さらば!アキュフェーズ



2017年秋から6年間付き合ったアキュフェーズのセットに別れを告げた。
6年前に生涯使い続けるつもりで手に入れたアキュフェーズ。正確で忠実で信頼性も高く、文句をつける点は何もなかった。では、なぜ?


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「面白みに欠ける」…随分勝手な言い分じゃないかと、我ながら呆れたのだが、一旦そう思い始めると、もはや修復は困難だった。いじいじ考えていても時間ばかりが過ぎる。残された健康寿命は長くないのだ。「もうだめだ。別れよう」。 意を決して秋葉原の中古専門店に電話を入れた。 引き取りに来た店の担当者がつぶやいた。「アキュフェーズを手放す方は、みな同じことを言いますね」…げすな例えでナンだが…才色兼備で人柄もよく、丈夫で長持ち、そんな理想の伴侶を自ら手放す。まあ、アキュフェーズあるあるらしい。

アキュフェーズの後釜をどうするかで思案した。
まずアンプの形式はセパレートではなくプリメインとする。大きな理由はないが、プリメインという形式が潔くて好きだからだ。次の条件は重量。アキュフェーズをドナドナした理由の一つはパワーアンプの重さだった。40キロ超はもはや手に負えない(まあ、買う前から分かっていたことだが)。入れ替えにあたって20キロを超えるようなものは除外する。
それとフォノイコライザが程々に充実していることも条件でMCポジションも欲しい。また今後のメンテナンスを考えると、トランジスタアンプならば半導体素子とその使い方が一定水準に達した70年代後半以降のもの、さらに代替部品の調達が難しいマイコンを使っていないもの、ボリュームの感触が悪化することからリモコン付は除外…と、条件を重ねていくと結局、80年前後の国産プリメイン中上級機がターゲットとなった。有力候補となりそうな機種のうち、ヤマハA-2000、ラックスマンL-570(アキュフェーズを迎える前に使っていたなあ)、サンスイの大き目のもの等は重量制限で選外となった。そして何より、見た目が重要だ。



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他の世界同様、行きつくところは骨董・ヴィンテージ。年月・時間を金で買うというセオリーだ。工業製品に骨董という概念はないだろうから、求めるところは程々のヴィンテージ感。80年代はそこまで味わいを醸す時期ではないかもしれないが、先の理由もあってあまり古いものは避けた。そんなメガネでネットを眺めていると、折よく程々のヴィンテージ感をもったセットがあったので速攻で手に入れた。アンプは80年代前後の国産機マランツPM-5、CDプレイヤーはCD黎明期製品の系譜REVOX_B226。重量20キロ以下のプリメイン、CDは古めのフィリップス・スウィングメカ…あたりが選定基準。

マランツの全盛期は完全米国時代の60年代までだろう。70年代以降はいくつかの日本メーカーやフィリップスの間で翻ろうされた感がある。このアンプもデザインこそ往時の名器Model_#7をイメージさせるが(そこが選んだポイントでもあるのだが)、中身は国産メーカー製アンプそのもの。熱心なマランツマニアからすれば、なんちゃってマランツというところだ。
https://audio-heritage.jp/MARANTZ/amp/pm-5.html

幸い下記サイトでサービスマニュアルも手に入った。
(国内外含め、かなりの数の取説and/orサービスマニュアルがある。国内製品と型番が違う場合もあるので注意)
https://www.audioservicemanuals.com/
マランツPM-5
https://www.audioservicemanuals.com/m/marantz/marantz-pm/459796-marantz-pm-5-service-manual

回路図もあるしバイアスの調整値も出ているので当面困らないだろう。フォノイコライザはディスクリートで程々に力が入っているようだ。スピーカーのプロテクションには東芝の専用ICが使われている。このモデルの特徴であるLEDを並べたレベル表示は、この頃から80年代前半、液晶や蛍光表示管が安く使えるようになるまで家電でも盛んに使われた。またA級とAB級の切り替えが付いていて、切り替えると20Wまでの実用域でA級動作する。これも当時の国産アンプによくあった。放熱板はやはり当時の流行りでヒートパイプが使われている。A級に切り替えると一気に発熱量が増えるようで、ヒートパイプから中の熱媒体が蒸発する音がシュワシュワと聞こえてきて少々不安になる。その他の作りはいたってオーソドクスのようだ。

音はどうか…
ぼく自身は家庭用オーディオの95%以上はスピーカーで音が決まる、アンプやCDプレイヤーでそうそう音は変わらない(ましてやケーブルで…)と考えているので、入れ替え後の音に不満も違和感もほとんどない。心配していたアンプのSN比と残留ノイズも及第点だ。アンプもCDプレイヤーも昨年末に揃ったばかりで、あまり詳細に検分はしていない。いずれ個々にインプレッションを記事に残しておこうと思っている。


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ホールに響くWE



今月のN響定期他を振る予定だったブロムシュテットが体調不良で来日中止となった。きのうNHK交響楽団からのメールで知った。14・15日の定期公演は中止。20日以降の他の公演についてはまだ正式発表がない(代わりの指揮者を立てるのか、あるいは体調回復次第来日するのか…)。早々にチケットを手配して楽しみにしていたので残念至極。ともあれ、体調の回復を祈るばかりだ。
さて話変わって…先日、地元で興味深いイベントがあったので行ってみた。


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当県みどり市にある「童謡ふるさと館」。童謡「うさぎとかめ」などの作詞者として知られる同地出身の石原和三郎を記念して建てられた施設だ。ここで「励磁型スピーカー体験音楽会」と題された、ウェスタンエレクトリック(WE)の劇場用システムを使ったレコードコンサートが行われた。個人所有のシステムが400名程入れるホール内に常設されていて、期間を区切って週末に開かれている。往年のWEシステムについては、ぼくがくだくだ説明するのも不要だろうし、その知見もない。概要はこちらのサイトを参照されたい


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入室してしばらくすると主催者が近寄ってきて、レコードは持参されましたかと聞かれたので、クラシックのLP1枚とポップスのシングル盤3枚を差し出した。LPは事前にある1曲を選んで付箋のメモをつけておいた。実はCDも何枚か持参したが、この日はCDプレイヤーが不調なのか、そもそも受け付けてないのか不明ながら、レコードのみの受付だった。


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参加者持参のもの、主催者自身のもの含め、LPの片面20分前後をしっかり聴く感じで進行。ぼくは自分の持参品だけで時間を取らせてはいけないだろうと、事前に選んでおいた10分程の1曲(ワグナー:マイスタージンガー前奏曲)とシングル盤3枚(八神純子2枚、久保田早紀)を依頼した。イベント会場には主催者のコレクションもかなり置いてあり、リクエストすれば聴かせてもらえるようだ。

音の印象…
WEファンには失礼な話だろうが、せっかく行ってがっかりしないようにと、事前の期待値を低めに設定して臨んだのだが、結果はその期待値よりはずっと良く楽しめた。予想通り概して歌物がよく、クリアで硬さのないボーカルがよく響く。ロック調のポップスでは、実際のコンサートPAに近い感じで、ベースやバスドラムの低音もローエンドの伸びは程々ながら、ボワボワこもってあいまいになることもない。クラシックのオーケストラはぼくが持参したものだけだったが、音数が多いと団子になってしまうのかなあと危惧したものの、各パートの分離も良好でこれも予想以上に良かった。主催者のコレクションと思われるバッハのヴァイオリンソナタでは、バイオリンの音が少々メタリックで耳についた。中高音ホーンと録音の相性によるものかもしれない。
ぼくが持参した3枚のシングル盤も好印象。他のレコード含めて、一番相性が良かったかもしれない。八神純子「思い出は美しすぎて」「みずいろの雨」は彼女のよく通るハイトーンがストレスなく再生され、バックの伴奏とのバランスも良好で文句ない再生具合に心の中で拍手を送った。
主催者のすすめ通り、400名程入るホールの対角線上30メートル程離れて聴いたのだが、面白いことにスピーカー近くの横にいってもさほど音量が上がらない。やはり指向性が強いのだろう。あの特性なら劇場に置いたとき近くでうるさいこともなく、縦長の場内で万遍なくサービスエリアが確保できるのかもしれない。


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総じて行った価値ありのイベント。東京周辺ならWEマニアで満員御礼になりそうだが、そこは田舎のいいところ。500円の格安参加費にも関わらず、広いホール内に参加者は数名。欲を言えばもう少しボリュームを上げて聴きたかったところだが、アンプ類の状態も心配だろうから無理は言えない。イベントが行われた「童謡ふるさと館」の館内には石原和三郎に関する展示の他、懐かしい昭和のコンソール型ステレオとレコードがおかれ実際に聴くことができるようだ。

二時間余、かねて噂に聞きしWEヴィンテージの味わいを楽しみ、20世紀初頭に現代でも使える音響システムが出来上がっていたことに思いを馳せつつ会場をあとにした。次回予定は不明だが、うまくタイミングが合えば、わたらせ渓谷のドライブ・散策を兼ねて訪れるのもいいだろう。


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Falcon Acoustics Q7 組立・音出し



しばらく前に到着していながら、ずっと放置状態だったFalcon Acoustics Q7を先日ようやく組み立てた。


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多くのオーディオ好きの部屋には複数のセットが鎮座する。限られた空間でいずれをメインに据えるかは楽しくも悩ましい問題だ。特にスピーカーは音の変化が大きく、大型、小型入り乱れて収拾がつかないことも多い。オーディオ病の典型症状の一つだ。 以前の記事にも記した通りこの10年、かくいうぼくも混戦状態が続いていた。2年前に三菱2S-305を再導入してからは、同機と数年前に手に入れたAvalon社Eclipseと時々入れ替えながら使っている。しかし、最近はまともにスピーカーと対峙して聴くことも少なくなり、また広くはない道楽部屋をなるべく清々と使いたいと思うようになり、小型ブックシェルフ型スピーカーを物色していた。そんな折に見つけたのがFalcon_Acoustics社のスピーカーQ7だった。2月初旬に到着していたQ7だが、年度末のごたごたの煽りで開梱もせずに放置状態。4月になってようやく落ち着いて開梱、そして組み立てとなった。


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組立といっても、同梱されてくる工具を使って慎重に進めれば、1時間もあれば完成となる。電気配線も半田付けは不要。内部配線のケーブルを基板やターミナルの端子に差し込むだけだ。いくつか気を使うポイントはあるが、ネットからDLしたマニュアルに従っていけば特に難しいところはない。構成部品の加工精度も問題なく、組立後の調整もいらない。

組立完了後さっそく音出し確認となった。
大型の2S-305を別室に移動した道楽部屋はすっきりをして実に気分がいい。部屋に広さに関わらず、スピーカー前方の空間はなるべく広く確保し、音が部屋全体に広がるようセッティングするが基本だ。奥行き35センチほどの出窓があるので、ひとまずそこにセット。専用スタンドでスピーカー後方にも空間を確保して…というセオリーは承知してるが、見た目の印象を優先。さて肝心の音は…


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予想通りの第一印象。以前、ロジャースLS3/5aにルーツをもつハーベス社のHL-P3ESRを使っていたときの記憶が蘇える。口径10センチちょっとのウーハと密閉型エンクロージャから想像するよりは遥かに低域が充実している。バスレフ型の共振作用による低音を違って特定の帯域だけ強まることがなく、ダンピングも良好だ。LS3/5aオリジナルに比べ奥行きのみ数センチ長く、容量が拡大されていることによりfoは10Hz下がっているとのこと(70Hz→60Hz)。その効果は確かにありそうだ。中高域は比較的穏やかな鳴り方で、音のエッジを立てて高解像度を装うような気配はない。音場の広がりはそう大きくなく、最近の小型スピーカーに比べると控えめと言えるかもしれない。総じて半世紀前のオリジナルLS3/5aのコンセプトを正しく継承しながら、そのバランスを崩さない範囲でエンクロージャ容量をわずかに増やして低域の伸長を狙った、その意図通りの音のようだ。しばらくはこの状態で色々と聴いてみるつもりだ。


以下、例によって安直なレコーダーを使った空気録音を試みた。やや大きめの音量で鳴らしたこともあって、部屋の影響(定在波や反射音のピーク・デプス)が目立ってしまった。参考にもならない、道楽人の手慰み程度に見てほしい。

熱帯ジャズ楽団


ダイアナ・クラール


ヤニグロのチェロ


諏訪内晶子の弾くバッハ・ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調



以前2S-305で録った音源は以下の通り。
https://youtu.be/tkZps71Eyq4
https://youtu.be/DJw8qfB-E3Y
https://youtu.be/NsTf7YwJnjw


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Falcon_Acoustics_Q7到着



先日注文したFalcon_Acoustics社のQ77が到着した。


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注文後、Falcon_Acoustics社の現社長Jerry Bloomfieldとメールを何通かやり取りしているうちに成田着。国内分費用もオンラインで済ませ、翌日には自宅ピンポンとなった。開陳、組立他、後日ゆっくりと。


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Falcon_Acoustics_Q7



つい先日、英国Falcon_Acousticsへスピーカーを発注した。


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十年程前、それまで使っていた2S-305から小型スピーカーへの乗り換えを試行。しかしその後紆余曲折を経て再び中型そして2S-305再導入という、オーディオあるあるのスットコドッコイを演じてしまった。道楽人間なんて勝手なもので、大きいのを手に入れば小さいのが欲しくなる。その逆もまた真なりで、結局当てのない道楽ワンダリング。実は少し前から小型スピーカーモードに突入していた。大は小を…兼ねないのだ。

小型(ブックシェルフ)スピーカーの選択は実に悩ましい。あまりに数が多いし、試聴すれば決まるかというと、そもそもスピーカーの店頭試聴は参考にすらならないことがほとんど。自宅環境との差が大きすぎるからだ。ネット情報、雑誌情報、ためつすがめつ…。堂々巡りもどこかで終止符を打たねばと決心。選んだのはロジャース社オリジナルに端を発するLS3/5aだ。
このあまりに有名なLS3/5aについてここで語る気も資格もない(ネットに山ほど情報有り)。現在、新品入手できるLS3/5a系のスピーカーは何種類かある。オリジナルに忠実に作りBBC認定を受けているもの(Stirling_Broadcast、Falcon_Acoustics、Graham_Audio等)、形態や思想を受け継ぎながらもモディファイしたもの(Spendor、Harbeth等)まで。もちろん中古市場でもタマが多いし、本家ロジャーズブランドのアニヴァーサリーモデルの在庫がまだあるようだ。

悩んだあげく選んだのは英国Falcon_Acoustics社のもの。Falcon_Acoustics社は欧州におけるスピーカーユニット、部品の供給メーカーとしてメジャーな存在。何よりオリジナルLS3/5aのユニットを供給していた当時のKEFでユニット開発に携わったマルコム・ジョーンズが起こした会社だ。同社のLS3/5aも評価が高い。但し今回ぼくが選んだのはLS3/5aそのものではなくLS3/5aをベースにしたQ7というモデル。 LS3/5aのキャビネットを奥行き方向のみ少し拡張し、さらに自宅でユーザーが組立てるようキット化したもの。Q7はQ=0.7から取られた。それが何を意味するかは、スピーカー工作を少しかじった輩ならピンとくるだろう。小型にも関わらず想像以上の低音感が得られるLS3/5aだが、さらにそのエンクロージャ容量を増やして低域を拡張している。解説によれば低域拡張による悪影響が出ないよう十分考慮されている様子。もちろんユニットやネットワークはLS3/5a同様のものが使われている。組み立てはネジ止めとワイヤ端子挿入で小一時間もあれば完成だという。Falcon_Acoustics社のLS3/5aは国内ではヨシノトレーディングが扱っているが、Q7は取り扱いがない。英国Falcon_Acoustics社へ問い合わせると日本への発送は可能ということで、送料込みの見積もりを送ってくれた。

ロジャーズ社オリジナルのLS3/5aにこだわってヴィンテージ物を探すもよし、現代のレプリカを探すもよし、ややモディファイしたモデルを選ぶもよし、お手頃価格の中国メーカー製キットでもよし。こうした選択肢が現在も途切れることなく存在することに驚く。さすがは歴史的名器だ。すでにPayPalで支払いも済ませた。到着が楽しみだ。


すでに同好の士による動画もある


同 組立篇


LS3/5a小史



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ダイヤトーン開発物語「音づくりに生きる」



少し前、非公開のコメントいただいた。三菱ダイヤトーンのスピーカー2S-305に関連してこのブログがヒットしたとのこと。一度手放した2S-305をその後買い戻したという以前の記事に触れ、その方も同じような経緯をたどったとのこと。この手の話、同胞の輩にはあるあるネタのようだ。そんなこともあって手元にあるこの本を久しぶりに引っ張りだした。


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ダイヤトーン開発生産拠点だった往時の三菱電機郡山製作所
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昭和61年1986年にダイヤモンド社から出た「音づくりに生きる」。~ロボットと名人芸の結晶「ダイヤトーン」開発物語~と副題がついている。米山義男と後藤慶一というテクニカルライターが書いたいわゆる企業本だ。内容は表題から押して知るべしのもので、一時代を築いた三菱電機のスピーカーブランド「ダイヤトーン」の誕生から最盛期、そしてデジタル時代を迎えて新たな挑戦に挑む姿が描かれている。この本、企業本の常として相応の冊数が社内配布されたのか、発刊から40年近く経ちながら時々古本で見かける。今もアマゾンを覗いてみたら2冊がリストされていた。

ラジオ受信機用から始まりテレビそしてステレオ時代と、音響機器の需要は昭和の電気機器産業にとっては大きなカテゴリーだった。三菱ダイヤトーンスピーカーはそんな時代背景と、三菱グループという広範な技術資産と開発能力との上に花開いた。とはいえ、多くの昭和の技術開発ストーリーにもあるように、ダイヤトーンスピーカーも幾人かの技術者の寝食を忘れた努力、資材・生産・営業部門の多くの人々の人間力があって成立した。この本にもそうした人々の物語がいくつかの印象的なエピソードと共に描かれている。70年代の貧乏学生時代、ダイヤトーンのフルレンジP-610を自作の後面開放箱に入れ、貧弱な自作真空管アンプで鳴らして多くの音楽聴いてきた身には、この本で紹介されたエピソードにより当時の光景がリアルに蘇る。


当初業務用であった2S-305を一般市販した際、大量の受注残を抱え、販売停止の新聞告知がなされた。
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2S-305のラウンドバッフル加工
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中でも現在まで語り継がれるダイヤトーンのレガシーと言えば、NHKとの共同開発による放送局用モニター2S-305だろう。ぼくが2S-305に出会ったのは70年代半ば。大学一年の時に知り合ったある恩師宅だった。その音はまさに衝撃的だった。自分の貧弱なオーディオを比べるまでもなく、こんな音があったのかと二十歳になったばかりの学生を驚嘆させるのは、2S-305をもってすれば簡単なことだったのだろう。その後社会人となり「いつかは305」と唱えながら過ごし、そして出会いから20年を経過した90年代半ばにようやく手に入れた。過去一度、小型スピーカーへの移行を目指して手放したものの、その後紆余曲折を経て、今も日々素晴らしい音を奏でてくれている。

この本を眺めていると、往時のダイヤトーン全盛期の生々しい現場、活況を呈した市場、そしてオーディオ、カメラ、車…当時の若者があこがれ、日本市場そして世界を席巻したジャパン・アズ・ナンバーワンの時代を今更ながらに思い出す。


2S-305の音の確認。いわゆる空気録音。貧弱なレコーダーと何の音響処理もしていない8畳道楽部屋ゆえ、その真価は伝わらないのは承知しているが、ついついこんな遊びをやってしまうのも道楽人の常だ。







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アシダ音響ST-90-05



先週末、注文していたオモチャが届いた。

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アシダ音響のヘッドフォンST-90-05。気安く買える値段だったこともあり、しばらく前に同社のオンラインショップから注文していた。人気沸騰とのことで生産が追いつかず、到着までひと月ほどかかった。
アシダ音響というと、ぼくら世代で少々オーディオに興味を持った輩には聞き覚えのある会社名だろう。但し実際の製品となると一般民生用にはほとんど出ておらず、放送局の現場モニター等で使われる製品がほとんどだった。ぼくはかつてオーディオ雑誌で知ったフルレンジスピーカーで記憶にある。今回手に入れたヘッドフォンはそうした業務用のロングセラーをコンシューマー用にモディファイしたものとのこと。


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かつて80年代にぼくら世代が熱中したオーディオ全盛期にはヘッドフォンはサブ、アクセサリの範囲を出なかったが、今の若い世代にとってオーディオデバイスといえばヘッドフォンやイヤフォンがデフォルトだ。今回手に入れた製品は写真でわかる通り、いかにも昭和レトロかつこれ以上ないくらいシンプルなデザインで、そこが今の若い世代に受けて人気となっている様子。 音はベースとなったモニター機の特性を引き継ぐ明解なもので、手持ちのソニーCD-900STに通じる。ダイヤフラム径は40㎜。1テスラの強力磁気回路が売りのようで、低音は低いところまでしっかり出る。中高音はソニーに比べると音数の多い管弦楽曲でやや団子になる感じだが、ボーカル、室内楽、ピアノ等は問題なし。耳の上に載るタイプの密閉小型シェルで音漏れはほとんどない。深夜に内緒?!の音源を聴くにも好適だ。ヘッドバンドは樹脂製でクッションはなく、調節機能も最小限だが、本体が110グラムと軽量なこともあって装着感も問題ない。

横綱・大関・小結…三役揃い踏み
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ぼくの場合、日常的に夜半のダイニングテーブルにおいたノートPCでYouTubeなど聴くことが多いが、そのときのお供としてコンパクトで音質も及第点のこのヘッドフォンは、今まで使っているソニーに代わって活躍しそうだ。




ゼンハイザーHD599との比較。



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
音楽とクラシックギターに目覚めて幾年月。道楽人生成れの果てのお粗末。

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