アバド&CSO マーラー交響曲第5番嬰ハ短調



クラウディオ・アバドが亡くなってからすでに十年になる。2014年の1月20日過ぎ、ネットニュースで訃報に接した。享年80歳。アバドも80歳にもなっていたのか…そのとき、まずそう思った。


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ぼくが音楽をせっせと聴きだした70年代中盤には、次世代を担う若き旗手だった。そんなイメージからぼくの中でのいつまでも「若手」だった。 カラヤン亡きあとのベルリンフィルのシェフをなり、近代化と国際化を推し進めたアバドだが、同時にベルリンフィルを軽量化しただの、譜読みが浅いだのと指摘する声も絶えなかったと記憶している。ぼく自身彼の熱心なファンではなかったのだが、手持ちのいくつかの盤に聴く彼のしなやかで明快な音楽作りがピタリとくるものもあって、特にメンデルスゾーンやマーラーには愛着を持っていた。

今夜はそんな10年前のことも思いつつ、シカゴ響とのマーラー第5交響曲を聴くことにした。アバドにとっては最初のマーラー5番。1980年録音。手持ちの盤はカートンボックス入りの独グラモフォン輸入盤。確かお茶の水界隈の中古レコード店で買い求めたはずだ。1,450円のプライスタグがまだ付いていた。ハンナ・シュヴァルツが歌う「リュッケルトの詩による5つの歌曲」がカップリングされている。結果論として振り返ってみると、アバドはやはり80年代前後までのロンドン響やシカゴ響との時代がベストではなかったかと感じる。このシカゴとの演奏も颯爽としていて、かつ力ずくにならずにシカゴ響のパワーをうまく制御してしなやかな歌を引き出しているように思う。そして注意深く聴くと各声部がよく分離してクリアに聴こえてくる。シカゴ響の特性もあるだろうが70年代までの独グラモフォンの音響バランスとは明らかに違う。例のアダージェット楽章も、明るくクリアで清々としていて、これはこれでいいマーラーだなあと思うのだ。


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この盤の音源。第1楽章


同 第4楽章アダージェット


2004年、ルツェルン祝祭管弦楽団との第5番全楽章。晩年はこのルツェルンのオケを指揮し、ベルリンフィル時代には見られなかった活き活きとした演奏を残した。ルツェルン祝祭管弦楽団は欧州選抜とでもいうべき混成オケ。ナターリヤ・グートマン(Vc)、ザビーネ・マイヤー(CL)、アルブレヒト・マイヤー(Ob)ら豪華メンバー。客席にはポリーニ(0分45秒)他VIPの顔がみえる。



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テンシュテット&LPO マーラー交響曲第5番嬰ハ短調



先日来聴いているマーラー。今夜も続けて聴こうかと、この盤を取り出した。


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クラウス・テンシュテット(1926-1998)とロンドンフィルハーモニーによるマーラー交響曲全集。1977~1988年のスタジオセッション録音。手持ちの盤は20年近く前にEMIから出ていた一連のボックスセット中の一つ。今夜はこの中から第5交響曲嬰ハ短調を取り出して聴いている。テンシュテットのマーラーはこのスタジオ録音以外に相当数のライヴ盤が出ていて、そのいずれもが高水準だ。このスタジオ録音よりもライヴ録音盤を推す声も多い。第5番も確か数種類が出ていたと記憶する。手元にも日本公演でのライヴ盤がある。

テンシュテットの演奏を聴くたびに、もう少し長い間活躍してほしかったと思わざるを得ない。西側への登場がすでに壮年期になってから。以降、ドイツ的な重量感のある演奏で人気を博した。特に晩年ベルリンフィルといくつかの録音を残しているが、そのいずれもが重量級の素晴らしい演奏だ。このロンドンフィルとのマーラーも、さずがにオケの力量はBPOにいささか譲らざるをえないが、多少のハンディキャップを考慮してもこの曲の演奏の中で最有力の一つだろう。

第1楽章冒頭から重々しい響きとテンポで始まる。緩急とダイナミクスの幅が大きく、ときにうねるような表情付けもあって、昨今のさらりとしたマーラー演奏とは一線を画す。そういう言い方をするとバーンスタイン風の感情過多の粘着質な演奏かと思われそうだが、そうではない。音響的には決して騒がず、理性的な抑制が効いていて、造形の厳しさを感じさせる。聴いているこちらも、熱くはなるが、同時に客観的な冷静さも失わないで聴くことができる。こうしてあらためて聴くと、冒頭の葬送行進曲や第4楽章アダージェットばかりではなく、他の楽章もまったく隙のない名曲であることを実感する。

このロンドンフィルのとのスタジオ録音はアナログ録音からデジタル録音への移行期にあたり、一部にオケの力量共々批判を受けるようなところもあるにはあるが、この第5番に関しては十分納得のいく音の状態だ。特にグランカッサやコントラバスの空気感を感じさせる低い帯域の音も量感豊かにとらえられていて、小型密閉式の例のFalcon_Q7で聴いていても低重心な音響が楽しめる。全集全体を通して、歪っぽくなりがちな合唱が入らない曲に関しては問題ないレベルだろうと思う。 純粋に音楽的な解釈と音響構成でマーラーを堪能できる名盤だ。


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この盤の音源で全楽章。


同じコンビによる同曲第2楽章冒頭。1988年ライヴ@ロンドンフェスティバルホール。


この曲をポピュラーにした第4楽章アダージェットは様々な場面で聴くことが多い。2012年東京駅復原の際にはJR東日本のCMで使われた。



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バーンスタイン&NPO マーラー交響曲第5番嬰ハ短調



先回聴いたマーラー第5交響曲。これまで半世紀に渡って飽きるほど接してきた曲だが、久しぶりにスピーカーと対峙して聴き、その素晴らしさをあらためて感じた。ならば…と、きょうはこちらのマーラーを取り出した。


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レナード・バーンスタイン(1918-1990)が60年代に当時の手兵ニューヨークフィルと録音したマーラー交響曲全集(第10番は1975年録音。また第8番はロンドン響との演奏)。十年程前にオリジナルLPジャケットデザイン12枚組のボックスセットで出たもの。オリジナルのLPセットを持っていたのでどうしようかずっと思案していたのだが、三千円でお釣りがくるという値段に背中を押されて手に入れた。

80年代後半になって独グラモフォンに再録音するまで、この<旧全集>は長らくバーンスタインの名刺代わりとでもいうべきものだった。現在でもマーラー演奏のベストとして推す意見も多い。それほどまでにマーラーの演奏を語るときには必ずといっていいほど引き合いに出される録音だ。ぼくも70年代半ばにこのコンビの演奏による第5番と第9番をセットにした廉価盤LPでマーラーにのめり込んだ。その後、リサイクルショップのジャンク箱から先に記したオリジナルのLPセットを捕獲し、他の録音を含めた全容を知るに至った。LP盤で不足はなかったが、2009年にDSDマスタリングされた音源を使ったとのふれ込みや、長丁場の曲はやはりCDの方が扱いやすいという安直な理由もあって手に入れた。

さきほどから第5番嬰ハ短調(1963年録音)を取り出して聴いている。LP時代から聴き親しんできた演奏だ。広いオーディオレンジと豊かに広がる音場感、ホールトーンに溶け込むピラミッドバランスの音響…そういう現代風マーラー録音の対極といってもいい録音音質であり、演奏自体もそうした見栄えの良さを追い求めたものではない。冒頭のソロトランペットもいささかショボイし、ニューヨークフィル全体の音も潤いに欠ける。しかし、どこを取ってもまさに血が吹き出るような情熱にあふれ、バーンスタインの熱い指揮棒にオケがきしむような音で付いていく。コンサートホール中ほどのS席ではなく、バーンスタインの靴音が聞こえてくる指揮台のすぐ横で、熱気を感じながら聴くようだ。もちろん、必要なホールトーンは確保されているし、各パートのバランスも悪くなく、新しいマスタリングの効果もあってか音の解像度も良好。アナログからデジタルの移行期に録音されたテンシュテット&ロンドンフィルとのセッション録音による全集よりは音質良好と感じる。

先回聴いたインバル&フランクフルト放響との演奏とは対照的。バーンスタインが心血を注ぎ、一時代を画したマーラー演奏として今も価値ある録音だ。


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この盤による音源。第5番第4楽章アダージェット。
一旦静まったあとの5分19秒、次のフレーズに入る一瞬の間合いに背筋がゾクッとくる。5分44秒から音楽は再び動き出し、以降バーンスタインがほとばしり出る熱情を抑え、オケがこらえ、しかしせきを切ったように流れ出る。


ウィーンフィルとの第4楽章アダージェット。バーンスタインは70年代にウィーンフィルと多くの映像作品を残した。マーラーの交響曲もその中の一つ。ネックを高々と上げてオケを先導するコンマス:ゲルハルト・ヘッツェル。そしてその横には当時まだ二十代だったライナー・キュッヘル。


この盤の音源で第5番嬰ハ短調全曲



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インバル&フランクフルト放響 マーラー第5交響曲嬰ハ短調



寒さが戻り、小雪もちらつく週末金曜日。暖を取りつつアンプを灯を入れ、この盤をプレイヤーにセットした。


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エリアフ・インバル指揮フランクフルト放送交響楽団(一時期hr交響楽団に改称したが、数年前から再び旧来の呼称が公式名になった)によるマーラーの交響曲第5番嬰ハ短調。1986年1月の録音。手持ちの盤は2000年代初頭に日本コロンビアの廉価盤シリーズCREST1000としてリリースされたときのもの。

エリアフ・インバル(1936-)といえば、70年代半ばからその名が知られ始め、80年代以降、マーラーやブルックナー、ショスタコーヴィッチなどの大曲を次々に録音し、手兵フランクフルト放響と共に大いに人気を博した。ぼくが彼の名を知ったのは学生だった70年代後半で、NHK-FMで紹介される現地のライヴ録音で聴いたマーラーの第2交響曲が最初だった。4畳半下宿で聴く現地の放送音源による演奏は貧弱なオーディオセットにも関わらず実に生々しく熱気を帯びていて、これが本場のライヴ演奏か、これが本場の響きかと興奮を覚えたものだ。その後80年代になってインバルとフランクフルト放響のコンビによる大曲の録音が次々にリリースされた。 この盤も一連のマーラー録音中の一枚で、他の盤同様、当時デジタル録音で世界の先駆だった日本コロンビア(DENON)が現地に乗り込んでヘッセン放送との共同制作として録音された。発売当初から録音の良さでも知られ、オーディオ機器の音質評価用のディスクとしてもよく使われていた。

久しぶり聴いたが、やはり素晴らしい録音だ。ワンポイント録音の手本のような音で、第1楽章冒頭のトランペットから、録音会場のフランクフルト:アルテ・オパーの空間を感じさせる。過剰になりがちなホールエコーを程よく制御しながら細部も克明にとらえ、全体としてまとまりのある音に仕上げられている。 演奏もそうした録音特性にピタリと合致するように、オーケストラを豊かに鳴らしながらも決して全体のバランスを崩さず、かつ弱音で奏される細部も明瞭に提示される。マーラーというと、とかく熱量が多くエネルギッシュな解釈と音響が表に出るケースも多いが、この演奏はその対極だ。高揚感や音響ボリュームはしっかり感じさせるものの、演奏全体に常にすっきりとした見通しのよさがある。曲の解釈、演奏のパフォーマンス、そして録音技術。それら三者が理想的に組み合わされ、力を発揮した素晴らしい演奏記録だ。


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この盤の音源。全5楽章


このコンビによる同曲の来日ライヴ。この盤録音の翌年1987年サントリーホール



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カイルベルト 「MOZART in PRAG」



オーディオセットを入れ替えてから古めのLP盤を手に取ることが多くなった。見た目の雰囲気重視…真の音楽愛好家からは相手にされそうもないが、ささやかな個人の楽しみ。まあ、いいでしょう。


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きょう取り出したのはこの盤。ヨーゼフ・カイルベルト(1908-1968)とバンベルク交響楽団による「プラハのモーツァルト」と題された一枚。この盤のことはだいぶ前に例の本で知った。カラヤンと同い年だったカイルベルトが、手兵のバンベルク響を振ってモーツァルトと深い縁のあった街プラハにちなんだ曲を演奏している。バンベルクのオケもまたプラハに縁のある楽団。チェコで創設されたプラハ・ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団が母体のオケだ。収録曲された曲はモーツァルトの比較的小規模な管弦楽曲であるが、50年代後半にこうした明確なコンセプトアルバムが企画されたこと自体、珍しいことではないかと思う。序曲「劇場支配人」、ディヴェルティメントK.113、4つのオーケストラのためのノクターンK.286、6つのドイツ舞曲K.509、2つのメヌエットK.463、アイネ・クライネ・ナハトムジークK.525といった曲が収められている。

手持ちの盤はキング・レコードのよる60年代初頭の国内初出盤。例によって二十年近く前、大阪出張の折に梅田の中古レコード店の60年代盤コーナーで買い求めた。録音は1959年。ぼくらより上の世代にはジャケットのTELEFUNKENの文字が神々しく見えるだろうか。演奏者のカイルベルト&バンベルク響のイメージと共に、優秀で信頼がおける質実剛健の独逸というイメージだ。

演奏はいずれも素晴らしくいい。どこから見ても乱れや余計なものがない楷書の味わい。ポピュラーなアイネ・クライネ・ナハトムジーク K.525を久々に背筋が伸びる思いで聴いた。同じコンビによるブラームスの交響曲が手元にあるが、アンサンブル・録音ともあまりいいイメージがない。しかしこの「プラハのモーツァルト」は別物のように聴き応えがある。カイルベルトの解釈も堅実でありながら小品の味わいを十分に楽しませてくれるし、バンベルク響の音も派手さとは無縁だが、弦楽器群と管楽器群が一体となって充実したアンサンブルを聴かせてくれる。これはいい盤だ。


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この盤の音源。ディベルティメントK.113のメヌエット


同 「劇場支配人序曲」



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G・セル&クリーヴランド管 東京ライヴ1970



きょうは乱雑になっていた音盤棚を整理。見た目は整然としたが、整理をする度に過去の置き場所の記憶がリセットされ、ますます探し出すのに苦労するという悪循環におちいっている。どうしたものか…。さて、きょうは整理の途中で目に留まったこの盤を取り出した。過去、何度か記事に書いたことがあったが、あらためて聴くのは本当に久しぶりだ。


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高度成長まっしぐらの昭和45年(1970)。この年、大阪万博に合わせて多くの海外オーケストラが来日した。5月に来日したジョージ・セル(1897-1970)指揮クリーヴランド管弦楽団もその中の一つだった。それまでセルと同団のレコードがEPICというクラシックの世界では必ずしもメジャーとは言いがたいレーベルから出ていたこともあって、彼らの日本での評価は世間的人気を得るものではなく、一部の好事家以外にはカラヤンやバーンスタインの人気の方が高かった。ところが最初で最後となったセル&クリーヴランドの来日公演はそうした世評を覆す素晴らしいもので、以降伝説的に語られることになった。それから30年経った2000年春。その伝説の日本公演がCD化された。手持ちの盤はそのとき手に入れたもの。以降も高音質盤を含め再発を繰り返している。収録曲は上記の通り。1970年5月22日東京文化会館での演目が2枚組CDにすべて収録されている。

ウェーバー  オベロン序曲
モーツァルト 交響曲第40番ト短調
シベリウス  交響曲第2番ニ長調
<アンコール>
ベルリオーズ ハンガリー行進曲

盛大な拍手に続いてウェーバーの「オベロン序曲」が静かに始まる。録音やホールの特性もあるのだろうが、弦楽器群の透明な響きに驚く。序奏最後のトゥッティでの一撃もピタリを決め、快速調の主部に入る。速めのテンポと一糸乱れぬアンサンブル、透明感あふれる音色、堅固で筋肉質の低弦群の響き。ウェーバーの曲の良さもあってドイツ管弦楽曲を聴く楽しみここに極まれりという感じだ。

続くモーツァルトがまた素晴らしい。あまりに有名になり過ぎ、いささか手垢にまみれた感があるこのト短調のシンフォニーが、セルの演奏で聴くとそうした世俗的な殻が取り去られ、この曲の持つ本質的な骨格ともいうべき部分が明確に見えてくる。第1楽章の展開部、高音群と低音群の半音階的掛け合いや微妙な転調が続く部分など、一時代あとのロマン派の曲想をもイメージさせるような意味深さが手に取るようにわかる演奏だ。昨今のモーツァルト演奏とは違い大編成による演奏だが、響きが引き締まっているので肥大化した鈍重さは皆無だ。

当日休憩をはさんで演奏されたと思われるシベリウスがセル&クリーブランドの特性にマッチするだろうということは容易に想像できる。響きの透明感は言うに及ばず、短いフレーズの中でのクレッシェンドやディクレッシェンド、くさびを打つように入ってくる金管や打楽器のアンサンブルなど、オケの機能が完璧にコントロールされている。合わせて終楽章などは楽章全体を大きくつかんで盛り上げていく曲の運びも申し分ない。

盛大な拍手に続けてアンコールが演奏される。しかも圧倒的なクライマックスのシベリウスの直後、高らかに鳴り響くトランペットで始まるハンガリー行進曲。ハンガリーはセルの生まれ故郷でもある。これほどのアンコールピースはないだろう。曲の終盤ではセルが強烈なアチェルランドをかけ激しくオケをドライブする。会場の興奮もピークに達したに違いない。最後の和音が鳴り終るやいなや会場からブラーヴォの嵐となる。

1970年5月高校1年だったぼくは、ちょうどクラシックに興味を持ち始めていた頃だった。あれから半世紀。そしてこの盤のジャケットに写っている着物姿の少女も今は還暦前後になっているだろう。今どこで何をしているのか…。初めての来日で名演を残したジョージ・セルは帰国後まもなく1970年7月30日に急逝した。オーディオセットから流れる素晴らしい演奏を聴き終えたあと、様々に思いをはせる盤だ。


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この盤の音源。ウェーバー「オベロン序曲」


同 モーツァルト交響曲第1番ホ短調 全4楽章



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サヴァリッシュ&VSOのハイドン



寒さもピーク。日中の陽だまりが頼りだが、きょうは終日曇り空。夕方からは雨が降り出した。仕方なく化石燃料とアラジンストーブで暖をとる。部屋が程よく暖まったところでアンプの灯を入れ音盤タイム。取り出したのは少しレトロなこの盤。


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壮年期のウォルフガング・サヴァリッシュ(1923-2013)が振ったハイドンの交響曲。60年代の国内盤LP。ウィーン交響楽団(VSO)との一連の録音の一つで第94番「驚愕」・第100番「軍隊」の2曲が収録されている。共にト長調という共通項がある。

いかにも60年代を思わせる中々雰囲気のあるジャケットといい、分厚い盤質といい、当時の国内プレス盤の気合が見て取れる。フィリップス・レーベルながら発売元は日本ビクター。モノラルでカッティングされていて時代を感じさせる。オリジナルは1961年のステレオ録音。70年以降日本フォノグラム社から廉価盤で再発されたときはステレオ盤で出ていた。

60年代初頭、40代になったばかりのサヴァリッシュへの評価は高く、「若手の気鋭、ポスト・カラヤン」とも言われていた。この盤のライナーノーツは若き日の宇野功芳氏が書いているが、そこでもサヴァリッシュは大きな期待をもって評されている。その後、日本でもN響の顔として知られるようになった頃には、その評価も幾分落ちたのか、「よく言えば堅実、いささか地味で際立った個性乏しい」といった評価も散見されるようになった。 しかし古典とりわけハイドンの交響曲に堅実以上何が要るのか、必要十分ではないだろうか。ウィーンフィルと比べると格下とされるウィーン交響楽団ではあるが、音楽の保守本流、独墺系本拠地のナンバー・ツーだ。ハイドンを聴くのに何の不足もない。モノラルカッティングがゆえに、かえって目先の音の派手さに惑わされず、音楽の流れだけに集中できるのも好適。第94番「驚愕」・第100番「軍隊」と曲も充実した名曲。いいハイドン演奏だ。


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この盤の音源。第94番「驚愕」の第4楽章


同 第100番「軍隊」第3楽章メヌエット



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
音楽とクラシックギターに目覚めて幾年月。道楽人生成れの果てのお粗末。

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