Dimension「Third Dimension」



一月も下旬。今週前半はちょっと気の重い仕事が続いたが、何とか終了。月末に向けホッとひと息だ。移動の車中、そんな開放的気分も手伝って聴いていた曲で思い出し、帰宅後にこの盤を取り出した。


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インストゥルメンタルのフュージョンバンド:Dimensionの3枚目のアルバム。その名も「Third Dimension」。1994年録音。 Dimensionが結成されたのが1992年。80年代のフュージョンブームがすでに終息しつつあった時期にあたる。勝田一樹(sax)、増崎孝司(g)、小野塚晃(kb)が中心となり、青木智仁(b)、石川雅春(ds)らがサポートに加わった。80年代のカシオペヤやスクエアといった人気バンドもテクニカルなプレイを聴かせたが、売れっ子の常としてよりポピュラリティの強い楽曲が求められた面も否めない。Dimensionのメンバーはすでに80年代からポピュラーアーティストのバックやスタジオワークなどでその実力は折り紙付きの面々だったが、満を持して自分たちがやりたい音楽を目指した新しいバンドとしてDimensionを立ち上げた。

ぼくがインストゥルメンタルのフュージョンを聴き始めたのは、そのブームのピークがすでに終わっていた90年代に入ってから。カシオペヤやスクエアも一周遅れで聴いた。当時はまだインターネットは常用手段ではなくパソコン通信の時代。ニフティサーブのフュージョンのフォーラムに参加して情報を得ていたのを思い出す。Dimensionを知ったのもその頃だ。初めて手に取ったこのサードアルバムを聴いて文句なしにカッコいい音楽だを感じた。その後も新しいアルバムが出るたびに手に入れ、数枚が手元にある。テクニカルでありながらノリの良さがあり、アグレッシブながらキャッチ―なフレーズも出てくる。その辺りの塩梅が絶妙だった。仕事も多忙のピークだったその頃は毎夜残業で遅くなり、夜半近くなる帰途の車中でフルボリュームで聴いて憂さを晴らしていたのを思い出す。久しぶりに聴いてみたが、相変わらずカッコいい。同時に、熱っぽく聴いていたあの頃からすでに四半世紀も経つのかと唖然とする。


この盤の音源で「Lost in a Maze」 手持ちの盤からアップした。


同「Yellow Sunshine」


同「Fly into a Passion」



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中本マリ「アンフォゲッタブル」



月末納期の仕事も目途が立ち、休心。少し気をよくして帰宅した。さて12月半ばの週末金曜日。あすはこれといった用事もなく、今夜はリラックス。ついでにこんな盤を取り出した。


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中本マリのアルバム「アンフォゲッタブル」。
ぼくらの世代で思いつく70年代に活躍した日本の女性ジャズヴォーカルというと、笠井紀美子、伊藤君子そしてこの中本マリあたりだろうか。少し前の世代になるとマーサ三宅(古っ!)。もちろん江利チエミもペギー葉山もジャズシンガーのキャリアはあるし、美空ひばりのジャズスタンダードは中々のものだが、ここでは除外しておく。あるい80年代前半に元祖ネクタイ族のアイドルとして人気が出た阿川泰子や真利邑ケイ、秋本奈緒美の名前もあがってきそうだが、ぼくの感覚では、作られたアイドルとしては成功したのだろうが、およそジャズを歌える歌手という認識はない(そう言いつつ、写真のように手元に彼女らの盤があるのが、ちょいと恥ずかしい…)。中では中本マリはオーソドックスなジャズをドライブ感あふれる歌いっぷりで楽しませてくれた。「アンフォゲッタブル」は当時録音の良さでも知られたインディーズレーベルTBM(スリー・ブラインド・マイス)に録音した彼女のデビューアルバムだ。確か社会人になって給料日にはレコード屋へ行くことが楽しみであった頃に買った。

CEC製ベルトドライブプレーヤーST930のスイッチを入れてアイドリング回転させること10分。メカがひと通り温まり、回転も安定したところで、オルトフォンSPU-Gの針を静かに下ろす。わずかなサーフィスノイズに導かれ、大沢保朗のピアノが短い導入フレーズを奏でる。続いて中本マリのタイム・アフター・タイムが部屋にあふれる。あっと思わず声が出るほどいい音だ。久々に針を落としてみて、あらためて鮮度の高い音に驚いた。録音は1973年9月。当時彼女はまだ二十代後半だったはずだが、随分と落ち着いた声と歌いっぷりだ。上州弁ネイティブのぼくには英語の発音はよく分からないが、世評では当時から彼女の発音は折り紙付だった。音程は文句無くいいし、ロングトーンの後半でかかるヴィブラートも彼女の持ち味で、いい感じだ。バックを固めるメンバーも当時の腕利き揃い。ギター横内章次の名前が懐かしい。しかし、今風のやたらとドライブをかけてノリノリの勢いだけで押してしまう演奏にはなっていないところが70年代的だろうか。クラシックもジャズも時代の様式感は大切だ。あくまでスタンダードをスタンダードの様式で弾き、歌っている。過不足なく安心して聴け、楽しめる。


この盤の音源で全曲。


「Lullaby of Birdland」 80年代前半かと


「Night and Day」 羽田健太郎他とのセッション。90年代初頭の演奏かな



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小曽根真「The Trio」



師走最初の週末日曜日。撮りためたサッカーW杯、恒例早明ラグビー…久しぶりにテレビにかじりついて過ごす。リビングの椅子に腰かけたまま数時間。少々痛くなった腰をさすりながら気分転換。音盤棚を見回し、こんな盤を取り出した。


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小曽根真が自身のトリオ名義でリリースした最初のアルバム。1997年小曽根真36歳のときの録音。ベースに北川潔、ドラムスにクレランス・ベン。スペシャルゲストとしてギターのジョン・スコフィールドが3曲に参加している。かなり以前からジャズに留まらず、クラシック分野での演奏も話題の彼だが、この盤はそうした彼のキャリアが本格化し始める頃の録音。

何とも雰囲気のいい盤だ。スウィンギーな曲も絶妙のバランス感覚の上に展開される。つまり、ノリと勢いだけでガンガン行くような演奏ではなく、知的なコントロール下に置かれているとでも言えばいいだろうか。バラードプレイもしかりで、甘ったるい情緒だけで終わらない。そう感じながらライナーノーツを読んでいたら、このアルバムの録音あたっては各パートの楽譜をかなり周到に書いた経緯が記されていた。ジャズの楽譜というとテーマとコード進行だけがざっと書かれていて、あとはその場の事前の打合せでゴー!というケースが多い中、異例とも言える。もちろん彼ほどのプレイヤーであればそうした展開もお手の物だろうが、そんな丁寧な手仕事ぶりをうかがわせる一面が、彼のその後と多方面での活躍につながっているように感じる。


この盤の音源「Tea for Three」


同 ジョン・スコフィールドのギターも聴けるバラード「home」


小曽根真クラシックを語るの巻



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木住野佳子「fairy tale」



今週前半、関東地方は冷たい雨に見舞われ、当県上越国境の山々も冠雪。平野部も冷え込んだ。辺りの樹々も色付き始め、秋本番だ。久しぶりに快晴だったきょう週半ばの水曜日。手を焼いていた案件が一つ片付き、束の間の休心。ネクタイ、もといベルトを緩めて、さて今夜はジャズだ。


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木住野佳子(P)の実質的なデヴューソロアルバム。1995年NY録音。収録曲は以下の通り。

1.ビューティフル・ラヴ
2.フェアリー・テイル
3.ジ・アイランド
4.いつか王子様が
5.ファンカレロ
6.星影のステラ
7.オンリー・トラスト・ユア・ハート
8.誓い
9.ラフィット'82
10.ゴーン
11.ウィズ・ア・リトル・ソング

お馴染みを通り越し、またかの声も聞こえてきそうな選曲。しかしジャズに限っていえば素材の曲は決定的な要素ではなく、料理の仕方こそが命。名演あって名曲なしと言われるほど。それほどプレイヤー次第で曲は生まれ変わる。この盤に聴くスタンダードの数々は、決して意表を付くような変身を遂げているわけではないが、「ピアノにもルージュを」というアルバムコンセプトのもと、見事に統一された心地よさに満ちている。そういわれてあらためてアルバムを手に取ってみると、ジャケット写真はモノクロームを背景に「fairy tale」の文字だけが赤く染め抜かれている。

彼女は桐朋学園で正統派のクラシックを修める以前からあちこちのロックやフュージョンのバンドに出入りしてはセッションを重ねていたという。天性の耳と勘の良さでデビュー前から知る人ぞ知る存在であったようだ。そんな才気あふれる彼女がNYの腕利きジャズメンをバックにくつろいだプレイを聴かせてくれる。特にエディ・ゴメスとマーク・ジョンソンのベースが雄弁で、抜群の録音と相まって、良質のヘッドフォンで聴くと50Hzを下回る深く静かに伸びるベースの基音が楽しめる。スムースジャズというほどユルみ切っているところはなく、適度に緊張が高まるプレイもあって飽きることがない。久しく新譜を聴いていないが、最近の彼女はどんな風なのかしらん。


このアルバムの第1曲「ビューティフル・ラヴ」


同 「アイランド」


同 「フェアリー・テイル」


彼女のオリジナル曲「Nostalgia」 39秒ほどのイントロののち、都会的でジャジーなスローボッサが続く。



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熱帯ジャズ楽団@高崎



先週末は隣り町高崎で行われた熱帯ジャズ楽団のライヴへ足を運んだ。


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この時期恒例の高崎音楽祭。今年で33回目。毎年魅力的なプログラムが集中して開かれる。今年も多様なジャンルの注目アーティストが揃い、チケットも早々に売切れになったものも多いようだ。ぼくが選んだのは「熱帯ジャズ楽団 with 南国(トロピカル)ディーヴァ」と題されたライヴ。タイトル通り、熱帯ジャズ楽団と二人のディーヴァ、オルケスタ・デ・ラ・ルスのNORAと夏川りみという組み合わせ。NORAがメインヴォーカルを務めるオルケスタ・デ・ラ・ルスはそもそも熱帯ジャズ楽団の母体ともいえる存在なので不思議はないが、ゆったり癒し系の夏川りみと、ノリノリ・ラテン系の熱帯ジャズ楽団とのコンビネーションがどういうものなのか、まったく想像が付かなかった。

蓋を開けてみれば、アッと驚く夏川りみの上手さと器用さ。軽快にスウィングするジャズも、アップテンポのラテンも難なく歌いこなす。もちろん「涙そうそう」も外せないが、こちらもラテン調のバックが違和感なく素晴らしい出来映えだった。NORAはもちろん水を得た魚。サルサで大人のラテンをたっぷり聴かせてくれた。
熱帯ジャズ楽団はデヴューした1995年当時から好きなバンドでCDも何枚か手元にある。高崎も度々訪れていて、最近では2018年にも聴いている。バンマスのカルロス菅野はじめ、中路英明、青木タイセイ、高橋ゲタ夫らベテラン勢も健在。腕利きのメンバーを揃え、日本のラテンビッグバンとしていは唯一無二の存在だ。

いつ、何を聴いても最高に楽しめる熱帯ジャズ楽団。ぼくも含め年齢層高めの聴衆も、アンコールのお約束「September」ではスタンディングの大団円。昼間降り続いた冷たい雨を吹き飛ばすかのような楽しいラテンライヴだった。


現行メンバーによるフルーノート東京@南青山でのライヴの様子。高崎芸術劇場大ホール@群馬も負けてはいませんでした!


オルケスタ・デ・ラ・ルスNORA


ライヴのアンコールでお約束の「September」



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タル・ファーロウ「The Swinging Guitar」



雨まじりの日が続いた三連休が終わって日常復帰。相変わらず遅れ気味の業務進捗を気にしながらも、呑気に定時で退勤。いつもの時刻に帰宅した。変わらぬ日常。ひと息ついて今夜はジャズ。何年か前にも記事にしたこの盤を取り出した。


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タル・ファーロウ(1921-1998)のギター。彼の代表作のひとつ「The Swinging Guitar」。1956年録音。手持ちの盤は90年代終わり頃に御茶ノ水の中古レコード店で買い求めた国内盤。収録曲は以下の通り。

 1.恋のチャンス
 2.ヤードバード組曲
 3.夢からさめて
 4.誰も奪えぬこの想い
 5.恋の気分で
 6.ミーティア
 7.アイ・ラヴ・ユー

永らくクラシックギターを弾いているが、生まれ変わったらジャズギタリストになりたいと思うほどジャズギターも好きだ。あるいは生まれ変らなくても、明日目が覚めたらクラシックギターかジャズギターか、どちらかの名手にしてやると言われたら、迷わずジャズギターを選ぶ。まあ、半分冗談だが。

タル・ファーロウはそう多くない白人ジャズギター奏者の一人としてして50年代から活躍し人気を得た。この盤は1956年に録音され、日本ではその後10年以上経って1969年に彼が初来日する際、その記念盤として発売された。タルのギターと当時のレギュラーメンバーであるエディ・コスタのピアノ、ヴィニー・バークのベースのトリオ編成。曲はいずれもよく知られるスタンダードが並ぶ。ドラムレスのため、やかましいところがなく、夜更けに聴くには好適だ。ドラムレスではあってもベースラインにのって全編よくスウィングしている。タル・ファーロウのギターは奇抜なところはないが、惚れ惚れするほど滑らかな高速スケールのアドリブフレーズを繰り出して、ジャズギターを聴く楽しみを存分に味わえる。


この盤の音源。「ヤードバード組曲」


同 「アイ・ラヴ・ユー」


バニー・ケッセルとのセッション。晩年のものと思われる。



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エラ・フィッツジェラルド&ジョー・パス「Take_Love_Easy」



異例に早い梅雨明けだ、コロナ第7波だ…などどいっているうちに気付けば八月も下旬。週末日曜のきょうはこれといった用事もなく過ごす。昨夜は少し遅くまで部屋の片付けやら、溜まった身辺雑事の処理。BGMにと音盤棚での占有率20%ほどのジャズの盤を物色。久しぶりにこの盤を取り出した。


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エラ・フィッツジェラルド(1917-1996)のヴォーカルとジョー・パス( 1929-1994)のギターによるデュオ。エラにとっては少しブランクがあったのち、ノーマン・グランツが1973年に設立したパブロレーベルから出した復帰作。録音も同年。これが大そうヒットして、以降4作ほど続編が出たと記憶している。この盤はちょうど学生時代にFMで聴き、カセットに録って何度となく聴いた懐かしい盤。後年、御茶ノ水の中古レコード店で手に入れた。今でもCDで版を重ねている。

70年代以降のエラは全盛期を過ぎ、この盤を出した頃もすでに病に冒されていたという。ヴァーヴ時代のバリバリのエラはもちろん素晴らしいが、この盤に聴くバラードも味わい深い。いやしかし、その後の彼女の人生を思いながらとなると、味わい深いというほど単純なエンターテイメントとしては聴けないところがある。晩年の彼女は大変な日々を過ごした。

全編おなじみのスタンダードをときに甘くチャーミングに、ときに抑え気味の表情で歌うエラ。全盛期を過ぎたとはいえ、音程の確かさ、ダイナミクスのコントロールとも完璧だ。そしてエラの歌声に寄り添うようなジョー・パスのウォームなギターサウンドがまたいい。加えてこのアルバムは1973年録音にもかかわらずモノラル録音(音質そのものはきわめて良好)。モノクロのジャケット共々、このアルバムのコンセプトが伝わってくる。


この盤のB面1曲目ガーシュインの名曲「A Foggy Day」


このコンビによる1975年のライヴ。スティーヴィー・ワンダーの「You Are The Sunshine Of My Life」



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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