カレル・アンチェル&チェコフィル ブラームス交響曲第1番ハ短調



このところ聴いているアンチェル&チェコフィル。今夜はこの盤を取り出した。


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カレル・アンチェルとチェコフィルによるブラームス交響曲第1番ハ短調。悲劇的序曲が一緒に収められている。これも十年ちょっと前にスプラフォン・ヴィンテージ・シリーズで出た廉価盤の中の一枚。1962から63年にかけての録音。

アンチェルを続けて聴き直して思うのだが、彼の基本的姿勢は音楽の骨格をしっかりとらえ、過度な贅肉は付けずにスッキリした造形で曲を進める。その典型は先日記事にした管弦楽名曲集などを聴くとよく分かる。一方で、ブラームスともなるとその基本路線にほどよいロマンティシズムがのる。もちろん贅肉は付かないのだが、音の密度が増し重量感が加わってくる。この盤の第1番も同様だ。

第1楽章の序奏から悠然としたテンポで曲は始まる。彼のイメージからするともう少し速いテンポを予想するが見事に裏切られ、重厚なドイツ本流の音楽が流れてくる。冒頭の序奏フレーズがティンパニーの52打目で終わると音楽は木管群に受け渡される。最初に出るオーボエ、続くフルート、いずれもしみじみとして味わい深い。主部に入ってもテンポは遅めで堂々たる歩む。しかも各パートの入りのアインザッツが明確で縦の線も遅れずにビシッと合っているため、緊張感が保持される。第2楽章ではチェコフィルの弦楽群が美しく歌う。終楽章も第1楽章と同様の印象だ。終楽章ではテンポこそ中庸だが、各楽器群の明確な描き分けもあって重戦車が団子状態で突き進むという、この曲にありがちな印象は皆無。キリッと引き締まった造形で進み、中盤からややテンポを上げて次第に高揚感を煽っていく。コーダに入って終わりまでの1分間はいつ聴いても昂る音楽だ。アンチェルとチェコフィルは緊張感を保ち続けて最後の和音が鳴らし切る。併録されている悲劇的序曲も素晴しい出来栄えだ。もちろんこの曲自体の素晴らしさに感動するが、ここでも各パートのフレーズが明確に描き出され、ブラームス流の古典回帰とロマンティシズムの融合が見事だ。


この盤の音源。ブラームス交響曲第1番ハ短調全楽章


同 「悲劇的序曲」



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クリュイタンスのベートーヴェン第八



きょうは文化の日で休日。のんびり散らかった道楽部屋の片付け。ついでにアンプの灯を入れ、先回の続きでこんな盤を取り出した。

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アンドレ・クリュイタンス(1905ー1967)が指揮したベルリンフィルハーモニーよるベートーヴェン交響曲第8番ヘ長調。1957~1960年にベルリン:グリューネヴァルト教会でセッション録音された全集中の一枚。手持ちの盤は2000年頃に廉価盤ボックスでリリースされたときのもの。今もミッドプライスCD一枚の価格で入手可能だ。先回の第2番同様、70年代にはEMIセラフィムシリーズの廉価盤で出ていたので、ぼくら世代にはお馴染みの録音。

録音当時、ベルリンフィルはすでにカラヤンをシェフに迎えていた時期だが、ベルリンフィルの名刺代わりとでもいうべきベートーヴェン交響曲全集初のステレオ盤を、カラヤンに先がけて任されたのが仏系クリュイタンスというのは意外中の意外だ。いろいろ裏事情があったのかもしれないが、クリュイタンスのベートーヴェンチクルスは当時大そうな人気を博していたというから、必然でもあったのだろう。クリュイタンスはどちらかと言えば仏系文化の色濃いベルギー生まれながら、家庭環境ほかドイツ色の強い中で育ったそうだ。そうした事情もあってドイツ物との相性も良かったのに違いない。同じような仏系指揮者であるモントゥーやミュンシュもベートーヴェンやブラームスで名演を残している。

さてこのベートーヴェン第8番。何といっても重量級のベルリンフィルの響きと、それを生かしたクリュイタンスの大らかでスケールの大きな解釈が素晴らしい。この曲の演奏では多くの場合編成を少し小さくするが、この演奏では今どき聴けないフル編成。そして50年代末期の、まだフルトヴェングラー時代のメンバーの多くが残っていたベルリンフィルの音色は重厚そのものだ。しかし、その重量感をもってゴリゴリやらないところがクリュイタンス。大編成で低重心のオケが、遅めのテンポにのってしなやかに歌う。他の曲ではもっとハードな演奏を繰り広げるのだが、この第8番は方向性が違う。第1楽章4分の3拍子はAllegro vivace e con brioの指定だが、クリュイタンスはやや遅めのテンポを取り、穏やかかつ典雅に響く。EMIによる録音は同時期の独グラモフォンに比べ響きが明るく、中高音の解像度も高い。弦楽群が左右いっぱいに広がり、木管群はやや遠めに定位する。

第8番はベートーヴェンの九つの交響曲にあって規模こそ大きくはないが、そこに仕組まれたギミックは周到かつ巧妙だ。第1楽章の明るく屈託のない第1主題とややコミカルな第2主題はいささか脳天気な展開を予感させるが、展開部は短調に転じて畳み掛けるように突き進み、短いながらも隙がない。このクリュイタンス盤は二つの主題がゆったりと奏され、それがゆえに対照的な短調の展開部が劇的に迫ってくる。ベートーヴェンのこの第1楽章の展開も天才的だが、クリュイタンスの解釈もそれをよく生かしていて素晴らしい。


この盤の音源。第1、第2楽章。
冒頭、序奏なしで明朗な第1主題が奏される。0分50秒:チャーミングな第2主題が出る(1分10秒まで)。その後1分35秒と1分48秒に印象的なヘミオラによる経過句。2分20秒:繰り返しにより冒頭へ(ソナタ形式提示部の繰り返し)。4分40秒から展開部へのブリッジ。4分56秒:この曲で初めての短調和声がチラっと出るが、すぐに否定される。5分12秒再び短調の和音を導入される。今度は長調に戻らず、そのまま5分30秒から展開部の核心へ。第1主題のリズム音形が短調で低弦群で奏される。4分の3拍子の第2拍目にアクセントを打ち込みながら、ベートーヴェンらしい展開が続く。6分00秒から執拗な繰り返しで緊張MAXへ。そのまま盛り上がって6分30秒に長調の第1主題へ高らかに回帰する。以降再現部へ。


この盤の音源。全楽章


高関健指揮・群馬交響楽団による第1楽章。1995年ライヴ録音。手持ちの盤からアップした。



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クリュイタンスのベートーヴェン第二



月があたらまって令和四年霜月十一月。あれあれと思っているうちに、今年も残すところ二ヶ月となった。相変わらず業務そこそこ多忙。先月もヒヤヒヤもので何とか乗り切った。きょうも程々に仕事をし、夜7時からの町内自治会の会合に滑り込みセーフで出席。8時半を回った頃に帰宅した。アクセス数だだ下がりの本ブログ。めげずに今夜も更新。少し前に聴いたワルターのベートーヴェンで思い出し、そのうち聴こうと思っていたこの盤を取り出した。


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アンドレ・クリュイタンス(1905-1967)とベルリンフィルによるベートーヴェンの交響曲第2番ニ長調。手元にはこのコンビによるCD盤全集もあるが、今夜は半世紀前の懐かしい盤を取り出した。アラカン世代以上にはお馴染みのEMI音源セラフィムシリーズシリーズ。このシリーズは70年代に何度かジャケットを変えてリリースされた。クリュイタンスとベルリンフィルのベートーヴェン、バルビローリとウィーンフィルのブラームスなど、魅力的なラインナップだった。惜しむらくは緑色のジャケットだけが廉価盤のチープさを物語っている。このコンビによるベートーヴェン交響曲全集は1957年から60年にかけてベルリンのグリューネヴァルト教会で録音された。当時グラモフォンがベルリン・イエスキリスト教会をしばしば使ったの対し、EMIはグリューネヴァルト教会でのセッションが多かったと聞く。

それにしてもこの盤で聴けるベルリンフィルの音は素晴らしい。弦楽群の分厚く重い響きはベートーヴェンに相応しく音楽のそこここにウェイトをのせてくれる。それでいてEMIの録音ポリシーもあってか、中高音のしなやかさも兼ね備えて美しく歌う。木管も金管もやや遠くに定位し、弦楽群とブレンドした響きが部屋に満ちる。ベルギー生まれのクリュイタンスは仏系指揮者ということになっているが、幼少期には父からドイツ語やゲルマン文化の薫陶を受けたという。この録音当時、クリュイタンスのベートーヴェンチクルスは大そうな人気であったというし、仏系指揮者としては初めてバイロイトにも登場している。そんなクリュイタンスがベルリンフィルをしなやかに歌わせ、ときに熱くドライブする。まだカラヤン色に染まる前のベルリンフィルは低弦群のアインザッツが遅め、かつ深く響く。この演奏がもし独グラモフォンでなされていたら、いささかもたれ気味の響きになっていたかもしれないが、EMIの録音はヴァイオリン群の中高域など、現代的視点でみると少々歪やざらつきがあるものの、総じてしなやかかつ解像度が高く、それが深い低弦群の響きにうまくのって素晴らしい響きを形成している。


この盤の音源。とりわけ美しい第2楽章は12分52秒から。


高関健指揮群馬交響楽団による第2楽章。手持ちの盤からアップしたもの。



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ワルターのベートーヴェン交響曲第2番ニ長調



オーディオで音楽を楽しむ愛好家には今はベストシーズン。暑からず寒からずでエアコンノイズから解放され、静かな環境で音楽が聴ける貴重な季節だ。平日の夜半はダイニングテーブルでノートPC&ヘッドフォンで聴くことが多いが、今夜は導入から5年目のアキュフェーズのセットに灯を入れ、ゆったりリスニング。取り出したのはこの盤だ。


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ブルーノ・ワルター( 1876-1962)とコロンビア交響楽団によるベートーヴェンの交響曲第2番。このコンビによるワルター晩年の録音の一つ。手持ちのCDでは名演の誉れ高い第6番「田園」がカップリングされている。牛を引くジャケットデザインは確かLP盤「田園」のオリジナルジャケットだ。このコンビによるベートーヴェン交響曲の録音は偶数番号がとりわけ優れているといわれる。伝えられるワルターの陽性で温厚な性格からそういうことになったのだろう(もちろん奇数番号も素晴しい)。この盤では2番と6番という組み合わせで、このコンビのよい面が十全に現れている。

第1楽章冒頭から充実した響きがスピーカーからあふれてくる。ワルター晩年の記録を残す目的で録音セッション用に集められたやや小編成のコロンビア響だが、そうしたハンディキャップはまったく感じない。ロスアンジェルスやハリウッドの腕利きを集めただけのことはある。むしろ小編成ゆえにワルターに指示に対する反応がダイレクトに現れて、アクセントやスフォルツァンド、短いフレーズ内でのクレッシェンドなど、少し大仰かと思うほど小気味良くきまるし、低弦群もしっかりと聴こえてくる。いや、むしろ異例といってくらいチェロ・バスの音形やアクセントを強調し、ときにゴウゴウをうなりを上げるほどの迫力だ。スタイルとしてはやや古いドイツ流の様式感で、音楽の味付けとしてはやや濃い口。しかしコロンビア響の運動性能はきわめてよく、音楽は鈍重になったり滞ったりはしない。

この第2番の圧巻はやはり第2楽章だろう。本ブログでは度々この第2楽章の美しさを語っているが、ワルターの演奏は中でも抜きん出て素晴らしい。手持ちの盤幾多ある中でテンポはもっとも遅く、ゆったりとしたテンポにのせて歌うカンタービレは他では聴けない素晴らしさだ。参考までに第2楽章の時間をいくつかの盤と比較してみた。多くの演奏の平均値に比べて4割も長い。

14分30秒 ワルター&コロンビア響 この演奏
12分30秒 クリュイタンス&BPO カラヤンに先立つBPO初のステレオ盤全集
11分07秒 スウイトナー&SKB 中庸をいくスタンダード
10分33秒 カラヤン&BPO 60年代録音
10分01秒 ノリントン&LCP ピリオドスタイル
9分59秒 トスカニーニ&NBC

終楽章はもう少しテンポを上げたい気もするが、音楽は充実し切っていて、決め所のティンパニやトゥッティはエネルギーに満ちていて申し分ない。トスカニーニやフルトヴェングラーらと並んで20世紀前半の巨匠時代の一翼を担ったワルターだが、モノラル期までで亡くなった他の二人に比べ50年代後半から60年まで存命し、晩年コロンビア響との良好なステレオ録音が残せたことは幸いだった。



手持ちの盤からアップ。第2楽章


この盤の音源。第2楽章は10分21秒から。概要欄にある録音年1958年は1959年の間違い。



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バースタイン&NYP マーラー交響曲第10番



週末三連休の日曜日。さすがに一時期の暑さはなくなり、もうすぐ秋本番だ。日頃から「やるやる詐欺」でごまかしていた家内野暮用を少々こなし、さて一服。アンプの灯を入れ、こんな盤を取り出した。


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久しぶりのマーラー。バーンスタイン指揮ニューヨークフィルの演奏で第10番の交響曲を聴くことにした。バーンスタイン、そして彼のマーラー演奏についてはあれこれ紹介する必要もないだろう。1975年録音のこの盤は、彼のニューヨークフィルとの60年代から始まった最初の全集録音に、あとから付け加わる形で作られた。この盤ではA面に第10番、B面にはジャネット・ベーカーが歌う「亡き子をしのぶ歌」が入っていて、当時まだ残っていたSQ4チャンネル対応のカッティングがなされている。二十年近く前に、近所のリサイクルショップのジャンク箱で見つけた。ジャケットの隅に¥150のプライスタグが付いたままだ。

調性感の定まらない不安げなヴィオラのメロディーでこの曲は始まる。ひとしきりこの旋律が続いたあとヴァイオリンの主題が出て、ようやく音楽が動き出す。以後はこの主題を変奏する形で曲は進むが、マーラーの作品らしい濃厚なロマンチシズムと同時に、頻繁な転調やときおり調性感を失うような箇所も多く、ずっとその音楽に浸り切る安定はない。常に居所定まらない不安が付きまとう感じだ。マーラーが、自身の死がそう遠くないこと悟っていた時期の作品で、かつ5楽章の構想を描きながら絶筆に終わったこの曲は、残された二十数分間のこの第1楽章に象徴されている。もし5楽章が完成していたらどういった音楽になっていたかは、デリック・クックによって補筆された全曲版が有名だ。手元にサイモン・ラトルによるクック版もあるので、いずれ取り上げよう。

バーンスタインの指揮ぶりは、この曲に関しては意外にもあっさりと仕上げている印象だ。同じニューヨークフィルとの録音で聴かれる熱っぽい感情移入や、フレーズをことごとく粘り気味に歌い、重い足取りで進む特徴的な曲の運びは影をひそめている。ど素人が批評するような話ではないが、さすがにマーラー指揮者として第一人者だったバーンスタインだ。やはり楽曲の特性をよく心得ている。今更バーンスタインでもないだろうという声も聞こえてきそうだが、いやいやなんの。一時代成した貫禄のマーラーだ。


ウィーンフィルとのライヴ映像。1974年ウィーンコンツェルトハウス。


クレーメルと彼が率いるクレメラータ・バルティカによる弦楽合奏版の演奏。 例によって!マークが出るが、「YouTubeで見る」をクリックすればOK。



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バーンスタイン&VPOのブラームス



週半ばの水曜日。本格的な秋にはまだ間があるが、少し先取りしようかと、今夜はこの盤を取り出した。


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レナード・バーンスタイン(1918-1990)とウィーンフィルによるブラームス交響曲全集。きょうはそのうち第4番ホ短調の盤をターンテーブルにのせた。1981年10月録音。手持ちの全集セットは、学生時代からもっぱら廉価盤専門だったぼくにしては珍しく、発売と同時に大枚はたいて手に入れたLP盤セット。

久々にターンテーブルにのせてオルトフォンSPU-Gで聴くアナログ盤最終期の音は格別だ。一聴して高音域の繊細さと音の奥行きの素晴らしさに耳がいく。低音もたっぷりと響き、申し分ないピラミッドバランスの音が広がる。とりわけブラームスの交響曲などこれ以上にないくらいマッチする。
バーンスタインのやや粘着質のフレージング、艶やかなウィーンフィルのヴァイオリン群、ぎりぎりのタイミングまで待って合わせる金管群やティンパニーのアインザッツ。どれもがやや古いスタイルの特性といえるだろうが、ロマン派後期でありながら古典的スタイルを指向したブラームスの一つの理想的な表現だ。どの楽章も遅めのテンポと濃厚な歌い口で、むせ返るようなロマンティシズムに満ちている。ライヴ録音をベースに編集を加えてある録音だが、第1楽章冒頭からバーンスタインのうなり声が聞こえてきて、一気に曲に引き込まれる。70年代後半以降、バーンスタインがウィーンフィルと組んだ一連の録音は、完全にヨーロッパの伝統的な様式感を手中にした感があり、それまでのアメリカ中心のイメージとは一線を画す展開となった。ベートーヴェン、ブラームス、シューマンなどいずれも他に類をみない名演だと思う。



この盤を併行して録られた映像。概要欄にボストン交響楽団と記されているが、もちろんウィーンフィル(@ムジークフェライン)の間違い。


ドラマ仕立ての第4番アレコレ



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バーンスタイン&VPOの「英雄」



ぐずついた空模様が続く関東地方。きょうも程々に仕事に精出し、いつもの時刻に帰宅した。
ひと息ついて…このところ通勤車中で聴いていた、この演奏を取り出した。


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レナード・バーンスタイン(1918-1990)とウィーンフィルによるベートーヴェンの交響曲第3番変ホ長調「英雄」。同コンビによるベートーヴェン交響曲全集の中の一枚。手持ちの盤は8枚組LPのカートンボックス入りセット。90年代後半、御茶ノ水の中古レコード店で投げ売りされていたもの。

60年代後半のイッセルシュテットに始まり、ベーム(70年代初頭)、バーンスタイン(70年代後半)、アバド(80年代中庸)、ラトル(2002年)、ティーレマン(2008~2010)と、ウィーンフィルはこれまで何度か一人の指揮者によるベートーヴェンの交響曲全集を録音(ライヴ含む)している。熱心なクラシック愛好家は、自分が音楽にもっとも接した時期に応じて、いずれかの盤を愛聴しているに違いない。ぼくの場合は世代的にベームとバーンスタインということになる。

バーンスタインは50~60年代に多くのレパートリーを当時の手兵ニューヨークフィルと録音していたが、ぼく自身はあまり馴染みがなく、何となくアメリカ生まれの、ミュージカルも手がける器用な作曲家兼指揮者というイメージしかもっていなかった。そのためマーラーやチャイコフスキーの一部の録音を除く、ベートーヴェンやブラームスなどの独墺系楽曲にはほとんど接していなかった。実際、世評でもバーンスタインのベートーヴェンやブラームスを高く買われていたという記憶はない。そんなバーンスタインの評価が一変したのは、70年代以降、活躍の場を欧州に移し、とりわけウィーンフィルとの結びつきを深めてからだった。ウィーンフィルとの出会いによって欧州の伝統とバーンスタインの解釈とが融合した。その結果、ベートーヴェンやブラームス、シューマンなどの録音が世に出て、その演奏は以降も名盤として今日に引き継がれている。このベートーヴェン全集もその時期のバーンスタイン、そしてウィーンフィルを代表する盤となった。

中でもこの第3番「英雄」はバーンスタインとのロマンと情熱とを併せ持つ解釈とウィーンフィルの艶やかでありながら重量感もある特性とにより、素晴らしい演奏を展開している。バーンスタインは80年代以降の晩年になるとテンポが極端に遅くなった。粘着質の解釈と相まって、音楽の進行が鈍重になり、くどさを増す面が否めないが、この録音の頃はまだそれがない。音楽は第1楽章から雄渾に流れ、第2楽章では深い慟哭にむせぶ。終楽章では重量感を増しつつテンポを上げ、ややもするとダレだちになるこの楽章でも緊張感と情熱を持続して大団円を迎える。

この盤の音源。第1楽章


この録音と同時期の映像音源。ウィーンフィルを情熱的にドライブするバーンスタイン。第2楽章の山場、終盤26分00秒からのフーガでは一層感情移入を強める。26分41秒からのコントラバスの入りは、オケ奏者になるなら絶対コンバスだ!と思わせるひと節だ。27分14秒:高らかに咆哮するウィンナホルン。27分28秒:ティンパニの一撃。27分47秒辺りから短二度の響きで緊張感MAXとなり、28分07秒から続くスフォルツァンドで一気にカタルシスを迎える。


バーンスタイン先生による短いレクチャー



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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