アンドレス・セゴビア 「魔笛」の主題による変奏曲


きのう28日は一日冷たい雨に見舞われた。昼前から都内出張。東京駅近くの本社ビルで3時過ぎまで会議だった。東京駅もこの十年で随分と変わった。かつてはちょっと食事をしようと思っても駅舎内には店も少なかったが、今では随分と飲食店も増え、田舎からたまに出てくるとその変化に驚くばかりだ。会議が終わったあとは、駅舎内のカフェで深煎りの珈琲で一服し帰途についた。

さて、ブログタイトルに「六弦…」と標榜しながら、なかなかギターの話が出てこない。いぶかる向きもあるかもしれず、今夜はクラシックギターの王道を聴くことにし、セゴビアに登場してもらおう。


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高校時代、クラシックギターを始めた頃、友人がセゴビアの弾くバッハ・シャコンヌが入ったレコードを持ってきた。しばし聴き入ったが、一向にいいとは思わない。酔っ払ったスペインのじいさんが、よたよた弾いている以上の感慨はなかった。当時のぼくは、ジョン・ウィリアムスの正確無比な弾きぶりや、ブリームの歌いまわしの上手さに傾倒していた。セゴビアをあらためて聴くようになったのは20年ほど前、DECCAに収録されたセゴビアのオリジナル録音がCD復刻されてからだ。加えてここ数年でLP盤も中古レコード店で見つけては買い求め、20枚ほどが手元にある。
今夜取り出したのは、フェルディナンド・ソルの「魔笛」バリエーションやヴィゼーの組曲が収録されている盤だ。こうして聴いてみると、かつての印象とは随分と違い、意外にもきっちり弾いているではないか。もちろんスタイルとして前世紀のロマンティックなスタイルの持ち合わせてはいるのだが、フレーズごとにテンポの変化はあるものの、全体を支配しているテンポ感は正確だ。テクニックの切れ味も十分。ファリャの『ドビュッシーの墓に捧げる賛歌』などは、最近のギタリストと比べても、やや速めのテンポですっきりとした印象を受ける。

それにしても、セゴビアトーンと称されるこの音色ばかりはワンアンドオンリーだ。かつてはセゴビア、イエペス、ブリームと、聴けばそれとすぐ分かる音色を持った演奏家が多かった。最近の新しい録音を聴いても、誰のものなのか、ぼくなど一向にわからない。演奏技術、録音技術、楽器製作の技術、そうしたものが変化とレベルアップを遂げた結果なのか、音色に特徴のあるギタリストは昨今本当に少なくなった。
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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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