カラヤン&ベルリンフィル EMI盤ハイドン交響曲集


薫風を感じる余裕もないまま、きょうで五月も終わり。六月は梅雨入りの季節だが、それ以外にこれといって世間を騒がす雑事もない。余計なことは考えずに勉学や仕事に精出す月、まあそんな感じかな。

ところできょう5月31日は、かのハイドン(1732~1809)の命日だそうだ。そういえば亡くなった吉田秀和氏のFM番組でもハイドンは長きに亘って取り上げられた作曲家の一人だった。昔はハイドンを熱心に聴こうと思ったことがなく、手持ちの音盤もごく僅かしかなった。今となっては、まったく恥じ入るばかりだが、若い頃はハイドンの作品を予定調和的な古典派楽曲くらいにしか感じていなかったのかもしれない。十年ほど前に廉価で発売された例のアダム・フィッシャー指揮の交響曲全集を手に入れたのがきっかけで、あらためてハイドンを聴くようになった。あらためて聴いてみると、これが実に素晴らしい。いまハイドンとモーツァルトの音盤、どちらか一方を残して他方は捨てろを迫られたら、多分ハイドンを残すだろう。手元には膨大なハイドン作品のごくわずかがあるだけだが、最近音盤購入意欲がすっかり減退してきた中、ハイドンのカルテット、ピアノソナタ、バリトントリオ等はぜひ全曲を手元においてゆっくり聴きたいと思っている。


R0012214 (480x480)   R0012216 (480x480)


手持ちの数少ないハイドンの音盤から今夜は、カラヤン&ベルリンフィルによるEMI盤の交響曲を聴くことにした。収録曲はザロモンセットから101番「時計」・104番「ロンドン」の2曲。1971年、ベルリンフィルハーモニーホールでの録音。モーツァルト、チャイコフスキー、R・シュトラウス等、70年代初頭に行なわれた一連のEMI録音の中の一つだ。
久々に針を下ろしたのだが、実に颯爽としていながら、かつゴージャスな演奏だ。ピリオドスタイルどこ吹く風といわんばかりに、大編成のベルリンフィルをドライブしてスケールの大きな演奏を展開している。「時計」の第一楽章、意味深長なニ短調の序奏のあと主部に入ると一気呵成に音楽が進む。速めのテンポ、よく練られたアンサンブル。独グラモフォンでの録音と比べ、特に弦楽群の音色が明るめで残響もたっぷりとしている。カラヤンサーカスと異名をとったフィルハーモニーホールでのライヴを聴いている感がある。一方で「時計」の標題のもとになった第二楽章や第三楽章のメヌエットなどは、もう少し軽みのある表現でもいいのではないとかと感じる。カラヤンはまったく手綱を緩めずにシンフォニックにこの楽章を「立派」に組み立てている。
「ロンドン」はこの種のスタイルの演奏としては極めつけの一つといっていいかもしれない。以前の記事に書いたDECCA盤のウィーンフィルとの演奏と比べると一層緻密で細部までコントロールされているように感じる。この時期のカラヤンの特徴で、フレーズは音価いっぱいに引き延ばされて、レガート感が強調されている。マスとしての音の集合、響きの交わりを楽しめるという意味では<交響=Sym+Phony>の概念にかなった演奏だ。反面、ウィーン風でやや古風な味わいを期待する向きにはお薦めできない。

以前聴いたサヴァリッシュ&ウィーン響のややローカルな匂いを残す手作り感覚の演奏堂々としていて、かつ歌にあふれたワルター、そしてカラヤンの流麗なハイドン。いずれも今日流の新しい演奏スタイルとは違う土俵だが、それぞれに味わい深い。なおハイドンの交響曲については、このブログにも度々コメント寄せてくれるリュート弾きのmichaelさんのブログに詳しい。ぜひアクセスのほどを。


ロンドン交響曲の音源動画を二つ。
まずザルツブルクのモーツァルテウム管弦楽団の演奏。指揮は日本のオケにも度々客演し、今は東京交響楽団・音楽監督のユベール・スダーン。スダーンは1994年から2004年までのモーツァルテウム管弦楽団のシェフを務めた。現代のスタンダードな解釈はこの辺りだろうか。



以前、旧友Y氏から教えられて知ったカルリ編曲のギター二重奏版。いつか演奏トライしてみよう。




↓↓にほんブログ村ランキングに参加中↓↓
↓↓↓↓バナークリックお願いします↓↓↓
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村

関連記事

吉田秀和


一つ前の記事に書いた通り、先週末、吉田秀和氏の訃報に接した。

今から5年前の2007年夏、作家堀江敏幸が吉田秀和氏の鎌倉の自宅を訪問しインターヴューした番組がNHKで放映された。残念なことにその番組は見落とし、雑誌に掲載されたものを読んだ。元気そうな姿だったが、さすがに高齢ゆえ例のFM番組もいつまで聴けるだろうかと案じ、何回かを録音に残した。学生時代にその著作を読み漁り、音楽を聴くということはそういうことなのかと、僅かながらも合点したものだ。当時から今まで、音楽評論ということで信頼して接することが出来たのは、吉田秀和氏と大木正興氏くらいだろうか。


R0012209 (480x480)   R0012212 (480x480)


きょうYouTubeをのぞいたら、2007年の放送の一部がアップされていた。堀江氏との一問一答。自宅での執筆の様子、音楽に耳を傾ける様子等々。こんな風にカメラが入ったのは最初で最後のことだろう。その他にも吉田氏が見い出した演奏家の姿など、今となっては懐かしくも貴重な映像。下記<追記>の通り、近々NHKで再放送されるようだ。



享年98歳。あらためて御冥福をお祈りいたします。


■追記■
NHKのHPに以下の記載があったので転載しておく。
============================
2012年05月28日 (月)
吉田秀和氏の死去にあたって

日本の音楽評論の草分けとして大きな足跡を残し、NHKの番組にも多数ご出演された吉田秀和氏が、5月22日に98歳で亡くなられました。NHKでは、吉田秀和氏をしのんで、以下の番組を予定しています。

『吉田秀和さんをしのんで』(仮題)
Eテレ 6月2日(土)前0:00~1:45(1日(金)深夜)

吉田秀和氏のゆかりの方々のお話を伺いながら、吉田氏の業績を振りかえるとともに、2007年7月に放送して大きな反響を得た、『ETV特集“言葉で奏でる音楽~吉田秀和の軌跡~”』(89分)をノーカットでアンコール放送します。
また、1971年の番組開始以来、吉田秀和氏が41年にわたって解説を務められたNHK-FMの番組『名曲のたのしみ』につきましては、生前に収録済みの音源や、既に執筆済みの原稿が多数残されているため、その遺志を尊重し、年内いっぱい放送を続けていく予定です。

『名曲のたのしみ』
FM 毎週土曜 後9:00~10:00
(再)翌週木曜 前10:00~11:00

あらためて吉田秀和氏のご冥福をお祈りするとともに、その深い音楽世界に触れていただければ幸いです。
============================


↓↓にほんブログ村ランキングに参加中↓↓
↓↓↓↓バナークリックお願いします↓↓↓
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村


関連記事

<訃報> 吉田秀和逝去


吉田秀和氏が逝去。98歳の大往生。

合掌

白水社 吉田秀和全集

関連記事

J.K.メルツ ギター二重奏 3つの挽歌


蔵出し映像の第3弾…といっても、もうこれでお仕舞いです。メルツ作曲のギター二重奏曲から「挽歌集」の演奏。昨年の夏、当地で行われたmixi仲間の内輪の発表会で、例によって旧友Y氏を合わせたもの。この日は、このメルツの二重奏のあと、カルリの二重奏作品34-2も演奏。その様子は数日前の記事に書いた通りだ

メルツをはじめジュリアーニほか、当時のギター二重奏曲には第1ギターにテルツギター(一般のギターより短三度高い調弦)を使ったものが随分とたくさんある。当時は小型のテルツギターが大そう流行していたらしいが、今日演奏する場合は通常のギターにカポタストを付けることが多い。しかし今回は指定通り第1ギターにテルツギター、しかも当時のオリジナル楽器(旧友Y氏所有品。19世紀ドイツの名工房;シュタウファー工房にいたカール・ブランドルという職人の作。写真のもの)を使った。第2ギター担当のぼくは、このイベントの少し前に手に入れたオリジナル楽器が不調だったため、故・水原洋氏2003年作のラコートレプリカで参戦した。


IMG_1285 (359x480)   IMG_1286 (359x480)

IMG_1288 (359x480)   IMG_1287 (359x480)





メルツの曲の中でも、同時代の初期ロマン派の雰囲気がよく出ている曲だが、いささか地味めの曲想。派手な演奏会に向いている曲ではない。もともと親しい仲間と合わせて楽しむための曲だろう。メンバーが二人揃ったら、スウェーデン国立図書館で公開されている以下のBoijeコレクションから楽譜をダウンロードして遊んでみてはどうだろう。

第1曲 恋人の墓の前で http://www.muslib.se/ebibliotek/boije/pdf/Boije%20415.pdf
第2曲 君を想う http://www.muslib.se/ebibliotek/boije/pdf/Boije%20416.pdf
第3曲 葬送行進曲 http://www.muslib.se/ebibliotek/boije/pdf/Boije%20416.pdf


↓↓にほんブログ村ランキングに参加中↓↓
↓↓↓↓バナークリックお願いします↓↓↓
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村

関連記事

冨田勲「惑星」


ふ~ッ、やっと金曜日。今週は訳もなく疲れたなあ…
格別仕事が立て込んでいるわけでもなく、帰宅が深夜に及んだわけでもなく、何か身体の変調があるわけでもなく、文字通り「訳もなく」だ。ぐうたら中年オヤジの成れの果て、人生活力の払底、怠惰の極み、まあそんなところだ。やれやれ。存在証明のブログ更新も三日ぶり。ぶり、ぶり、ぶり…ぶりの照り焼き。


R0012202 (520x520)   R0012206 (520x520)


さて、おととい5月23日Googleにアクセスした方は気付いたと思うが、この日Googleトップページにモーグ・シンセサイザーの画像が貼られていた。そのシンセサイザーはキーボードを使って演奏も可能で、用意のいいことに4chのテープレコーダーまで付属していた。アナログ・シンセサイザー生みの親であるロバート・モーグの誕生日5月23日に乗じたGoogleの楽しいお遊びだった。そしてきょう何気なくWikipediaを見ていたら、5月24日は英国の作曲家;グスターヴ・ホルストの命日とあった。ホルストと言えば組曲「惑星」だ。モーグ・シンセサイザー~ホルスト「惑星」とくれば、次のキーワードは冨田勲。…というわけで、モーグ・シンセサイザーを駆使した冨田勲の出世作の一つ「惑星」を聴くことにした。(以前取り上げた、ショルティ&ロンドンフィル盤の記事はこちら

この作品が発表されベストセラーになった1977年当時ぼくはまだ学生で新譜レコードを買うこともままならず、この演奏もFM放送で聴くに留まっていた。それから30年も経ったのち、例によってリサイクル店の100円ジャンク箱から救済してきた。ベストセラーになった盤らしく、この盤とはジャンク箱で度々遭遇。よりきれいな盤に当ればいいなあと買い求め、結局3枚同じ盤が手元にある。説明不要の演奏だが、実際久々に聴いてみても中々新鮮だ。
第1曲「火星」に入る前のイントロは、宇宙船コックピット内の会話を模した擬音から始まり、ジェットエンジンが轟音と共に点火する様子が展開する。この出だしからして70年代SFのイメージ満載でわくわくしてくる。「惑星」というともっぱら第4曲「木星」ばかりが取り上げられるが、「火星」や「金星」も劣らず素晴らしい。この曲は冨田勲が一人スタジオにこもってモーグ・シンセサイザーを操り、ダビングを重ねて作ったわけだが、シンセサイザーならではの大胆なダイナミズムや音像の定位など、オーディオ的観点からも見ても今だ素晴らしい音質を聴かせてくれる。最新のリマスタリングされたCDも聴いてみたくなる。


冨田勲;組曲「惑星」~イントロ・火星~




冨田勲は大河ドラマや新日本紀行などNHK関連の音楽を多く手がけた。その中に「きょうの料理」のテーマ曲がある。この曲、スウェーデンの作曲家;アルヴェーン作曲のスウェーデン狂詩曲第1番に酷似している。ずっとこの曲を冨田勲がアレンジしたものとばかり思っていたのだが、どうやらそうではないということなっているようだ。真偽のほどは不明。

冨田勲作曲;NHK「きょうの料理」テーマ音楽



こちらがアルヴェーン作曲;スウェーデン狂詩曲第1番。マントバーニの演奏はちょっとそぐわないかな。



そして新日本紀行のテーマ。なお60年代の旧テーマ曲はこちら



↓↓にほんブログ村ランキングに参加中↓↓
↓↓↓↓バナークリックお願いします↓↓↓
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村

関連記事

サラ・ヴォーン・ウィズ・クリフォード・ブラウン


きのうの金環日食、そしてきょうのスカイツリー・オープンと世間は中々にぎやかだ。そんな世相をよそに身辺日常は単調かつ憂うつに進む。今週もまたいつものように始まり月曜火曜と終わった。まったくなあと、愚痴の一つもこぼしたいところだが止めておこう。書いたところで仕方あるまい。


R0012199 (520x520)   R0012200 (520x520)


…というわけで(どんなわけ?)久々にジャズでも聴こうと、写真の盤を取り出した。
サラ・ヴォーンとクリフォード・ブラウンが共演した有名な盤だ(CDはこちら)。盤歴の長いサラ・ヴォーンだが、50年代半ば録音されたこの盤は中でも代表傑作とされている。第1曲の『ララバイ・オブ・バードランド』からリラックスしながら憂いに満ちた声が実に心にしみる。第2曲の『パリの四月』も名曲の名演。第3曲の『ヒーズ・マイ・ガイ』では、クリフォード・ブラウン(TP)、ジミー・ジョーンズ(P)、ハービー・マン(FL)がソロを回す。歌唱の素晴らしさは言うまでもないが、クリフォード・ブラウンのトランペットとはじめ、ハービー・マンのフルートら参加しているミュージシャンが秀逸だ。B面の最初『ユーアー・ノット・ザ・カインド』は軽くスウィングして、スローテンポ主体のこのアルバムのいいアクセントなっている。
絶妙の音程・軽いフェイクやヴィブラート・声質の使い分け…サラ・ヴォーンはいつ聴いてもタメ息が出るほど上手い。


ミディアムテンポのユーアー・ノット・ザ・カインド



バードランドの子守唄…上手い!



↓↓にほんブログ村ランキングに参加中↓↓
↓↓↓↓バナークリックお願いします↓↓↓
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村


関連記事

古典派オーボエ協奏曲集


このところ好天続き。きょう日曜日も朝から穏やかに晴れた。
ちょっと歩いていけるご近所に美味しい珈琲を出す店があれば散歩がてら出かけたいところだが、残念ながらかなわず。先日飲んですこぶる美味しかった移動販売の珈琲店が、きょうの朝、市内中心部で店を広げると聞き、9時の開店に合わせて行ってきた。ついでに別の出店で評判のいい菓子も買い求めて朝の珈琲タイムと相成った。


R0012160 (520x520)   R0012189 (520x520)


せっかくなので穏やかで爽やかな音楽をと思いレコード棚を物色。ネットで知り合った方から格安箱買いした盤の中でまだ針を落としていない盤を見つけて取り出した。ハイドン、フンメル、ベッリーニといった古典派作曲家の手になるオーボエ協奏曲集だ(CDは現在も入手可能)。


R0012190 (520x520)   R0012196 (520x520)


ドイツ・シャルプラッテン盤1980年代初頭、東独勢による演奏。度々来日もしているブルクハルト・グレッツナーというオーボエ吹きがソロを取り、ライプツィッヒ放送室内楽団が伴奏を付けている。
曲はいずれも1800年を挟んだ古典派全盛期の作品。ハイドンのハ長調の協奏曲はハイドン作かどうか真偽のほどが定かでないらしいが、3楽章構成で20数分を超える堂々とした協奏曲。オーボエのテクニカルな見せ所もたっぷりで充実した作品だ。フンメルの曲はコンチェルトという表記はなく『序奏・主題と変奏』と題されている。ヘ短調で始まる序奏が中々意味深く、聴かせる。ベッリーニの短い協奏曲は、協奏曲というよりこの作曲家得意のイタリア古典期オペラのアリアを聴く風情だ。屈託のない美しい古典派器楽曲は風薫る五月の好日に相応しい。


ベッリーニのオーボエ協奏曲変ホ長調。美しいイタリア古典オペラ風のアリアだ。




↓↓にほんブログ村ランキングに参加中↓↓
↓↓↓↓バナークリックお願いします↓↓↓
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村

関連記事
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

カレンダー
04 | 2012/05 | 06
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
リンク
QRコード
QR
閲覧御礼(2010.10.01より)