ギタリストの愛器


きのう金曜日の会社帰り。国道沿いにある本屋に立ち寄った。このT書店はチェーン店のストリートショップにしては、ナクソスのCDがあったり、音楽やオーディオ関係の本が意外に充実していて、ときどき利用する。店内にはいつも静かにクラシックが流れているし、以前はナクソスCDのコーナーには試聴用のオーディオセットが置いてあって、それがマニアならそれと気付く、ちょっとしたモデルだった。多分店長の好みだろうか。きのうも店内をひと通り巡回して、ナクソスから出ているロシアの女性ギタリスト;イリーナ・クリコヴァのCDと写真の本を求めた。

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クラシックギター弾きにはお馴染みの専門誌『現代ギター』の別冊。『愛器を語る~37人のギタリストにきく、ギターへのこだわり』というタイトルがついている。このタイトルだけならクラシックギター弾き以外の人がこの本を手に取ることはないだろうが、ご覧の通り、村治佳織のポートレートがドーンと目に飛び込んでくるから、きっと表紙のビジュアルにつられて手にする人もいることだろう。がしかし正直なところ、この手の本の表紙あるいは装丁としていささか違和感がある。何とかならなかったものだろうかというのが正直な気持ちだ。上の写真右に、同じ現代ギター社から出て楽器関係の別冊を並べてみた。他の2冊は中々現代的意匠が美しく、ページを開けたいという気分になる。こういう本まで村治佳織の人気に頼らなくてもと思うのだが、どうだろう。
そんな分別くさいオヤジの小言とは裏腹に、本の中身は中々面白い。37人の個性豊かなギタリスト達がギターとの出会いや愛器に巡り合ったいきさつ、愛器たるゆえん、使用弦などを語っている。そして楽器の内部構造をとらえた写真が更に興味をそそる。製作家達が理想の音を求めて、表板の裏に仕込む力木の配置にそれぞれの工夫と創意の跡がうかがえる。
何人か、目についたギタリストのページをのせておく。ギターもさることながら、ギタリストの面々の表情がみな生き生きと撮れている。


◆小胎剛 ヘスス・ベルサール・ガルシア
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ベルサール・ガルシアは昨年秋都内の店で弾いた。古い時代のスペインの楽器を感じさせる素晴らしいギターだった。アグアドは手が出ないがこれなら…といってもプリウス1台分だ。


◆大萩康司 ロベール・ブーシェ
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大萩康司は昨年9月に高崎に来演した。300名ほどの小ホールでの演奏だった。このときもブーシェを使っていた。低音から高音まで美しくバランスよく響いていた。


◆渋谷環 バルベロ・イーホ
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30年前の天才少女もいい感じに年齢を重ねた感じ。一時指を痛めたらしいが近年完全復活。バルベロは何度か弾いたことがある。個体差が大きい印象もあるが、音はいずれも美しかった。


◆荘村清志 イグナシオ・フレタ
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昔の荘村清志といえば長髪でラミレスをガンガン弾いていた印象がある。フレタはmixi仲間の知人が使っていて、何度も近くで聞いている。パワーのある楽器だ。一度手にしてゆったりと弾いてみたい。


◆鈴木勝 田中清人
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フレットに注目。普通はまっすぐのフレットがうねっている。平均律調弦のギターにおけるいくつかの音のずれを修正するための試みだ。一度弾いてみたいと思っている。


◆永島志基 マヌエル・デ・ラ・チーカ
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デ・ラ・チーカも気になるギターの一つ。学生時代に先輩の一人が使っていた。最近何度か都内の店で見かけて弾いてみたが、いずれもサントスと思わせる低音と枯れた高音が魅力的だった。製作本数が少ないようで状態のよいものには中々出会わない。


◆朴葵姫 ダニエル・フレドリッシュ
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新しいギター界のアイドルだそうだ。腕前は折り紙付き。フレドリッシュはmixi仲間の知人が使っていて、何度か近くで聴く機会があった。弾き手がプロ並みだったこともあり、文句なしのいい音だった。


◆原善伸 サントス・エルナンデス
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サントスは昨年秋からこの春にかけて都内の店で3本弾いた。いずれも1930年代初めのもので、低いウルフトーンに支えられた低音の上に、反応がよく艶やかな高音がのり、正にスパニッシュな味わいだった。


◆福田進一 河野賢
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1999年に亡くなった河野賢の遺作だそうだ。河野・桜井ギターはどの時代、どのモデルも安定していて、選ぶ側としては安心できるブランドだろう。マエストロモデル(105万円)がカタログ上の最上位モデルだが、年に数本スペシャルモデルを作っている。2度ほど試奏したことがあるが、別格の鳴りだった。この遺作もその系譜のようだ。


◆藤井眞吾 三浦隆志
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仙台の製作家;三浦隆志氏のギターはプロのコンサートで何度か聴く機会があった。ガンガン鳴る楽器ではないと思うが、300名ほどの小ホールで聴いたときは低音がたっぷり響いて驚いた。


◆レオナルド・ブラーボ エルナンデス・イ・アグアド
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少し前にテレビのお宝鑑定団にこのアグアドが登場。依頼人が300万円というところ、鑑定人の某ギター専門店社長が600万円と付けた。実際の相場もそんなものだ。アグアドは何度も弾く機会があった。やや大きめのボディーからゆったりと響く低音とやや細身ながらよく通る反応のいい高音が印象的だ。


表板の透視写真をいくつかのせておく。

<アグアド>            <河野賢1999年遺作>
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<サントス>            <スモールマン>
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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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