最近弾いたギター


ホッとひと息の週末金曜日。がしかし、2週間前に背負い込んだ風邪をこじらせていて、いっこうに咳が収まらない。先週末、かかりつけの内科医に診てもらったが、よくなりかけているようなので抗生物質は不要との判断。消炎剤のトランサミン(トラネキサム酸)と咳止めのメジコンが処方された。しかしその後数日たっても症状変らず。悪化も良化もない状態だ。おそらく喉の奥か呼吸器系まで侵攻した2次感染による炎症が収まっていない様子。やはり抗生物質も加えてもらえばよかったと後悔している。発熱はないし、咳といってもそれほど酷いわけではなく、微妙なところだ。
さて今夜は何か聴く元気もないので、茶飲み話的に最近弾いた楽器について備忘を残そう。いずれも都内某ギター専門店でのこと。ほどほどの情報開示でお許しを。

■ マヌエル・デ・ラ・チーカ 1970年作 松・インドローズ
一度聴いたら忘れないであろう名前の一つ、マヌエル・デ・ラ・チーカ(以下チーカ)。50年代から70年代にグラナダで製作を続けた。以前も書いたが、学生時代のサークルの先輩がこの楽器を使っていてその名を知り、以降もどこか引っ掛かるものがあるギターだ。チーカはこれまで3回ほど見たことがある。これまで見たものは、サントス時代の古いスパニッシュを感じさせるもので、今回もそれを期待し、状態よければ買ってもいいかなあと意気込んで試奏に臨んだ。
結果は予想に反して、かなり現代的要素が入っている作品だった。「ラミレス3世あるいはマドリッド系入っています」という感じだろうか。これまでみたチーカと違ってずっしりと重く。塗装もラッカーのやや厚塗り。音はよく鳴っていたが、かなり現代的な音。低いウルフ設定と枯れた高音を期待していただけに、やや拍子抜けだった。反面、現代的視点でみれば文句のない出来で、665mmの弦長が気にならなければ、いい選択だろう。

■ダニエル・フレドリッシュ 1967年 松・インドローズ
フレドリッシュといえば最近人気の朴葵姫(パク・キュヒ)(写真)が2009年の新作を使っている。一時期はプロのコンサートギタリスト御用達ギターの一つだったが、最近は高齢ということもあってごくわずかの製作本数しかなく、一般にはほとんど流通していない。フレドリッシュは70年代半ばに作風を変え、以降は表板に杉を使い、重装備で音量のある現代的なコンサートギターとなった。今回のものはそれ以前のもので、重量は軽く張りも柔らかい、古典的なスタイルの楽器。1967年といえばフレドリッシュがリエージュの製作コンクールで河野賢と1、2位を分け合った年だ。ただしこの時代のフレドリッシュは、シリアル番号入りのコンサート用と番号ナシのややカジュアルな楽器と2本立てだったという。今回のものはシリアル番号なく、価格もフレドリッシュにしては格安ということから、そのセカンドラインの楽器と思われる。 音はとてもよかった。軽い重量(おそらく1400グラム台)から想像できるようにウルフの設定は低く、高音は50年近いエイジングも加わってよく枯れていて、やや短めの余韻で古風な響きが素晴らしかった。

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■ホセ・マリン 2011年 松・中南米ローズ
グラナダのアントニオ・マリン工房。高齢になったアントニオに代わり、甥のホセ・マリンが多くを取り仕切りながら、ゴンザレスと共に三人の共同作業で明るくよく鳴るギターを作り続けている。マリンの楽器はともかく屈託無く明るくパーンと鳴る。音の立ち上がりが滅法速く、加えて弾きやすい。ステージでの音の通りもいいようで、プロアマ問わず愛好者が多い。今回の楽器は2011年作の新作を購入した、とある社長さんが手放した中古品とのこと。状態よく、値段は新品の半値と御買い得感MAXだ。このマリンも予想通り明るくよく鳴っていた。テンションも強くなく、弾いていて緊張を強いられない。軽く弾いてもよく反応して、音が前に出ていく。ウルフはG#あたりだが、突出した感じはない。どのポジションどの弦でも満遍なく鳴る。ぼくの現在の手持の楽器にはない個性で、あまり出番のない大型のラミレスに替えて、マリンにしようかと思うほどだった。

■アントニオ・ラジャ・パルド 1987年作 松・中南米ローズ
同じグラナダ系ながら、ラジャ・パルドと息子ラジャ・フェレールの楽器は、グラナダ系の明るい音色とやや陰りを感じさせる落ち着きとを併せ持っている。今回みた1987年親父のパルド作は、四半世紀の年月を経ていることもあって低音高音とも程よく枯れ、味わいのある音だった。ラジャ・フェレールの新作トーレスモデルも同時に弾いたが、1987年作の方がずっとよかった。修理跡もあることで値段は30万円台と格安。ちょっとグラッときてしまった。


ところで、米西海岸の大手ギターディーラー:GSI(Guitar_Salon_International)のサイトには同社が扱っているギターの演奏動画がたくさんある。しかもその奏者がみな一流のプロプレイヤー(先日のゴリャチェフも)。音はものによってはかなりイコライゼーションされているので、そのままその楽器の生音というわけではないが、雰囲気と傾向は分かる。今回取り上げた3本のギターの動画もあったので貼っておく。


マヌエル・デ・ラ・チーカ 1969年作



フレドリッシュ 1967年



アントニオ・マリン 1995年作



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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