エルマン・トーンを聴く
このところ、まるで梅雨時のような天気が続く。
東電エリアの電力需要も予想を下回る状況。今週後半から暑さ復活の予報だが…
さて先日の日曜午後、少し車を走らせて、地元で評判になっているという和風甘味処へ行ってきた。確かに待ちが入るほどの盛況。ただ京都のイメージを持ち込んだというが、想像していた雰囲気とはかけ離れていて、やや落胆。そして味の方は甘さ控えめ。『甘さ控えめで美味しい〜』とよく聞くが、甘いものはしっかり甘くあってほしい。控えめ=上品という公式を拠りどころにしているのだろうが、食後やひと息つくときに口にする菓子・デザートの類は、甘味や酸味が十分あってほしいと思うがどうだろう。
甘辛といえば、音楽にも味付けによる分類が可能だ。今夜はいわば甘口、オールドファンには懐かしいミシェル・エルマンのヴァイオリンを聴こう。1891年生まれでSP時代からの盤歴を持つエルマンだが、CD時代になってからは中々入手が難しかった。現在は数年前に日本コロンビアのヴィンテージシリーズとして復刻されたCDが手に入る(写真右。こちられ試聴も)。今夜は70年代初頭に出ていた廉価盤のLPを取り出した。数年前に中古レコード店の100円コーナーから救済してきた盤だ。チゴイネルワイゼン、序奏とロンド・カプリチオーソ、タイスの冥想曲、クライスラーの小品他、ヴァイオリンの名曲が収められている。


まず一聴して分かるのは、エルマン・トーンと称されたその特徴的な音色だ。ヴァイオリンに関してはまったく不案内なので、その秘密を語ることは出来ないのだが、楽器そのものや楽器細部の調整、弦や弓の選択、そしてボーイングの力加減、そうしたものが合わさって出てくるものだろう。時代からしてもクラシックギターにおけるセゴヴィア・トーンと状況は似ているかもしれない。
オールドファッションの音色と言うと太く、甘く、たっぷりとした印象がある。音色は60年代のステレオ録音にもかかわらず、ちょっと鼻にかかったような、周波数レンジの狭いSP盤のような印象さえある特徴的なものだ。しかし太くたっぷりかというと、そうでもない。ぼくの再生装置の影響もあるだろうが、この盤で聴く限りエルマンの音はむしろ線が細く繊細だ。演奏のスタイルは19世紀的要素を持ち合わせた、ロマンティックに寄った解釈だが、甘くはあっても繊細な音色も手伝って、こってり厚化粧という感じはしない。また、この録音が晩年の技術的にはかなり衰えが現れていた時期のものということもあり、速いテンポで鮮やかに弾き切るというものではないため、全体にゆっくりしたテンポを取っている。それが曲を深く見据えることにもつながり、一つの味わいになっている。昨今ではこうした際立った個性の音色を持つ奏者は、どの楽器でも少なくなってしまった。
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