訃報 サヴァリッシュ逝く


週明け月曜日。帰宅後一服してPCを開くとサヴァリッシュ逝去の報。さる22日に亡くなったとのこと。享年89歳。ぼくら世代には70年代から80年代にかけてN響の指揮台に上がった指揮者の中ではもっとも親しみがある一人だった。


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サヴァリッシュの実演には確か二度ほど接した。印象に残っているのは80年代半ばNHKホールでのN響定期。メインプログラムはブラームスの第1交響曲。当時からドイツ正統派として、また知的なバランスを心得た指揮者として評価はもちろん高かったが、一方で熱気を感じない、巨匠性に乏しいといった印象も語られることが多かった。しかしこのときのブラームスは気迫のこもった演奏で、トゥッティの決め所では三階席にまで届くほどの声でオケをドライブしていた。サヴァリッシュもこれほど燃えるのかとそのとき思い、終演後、興奮さめやらぬまま渋谷の駅まで歩いたことを思い出す。

その実力と日本での人気とは裏腹にサヴァリッシュはそれほど録音に恵まれていたとはいえない。手元にある盤もごくわずかだが、中ではシュターツカペレドレスデンとのシューマンの交響曲集がベストだろうか。もちろん同じコンビのシューベルトもいい。少し古い60年代のウィーン交響楽団とのベートーヴェンやブラームスも当時の評価は決して高くなかったが、いま聴くとオケの力や録音の条件はあるが、まさにドイツ正統派の演奏で好感が持てる。もっとも彼の真価はオペラでこそ発揮されるのだろう。
今夜はサヴァリッシュを偲んで先ほどから手元にある盤から管弦楽の小品を集めた盤(写真)を聴いている。長らく手兵だったバイエルン国立歌劇場のオケを振った盤で、以前も取り上げたことがある。<軽騎兵序曲><売られた花嫁序曲><天国と地獄序曲><ハンガリー行進曲>など、お馴染みの曲が並ぶ。演奏はいずれも折り目正しい純音楽としての解釈で、素晴らしくシンフォニックだ。妙にウケを狙うようなトリッキーな演出はないし、どこを取ってもアンサンブルはピタリと合っている。いずれの曲もこんなに立派な曲だったかと再認識する。
また一人ドイツ正統派の指揮者を失った。ご冥福をお祈りしたい。合掌。


N響を振ってこの盤にも収録されているエロール;ザンパ序曲を演奏している映像があったので貼っておく。1988年サントリーホールでの演奏。この時代のN響メンバーの顔が懐かしい。冒頭少ししたところでサヴァリッシュが指揮棒を落としてしまい、以降は棒なしで振っている。



手兵;バイエルン国立歌劇場管弦楽団とのブルックナー第2番第1楽章。1987年。まさに全盛期。かなりマイナーといってよいこの曲を暗譜で振っている。そして美しいバトンテクニックはいつ見ても素晴らしい。



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テンシュテット&ロンドンフィル ライヴ集


毎度毎度天気ネタの枕で年寄りくさいが、今朝もことのほか寒かった。当地群馬県南部の最低気温はマイナス3.9℃。この冬いちばんの冷え込みだったかもしれない。もう少し寒冷地であれば住環境を根本的に整えるのだろうが、それほどでもないことから地域全体としての防寒対応がなされておらず、北国から移り住んだ人は、なんて寒い土地なの?!と感じるらしい。 そんななか、きょうもプリウス号で36キロ超の通勤ドライブ。きのうから車中リスニングにこの盤を持ち込んでいる。


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BBCが関わったライヴ音源を集めた『ポートレイト・オブ・ア・レジェンド』シリーズ、その中のテンシュテットの4枚組セット。数年前にタワーレコードで叩き売られていた際に買い求めた。現在はすでに廃盤の様子。HMVのサイトには『魂の巨匠テンシュテット再評価の機運を決定づけた壮絶ライヴ集完全限定盤』と、中々派手な宣伝文句が書かれていた。収録曲は以下の通り。いずれもオケは当時の手兵ロンドンフィル。ロイヤルフェスティバルホールでのライヴ録音。

CD-1:
・ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調Op.125『合唱つき』
 マリアンネ・ヘガンデル(S)アルフレダ・ホジソン(A)ロバート・ティアー(T)グウィン・ハウエル(Bs)
 1985年9月13日
CD-2:
・スメタナ:歌劇『売られた花嫁』序曲
・ドヴォルザーク:交響曲第8番ト長調Op.88
・ヤナーチェク:シンフォニエッタ
 1991年4月2日
CD-3:
(1) ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調Op.92
(2) ブラームス:交響曲第3番ヘ長調Op.90
 1989年11月22日(1) 1983年4月7日(2)
CD-4:
(1) ウェーバー:歌劇『オベロン』序曲
(2) シューベルト:交響曲第9番ハ長調『ザ・グレイト』
(3) ブラームス:悲劇的序曲Op.81
 1984年10月7日(1) 1983年4月7日(2)(3)

きょうはこのうち2枚目のオールスラヴプログラムを聴いた。
<魂の巨匠>といううたい文句さもありなんという演奏。車の貧弱なオーディオで聴いていても一音一音にエネルギーが満ちていてのが分かる。スメタナの冒頭、ざわざわと弦がうごめきながら次第に形を成してトゥッティを確立する様はこの曲の醍醐味の一つだが、そのざわざわ感がこの演奏で聴くと、内なるエネルギーの膨張をテンシュテットが抑えつつ、それでも漏れ出す熱情に押されるようにして吹き出す…そんな風に聴こえる。主部で出てくるスラヴ舞曲風のアクセントも民衆達が喜び勇んで飛び上がるような活気に満ちている。
ドヴォルザーク8番の冒頭、主題を奏でるチェロのカンタービレをやや遅いテンポで控え目に始めるが、主部に入るとテンポを上げ、抑えがたい勢いとエネルギーに押されて終始一貫パワフルだ。展開部では低弦群や打楽器のアクセント、ホルンの強奏が続く。第2楽章は遅めのテンポと全体にどっしりとした音響バランスで極めてドイツ的な響き。よく知られる第3楽章は意外にもサラッと歌いぬく。第4楽章は第1楽章に回帰したように速めのテンポで、エネルギーと緊張をキープしながら前へ前へと進む。例の「コガネムシは金持ちだ」のモチーフのあと、クロマティックに下降するフレーズを聴くと、この曲を初めて聴いた高校時代を思い出す。曲名もきちんと覚えていなかったのに、このフレーズだけが頭に残ったものだ。コーダは一気加勢のアチェルランドで熱気と共に突き抜けるように最後のコードを鳴らして終わる。
ヤナーチェクはドヴォルザークよりも整然とした響きが印象的だ。金管群を増強した大編成のオケを余裕をもって鳴らしている。もちろんテンシュテットの手腕もあるだろうが、きっとヤナーチェックのスコアがよく出来ているに違いない。この曲の持つ素朴なエネルギーと近代的な響きとがほどよくミックスしていて、見通しのよい響きが楽しめる。

テンシュテットのこの4枚組セットは、ライヴで本領を発揮したテンシュテットの音を記録した貴重な盤。ベートーヴェン第9や第7も名演の誉れ高い。いずれもまたきちんと聴き直そう。


村上春樹の小説で思わぬところで脚光を浴びた<シンフォニエッタ>の全曲。簡単な検索ではこの盤の音源は見当たらなかったので、SWR;シュトゥットガルト放送交響楽団をユカ=ペッカ・サラステが振ったライヴの映像を貼っておく。



何度聴いてもテンシュテットの<リエンツィ>は素晴らしい。1988年サントリーホールでのライヴ。
冒頭、トランペットのロングトーンを受け、1分過ぎから低弦群動き出し、1分40秒で調性が確立してヴァイオリン群がテーマを奏する。ゾクッとくる瞬間だ。3分前後から次第に音楽は緊張を帯ながら盛り上がり、3分45秒に全奏でテーマを奏でる。終始テンシュテットの深い呼吸が素晴らしい。



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お手軽レコード再生


愛用しているCEC社製レコードプレイヤー;ST930をメンテナンスに出した。かれこれ十数年使い、特に不具合もなく動いていたが、手の届かないところにホコリが溜まっているのが見えるし、インシュレータのゴム類は経年変化が相応に進んでいるだろう。LINNは分不相応とあきらめ、このCECを今後も使い続けることを決めたのでチェックしてもらうことにした。幸い実際にメンテナンス作業をする拠点は当地群馬県内しかも勤務先の近くにある。十日ほど前、仕事帰りに持ち込んで預けてきた。

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応対してくれた方とひとしきり歓談。このST930、販売店からは30万円以上でも売れるから復活してほしいというのリクエストが今でもあるとのこと。残念ながら主要部品の金型がすでになくターンテーブル本体の再生産は不可。付属のトーンアームは元々JELCOブランド・市川宝石で作られていて、今もSA-250という型番で現役だ。
実際よく出来たプレイヤーで、生産終了間際の90年代終盤に入手して音を出したときの驚きは今も覚えている。SN比のいいクリアで粒立ちのいい音はそれまで聴いたことのないものだった。CEC社は長らく群馬県内に拠点を持つ家電S社の傘下にあって他社ブランド向けや輸出に力を入れていた。今世紀に入ってから完全独立し、その頃からアンプ類やCDプレイヤーなどもラインナップして一般オーディオでのプレゼンスも上がってきた(この辺の事情を現社長が詳しく語っている)。多くの製品が中国生産に切り替わる中、フラグシップのベルトドライブ式CDトランスポートは現在も引続き群馬県内の拠点で生産している。今回メンテナンスをお願いしたぼくのプレイヤーの関しては、「きわめてきれいな状態に保たれているが、すべて分解したのち、スリンドル・軸受け等の洗浄、基板類の半田アップ、ゴム類の油洗浄再生等の措置をする」とのこと。そろそろメンテ完了の連絡が入る頃。帰還が楽しみだ。


さて、以下やっと本題。レコードの話題になると「まだ針は手に入るのか」「プレイヤーがまだ販売されているのか」という質問をよく受ける。答えは簡単。針も手に入るしプレイヤーも1万円以下コースから100万円超までいくらでもある。中古の流通品も多いし、肝心のレコード盤はリサイクルショップのジャンク箱で1枚100円<もってけ泥棒!>状態だ。プレイヤーをメンテに出している留守中の手慰みに、お手軽再生ツールの一つを借用して使ってみた。

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DJ御用達ブランドVESTAX社製のHandyTraxというポータブルプレイヤー。その名の通り持ち運びが出来て電池でも動く。レコード全盛期には似たようなプレイヤーがたくさん出回っていたが、今は数少ない。期待もせずに盤をのせて聴いてみたが、うるさいことを言わなければ十分楽しめる。オーディオ的には低音や高音の上限下限はいさぎよくあきらめている一方、中音域は中々クリアでボーカルなどは案外浸透力がある。手元のデジカメで安直に録音してみたが、こんな感じだ。



ポータブルにこだわらず、手軽にレコードを聴くならオーディオテクニカ製のプレイヤーを手持ちのコンポに接続するのが手っ取り早い。コンポありませ〜ん状態なら、アンプ内蔵のスピーカーから手頃なものを選べばOK。PC用の需要があるためアンプ内蔵の小型スピーカーは多数出回っていて価格も安い。最近フォステクス製のアンプ内蔵スピーカーを聴くチャンスがあったが、マーラーの交響曲が部屋を揺るがすほどのフルボリュームで鳴るのには驚いた。より小型のその姉妹機もPC用を兼ねてデスクトップで聴くにはちょうどいいかもしれない。押入れにしまい込んで塩漬け状態になっているレコードの復活はそれほど面倒ではない。


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ブラームス聴き比べ


三連休もいつものごとくダラダラと終わって明日から仕事復帰。これでゴールデンウィークまで連休はない。梅の香りに年度末の慌しさ、そして桜の便りと、そんなことで五月までやり過ごそうか…。さてこの連休は寒波再来で思いのほか寒く、最終日も北風MAX。終日部屋の中でボーッと過ごした。先週聴いたブラームスで思い出し、手元の盤を取り出して聴き比べてみたり、メンテナンスに出しているレコードプレイヤーのピンチヒッターを試聴したりと、まあ呑気なことこの上ない。


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ところで手元にあるブラームスの交響曲全集、一体何種類あるのかと書き出してみた。以下順不同で…カラヤン/BPO(60年代・70年代)、ベーム/VPO、バーンスタイン/VPO、フルトヴェングラー/BPO他、ワルター/コロンビア響、ヨッフム/ロンドンフィル、クレンペラー/PO、ケンペ/ミュンヘンPO(以上はLP)、ボールト/ロンドン響他、バルビローリ/VPO、セル/クリーブランド、アンチェル/チェコPO、ヴァント/NDR、チェリビダッケ/SWR、ザンデルリング/SKD、シャイー/RCO、インバル/フランクフルト放響、以上18種。この他に各番号の単品が相当数といったところだ。こうしてみるとほとんどが物故した指揮者の演奏。そもそも貧乏学生時代のDNAにより、最新録音のレギュラープライスの盤にはほとんど手を出さない。もっぱら廉価盤生活が長く、いきおいこうした古い録音の盤や昨今のボックスセットが多くなる。先週チェリビダッケとヴァントのCDを聴いたので、きょうはインバル/フランクフルト放響、シャイー/ロイヤルコンセルトヘボウ管、アンチェル/チェコフィル、カラヤン/BPO(70年代)の盤を取り出し、いずれも第2番の第2楽章を聴き比べた。

◇インバル盤…90年代後半の録音。インバルとフランクフルトとの一連の録音はマーラーを筆頭にいずれも録音すこぶる良好。第2楽章は弦楽パートの長いフレーズが各所に出てくるが、抑揚を少し大きく取り、明るめの音でスッキリと歌う。とてもフレッシュで生気に満ちた演奏だ。同時にテンポはやや遅めでスケール感も申し分ない。
◇シャイー盤…こちらは80年代の録音。コンセルヘボウ管の特徴に録音の傾向も加わって、インバル盤にあとに聴くと音色が落ち着いている。まさに燻し銀の趣き。当時まだ30代のシャイー、少々軽めであっさりした解釈だ。
◇アンチェル盤…独墺系オーケストラとは明らかに音色が違う。もちろん録音のポリシーもあるのだろうが、意外にもチェコフィルの音色は明るく明快だ。弦楽群も思い切りのいいボウイングで生き生きと歌う。
◇カラヤン盤…70年代後半のアナログ最終期の録音。さすがにベルリンフィルの音は厚い。そしてレガートで音の隙間を作らないカラヤン流の解釈。ブラームスではなくR・シュトラウスの曲かと思うほどの濃厚な表現だ。60年代の最初のステレオ録音はやや暗い音色で往時のBPOを思わせるが、この70年代録音はより近代的になっていて、賛否が分かれる。

ブラームスの交響曲は4曲。CDなら2枚か3枚に収まる。いずれの曲もそれぞれ充実していて甲乙付けがたい。また指揮者の腕の見せ所も多く、ついつい全集盤が増えてしまう。もっとも、これ以上増やすつもりはなく、手持ちの盤を時に応じて引っ張り出して生涯楽しむつもりだ。…と過去何度も心に誓ったはずなのだが…。


チョン・ミュンフン指揮ソウル・フィルの演奏で第2番第2楽章。冒頭1分間のチェロのフレーズから、緊張と熱気をはらんだカンタービレが続く。まるでマーラーのアダージェットのよう。



同じチョン・ミュンフン指揮でこちらはフランス放送のオケ。編成が大きく18型。チェロ12コンバス10。音も弾きぶりも重心低く、フランスとはいえやはりヨーロッパのオケだ。



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まつむらスペシャル


松村雅亘SPECIAL/2010年作。事情あって関西某方面より拙宅にて預かり中。十年ほど前からS・グロンドーナのアドバイスを取り入れ、ほぼ隔年ごとに作っているスペシャルモデルで、レギュラーの注文品とは材料グレードも音作りも異なるものと思われる。表板はこれまでに見たことのないようなベアクロウ入りスプルース。横裏板は柾目ハカランダ。弦長650mm。糸巻きはスローン。塗装は表板セラック横裏カシュー。サイズはレギュラー品と変らないがずっしりと重い。


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松村氏のギターは短期間ではあるが70年代・80年代・90年代のものを使ったことがあるし、2000年代入ってからの作品も何度か試奏した。しかしこのスペシャルモデルはかつて弾いたことのある松村ギターとはかなり印象が違う。昔の印象はあやふやなので比較としてではなく、率直にこの楽器の印象を言うとしたら、ともかく太く・幅広く鳴る。以前の松村ギターはもっと音が締まっていて、張り詰めたような緊張感があったように思うが、この楽器は違う。もっと大らかにゆったりと鳴るのだ。

低音も高音も音量感は十分。低音のウルフは高めでAからB♭あたりにあるが、それよりも低い6弦のローポジションもエネルギーとサステインがあり、強く太い。ドーンあるいはボンッという低音ではなくビーンあるいはガーンに近い鳴り方だ。低音弦ハイポジションのサステインも長く、消音に困るほどよく持続する。高音は低音に比べてやや線が細い感じもするが、タッチ次第でどこまでもダイナミクスが広がる手応えがある。低音から高音までの全体バランスは良好で、和音もきれいに調和して響く。現状は弦高を限界まで下げてあり、サウンドホール中心あたりで少し強いタッチで乱暴に弾くとビリつくレベルだが、反面、テンションは決して強くなく弾き易い。これで音に芯がないとボケた音になりかねないが、低音高音ともしっかり核がある鳴りで、おそらく離れて聴いていてもよく通る音ではないかと思う。

70年代後半から80年代にかけて、松村ギターは他の国産ギターとは一線を画す音作りで、関西を中心に多くのハイアマチュアやプロに使われた。福田進一、大萩康司らトッププロも松村ギターで育った。今も2年以上のウェイティングリストがある状況は変らないようだが、このスペシャルモデルを弾く限り、少し前の音作りとはだいぶ変化してきているように感じる。


2000年作の松村ギターを弾く北口功。北口氏は松村氏とは同じ地元ということもあってか以前から様々な交流を持っている様子。このソルの演奏も求心的で緊張感のある弾きぶりだが、出てくる音は正しいアーティキュレーションとフレージングで、古典的な様式感に満ちた素晴らしい演奏だ。



マイブログの松村工房訪問記;
http://guitarandmylife.blog86.fc2.com/blog-entry-170.html


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トルトゥリエ バッハ無伴奏チェロ組曲 1982年録音

きのうの暖かさが去り、きょうは程々に寒い日曜となった。それでも明日は立春。厳しいというほどの寒さではないし、日中の陽射しも一層明るく暖かかった。これといったこともなく週末も終了。あすからまた一週間スタートという晩、例のトルトゥリエのボックスセットからバッハ無伴奏チェロの盤(第1・4・5番)を取り出して聴いている。


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このボックスセット、私が知り限りでもごく最近三名の方がこのブログを見たのをきっかけに購入に至っている。営業促進に寄与するところ大と、EMIから感謝メールでも来ないだろうか。限定リリースされたのが2010年。そろそろ店頭在庫も底をつく頃だろうか。すでにHMVのサイトでは売り切れだ
トルトゥリエはバッハ無伴奏を2回全曲録音している。1960年に録音した盤について一年ほど前に記事にしたことがあった。このボックスセットの入っているのは再録された1982年4月録音のもの。ロンドンのテンプル教会でデジタルで録られている。

1914年生まれのトルトゥリエが68歳の録音ということになるが、さすがに40歳代旧盤の切れの良さと勢いをまず先に感じる演奏とはひと味違う。もちろん大家然とした貫禄だけの演奏ではなく、技巧的にも衰えはほとんど感じないし、音色もまろやかで極めて美しい。テンポは旧盤よりやや遅めになり、フレーズの一つ一つを丁寧に弾き進めている。録音も音像がモノラル的にコンパクトで、残響も過度でなく、ちょうどよい距離感だ。モダンチェロによるバッハ無伴奏の一つの理想的な演奏だと感じる素晴らしい演奏だ。


この盤の第4番サラバンド



1990年12月亡くなったトルトゥリエ。この映像は亡くなる五ヶ月前1990年7月のもの。



そういえば近年研究が進んで次第に明らかになった、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ(肩掛けヴァイオリンチェロ)による演奏も最近興味を持っている。バロックヴァイオリンの一人者;寺神戸亮による詳しい解説がここで聞ける<ヴィオラ・デ・スパッラの解説>
http://columbia.jp/artist-info/terakado/COGQ-32-3.html#movie
寺神戸亮;ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラによる無伴奏チェロ組曲の録音セッションについて。
http://columbia.jp/artist-info/terakado/special.html

セルゲイ・マーロフのよるヴィオロンチェロ・ダ・スパッラでの演奏。



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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