G・クレーメル+ジンマン&チューリッヒトーンハレ 演奏会


18日金曜日。都内での仕事を夕方までに終え、予定していたG・クレーメルとジンマン&チューリッヒトーンハレ管のコンサートに向かう。銀座線溜池山王駅から小雨の中を歩くこと数分。サントリーホール到着。まもなく開場という時刻で入り口前は入場を待つ人であふれていた。仕事帰りのカバンをさげた勤め人、いかにも自由人風情の人、和服の麗人も二人ほど見かけた。いかにも都会らしいコンサート風景だ。


Gidon-Kremer.jpg  Zinman-David.jpg


2階席中央のベストポジション。定刻19時に客電が落ち団員が三々五々舞台へ。チューニングも終えてしばしの静寂ののち、御大二人の登場となった。きょうはBプロのベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲とブラームスの1番。
予想に反して小柄のジンマンが指揮棒を振り下ろしベートーヴェンが始まった。一聴してチューリッヒトーンハレ管の、とりわけヴァイオリン群の音が明るい。ジンマンの解釈と相まって要所要所のアクセントが小気味よく決まり、音楽はよく流れる。ほどなくしてクレーメルのソロが入ってくる。思いのほかデリケートな弾きぶりだ。最初はやや探るような弾き方で調子が出なかったが、中盤からようやくのびのびとした音楽になってくる。アプローチとしては室内楽的といったらいいだろうか。音も決して大きくなく、G線を力で弾くようなところも一切無い。昨今聴きなれているコンクール入賞組のような派手や流麗さとは一線を画す。考えてみればキャリアの初期を除けば、彼のこれまでの活動の多くは小規模のアンサンブルや室内楽だった。そうか、こういうヴァイオリニストだったのかと今更ながらに合点した。そういうクレーメルのアプローチとジンマン&チューリッヒトーンハレのマッチングが、第1楽章ではうまくかみ合わない印象があったが、2楽章と続く3楽章はとてもよかった。音楽は軽やかに弾み、クレーメルの細かなニュアンスで聴かせる弾きぶりは後半楽章で真価を発揮した。

サントリーホールは数年ぶりだろうか。ちょうど10年ほど前、付き合いのあった某メーカーが毎年欧州のメジャーオケを招聘して冠コンサートを開いていた。チケットがよく回ってきて何年か続けて聴いた。ロイヤルコンセルトヘボウ、バイエルン放響、サンクトペテルブルク、チェコフィル等、中々贅沢な経験をした。

さて休憩をはさんで後半はブラームス。編成は16型。今週になってからも3回は聴いた(^^;ブラ1が悲劇的な序奏で始まる。やや速めのテンポで前へ前へと音楽が進むジンマンの解釈。ふた昔くらいまでの剛直で重い足取りの演奏は今どきありえないのだろう。ベートーヴェンのときに感じたチューリッヒトーンハレの音の明るさに加え、ともかく各パートともよく鳴る。ジンマンの解釈と相まって、エネルギーと熱気に満ちたブラームスが繰り広げられる。あすの最終公演はブラームスの4番が予定されているが、正直、きょうのプログラムでよかった。おそらく4番だったら、ぼくのイメージからするともう少し暗めで素朴な音色を求めたくなるところだったろう。1番なら今夜のようなジンマンの解釈とチューリッヒトーンハレの音色も十分成立する。それでも第2楽章などはもう少し弱音をいかした表現がほしいところだった。終楽章はこのコンビのそうした個性がマッチした力強く希望に満ちた演奏。ホルンやティンパニの要所も十分な手応えで聴かせてくれて大団円となった。
盛大な拍手に応えて、ハンガリー舞曲の第1番がアンコールとして演奏された。この曲、ハンガリー舞曲の中では最も好きな曲の一つ。ちょっと得した気分というのはこういうのを言うのだろう。

9時をまわって、ホールの外に出てみると雨はほぼあがり、夜の冷気が心地いい。ホール横のカフェで一人打ち上げ。温かい紅茶を飲んでからホールをあとにした。四の五の言いながらも久々の欧州オケの音と鬼才クレーメルの演奏を堪能した、いいコンサートだった。


クレーメルのベートーヴェン。シュニトケ作のカデンツァが使われている。当夜のカデンツァはシュニトケでもなく、ピアノ編曲版でもなかった。サン・サーンス版というのがあるらしいが、それだったのか。寡聞にして不案内。また協奏曲のあとクレーメルが拍手に応えてアンコールを弾いた。現代風の無伴奏で、何番かわからないがイザイかなあと思っていて、終演後確認したら、やはりイザイの無伴奏第3番だった。



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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