現代ギター誌10月号


久しぶりに雑誌「現代ギター」(クラシックギターの専門誌)を買う。いま店頭に並んでいるのは2013年10月号。以前は定期購読していた時期もあったが、最近は特集や記事に目を引くものがあれば買う程度になっていた。たまたま今回は興味のある記事がいくつかあった。その一つがイギリスのギター製作家:デイヴィッド・ホワイトマンに関するもの。このブログでも時々名前が出るロンドン在住の古楽器奏者:竹内太郎氏のレポートによるデイヴィッド・ホワイトマンへのインタヴューが4ページに渡って掲載されている。


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実はホワイトマンの楽器を2台所有している。ホワイトマンの楽器は90年代の一時期ごくわずかの本数が日本に入ってきたようだが、元々寡作なこともあって、滅多に見かけない。ぼくはたまたま竹内氏のHPでその存在を知って手に入れた。写真の2本がそれ。左側が今回の記事でも紹介しているホワイトマンオリジナルの楽器。右側は1941年製ハウザー1世のレプリカだ。


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二つの楽器はコンセプトがまったく異なるが、いずれも素晴らしい材料が使われ、入念な設計と高い製作技術によって作られている。オリジナルモデルはホワイトマンが現在もっとも注力しているモダンコンセプトのギターで、伝統的な扇型配置の力木に最新のワッフルバー技術を導入したハイブリッドタイプ。音量豊かでエネルギーに満ちた直線的な鳴り方が特徴だ。音の遠達性が求められる現代のコンサートステージや音量が必要な他楽器とのアンサンブルなどに威力を発揮するだろう。音は輝かしく、サステインも長い。一方、ハウザー1世モデルは20世紀前半までの伝統的な製作コンセプトによっている。重量は軽く、低いウルフトーンを持ち、音は拡散的に鳴る。ふっくらとボリューム感のある低音と、反応よく軽く立ち上がる美しい高音が印象的だ。それぞれの詳細については以前書いた記事を参照されたい。

ホワイトマン・オリジナルモデル
http://guitarandmylife.blog86.fc2.com/blog-entry-534.html


ハウザー1世モデル
http://guitarandmylife.blog86.fc2.com/blog-entry-467.html


これだけよい材料(横裏は上質のハカランダ)と優れた音質・音量の楽器でありながら、幸い日本では輸入代理業者がいないこともあって、きわめて廉価で手に入れることが出来た。おそらく通常の流通ルートで入ってくれば、ぼくが入手した価格の三倍になるだろう。ごく最近も、今回のインタヴュー記事に出ていた横裏板メイプル仕様のハウザー1世レプリカやラコートのレプリカが竹内氏のサイトで紹介されていたが、国内製作家の中級モデル並の価格設定だった。道楽に散財、失敗は付き物だが、このホワイトマンのギター2本に関しては、よい買い物だったと心から納得し、長く愛用していこうと思っている。


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ピアソラとジュリアーニをさらう


日曜も終わり明日から仕事…いや、三連休につきもう一日休みだ、ヤッホーと、大人げなく叫んで今夜はギターの練習に精出した。先日の記事に書いた通り、近々チェロやフルートと合せることになりそうで、そのおさらい。ギター弾きだけのmixi仲間の遊びと違って、今回のお相手はチェロやフルートの正統的なトレーニングを積んでいる玄人はだしのメンバーなので、笑ってごまかし和やかに…ではあまりに失礼だと思い、少しは練習しようと心に決めた。


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予定している曲はピアソラ:タンゴの歴史(原曲通りフルートと、またチェロとも)とジュリアーニのグランドソナタ作品85(フルート)。それとブルクミュラーの夜想曲(チェロ)。ジュリアーニは高校時代に級友のフルート吹きと合せたことがあり、もちろん難所はあるが、乗り越え方も何とか見込みがつく。ブルクミュラーは初見でもいけそうだ。問題はピアソラ。
曲は馴染みがあるし、ステージでも聴いている。しかし自分で弾くのはもちろん初めて。楽譜を前に弾き出したのもつい先日だ。さらっと曲を聴いているとラテン系のノリで弾いているようなところも、楽譜をみると十分緻密に書いてあって、それを忠実に弾くのはアマチュアレベルでは荷が重い。実のところ楽譜を見る前に、何とかなるでしょうと見栄を張ってしまい頭を抱えているところだ。

ジュリアーニの第1楽章。ギターの活躍する経過句。
四分音符M=120くらいを予定。
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タンゴの歴史・第1曲:bordel-1900の佳境。右手がもつれる。所々にある左手の拡張箇所も難易度高。
八分音符M=180の指定。
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ジュリアーニのソナタは4楽章ある古典様式の美しい曲。ギターは伴奏音形も多いが、ソナタ形式の第1楽章では第2主題をギターが提示、そのあと十数小節に渡ってジュリアーニらしいテクニカルなパッセージがあったりと、十分弾き応えがある。ピアソラはスピード感をもって記譜された通りに弾くには、合理的な指使いも必須。苦あれば楽ありというが、折角の機会なので大いに楽しみたい。さて、どうなるか。


タンゴの歴史:第1曲bordel-1900のVn版。ギターはヘッドの形からサイモン・マーティー作とわかる。



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ちょっとレトロなSTAX SR-5


MC型カートリッジの定番、DENONのDL-103が10月から価格改定だそうだ。それも50%近い高率。この春にオルトフォンSPUを導入してから出番がなかった103だが、これを気に駆け込みで1個新調することにした。新調といっても103の場合は手持品を差し出すと針交換扱いで新品がやってくる。きょう午後行きつけのオーディオ店に出向くと、同じような駆け込み針交換の103がレジの横に数個転がっていた。みな考えることは一緒だ。「まあ、メーカー側も今までよくこの価格で頑張ってきましたよ。音はオルトフォンに負けませんからね。」と店主。社会人になってようやくまともなオーディオセットを手に入れ、そのとき選んだのがDL-103。以来およそ10年おきに三回ほど買い換えただろうか。ちょっと大げさだが、今回がおそらく人生最後の103になる。
まあ、珈琲でも一杯と店主に誘われて一服。「最近、夜中に聴くとことが多いので、ヘッドフォンを何か見繕おうと思っているのだけど…」「あっ、それならこれどうです」…と店主が指差す方向をみるとちょっと見慣れないヘッドフォンが。「STAXのかなり初期のモデルですけど、状態はいいですよ。よかったら持って帰ってゆっくり聴いてみて下さいな。」


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…というわけで、STAXのSR-5とドライバユニットのSRM-1が突然やってきた。STAXのヘッドフォン(同社はイヤースピーカと称している)は20年ほど前にしばらく使ったことがある。ややスマートな鳥かごスタイルのΣシリーズで音は文句なしに良かったが、高分子ポリマーの極薄フィルムがゴミを呼び込みがちで2回メンテナンスに出した。そんなこともあって、その後は安直にソニーのダイナミック型(スタジオ仕様でお馴染みのMDR-CD900)でお茶を濁していた。さらに悪いことに、そもそもいま使っているアンプもCDプレイヤーもヘッドファン端子が付いていない。アンプにヘッドフォン端子を付けることによる音質劣化は無視できるレベルだと思うが、そこはその潔さを音質優先の売り文句にしているのだろう。そんな事情もあってヘッドフォンで聴くにはアンプをちょい改造して出力を取り出すか、昨今流行のヘッドフォンアンプを追加する必要があった。そんなところにSTAXの出物。SR-5、SRM-1共に70年代後半の製品で、デザインや作り、布製ケーブルなど、中々レトロで心ひかれる。

持ち帰ったセットにさっそく灯を入れる。30年余を経てそれなりに汚れもあるが、耳当てパッドやケーブル類はとても状態がよく、プラスティックの筐体も傷はないので、少しコンパウンドで磨けばきれいになりそうだ。ドライバユニットのSRM-1は天板に開いた冷却用の穴から中を覗くと、今では珍しいキャンパッケージのTO3型トランジスタが並んでいる。この頃は直流バイアスの電圧はまだ230Vの時代だ。

装着感はとてもいい。大きさの割には軽量で、耳当ての形もジャストフィットする。録音の特徴がよく分かっている盤をいくつか取り出して聴いてみた。第一印象は、コンデンサー型という仕様から想像するより、あるいは以前使っていたときの記憶よりずっと密度感のある濃い口の音。帯域は欲張らずに中音域のエネルギー感、密度感が優先されている印象だ。おそらく当時と、その後80年代後半バイアスが高くなって以降(CD時代以降といってもいいか)の差だろうか、もっと高域が延び、いかにも分解能の高いすっきりした音を想像していたが、その想像とは異なる。低域は元々コンデンサー型はよく延びるがエネルギー感というか押し出しは強くない。このSR-5も同様で、オーケストラのコントラバスの最低音までよく聴き取れるが、ボリューム感は控え目だ。これはむしろ歓迎すべきで、帯域が延びていないのに設計の悪いバスレフのようにボワボワとボリューム感だけ欲張っているものはまったく手に負えない。


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一昨日手に入れたカラヤンのメンデルスゾーン<スコットランド>では、70年代当時の典型的なDG&カラヤンサウンドの特徴がよく分かる。イエスキリスト教会の豊かな残響とカラヤンのレガートな音楽作り、そしてややナローレンジで低域のしっかりしたの音響とが一体となって、どこまでも滑らかで耳に心地よい仕上がりになっているのが聴き取れる。オスカー・ピーターソントリオのプリーズ・リクエスト#6You Look Good To Meでのレイ・ブラウンのベースは、最低域までよく延びるがボリュームは控え目。一方低域から中域の分解能は良好で、アップテンポになってからのソロフレーズの部分で、ソロに合せてレイ・ブラウンが小声でスキャットしていることに初めて気付いた。ヤニグロや五嶋みどりの盤では弓を降ろす一瞬前のわずかな呼吸や気配がよく分かる。ペライアのバッハは、近めに録られたリアルな音像が十分なエネルギー感で聴こえてくる。何もこのSTAXを絶賛するつもりではなく、ある程度配慮されて作られたヘッドフォンであれば、同様の印象を得るだろう。それと全体にややナローレンジながら中域のエネルギー感に満ちているという結果は、使っているCDプレイヤーの特性による要素もあるに違いない。いずれにしても30年前に品物ながら不具合はまったくないし、音、装着感とも及第点という結果になった。

そのヴィジュアル共々音もややレトロなこのSTAX。値段も手頃。しばし熟考ののち、このまま拙宅に居座ってもらうことに決めた。これで秋の夜更けのリスニングも万全だ。くだんの店主には明日にでも電話を入れて、引き取りたい旨伝えることにしよう。


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久々にCD調達


週末金曜日。朝からアチイ~ッ一日。今週に入って涼しくなったと油断していたら、きのうきょうと真夏日復活だ。まあいいや、あすから三連休だし~…
きょうは都内での仕事が夕方片付いたので、ヨドバシ秋葉原店内にあるタワーレコードへ。きょうこそは何か釣果をと気合を入れて店内へ。以下のセットを手に入れた。


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左上黒っぽいジャケットで写っている3枚は、この度タワーレコードの企画物として復刻したシューリヒトのコンサートホール盤の中から選らんだもの。シューマンの<ライン>とマンフレッド序曲それとニコライ<ウィンザーの陽気な女房たち>、ワーグナー名演集、ブラームスの3番・4番。ブラームスは2枚組でハイドン・ヴァリエーションと悲劇的序曲、更にウェーバーの序曲<オベロン>と<オイリアンテ>が入っている。とかく貧弱な音質がやり玉にあげられるコンサートホール盤だが、今回は日本コロンビア所有のアナログテープマスターからマスタリングをやり直したとのこと。さてどんな塩梅だろうか。

下の4セットは左から…まず、以前記事に書いたクリスティーヌ・ワレフスカ(こちらこちらも)の若い頃のデッカ録音を復刻したのもの。以前から気になっていた盤だ。70年代の録音でヴィヴァルディに始まり主要なチェロ協奏曲などを収めた5枚組。続いて白いジャケットは、ロベルト・シュトルツのウィーナーワルツ集の2枚組み。手持ちの盤と半数近くの曲がダブるようだが仕方ない。

ついでギターのアルバム。レオ・ブローウェルがギター奏者としても全盛だった70年代初頭のDG盤。これはタワーレコード・ビンテージコレクションとして3年ほど前にリリースされた。日本での発売はこれが初めてとのこと。オアナ<もし朝日が昇ったら>、自作の<永遠の螺旋>をはじめとし、ブソッティ<ララ>、アリーゴ<ギターのためのセレナーデ>など、当時の先端音楽が収録されている。ブルーウェルが抱えているギターはフランスの名器:フリードリッシュだ。糸巻きヘッドのデザインからそれを分かる。
最後におなじみカラヤンのポートレート。これはメンデルスゾーンの交響曲全集の3枚組。アバド&ロンドン響のDG盤3枚組とカラヤンと悩んだが、アバド&ロンドン響は3番・4番の英デッカ録音をLPで持っているので、カラヤン再評価も意図して選んだ。カラヤン盤はアバド盤の半値(1500円)だったというあからさまな理由もあるのだが…

少し前からシューリヒトのシューマン<ライン>を聴きながらPCに向かっている。快速調の流れるような<ライン>。一つ一つのフレーズからドイツの深い森を感じるようなじっくり型の演奏ではなく、もう少し大きなフレーズ感を持ちながら、一気呵成に流れるように進む。時間をみたら第1楽章が8分。同じ楽章をチェリビダッケは12分近くかけている。

以上、CD15枚@800円也のチョイ大人買いの御粗末。程なく迎える秋の夜更けに、またボチボチ聴いていこうか。


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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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