最近弾いたギター 2016年初冬


師走12月。業務ほどほどにひっ迫。溜め息をつくほど忙しく、うんざり…という状況ではなく、マア、こんなもんかなと合点しつつ本日も終了。きのうの寒さがいくらかゆるんだ中、8時少し前に帰宅した。
実は先週と今週、久々にギター試奏で都内楽器店へ。行き先は某恵比寿方面。たまたま仕事のついでに近くまで行ったので…(もちろん、どちらがついでかあやしいのだが)。2回とも平日の夕方5時過ぎに店に伺い、閉店前の1時間ほど、アレコレ気になった楽器を弾かせてもらった。以下はそのインプレッション。印象の良かったものだけを記しておくことにする。


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◆中野潤 2006年作 ハウザー1937年レプリカ
松本在住の製作家中野潤氏による作品。セゴビアが壮年期に愛用したハウザー1世作の楽器を忠実にフルコピーしたもの。表板は松、横裏は中南米ローズ。ネックとヘッドはVジョイント。中野氏についてはあらためて記すこともないだろうが、21世紀になった頃から評判になり、伝統的手法で細部にまでこだわったギター作りで人気の製作家だ。特に華やかな装飾やトルナボスを再現したトーレスレプリカが有名だが、このハウザーモデルも派手な装飾こそないが、細部にまで神経の行き届いた作りが実感できる。手元にあるオルディゲスのハウザー1世モデルと比べると、ずっと音に締まりと緊張感がある。高音ははっきりと突き抜けるように鳴り、低音はF#あたりのウルフを中心にたっぷりと鳴るが、芯のある音で、総じてすべての表現が明確になる印象。音量は十分。ハウザーらしいややコンパクトなボディーと形のいいネック裏形状で、弾き易い。

◆ペドロ・(コントレラス)・バルブエナ 2006年
60年代ラミレス工房ではその作品にスタンプ<PC>を付していた名工バルブエナ。ラミレス工房を出てからは、アルカンヘルやアグアドの影響なども受けながら製作を続けていたが、惜しくも2007年に急逝した。現在は息子が跡を継ぎ、同じペドロ・バルブエナ名で製作を続けている。今回弾いた楽器は亡くなる前年2006年の作。表板:松、横裏:ハカランダ。いずれも良材が使われている。見た目は両肩がなだらかに下がった、いかにもマドリッド派風のビジュアル。音も見た目の印象そのままに、中高音の切れがよく、同時にも低音の量感も不足ない。製作から10年しか経っていないが、まるで半世紀くらい経過したような枯れた味わいの音で、好印象だった。

◆アントニオ・マリン 1994年
もはや長老のマリン父の作品。1994年作というから、マリンファミリーの知名度も今ほどではなかった時代のもの。表板:松、横裏:ハカランダ。弦長は標準的な650ミリだが、指板幅がほんのわずか広いことと、ネックの仕上げが扁平であることから、手にした第一印象がやや大型の楽器に感じた。音は最近のマリン作品のような華やかさはなく、ゆったりと落ち着いた音、くつろいだ音で鳴る。といっても、音の出がにぶいわけではなく、右手への反応も軽く、レスポンスも早い。20年の年月を経ているためか、上記のバルブエナ以上に枯れた色合いの音。日頃ハウザー系の楽器を好むぼくにとっては、ゆったりと緊張を解きほぐすような鳴り方は中々魅力的だった。

◆松井邦義 2016年 バルベロ1世モデル
町田市在住のベテラン:松井氏バリバリの新作。表板:松、横裏はハカランダ。このハカランダが実に見事。以前使っていた中出敏彦氏の最上位モデルを思い出した。さらに糸巻きにはアレッシと、力が入っている。音はいかにも出来たてホヤホヤで、高音も低音もカリカリっとした鋭敏な反応。特に高音の鳴り方は鋭く明瞭。低音はまだまったく緩みのない音だが、少し弾き込んで楽器全体がほぐれてくると、とてもいいバランスになるのではないかと予感させる。


もちろん他にも魅力的な楽器もあったが、ぼく自身の嗜好もあって、ひとまず上記4本のインプレッションに留めておく。近年はハウザー1世、ロマニリョス系の音が好みで、いわゆる近代スパニッシュの王道のもいうべきマドリッド派の楽器にはあまり感心がなかった。しかし、今回のバルブエナや以前も何度か出くわしたアルカンヘル、アグアドなどを弾いてみると、アルカンヘルのような透明感あふれる高音と、アグアドのようの近代的でありながらヴィンテージ風の味わいもほどほどに感じるような楽器にも、やはり独自の魅力を感じて心惹かれる。…とはってもいずれも状態のよいものとなると高級車相当の対価。話だけならいいが、その先には中々進まない。


今回弾いた楽器とは関係はないが、名器で奏でる和み系三題。例のGSIのYOUTUBEチャンネルから。

状態のいいフレタも弾いてみたい。クリコヴァの演奏。


同チャンネルにある名手:テイコルツの演奏。ミゲル・ロドリゲス1970年作


アンドリュー・ヨーク、トーレスを奏でる。



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ギター弾き比べの儀


<追記修正あり>
昨日の夕方ギター弾きの知人から「与太さん、あしたヒマ?」とのメール。毎日が日曜日というほどじゃなけど、ヒマだよ~んと返信。それじゃ…というわけで、その知人が最近買ったという新しい楽器を引っさげて遊びに来た。予報はずれて好天の週末土曜日。拙宅の方寸道楽部屋にてアレコレ弾き比べの儀と相成った。


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知人が持参したのは以前から持っているラミレスと、最近手に入れたというケヴィン・アラムの新作。ぼくの手持ちを含めて狭い部屋にギターを広げて品定め。備忘のために知人が持参した楽器のインプレッションを記しておこう。

■ホセ・ラミレス3世1986年作
東京のギター販売店老舗F社がラミレス工房に注文したオリジナルモデル。聞くところによれば、当時15台を注文し、F社スタッフが現地で材料選定にまで関わって、ワンランク上の材料を使ったとのこと。持参したギターはその中の1台。表板は杉、横裏板は真性ハカランダ、弦長664mm。外形、デザイン等は通常のモデルと変わらない。ぼくの1978製と比べると、グレードの高い表板、横裏のハカランダ材の効果もあってか、特に高音がツーンと抜けるように鳴る。ラミレスでときに不足を感じる6弦ローポジションのボリューム感も十分で、総合点の高いギター。ラミレスは当時世界中であまりに沢山売れてたことから、少し出来のいい量産品という言葉と共に低い評価が与えられがちだが、どうして、さすがの貫禄。昨今はその大量に売れた時期の楽器が放出期を迎えたこともあって中古品の出物も多いのだが、製作年が80年代中庸までで、横裏板ハカランダ、さらに弦長650mmのモデルで状態のよいものがあれば、お買い得の楽器だ。

■ケヴィン・アラム2016年作
英国の製作家ケヴィン・アラム(1949-)による、松・ハカランダの新作。ケヴィン・アラムのギターは、十数年前のギター再開に際して楽器を物色した際、有力候補だったもので、それ以降、現在まで常に憧れをもって眺めてきた楽器だ。きょうはゆっくり音と姿を検分。
弦長はスタンダードな650mmながら弾き手の身体と手にスッと馴染む軽く小型のボディサイズ、トーレス・ハウザー系のコンパクトなヘッド、つや消しの極薄オイルフィニッシュ、スムースで柔らかな巻き心地のロジャース製糸巻き…いずれもこの製作家のものとひと目でわかるビジュアルだ。音もその印象通りに、フレンドリーで弾き手をリラックスさせるように鳴る。長年トーレスやハウザー1世系等の音作りを継承し、低音のウルフはF#付近にあって、6弦ローポジションはドンッとお腹に響く。中高音はポーンとはじけるように立ち上がり、すっきりと倍音の少ない音とやや短めのサステインは、余計な響きを残さずに収束する。その結果、音数の多い曲を弾いても、各声部の混濁が少なく、消音が楽で次のフレーズに集中できる。

知人の愛器2本。褐色のラテン美女:マダム・ラミレスと、色白清楚なケヴィン・アラム嬢。あらゆる部分で対照的なこの2本があれば全方位に対応可能と感じた次第。

<弾き比べ関連記事>
※英豪系ギター名器の弾き比べ
http://guitarandmylife.blog86.fc2.com/blog-entry-351.html
※ハウザーモデル比較試奏
http://guitarandmylife.blog86.fc2.com/blog-entry-187.html

ケヴィン・アラムの紹介


ケヴィン・アラムのギターを使った演奏三題。
アントン・ディアベリ<バルカローレ>


イサーク・アルベニス<アストリアス>


モレノ・トローバ<トリーハ(哀歌)>



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これはイイ!ヤマハCG192



ちょっと必要があってギターを買った。
エエッ!与太さん、ついにエステソ?サントス? いえいえ、そんな…。ヤマハのギターですよ。それも‘つるし‘の量産モデルCG192。 ところがどっこい、これが素晴らしくイイのだ。


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ヤマハは60年代の終わり頃から本格的にクラシックギターを作り出し、ヤマハグランドコンサートギター通称GCシリーズとして手工品の高級モデルをラインアップしてきた。同時に入門者用の量産モデル(CGシリーズ)も多数発売してきたが、音が硬くて音量感も乏しい、ネックが太く弾きにくい等々、量産モデルに関してはあまり良い評判はなかった。70年から80年代の入門者用ギターというと松岡製かアリア製あるいはコダイラ製と相場が決まっていた。そんなヤマハの量産モデルが2010年にラインナップを一新した。今回手にしたCG192はその量産モデルの中では最上位のもの。とはいえ、実売価格は6万円でおつりがくるレベル。入門用量産品とはいえ、かなり廉価だ。


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表板は松と米杉の2種類が用意されている(いずれも単板)。両モデルを試奏してかなり迷った。一聴したときの音量感で米杉のモデル192Cを選んだが、松モデル192Sも明るくクリアな音で十分に鳴っていた。横裏板はローズの合板。ネックはマホガニーで、かつてのカマボコ型の断面形状と違って半円形に近く、押さえやすい。指板にはこのクラスの量産品としては異例ともいえるエボニー(黒檀)を使用。それほど緻密な材ではないようだが、きれいに仕上げられている。ヤマハのカタログによれば、表板には5本のファンブレイシングとサウンドホール近くに短い斜めの力木が走っている。ペグは価格相応の見かけだが、巻き心地は滑らかで悪くない。弦長650mm。指板幅はナット部で52mm。全体の形、大きさ等はごくオーソドクス。その他見た目の特徴としては、ヤマハのHPにも書かれているように、ネックと駒の塗装がつや消しのマットな仕上げであること、ヘッド部に懐かしい音叉マークが復活していることなどがあげられる。細部の仕上げも、ヤマハ管理下の中国工場での量産製品として十分に品質管理されていて大きな不満はない。

以前のヤマハ量産モデルを知る者にとっては、このCG192の音は驚きだ。
まず低音から高音まで全体が豊かに鳴る。6本の弦を12フレットまですべて音出ししたが、どのポジションでもストレスなく音が出る。サステインも極めて優秀で、高音ハイポジションの詰まりも少ない。低音ウルフは60年代以降のモダンギターとしてオーソドクスなG#にあるが、それほど突出しておらず、その下Gから開放Eまで十分なボリュームをキープしている。和音の調和も良好で、ローポジションだけでなく、7フレット、8フレットあたりをセーハして出す和音も音量、音の調和感などでストレスを感じない。仕様書では高音弦が<ヤマハハイテンション弦>となっているのだが、そもそもヤマハハイテンション弦なる製品はカタログにはない。見るところ明らかに通常の弦より細くかつやや乳白色で、どうやらサバレス社のアリアンス弦が付いているようだ。

自宅に持ち帰り、手持ちのラミレス3世やハウザー3世他と弾き比べをしてみたが、音量感、全域の均一な鳴りっぷりは遜色ない。さらに、音色でもがっかりするようなところもない。量産モデルとしては異例に音の品位が高いのだ。 米杉とアリアンス高音弦という組み合せの特徴だろうか、高音域のピュアさが少し不足している感じはあったが、これも弦を例えばサバレスのニュークリスタルあたりに替えるとまた違った印象になるだろう。今回ぼくは、あえて表板が米杉のモデルを選んだが、音にクリアさと奥行きがほしいなら松のモデル(192S)を選んだ方がいいかもしれない。通常このクラスの量産楽器と、10倍の値付けの工房品とは、ちょっと弾いただけで世界が違い比較対象にはならないのものだが、このCG192は比べてみようかという気になるレベルに達している。

このモデルが発売になったとき、ヤマハのサイトで荘村清志が絶賛し、鈴木大介のブログにも量産モデルとは思えないとのコメントがあった。また設計担当の何木氏のコメントにもあるこのモデルの成り立ち等、今回手にしてじっくり検分して、それらのコメントがあながちリップサービスだけではないことを実感した。近いうちにこのギターを使って何か録音してみよう。


ヤマハによるこのモデルCGシリーズのプロモーションビデオ。…フランス語…わからない(^^;



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マイギター 田邊雅啓2004作


しばらく知人宅に預けていたマイギターが久々に手元に戻ってきた。
これまでも何度か記事にしている田邊雅啓(たなべまさひろ)氏の手になるギターをあらためてお披露目しよう。
田邊さんは現在栃木県足利市で伝統的手法にこだわったギター製作を続けている。大学を出てから長野県上田の石井栄ギター工房で修行ののち独立。2001年から故郷の足利に工房を開いて製作を始めた。たまたまその頃、久しく中断していたギター演奏を再開するにあたり、新しい楽器を探していたときに名前を聞き及び、拙宅から車で1時間ほどの距離に工房があることもわかって、早速お邪魔したのが以降のお付き合いの発端である。ちょうどその頃田邊さんは、名匠;ホセ・ロマニリョスの製作マスタークラスをスペインで受講、その教えと伝統的なスパニッシュギターの製作手法に忠実なギター製作を本格化させていた。最初に訪問したときに試奏した修行時代の作品と、その音作りの姿勢にひかれ、ぼくはすぐに新作のオーダーすることを決めた。一つ一つの製作工程を深く吟味しながらの製作は、およそ商業ベースの効率的な製作スピードからはほど遠く、ぼくの注文品完成も2004年6月まで2年以上待つことになった。

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表面板はヨーロピアンスプルース。濃い冬目がはっきり出ている極めて良質のもので、田邊さん曰く「最高グレードのもの」とのことだ。裏板は音の面からはあえてハカランダにすることもないだとうとの判断で、インディアンローズウッドとした。写真でわかる通り、裏板中心部にはメープル材で少しオシャレをしてみた。指板は黒檀で、極めて緻密な良材が使われている。実際、10年余を経過した現在も指板表面は滑らかで、伸縮が皆無なのかフレットのバリも出ていない。ヘッド、口輪ロゼッタ、3ホール式のブリッジ等にも高い工作技術を示す美しい装飾が施されていて、見る度にため息がもれるほどだ。糸巻きは米国スローン社製の黒檀ツマミ。塗装は全面セラックのタンポ仕上である。

ナットとブリッジのサドル(骨棒)には、厚み方向にわずかにテーパーが付けられていて、そのテーパーに合わせて作られたぞれぞれの溝に差し込むとピタリと収まる。また骨棒は通常低音側で高く、高音側で低く作られ、指板と弦の高さが決まるようになっているが、この田邊ギターは低音側も高音側もほぼ同じ高さ。指板の厚みを低音側から高音側にかけて厚くなるように加工されている。ラミレスなどに見られる手法だ(ラミレスはさらに従来通りのサドル側傾斜も残る)。結果としてサドルとブリッジ木部の溝とは高音側も低音側もほぼ同じ面積で接触し、より確実な結合になる。

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田邊ギター;ロマニリョスモデルの特徴は、通常より低めに設定されたウルフトーンから繰り出される、どっしりと重く深い低音と、端正で伸びのある高音にある。決して派手にガンガン鳴る楽器ではないが、西洋音楽の基本バランスである低音をベースとしたピラミッド型の音響構成を作りやすく、バロックからソルやジュリアーニあたりまでの曲を表現するにはベストの楽器だと思う。外国語ではギターが女性名詞であることから、有り体に例えるなら、知的で清楚で優等生的な女性のイメージだ。反面、近代スペインのアルベニスやグラナドスなどの作品(ギターへの編曲物)やラテン系の艶っぽさ、熱っぽさを歌い上げるには、少々甘さと粘りが足らないと言えなくもない。

総じてこの頃の田邊さんの作品は、本格的な製作に取り掛かった彼のモチベーションの高さが随所に現れている。時々メンテナンスでこの楽器を彼に見てもらうとき、「いやあ、いい楽器だなあ」と彼自身がいつも感嘆する。手元にある何本かの楽器の中で、バランスの良さ、和音の分離、豊かな低音の響き、高音のサステインは最も優れているものの1本だ。しかし、どんな銘器でもそうであるように、この楽器にも弱点がないわけではない。この楽器の唯一の弱点は、5弦8~10フレットの音が詰り気味であることだ。このポイントの音だけが十分なサステインが得られず、ボンッと詰り気味に鳴る。これはウルフトーンをFからF#に設定したため、そのオクターブ上の音がデッドポイントなっているためで、どんな楽器にも付きまとう問題だ。多くの製作家がこの問題の解決で悩んでいるだろう。しかし、実際に少し離れて聴いている人には、弾き手のぼくが感じているほど、この部分の音の詰りは感じられないとのことで、右手のタッチを少し工夫して弾くことで、この問題を実質的には回避している。それ以外の音は全ての音域で極めて均一に鳴る。現在、弦はサバレス社のクリスタル&カンティーガのノーマルテンションを張っているが、音色の統一感にも優れ、適度な張りの強さと相まって十分なサステインを確保し、申し分のないマッチングである。
このギターを製作した2003~2004年当時以降、田邊さんの評価は急速に高まり、現在彼の作品を入手するには3年程のウェイティングリストに載ることがまず必要な状況である。価格も当時の倍以上に上がった。しかし、端正な音色でバランスがよく、低音がしっかりとしたギターを望むなら、3年間待つ価値は十二分にあるだろう。

★技ありの修理★
新作ばかりでなく、トーレスをはじめとする数々の銘器の修復もこなす田邊さんによる技ありの修理例。数年前、弦交換の折に表板に爪で付けてしまった引っかき傷を見事に修復してくれた。傷周辺のセラック塗装を除去した上で、傷口に水分を含ませて膨張させ、傷の凹みが膨らんだところで平滑にし、再度セラック塗装で仕上げるという方法とか。カシュウやラッカー、ウレタン等の塗装ではここまでうまくいかないだろうが、自由度の高いセラック塗装ゆえの美技。お見事! (表板が白っぽく見えるのは照明の映り込みのため)
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◆ギター販売店アウラのHPにある<田邊雅啓の工房探訪記>。
http://www.auranet.jp/salon/yomimono/tanbouki/



<追記>
ぼくの田邊ギターが現代ギター2004年11月増刊『クラシック・ギター銘器コレクション』の190頁に載っていることを付け加えておきます。
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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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