ノリントンのベートーヴェン


六月半ばの週末土曜日。今夜は当地群馬交響楽団定期演奏会の日。久々の高関健氏と人気のピアニスト金子三勇士が来演。リストのピアノ協奏曲第2番とショスタコーヴィッチの<レニングラード>というプログラムで、取り分けショスタコの大曲は聴き逃せないと楽しみにしていたのだが、なんとチケットはすでに完売。あてにしていた当日券も出ないとのことでかなわず。事前手配しておかなかった甘さを悔いた。 さて、そんなこんなの夜も更けて…。先日のベートーヴェン第8交響曲の記事を書いたあと、またいくつかの盤で8番を聴いていたのだが、今夜は近年ではもっともリピート率の高いこの盤を取り出した。


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ロジャー・ノリントンと彼が1978年に設立したロンドン・クラシカル・プレイヤーズ(LCP)によるベートーヴェン交響曲全集(メルヴィン・タンとのピアノ協奏曲全曲も含む)。1986~88年の録音。ピリオドオケによるベートーヴェンとしては初期のもの。前後してブリュッヘンやガーディーナーなどの録音が出るようになり、ピリオドオケによるベートーヴェンあるいは古典派交響曲演奏の隆盛期を迎えることになる。またノリントンはその後1997年に着任したシュトゥットガルト(SWR)放送交響楽団とライヴ演奏で再録音している。

ぼく自身これまでピリオドオケによる演奏に特別な興味はなく、手元に十数組あるベートーヴェンの交響曲全集もみなモダンオケによるものばかりだった。中ではデイヴィッド・ジンマン&チューリッヒトーンハレと高関健&群馬交響楽団による全集がモダンオケながら新しい研究成果を取り入れた演奏で、いくらか<ピリオド寄り>といえるものだった。数年前に隣り町でギターやマンドリンの指導者をしているA先生からブリュッヘン&18世紀オケが素晴らしいと聞き、モダンオケの重厚長大もいいが、そろそろピリオドオケも聴いてみようかと思っていた矢先に、<7枚組2千円!持ってけ泥棒>的に叩き売られていたのを見つけて手に入れた。

演奏はすで多くが語られている通りのもので、モダンオケに慣れた耳には全てが斬新で驚きに満ち、次から次へと展開するフレッシュな曲想に、これが聴き馴染んだ曲かという刺激が続く。しかしクラシックを聴き始めて40年余にもなるとさすがに耳年増になっているのか、いろいろな想定や予想がつき、事前に心と耳の準備も出来る。またFMや実演でピリオドスタイルのオケ演奏に接したこともある。その上で先鋭ピリオドオケによる演奏であることを承知でプレイボタンを押しているから、脳天逆落とし的にびっくり仰天というほどのことはない。つまりは「ああ、来たなぁ」という想定内の斬新さであり驚きだ。
それに古典的様式感や音楽表現の基本が変わっているわけではない。もちろん楽器や編成の違いはあるがそれ以上に、切るべき音をどの程度で切るか、延ばすべき音をどの程度延ばすか、アクセントの強さと深さはどうするか、クレシェンドやディクレシェンドをどのタイミングから始め終わらせるか…そうした音楽を作る上での解釈としてゆだねられる幅の内、どこで手を打つかでこれほど演奏の印象が変わるという証明でもある。当たり前のことだが、例外的な部分を除き、フォルテ指示の箇所をピアノで演奏しているわけではない。その点当初ピリオド演奏がエキセントリックな解釈のように受取られたこともあったが、今は古典的音楽表現の許容幅の中でのポジショニングという認識になっているように思う。

第1番から第9番まで、いずれもよく整ったアンサンブルと明るい音色で前へ前へと進む音楽の推進力が素晴らしい。しばしば強打されるティンパニーは雷鳴のごとく辺りの空気を一変させ、突き抜けるようなホルンは生命の飛翔を後押しするかのようだ。ベートーヴェンの交響曲中、今ではもっとも好きな曲の一つである第8番では各パートが入り組んだヘミオラやリズムの妙が実に明快に聴き取れるし、この曲独自の跳躍する音の面白さもモダンオケ以上に効果的に提示される。第3番<英雄>は重厚長大に慣れ親しんだ耳にはいささか軽量級に過ぎるかと懸念したが杞憂に終わった。第1楽章から速めのテンポでたたみかけるように進み、ティンパニや各パートのアクセントが曲にクサビを打ち込みように決まる。この演奏を聴いたあとでモダンオケの、それもやや古いスタイルの独墺系オケの演奏を聴いたら、きっとそちらの方に「なぜそれ程までに重い荷物を力ずくで引っ張っていくような演奏をするのか」と違和感を感じるだろう。また各パートがはっきり分離してそれぞれの動きがよく分かるので、モダンオケでは埋もれがちなフレーズがあちこちで顔をのぞかせ、こんなことをやっていたのかと気付かされるポイントが多々ある。そしてベートーヴェンがいかに革新的であったかもあらためて実感する。あまたあるウィーン古典派の温厚かつ予定調和的な曲があふれていた当時に、これらベートーヴェンの曲がこうした演奏で響き渡る様はさぞ刺激的で聴衆を驚かせたに違いないと、再認識させられる。


この盤の第8番の音源。例によって4分過ぎからの展開部、特に4分25秒過ぎからに注目。



以下は最近の映像で第3番の第1楽章。2008年冬シュトゥットガルト放送交響楽団との来日公演@サントリーホールと思われる。フル編成モダンオケにピリオド風の味付け。奇異なところはまったく感じない。素晴らしい解釈とそれをオケに徹底させた手腕は大したものだ。ヴァイオリンは対向配置、コントラバスはウィーンフィルのニューイヤーコンサートで見られる後方一列(高関健&群馬交響楽団でもしばしばこの配置を取っていた)。管楽器の一部とティンパニーが古楽仕様かと思う。
7分24秒;通常のモダンオケの演奏では中々聴こえないホルンのスケールで展開部の佳境に入る。弦楽群がフーガ風に短いパッセージを繰り返しながら次第に緊張を高める。7分40秒あたりからヘミオラも入って更に盛り上がり、7分56秒にティンパニーとトランペットの一撃。そして8分14秒の短二度の激しいぶつかり合いで頂点を迎える。そして8分20秒からの弦のトゥッティによる単純な音形が展開部の山場の終わりを告げるように奏され8分24秒からの木管群のメロディーへつながる。


公開リハーサルの模様。モーツァルトのピアノ協奏曲第2番。ピアノが出るところまでまずは通してオケに弾かせたあと、根掘り葉掘りが始まる。モチーフの対比を団員にはっきり認識させ、曲のコントラストを明確にしていく。



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ケンペのベートーヴェン



当地関東地方は昨日梅雨入り。きょうは朝方まで降っていた雨があがり薄曇りの一日となった。気温程々ながら湿度高く、雨の季節到来に相応しい。 さて、本日も実直堅実に業務に精励。七時ちょうどに帰宅。ひと息ついて、音盤棚を眺めていたら、棚の最上段にこんな盤を見つけて取り出した。


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ルドルフ・ケンペ(1910-1976)とミュンヘンフィルハーモニーによるベートーヴェンの交響曲全集。70年代初頭の録音。この頃ケンペは指揮者としてのピークにあって、このベートーヴェン他、ブラームスの交響曲、ブルックナーのいくつかの交響曲、リヒャルト・シュトラウスの管弦楽曲など、次々と録音を重ねていった時期にあたる。手持ちの盤は2000年に当時の廉価盤ボックスセットのラッシュをBrilliant_Classicsと競ったDisy_Classicsから出たもの。原盤はEMI。 この盤を手に入れた2000年前後はいま思うと恥ずかしいくらいに音盤を買い漁っていた。ベートーヴェンも同時期にかつての名盤が続々とボックスセットでリリースされたこともあって、我ながら完全制御不能な状況がしばらく続いた。このセットもそんな時期に手に入れたものだ。今夜は久々にボックスケースを開け、第3番変ホ長調<英雄>をプレイヤーにセットした。

第1楽章冒頭、Es_durの主和音が昨今の演奏を聴きなれた耳には驚くほど柔らかなタッチで響く。ハンマーを思い切り叩きつけるようなアインザッツが常態化している今どきの演奏の対極だ。テンポは当時の平均的な設定といったところだが、拍節のアクセントやフレーズの緩急の具合など万事が穏やかかつ中庸なためか、一聴してテンポが遅く感じられる。ミュンヘンフィルの音色も派手さはないが、録音状態は総じて良好。コントラバスの基音もしっかり聴こえてくる。 おそらく当時もそして今も、この手の演奏は「派手さのない」「滋味あふれる」「堅実な」…といった形容詞で飾られる。あの手この手を尽くし、聴き手を飽きさせまいとする演奏と比べたら、ツマンネェ~と一蹴されかねない演奏かもしれない。しかし、さすがに聴き手のこちらも馬齢を重ねたからか、この手の演奏のたくまざる奥深さ、味わい深さに十分反応できるようになった。流麗で、起伏に富み、爆発も嘆きも全開といった演奏にいささか食傷気味なった頃、こういう演奏を聴くと、飾らない昔ながらの中華そばに出会ったような感じを受ける。楽譜に忠実に、過剰な演出をさけ、調和を旨とし…そんなケンペのイメージがそのまま音になったような演奏。久々に聴いたが、心温まる英雄だった。


晩年の1975年、ストックホルムフィルとの<英雄>ライヴ。ミュンヘンフィル盤と比べ、少しテンポが遅いように感じるが、演奏全体の印象はよく似ている。


ベルリンフィルとのエグモント序曲。ケンペは50年代ベルリンフィルともいくつかの録音を残している。



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ミュンシュ&パリ管のブラームス第1



五夜連続。真夜中のブラ1が止まらない…(^^; 今夜はガツンとこれでいこうか。


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ミュンシュ&パリ管によるブラームス交響曲第1番ハ短調。1968年録音。当時の仏文化相アンドレ・マルローの提唱でパリ音楽院管弦楽団から発展的解散を経て創設され、ミュンシュを音楽監督に迎えたパリ管弦楽団創設直後の録音の一つ。この演奏については多くが語られているので、今更付記すべきこともない。久々にこうして聴いてみると、やはり一期一会の名演だ。ライナーノーツで故宇野功芳御大が例の宇野節でこの演奏について熱く語っている通り、この演奏は、フルトヴェングラーのステレオ録音かくやと思わせるところがある。

第1楽章冒頭の序奏からして並々ならぬ重量感と堂々たる威容に圧倒される。フルトヴェングラー&BPOのDG盤1952年録音の序奏を彷彿とさせる。序奏の終盤、木管のフレーズを受けてチェロが寂寥感に満ちた下降音形を奏でるところがあるが、ここでそれまでの力感あふれる運びから一転して抑え気味にこのフレーズをチェロに弾かせ、力ばかりでないこの曲の成り立ちを象徴的に表現する。主部も遅めに始まるが、じわじわとテンポを上げていく。全体に響きのトーンは重心低くドイツ的。コントラバスがゴーゴーと唸るような音を立て、金管やティンパニーが要所要所の決め所で強烈なくさびを打ち込む。第2、3楽章ではパリ管木管群の響きが冴え渡る。そして終楽章で音楽はますます即興的になり、より熱を帯びてくる。周到な練習を経て、合わせることに注力する演奏の対極といってもよい。第1楽章以上に低弦群が強調され、ティンパニーの強打にも一層力が入る。そして一気になだれこむコーダ。手持ちのブラームス第1の盤は二十指に及ぶと思うが、その中でももっとも熱い大団円だ。チェリビダッケやヴァントのような緻密で周到に仕組まれた演奏もいいが、ときにこのミュンシュ盤のラプソディックで熱っぽい演奏も聴きたくなる。


この盤の音源。


第2楽章。1966年ORTF(フランス国立放送管)との来日公演。


ミュンシュの弟子にあたる小澤征爾。サイトウキネンオケとの演奏@1992。 この時期の小澤らしいうねるような音楽の運び。工藤重典、宮本文昭、徳永兼一郎…、加藤知子や徳永二男が第2プルト!なんと贅沢な布陣。まさにジャパンオールスターズ。



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カラヤン&ベルリンフィルのブラームス第1



5月になった。連休のさなかだが、ぼくはきょうあすと暦通りの出勤。きょうもいつも通り業務に精励。7時ちょうどに帰宅した。ひと息ついて…実は先日来のブラームス第1交響曲の流れ断ち切れず、今夜もまたまた同曲を。きのうのベーム&ベルリンフィル盤の記事で引き合いに出したこの盤を取り出した。


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カラヤンとベルリンフィルによるブラームスの第1番。おそらくぼくら世代のクラシックファンの多くが、好むと好まざるとに関わらずこの盤に接したことだろう。カラヤンはブラームスの交響曲を好み、得意にしていたようで、彼の盤歴の初期から度々録音を重ねている。1963年録音のこの盤は60年代初頭に行われた一連のステレオ録音の一つで、カラヤン&ベルリンフィルの黄金期ともいうべき時期のものだ。この時期のベルリンフィルには、まだフルトヴェングラー時代のメンバーが多く残っていた。カラヤンは颯爽として新時代の解釈で曲を進めるが、その音色には戦前からの往時の雰囲気が色濃く残っている。

このレコードを買ったのは高校3年のときだ。それまでジャスト1000円の廉価盤しか買ったことがなかったぼくが初めて買ったレギュラープライスの盤だった。帰宅してターンテーブルにセットして針を落とし、第1楽章の序奏が始まって驚いた。これまで聴いたことのない低音がスピーカーから流れてきたのだ。コントラバスとチェロによる連続C音のどっしりとした低音を初めて耳にし、自分の貧弱なステレオ装置からもこんな音が出るのかと驚いたのだ。まだ古き時代の音を残したカラヤン&ベルリンフィル、幾多の名録音を生み出したベルリン・イエスキリスト教会、カラヤンの耳を持つ男と言われた録音技師;ギュンター・ヘルマンス、この黄金トリオともいうべき組み合わせによるこの時期の一連の録音はいずれも素晴らしい。

第1楽章の序奏はこれ以上ないくらいに安定した重厚な音に満ちている。主部に入ってからも深いアインザッツとほの暗い音色がブラームスに相応しい。第2楽章の寄せては返すような濃厚な曲の運び、第3楽章でもリズムが不用意に軽くならず、その上を名手ローター・コッホと思われるオーボエが渋い音色で歌う。終楽章の充実感も申し分ない。金管群の強奏も派手さはなく、深く強く響く。カラヤンの細部の解釈や念の入れようには、いささか「ヌルい」感じもあるのだが、重量感あふれる音色と録音は絶賛したい。カラヤンの振ったブラームス第1の手持ちの盤として、この盤に先立つフィルハーモニア管との録音(1952年)、70年代の再録盤(1977年)やウィーンフィルとのデッカ録音(1959年)も手元にあるが、この60年代の録音には格別のものがある。


1963年録音のこの盤の音源。


秋山和慶指揮洗足学園音楽大学管弦楽団による演奏。


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ベーム&ベルリンフィルのブラームス第1



好天に恵まれた週末が終わり、そして四月も終わり。ひと月前には小雪が舞う日があり、そして桜が咲き、葉桜になったかと思っていたら夏日になり…。毎年感じるがこの時期の一ヶ月は一年でもっとも変化が大きい。明日からは風薫る五月。爽やかな曲をとも思ったが、先日来の流れで今夜もブラームスの第1交響曲を聴くことにした。取り出したのはこの盤だ。


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カール・ベーム(1894-1981)とベルリンフィルによる1959年の録音。手持ちの盤は60年代に出ていたグラモフォンのレギュラー盤。この録音の存在はもちろん昔から知っていたが、手に入れたのは十数年前。近所のリサイクルショップのジャンク箱にて@100円で捕獲。ほとんど聴いた形跡のないミントコンディションだった。
ベームといえば日本では70年代に入ってからウィーンフィルとのコンビで人気を博し、特に70年代半ばからベーム晩年までの人気はカラヤンと伍していた。そのピークが昨日の記事に書いた来日公演だった。この盤はベーム65歳のときの録音で、後年のウィーンフィルとの演奏とは随分と印象が違う。またオケがベルリンフィルというのも興味深い(契約の関係で当時のDGはウィーンフィルとの録音が事実上不可だった)。ベームは同団とのブラームスのステレオセッション録音はこの1番だけで(ベルリンフィルとは1956年モノラル録音の第2番がある)、結局70年代に入り、契約上の縛りもなくなったウィーンフィルと全曲を録音した。

さてこの盤。ベルリンフィルによる同時期のブラームス録音であるカラヤン盤(1963年録音)と同じオケかと思うほど印象が違う。一言で言えば、硬調・硬質・筋肉質のブラームスといったらいいだろうか。ベルリンフィルの音がカラヤン盤と違って非常に引き締まっている。各楽器の分離のよく、パートの動きがよくわかる。低音もしっかりとコントラバスの基音が聴こえてくるが、過度に肥大した響きではなく、きわめてタイトだ。第1楽章の序奏は悠然としたテンポで始まるが、主部は速めのテンポと短めのフレージングで畳みかけるように進む。緊張感の高い演奏といってもいいだろう。このベーム盤を聴いたあとにカラヤン盤を聴くと、すべてがゆるくあいまいにさえ聴こえる。後年全集を完成させたウィーンフィルとの盤も手元にあるが、このベルリンフィル盤ほどの緊張感や硬質感はない。巷間の人気とは裏腹に、70年代以降のベームにダメ出しをする拝が多いのも、この辺りの理由からだろう。ベームらしい(といったから少々語弊があるだろうが)硬派なブラームスとして、このベルリンフィル盤は貴重な録音だ。


この盤の音源。



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ベーム&ウィーンフィル@東京1975年 ブラームス第1



きのうの記事で久々にブラームスの第1交響曲を聴き、やはりいい曲だなあと感じ入った。今夜も続けて聴くことにしよう。


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ベーム&ウィーンフィル1975年来日公演ライヴのLP4枚組セット。その中からブラームスの第1交響曲に針を下ろす。思えばブラームスの1番を聴き始めてから40余年。今夜は一体何度目だろうか。ぼくにとってはクラシックの楽曲の中でもっとも聴き込んだ曲の一つだ。とくに二十歳前後の数年間、もっとも多感であった(はずの)時期にこの曲に触れ、音楽のもたらす多くのものをこの曲から学んだ。この盤の来日公演があった1975年と言えば我が青春真っ只中。FMから流れるこの演奏の中継放送を、四畳半下宿にしつらえた手製のB級オーディオセットで食い入るように聴いたものだ。すでにベームの全盛期は過ぎていたとの評もあったが、このウィーンフィルとの演奏は最後の力を振り絞ったかのような熱のこもったものだった。

第1楽章の冒頭からコントラバスがゴーゴーと軋むような音を響かせ、ウィンナホルンは音を割って強奏する。第2楽章のむせかえるようなロマンチシズム。おんぼろFMセットから流れる貧弱な音だったが、生中継で聴くウィーンフィルの音は、日頃N響の中継で聴いていた音と明らかに違っていて、弦楽群は艶やかで美しく、木管群のチャーミングな音色に心打たれたものだ。その後今日に至るまで、幾多のブラームスの音盤を手にして聴いてきたが、この演奏は青春時代の思い出という心理的バイアスを差し引いても、もっとも好ましい演奏の一つだ。


この盤の演奏はDVDにもなっている。ただただ懐かしいベームの指揮姿。終楽章のコーダでは腰を落として渾身の力を込める。この映像は音質にはやや難有り。オリジナルはもっとふくよかで重々しい。


公演初日での両国国家の演奏。



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エイドリアン・ボールトのブラームス



たしか三回目のプレミアムフライデー。仕事の区切りがよかったので、プレミアムとはいかないが少々早めに退勤。7時少し前に帰宅した。あすから連休の輩も多いことだろうが、ぼくはカレンダー通り。今週末は通常の土日だ。とはいえ一週間が終わり、ホッとひと息。今夜も夜半過ぎには例のアレがあるが、その前に音盤タイム。きのうのビーチャムで思い出し、こんな盤を取り出した。


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英国の指揮者エイドリアン・ボールトとロンドン・フィルによるブラームス交響曲全集から第1番ハ短調を聴いている。1989年生まれのエイドリアン・ボールト(1889-1983)がこの盤を録音したのは80歳を超えた70年代初頭。きのう記事に書いたビーチャムより10歳ほど若いがやはり19世紀生まれ。髭の風貌もちょっと共通点があって時々混同してしまう。ホルストの惑星を初演したことで知られるが、同国のビーチャムやバルビローリなどに比べると少々地味な存在だったのか、壮年期の録音は少ない。このブラームスをはじめ、多くの盤が晩年の録音だ。他の英国系指揮者同様、エルガー、ホルスト、ヴォーン・ウィリアムズといった自国作品を得意とした(一方でディーリアスやブリテンは訳あって取り上げなかったという)のはもちろんだが、ボールトは修行時代にライプツィッヒに渡り、ニキシュに私淑したということからも伺える通り、ブラームスやベートーヴェンなどのドイツ物にもよい演奏を残した。この1番を含むブラームスの全集もその一つだろう。 この盤を手に入れたのは十年程前。メージャーレーベルから版権を譲り受けて廉価ボックスセットを出すことで有名な蘭DISKY社からリリースされたもの。昔から評価の高い盤であることは知っていたが、実のところあまり期待もせずに手に入れた。しかしこれが存外によかった。

80歳を超えた晩年の録音であることから、おそらく徹底的にオケを絞り上げて練習を重ねた録音ということなく、半ばスタジオライヴ的に録ったのではないかと思う。それゆえかオケのアンサンブルは鉄壁というわけにはいかず、弦楽群のアインザッツにはいくらか乱れもあるし、前進する推力も圧倒的というものではない。しかし、対向配置を取るオケ全体の響きは十分厚く重量感に不足はない。テンポは意外にもほとんどインテンポで進む。また音色も派手さのないもので、共にブラームスに相応しい。特筆すべきはこの曲で重要な任を負うホルンセクションの素晴らしさだ。第1楽章では単純な音形のひと吹きにも深さを感じるし、展開部で聴かれるベートーヴェンの<運命>のモチーフに似たタタタ・ターンのフレーズもよく突き抜けてくる。第2楽章終盤、例のヴァイオリンソロとの掛け合いでも美しい音を聴かせてくれる。もちろん第4楽章でのホルンの活躍を言うに及ばない。思えば英国にはホルンの名手が多い。デニス・ブレイン、アラン・シヴィル、バリー・タックウェル等。その伝統がこのときのロンドン・フィルにも息づいているのだろう。

世には様々なブラームス演奏があるが、このボールト&ロンドン・フィル盤は一見すべてが中庸のようでありながら、スケール感、要所要所での力感、ブラームスらしい憧れを引きずるような歌、それらを過不足なくなくコントロールして具現化する手腕など、文句の言いようのない出来栄えだ。


この盤のLP音源。交響曲第1番の第1・2楽章。第1楽章の提示部は繰り返している。


エルガー<ゲロンティアスの夢>を振るボールト。長い指揮棒を優雅に操る。1968年とのことだから、ボールト79歳。なんと若々しい。


ボールトへのインタビューでその指揮法を語っている。



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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