鎌倉


先日の日曜日、所用あって鎌倉へ。当地からは関東平野を縦断することになり、JRで3時間弱の小旅行。おひとり様タイムがあったので、あてもなくぶらついてきた。

<故吉田秀和邸>
2012年5月に98歳で亡くなった吉田秀和。かつての居宅が鎌倉にあることは承知していたが、今はどうなっているのだろうかという、単なる野次馬的好奇心があって捜してみた。ネットで確認した住所では鶴岡八幡宮のごく近く、若宮大路から右手に入った辺りにあたる。

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iphoneの示すポイントに向かって進み、車が1台通れるかどうかという位の細い路地を入り、おそらくこの辺だろうと所まで行ってみた。しかしiphoneが示すポイントは新築住宅の基礎工事の最中。その先にも古い住宅が見えたが、道が続いている様子はない。もしかしたら、かつての居宅は取り壊されて、その跡に住宅が新築中であったのかもしれない。確かめるすべもなく、あまりウロウロするのもと思って、その場をあとにした。


<川喜多映画記念館>
観光客で賑わう若宮大路や小町通り周辺とは対照的に、鶴岡八幡宮三の鳥居から西に折れると静かな住宅に入る。この辺りにぽつりぽつりと見所が点在している。少し歩いていると、川喜多映画記念館の前に出た。折から<映画女優吉永小百合>と題された特別展が開かれていたので、覗いてみることにした。

川喜多映画記念館
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近くに点在する瀟洒な洋館
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そう広くはない展示スペースだが、吉永小百合の出演した映画のポスター、使った台本、映画の中で着た着物、対談本を共作した岸恵子への手紙など、サユリストならずとも興味を引く展示品の数々に、しばし時間を忘れて見入ってしまった。吉永小百合の熱心なファンは、ちょうど団塊の世代からその少し上あたりだろう。ぼくなどは70年代に入ってからの記憶しかない。浜田光夫とのコンビで作られた青春映画も観ていない。それでも当時の、今となってはいかにも昭和レトロなポスターを見るだけで、センチメンタルな気分になってしまう。近作の<ふしぎな岬の物語>も機会をつくって観てみたい。


<サンマーメン>
飲み食いはもちろん出先での楽しみだ。ぶらつき始めた時刻がちょうど昼時だったので、まずは腹ごしらえ。観光客が列を成す界隈を離れて、鎌倉駅から南側へ進む。程なく、イイ味出している食堂を発見。直感に惹かれて入ってみた。

あしなや
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メニューをみて真っ先に目に入ったサンマーメンを注文する。ぼくのホーム北関東では馴染みがないが、横浜や湘南地区ではお馴染みのメニュー。たまたま以前、勤務先の社員食堂でサンマーメンが出て、そのとき初めて知った。五目あんかけラーメンとでもいえばいいだろうか。あとで知ったことだがこの店、中々の人気店で、中でもサンマーメンは目玉らしい。この日も店内は満席の繁盛ぶりだった。ぼくの直感もまあまあの線をいっていた証明か。他にも近くには、次回をここへと思わせる構えの店がいくつかあった。

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<シュトーレン>
おひとり様散歩も3時を過ぎたあたりで終わりにし、家人と合流して帰途につく。帰りがけ、その日知人からいただいた季節のドイツ菓子シュトーレン。この時期に用意し、クリスマスまでひと切れずつ食するのが流儀とか。のオーナーは、テレビにこそ出ないがその道では有名らしい。

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しっかりとした甘さとナッツ類の香り。ドイツ菓子に相応しくワグナーでも聴きながら、流儀に従ってちびちび楽しもうと思うが、どうもクリスマスまでもちそうにない。


2007年NHK放映。吉田秀和と堀江敏幸との一問一答、自宅での執筆の様子、音楽に耳を傾ける様子等々。こんな風にカメラが入ったのは最初で最後のことだろう。その他にも吉田氏が見い出した演奏家の姿など、今となっては懐かしくも貴重な映像。


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ラターの<レクイエム>


写真のおじさんに見覚えがあるだろうか。ちょうど2年ほど前、イギリス弦楽作品集というCDの記事を書いた際に貼ったもの。現代イギリスの作曲家:ジョン・ラターだ。この人はその記事にも書いた通り、合唱分野で多くの曲を書いている。中でも彼の<レクイエム>は90年代後半あたりから大そうな人気曲のようで、多くのアマチュア合唱団が取り上げているという。


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しばらく前に、近所の書店にあるナクソス・コーナーでこの<レクイエム>の盤を見つけて入手したのだが、ずっと放置したままだった。今夜、何気なく音盤棚を見回していて、ふと気付いて取り出した。ケンブリッジ・クレア・カレッジ聖歌隊とシティ・オブ・ロンドン・シンフォニアというオケをティモシー・ブラウンという指揮者が振っている。2002年録音。

イギリス弦楽作品集でのラターの曲もそうだったが、わかりやすく美しいメロディーと和声。ポピュラリティーが強く、これならアマチュア合唱団の多くの飛び付くのも無理もない。ラターはフォーレの<レクイエム>の新しい版を監修したらしいが、この曲を聴きだして間もなく、そのフォーレの<レクイエム>を思い出したほどイメージが近い。時にオルフの<カルミナプラーナ>を感じさせるフレーズも出てくる。<レクイエム>の様式に沿った曲構成になってはいるが、言葉のわからないぼくなどが聴くと、単なる平易で美しい合唱曲としか感じない。

wikipediaによるとイギリスの教会組織やプロの合唱団は、この曲を重要な曲としては認めていないという。つまり典礼には使わないだろうし、作品としての質にも疑問を持っているということだろう。死者を弔う音楽として不適切と判断しているということかもしれない。事の始終は知らないが、この曲を聴く限り、ぼくもその見解に同意する。あまりに安易でキャッチーな美しさが耳につき、オリジナリティーを感じない。そういう音楽が世に多々あることは承知だし、ぼくも時に好んで接する。しかし曲に冠した表題は<レクイエム>・‥ということなのだろう。この曲を、あるいはラターの作品を批判するつもりなど毛頭ないが、目先のキャッチーさ=甘さばかりに気を取られずに、苦さも渋さも音楽と心得るべきだと、あらためて感じた。


この盤の音源。



もっともよく歌われる第3曲<Pie Jesu>



ラター本人がこの曲について語っている。



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セルの第九


12月に入った途端にこの冬最初の寒波到来。きのうきょうと関東一円も冷たい北風が吹きぬけた。あす以降いったん雨模様のなったあと、週末から来週にかけて一段と強い寒気到来の見込みだ。
きょうは事情あって仕事は休み。朝、目覚ましと格闘することもなく惰眠をむさぼる。世の中は当然平常通り、こちらも一日で日常復帰するので、あまり弛緩しきるわけにもいかない、週の真ん中の休みというのは何となく落ち着かない、などとぶつぶつ言いながらも、一つ二つ用件を済ませ、夕方には散髪もして一日有効に過ごした。ありがたや休日(^^; 
さて、夜更けて音盤タイム。先日のクリップスの第九に続いて、今夜はセルの第九をプレイヤーにセットした。


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しばらく前に入手したセル&クリーヴランド管によるベートーヴェン交響曲全集の中の1枚。1961年4月クリーヴランド管の本拠地セヴェランスホールでの録音。70年代にはセル&クリーヴランド管の録音が廉価盤LPでまとめて出ていたが、当時このコンビの真価に気付いていなかったぼくは、その多くを手にすることなく過ごし、今頃になってこの誇るべきコンビの録音にまともに接している。
演奏は彼らの美点が随所に現れたもので、どこから聴いても第一級の素晴らしさだ。第1楽章は冒頭から音価を短めに切り上げ、思いのほか軽めの響きで通している。弦、管とも正確なピッチと端整なフレージングのためだろう、オケの編成が小さく感じるほどだ。重厚長大なイメージでは決してない。そして何より音楽が格調高い。 第2楽章はティンパニの強打がことのほか冴える。これ以上大きいとバランスが崩れるのではないかと思うほどの強打で第1楽章よりも重量感を感じるほどだ。そして第3楽章。実はこの盤の中でもっとも感銘を受けたのがこの第3楽章だ。前二つの楽章に比べ、セルの解釈は明らかにロマンティックに寄っている。弦楽群は柔軟なフレージングと豊かな響きでこの美しい楽章を歌い、弦楽群と対話するように応える木管が冴え渡る。そして終楽章。冒頭からクリーヴランド管の完璧なアンサンブル。忙しいフレーズで合の手を入れるトランペット、第3楽章を回顧する木管群、いずれもこれ以上ないくらいに正確無比だ。

手持ちのボックスセットは、2013年夏に発売された盤で、ドイツでリマスタリングされたもの。かつてのEPICレーベル時代のやや硬い音質が改善され、広がりのあるワイドレンジな音に仕上がっている。各パートの分離もよく、独唱や合唱もクリア。コントラバスの動きもよく分かる。只今セール中で二千円で在庫ありとか。ベートーヴェン交響曲のリファレンスとしてこれ以上のものはないだろう。


リスト編ピアノソロによる第1楽章



ティーレマン&VPO



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スペイン物 <続き>


あっという間に師走十二月。身辺あれこれあるものの、どうでもいいような与太プログをきょうも継続しつつ何とか日々進行いたしませう。引き続きアクセス、ランキングバナークリック(最近ずっと二位確定だなあ)他よろしくお願いします。
さて、きのうの日曜日。久しぶりにまとまった時間、ギターを弾いた。まとまった時間というのは曖昧だが、午前2時間、午後3時間の計5時間ほど。カルカッシ25の練習曲を全曲弾き(一部はスラスラ、一部はギクシヤク)、バッハのチェロ組曲第1番(きのうはイェーツ版で)の各曲を確認しながら何度か通し、第2番を久々に拾い弾き、ジュリアーニの<英雄ソナタ>をその気になって弾き(弾けない!…)、そして少し前からのスペインLOVE状態を受けて、アルベニスの<カディス>をさらった。


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先日の記事でスペイン物は左手運指が難しいと書いたが、それを読んだ旧友Y氏からさっそく連絡があった。通常出回っているタレガやリョベートらの編曲ベースのもの以外に目を向けてみてはどうか、フォルテイア編は弾きやすいだろう、すでにパブリックドメインになっていて公立機関で公開されているものも多いので当たってみたら、とのことで以下の紹介があった。

◇ ワシントン大学のコレクション:フォルティア編のアルベニス
25曲ほどある。組曲スペインのお馴染みの曲は#21以降に。アンダーラインのリンクをクリックし、次頁の<View images of this title>をクリック。
◇ リッシェル・コレクション。アルベニスのフォルティア編。


ことのついでに、古典期クラシックギターの蔵譜コレクションで主なものを以下に記しておく。
◇スウェーデンのボイエ・コレクション。
画面下方にアルファベットの作曲者名分類があるので、それをクリック。
Carl Oscar Boije (1849-1923)の蔵譜。クラシックギターのコレクションでは最大級。19世紀ギター黄金期の多くを網羅。
◇コペンハーゲン王立図書館:リッシェル&ビルケット=スミス・コレクション
検索枠に作曲者名や曲名を入れて<search>をクリック。ボイエコレクションとリッシェルコレクションで、多くの古典派ギター曲は網羅できる。
◇DELCAMP。
クラシックギター蔵譜の総合案内ポータル。トップページの右側に作曲家名が、また左側には様々な楽譜コレクションへのリンクが。
◇IMSLP。
お馴染みのクラシック全般の楽譜ライブラリ。ギター曲も少なからずある。

ある曲、ある作曲家の作品にこだわり、曲を暗譜(譜面を覚えるというより指使いを覚えるといった方が適当か)して一曲入魂、広く楽譜にあたって弾き散らかすことをしない輩も多い。それはそれで一面の見識ではあるが、一方で読譜力・初見力・アンサンブルへの即時対応力といった面から、多くの曲の楽譜をみて、ともかく弾くという練習も一理ありと考える。 とはいうものの、ぼくなどは弾き散らかすばかりで、暗譜で弾き通せる曲は相変わらず皆無。これはこれで問題だが…


アルベニスの組曲スペインから<カディス>。
イ長調版の演奏。あらためてYouTubeの音源をあれこれみると、圧倒的にイ長調版の演奏が多いことに気付いた。やはりニ長調版は弾くにくいのか。



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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