師走最初の週末日曜日。撮りためたサッカーW杯、恒例早明ラグビー…久しぶりにテレビにかじりついて過ごす。リビングの椅子に腰かけたまま数時間。少々痛くなった腰をさすりながら気分転換。音盤棚を見回し、こんな盤を取り出した。 小曽根真が自身のトリオ名義でリリースした最初のアルバム。1997年小曽根真36歳のときの録音。ベースに北川潔、ドラムスにクレランス・ベン。スペシャルゲストとしてギターのジョン・スコフィールドが3曲に参加している。かなり以前からジャズに留まらず、クラシック分野での演奏も話題の彼だが、この盤はそうした彼のキャリアが本格化し始める頃の録音。 何とも雰囲気のいい盤だ。スウィンギーな曲も絶妙のバランス感覚の上に展開される。つまり、ノリと勢いだけでガンガン行くような演奏ではなく、知的なコントロール下に置かれているとでも言えばいいだろうか。バラードプレイもしかりで、甘ったるい情緒だけで終わらない。そう感じながらライナーノーツを読んでいたら、このアルバムの録音あたっては各パートの楽譜をかなり周到に書いた経緯が記されていた。ジャズの楽譜というとテーマとコード進行だけがざっと書かれていて、あとはその場の事前の打合せでゴー!というケースが多い中、異例とも言える。もちろん彼ほどのプレイヤーであればそうした展開もお手の物だろうが、そんな丁寧な手仕事ぶりをうかがわせる一面が、彼のその後と多方面での活躍につながっているように感じる。 この盤の音源「Tea for Three」VIDEO 同 ジョン・スコフィールドのギターも聴けるバラード「home」VIDEO 小曽根真クラシックを語るの巻VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
今週前半、関東地方は冷たい雨に見舞われ、当県上越国境の山々も冠雪。平野部も冷え込んだ。辺りの樹々も色付き始め、秋本番だ。久しぶりに快晴だったきょう週半ばの水曜日。手を焼いていた案件が一つ片付き、束の間の休心。ネクタイ、もといベルトを緩めて、さて今夜はジャズだ。 木住野佳子(P)の実質的なデヴューソロアルバム。1995年NY録音。収録曲は以下の通り。 1.ビューティフル・ラヴ 2.フェアリー・テイル 3.ジ・アイランド 4.いつか王子様が 5.ファンカレロ 6.星影のステラ 7.オンリー・トラスト・ユア・ハート 8.誓い 9.ラフィット'82 10.ゴーン 11.ウィズ・ア・リトル・ソング お馴染みを通り越し、またかの声も聞こえてきそうな選曲。しかしジャズに限っていえば素材の曲は決定的な要素ではなく、料理の仕方こそが命。名演あって名曲なしと言われるほど。それほどプレイヤー次第で曲は生まれ変わる。この盤に聴くスタンダードの数々は、決して意表を付くような変身を遂げているわけではないが、「ピアノにもルージュを」というアルバムコンセプトのもと、見事に統一された心地よさに満ちている。そういわれてあらためてアルバムを手に取ってみると、ジャケット写真はモノクロームを背景に「fairy tale」の文字だけが赤く染め抜かれている。 彼女は桐朋学園で正統派のクラシックを修める以前からあちこちのロックやフュージョンのバンドに出入りしてはセッションを重ねていたという。天性の耳と勘の良さでデビュー前から知る人ぞ知る存在であったようだ。そんな才気あふれる彼女がNYの腕利きジャズメンをバックにくつろいだプレイを聴かせてくれる。特にエディ・ゴメスとマーク・ジョンソンのベースが雄弁で、抜群の録音と相まって、良質のヘッドフォンで聴くと50Hzを下回る深く静かに伸びるベースの基音が楽しめる。スムースジャズというほどユルみ切っているところはなく、適度に緊張が高まるプレイもあって飽きることがない。久しく新譜を聴いていないが、最近の彼女はどんな風なのかしらん。 このアルバムの第1曲「ビューティフル・ラヴ」 同 「アイランド」VIDEO 同 「フェアリー・テイル」 VIDEO 彼女のオリジナル曲「Nostalgia」 39秒ほどのイントロののち、都会的でジャジーなスローボッサが続く。VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
先週末は隣り町高崎で行われた熱帯ジャズ楽団のライヴへ足を運んだ。 この時期恒例の高崎音楽祭。今年で33回目。毎年魅力的なプログラムが集中して開かれる。今年も多様なジャンルの注目アーティストが揃い 、チケットも早々に売切れになったものも多いようだ。ぼくが選んだのは「熱帯ジャズ楽団 with 南国(トロピカル)ディーヴァ」と題されたライヴ。タイトル通り、熱帯ジャズ楽団と二人のディーヴァ、オルケスタ・デ・ラ・ルスのNORAと夏川りみという組み合わせ。NORAがメインヴォーカルを務めるオルケスタ・デ・ラ・ルスはそもそも熱帯ジャズ楽団の母体ともいえる存在なので不思議はないが、ゆったり癒し系の夏川りみと、ノリノリ・ラテン系の熱帯ジャズ楽団とのコンビネーションがどういうものなのか、まったく想像が付かなかった。 蓋を開けてみれば、アッと驚く夏川りみの上手さと器用さ。軽快にスウィングするジャズも、アップテンポのラテンも難なく歌いこなす。もちろん「涙そうそう」も外せないが、こちらもラテン調のバックが違和感なく素晴らしい出来映えだった。NORAはもちろん水を得た魚。サルサで大人のラテンをたっぷり聴かせてくれた。 熱帯ジャズ楽団はデヴューした1995年当時から好きなバンドでCDも何枚か手元にある。高崎も度々訪れていて、最近では2018年にも聴いている 。バンマスのカルロス菅野はじめ、中路英明、青木タイセイ、高橋ゲタ夫らベテラン勢も健在。腕利きのメンバーを揃え、日本のラテンビッグバンとしていは唯一無二の存在だ。 いつ、何を聴いても最高に楽しめる熱帯ジャズ楽団。ぼくも含め年齢層高めの聴衆も、アンコールのお約束「September」ではスタンディングの大団円。昼間降り続いた冷たい雨を吹き飛ばすかのような楽しいラテンライヴだった。 現行メンバーによるフルーノート東京@南青山でのライヴの様子。高崎芸術劇場大ホール@群馬も負けてはいませんでした!VIDEO オルケスタ・デ・ラ・ルスNORAVIDEO ライヴのアンコールでお約束の「September」VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
雨まじりの日が続いた三連休が終わって日常復帰。相変わらず遅れ気味の業務進捗を気にしながらも、呑気に定時で退勤。いつもの時刻に帰宅した。変わらぬ日常。ひと息ついて今夜はジャズ。何年か前にも記事にしたこの盤を取り出した。 タル・ファーロウ(1921-1998)のギター。彼の代表作のひとつ「The Swinging Guitar」。1956年録音。手持ちの盤は90年代終わり頃に御茶ノ水の中古レコード店で買い求めた国内盤。収録曲は以下の通り。 1.恋のチャンス 2.ヤードバード組曲 3.夢からさめて 4.誰も奪えぬこの想い 5.恋の気分で 6.ミーティア 7.アイ・ラヴ・ユー 永らくクラシックギターを弾いているが、生まれ変わったらジャズギタリストになりたいと思うほどジャズギターも好きだ。あるいは生まれ変らなくても、明日目が覚めたらクラシックギターかジャズギターか、どちらかの名手にしてやると言われたら、迷わずジャズギターを選ぶ。まあ、半分冗談だが。タル・ファーロウ はそう多くない白人ジャズギター奏者の一人としてして50年代から活躍し人気を得た。この盤は1956年に録音され、日本ではその後10年以上経って1969年に彼が初来日する際、その記念盤として発売された。タルのギターと当時のレギュラーメンバーであるエディ・コスタのピアノ、ヴィニー・バークのベースのトリオ編成。曲はいずれもよく知られるスタンダードが並ぶ。ドラムレスのため、やかましいところがなく、夜更けに聴くには好適だ。ドラムレスではあってもベースラインにのって全編よくスウィングしている。タル・ファーロウのギターは奇抜なところはないが、惚れ惚れするほど滑らかな高速スケールのアドリブフレーズを繰り出して、ジャズギターを聴く楽しみを存分に味わえる。 この盤の音源。「ヤードバード組曲」VIDEO 同 「アイ・ラヴ・ユー」VIDEO バニー・ケッセルとのセッション。晩年のものと思われる。VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
異例に早い梅雨明けだ、コロナ第7波だ…などどいっているうちに気付けば八月も下旬。週末日曜のきょうはこれといった用事もなく過ごす。昨夜は少し遅くまで部屋の片付けやら、溜まった身辺雑事の処理。BGMにと音盤棚での占有率20%ほどのジャズの盤を物色。久しぶりにこの盤を取り出した。 エラ・フィッツジェラルド(1917-1996)のヴォーカルとジョー・パス( 1929-1994)のギターによるデュオ。エラにとっては少しブランクがあったのち、ノーマン・グランツが1973年に設立したパブロレーベルから出した復帰作。録音も同年。これが大そうヒットして、以降4作ほど続編が出たと記憶している。この盤はちょうど学生時代にFMで聴き、カセットに録って何度となく聴いた懐かしい盤。後年、御茶ノ水の中古レコード店で手に入れた。今でもCDで版を重ねている。 70年代以降のエラは全盛期を過ぎ、この盤を出した頃もすでに病に冒されていたという。ヴァーヴ時代のバリバリのエラはもちろん素晴らしいが、この盤に聴くバラードも味わい深い。いやしかし、その後の彼女の人生を思いながらとなると、味わい深いというほど単純なエンターテイメントとしては聴けないところがある。晩年の彼女は大変な日々を過ごした。 全編おなじみのスタンダードをときに甘くチャーミングに、ときに抑え気味の表情で歌うエラ。全盛期を過ぎたとはいえ、音程の確かさ、ダイナミクスのコントロールとも完璧だ。そしてエラの歌声に寄り添うようなジョー・パスのウォームなギターサウンドがまたいい。加えてこのアルバムは1973年録音にもかかわらずモノラル録音(音質そのものはきわめて良好)。モノクロのジャケット共々、このアルバムのコンセプトが伝わってくる。 この盤のB面1曲目ガーシュインの名曲「A Foggy Day」VIDEO このコンビによる1975年のライヴ。スティーヴィー・ワンダーの「You Are The Sunshine Of My Life」VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
きょうは山の日。思い起こせば二十代にはよく山へ行った。梅雨明け十日といわれる夏休みのこの時期は天候も安定していて、北アルプスの縦走路も快適だった。ほとんどが単独行で、わいわいがやがやの楽しい青春とは縁遠い山旅。三十代の終わり頃、何度目かの谷川岳西黒尾根を登ったのが最後となった。以来、山とも縁がなくなり、今やもうロープウェイに乗る気にもならなくなってしまった。…と、そんな人生の黄昏如く感慨にふけっているのもよくないなあと思い、気分をアップさせようとこんな盤を取り出した。 ピアノの小曽根真がトリオ編成で演奏したオスカー・ピーターソンへのトリビュートアルバム「Dear Oscar」。1997年録音。 90年代後半、日本人のジャズを少しまとめて聴いた時期があった。そのときに手に入れた一枚。この盤が出た当時、小曽根真はメインストリームジャズの若手として大そう人気があった。きっと今もそのポジションに変りはないだろう。この盤はタイトル通り、オスカー・ピーターソンへの敬意を標榜し、収録曲全10曲のうちオスカーのオリジナル曲が5曲を占めている。 この盤に先立つこと一年前にリリースしたアルバム「The Trio」がよりアグレッシブな音楽運びをしているのに対してこのアルバムでは終始リラックスして、軽くスウィングするオーソドクスなトリオプレイが楽しめる。もっとも単なる耳あたりのいいカクテルピアノにはならないところが一流の証しだろうか、M4「枯葉」なども中盤から俄然音楽が息づき始め、イマジネイティブなインプロヴィゼイションが繰り広げられる。M5のバラード「ランド・オブ・ミスティ・ジャイアンツ」も限りなく美しくクリエイティブだ。 このアルバムのタイトルチューンM1「Dear Oscar」VIDEO 小曽根先生によるレクチャーVIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
このところ毎年のように異常な夏だと繰り返し言われる。今年も異例に早い6月の梅雨明け以来、梅雨入り梅雨明けを繰り返すような天気が続く。そうこうするうちに「正常な夏」の記憶も定義もなくなるかもしれない。…と年寄りくさくブツブツ言いながら今週もスタート。きょうも程々に働いて終わった。さて脳内洗浄のための音盤タイム。きょうはこの盤を取り出した。 チック・コリア&リターン・トウ・フォーエヴァーの「Light as a Feather」。海の上を渡るカモメのジャケットが印象的なデヴューアルバムがヒットしたチック・コリア&リターン・トウ・フォーエヴァーの第2作がこの盤。名曲「スペイン」が誕生した盤でもある。録音は1972年10月、ぼくが高校3年の年だ。チック・コリア&リターン・トウ・フォーエヴァーを知ったのは大学に入ってからのこと。同じ学科のジャズマニアが、いま最先端のジャズはこれだと紹介してくれた。当時ぼくはクラシックの保守本流まっしぐらの日々だったが、友人宅で聴いたチック・コリア&リターン・トウ・フォーエヴァーのデビューアルバムは中々刺激に満ち面白かった。 このアルバムもデヴューアルバムの路線を受け継いでいて、シュトックハウゼンやジョン・ケージら、クラシック界の前衛音楽のエッセンスやラテンフィーリングの卓越したリズムを取り入れるなど、刺激に満ちながらもポピュラリティにもあふれていて素晴らしい。ベースのスタンリー・クラークやドラムのアイアート・モレイラのバックは何度聴いても文句無しにカッコいい。最近ジャズといえば、カフェで流れるような耳当たりのいい甘口ジャズばかりが持てはやされるが、こうした実験的要素や新たな試みにあふれ、しかもノリの良さや親しみやすさも兼ね備えたジャズがあることも再認識したい。この盤全曲のプレイリスト → https://youtu.be/rbynfCYDfuI ポピュラリティの高い名曲「スペイン」 いうまでもなくモチーフはロドリーゴのアランフェス協奏曲。この曲のオリジナルであるこの盤の音源。VIDEO スティーヴィー・ワンダー他VIDEO 野呂一生&櫻井哲夫VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村