ギター工房探訪記 <その2> 松村雅亘 2001/2009



~追記~ 松村雅亘氏は2014年1月に逝去されました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。


きょうは大阪は茨木市の松村雅亘(まさのぶ)氏の工房を紹介しよう。
松村氏と言えばフランスの画家でありギター製作家のロベール・ブーシェの弟子として有名だ。80年代初頭、松村ギターを弾いてコンクール入賞する若い演奏家が相次いだ。また福田進一、大萩康司なども松村ギターを一時期使って成長したという。ぼくが初めて松村ギターを知ったのは、大学時代に1年上の先輩U氏がブーシェの元での修行を一旦終えて帰国したのちに製作された松村ギターを入手したときのことだ。あまり定かな記憶はないが、非常にかっちりとした楽器という印象がある。その後はギターそのものから離れていたわけだが、2000年に再びギターを弾き始めた頃に松村ギターを思い出し、2001年夏大阪出張の折に時間を作って工房にお邪魔した。


松村雅亘氏 2009年5月   製作途中の楽器


工房内 手前が作業台   材料ストックの一部と大型工作機械



工房は茨木市郊外の新幹線高架に近い倉庫の一角にある。製作をする部屋は8畳ほどの広さだろうか、きれいに整理整頓されていて、ここでギターを作っているのだろうかと思ったほどだ。奥にもう一部屋小さなブースがあって、それで塗装をするとのことだった。この2001年の訪問のときは新作はなかったが、修理上がり品が1台あったので試奏させてもらった。張りは噂ほど強くは感じなかったものの、やはりかっちりしたギターで、音のサステインが長く、すべての音が美しく伸びる感じがした。低音も締まっていて芯と重みのある音だった。その後何本かの松村ギターを中古で入手したものの、訳あってすべて手放した。理由は何かと問われたら、結局自分がギターに対して必要だと思う音のイメージがはっきりしていなかったということに尽きる。その後九州福岡に出張があった際には、松村ギターを扱っているギター専門店;フォレストヒルにお邪魔して、試奏用に在庫している松村ギターを弾かせてもらったりもした。

そして2006年春、ようやく新作の注文を決め松村氏に連絡した。待つこと3年。2009年春にギターが出来上がったとの知らせを受け、ぼくは再び工房を訪れ松村氏と再会した。7年ぶりの訪問だったが、松村氏は以前と変わることなく元気にギターについて語ってくれた。そして完成間近のギターを弾いてみた。慎重に調弦を済ませ、しずかにスケールを弾いた。音がよく伸びる。自然と次の音につなげたくなるような感じ。ギターが自らフレーズを歌うかのような印象だ。低域から高域まで張り詰めた透明度の高い音も印象的だった。和音の響きも申し分なかった。がしかし、唯一低音の響きにわずかながら違和感を覚えた。それを松村氏に告げると「わかりました。それでは貴方が望むイメージと私のそれが一致するまで時間をかけて待ちましょう。その方が幸せな出会いになるでしょう。」と言い、私もうなづいてそのギターを工房においたまま大阪をあとにした。

今年の松村氏からの年賀状で、今春4月に新作が完成予定なのでそれを試奏してほしいとの連絡をいただいた。ここ数年でギターの音に対するイメージもようやく分かってきた。多分今回ぼくはそのギターは受け取ることになるだろう。

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ギター工房探訪記 <その1> 西野春平 2001/2007


当地北関東の前橋ではきのうきょうと冷たい雨混じりの寒い日が続いた。ひと月後には桜の便りというのがにわかに信じがたい。が、しかし弥生三月。春到来もまもなくだ。
さて、ギターネタが続いたのでと昨晩言っておきながら、再びギターネタであります。ハイ。
30代・40代とギターから遠ざかっていたぼくだが、ちょうど2000年を迎えた頃から少しずつまたギターを弾くようになってきた。ちょうどその頃は仕事での出張も多く、西へ東へとよく出かけていた。そんな出張の折、時間を作ってはギター製作家の工房を訪問することを思い立ち、例えば金曜日に仕事が終わったら、その晩自腹で一泊し、翌土曜日に近くの工房を訪問した。きょうはそんな中から、所沢の西野春平氏の工房を紹介しよう。


所沢 西野春平工房   西野春平さん@2007


仕掛品のギター   製作ブース内


所沢の西野さんの工房へは当地からは車で1時間半。出張に合わせなくても土曜日にでも行ける距離だ。最初に訪問したのは2001年の夏だった。西野さんの名前はもちろん以前から知っていたが、たまたまその頃都内の楽器店で試奏した作品の印象がよく、工房に伺って話をし、場合によっては注文をしようかと考えていた頃だった。工房は住まいの一角を仕切って、工作用の部屋と塗装用の部屋に分かれている。どちらも四畳半程度の狭い部屋だったが手際よく仕事をこなしている感じであった。ぼくらのような訪問者や客を通す部屋には仕掛の楽器や修理品が入ったケースなどが所狭しと置かれている。そのときも50号の新作が出来上がっていて試奏させてもらった。

結局その後、数年してから西野ギターの注文を入れた。2007年のことだ。7月にお願いして、9月半ばに出来上がった50号数本の中から選んできた。数本を弾き比べたが、個体差はほとんどなく、これなら楽器店の店頭で1本置いてあったものを買ってもハズレはないだろうと感じた。西野さんはとても起用で仕事も速い。大体5本程度を同時進行させて2ヶ月ほどで完成に至るようだ。西野ギターの特徴は以前も書いたが、ともかく弾きやすく張りも柔らかめ。軽いタッチでも音が出しやすい。工作精度や仕上げの美しさも文句なしだ。音はハウザー型の外観からイメージする音とは少々ことなり、案外ゆったりとした響く。ウルフトーンはF#からGあたりにあるが、それほど突出していないので扱いやすい。素直によく鳴る楽器なので、弦を変えたときの反応も素直に出る。数年前に、残念なことに当地群馬県桐生市出身の奥様を亡くした。いまは息子さんの西野雅人さんも一緒に製作している。


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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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