桜 2015



きょう都内での仕事の折、「与太さん、近くに桜の名所があるので、昼休みにちょっと行ってみない?」と誘われた。昼少し前に外へ出て、まずは近所の定食屋へ。メンチカツ定食ライス中盛りで腹ごしらえを済ませて、近くを流れる川の堰堤に出た。


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1キロ近くに渡って川の両岸に立派な枝ぶりの桜が並ぶ。周辺をビルに囲まれ、整然と並んだ桜並木は、余りに整いすぎていて風情を通り越しているかもしれないが、見事なことにかわりはない。夕方にはビルの明かりの下で美しく映える。桜というと、どうしても梶井基次郎を思い出してしまうのだが、都会の桜にはそんなデカダンスを差し挟むこともない。31日のきょうが最後という職場の同僚が挨拶に回ってきた。そして明日にはまた新人を迎える。めぐる年月。それぞれの春だ。


クラシックギター弾きにはお馴染みの、横尾幸弘作曲<さくら変奏曲>という曲がある。あまりにベタな曲想で、聴くのも弾くのも少々気恥ずかしくなるのだが、外国人にはすこぶる人気があって、ジョン・ウィリアムス、セルシェルなども録音している。20代の頃、ある外国人の集まりでこの曲を弾いたのだが、メチャクチャうけた記憶がある。



音楽としては、こちらの方がグッとくる。



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メンデルスゾーン<エリア>



三月最後の日曜日。朝から穏やかに晴れていたが、午後から雲が出始めた。晩には雨になりそうな気配だ。当地の桜は開花はしたものの、咲き具合は場所によってまちまち。近所のショッピングセンター横に連なる桜並木はまだ二、三分といったところだ。
さて、きょうは昼をはさんで野暮用外出。帰宅後ひと息ついてから、オーディオのスイッチを入れ、こんな盤を取り出した。


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メンデルゾーンのオラトリオ<エリア>作品70。ミシェル・コルボ 指揮リスボン・グルベンキアン管弦楽団と合唱団による演奏。1983年録音。手持ちの盤は1985年初出時のLP3枚組セット。確か都内の中古レコード店で買い求めた。1450円の値札がまだ付いている。LPからCDへの移行初期のパッケージということだろうが、CD用の解説書がそのままLPボックスに収まっている。この曲に最初に触れたのはサヴァリッシュ&N響の演奏をテレビで観たときだったと記憶している。その後随分と年月が経ってからようやくこのコルボ盤を手に入れた。2時間を要する大曲。実は少し前から時間をみつけてチョボチョボ聴いていたのだが、きょう日曜午後、全編通してゆっくり聴くことができた。

手元にある音盤数千枚の中にあって声楽・合唱・宗教曲の盤は著しく少ない。我ながらいかに偏った聴き方をしているか、今更ながらに溜め息が出るほどだ。当然、宗教曲についてのインプットも皆無に等しい。もちろんマタイもロ短調もモツレクも若い頃から聴いてはきたが、もっぱら器楽的に聴くに留まっている。歌われている歌詞も物語性もほんの聞きかじり程度でお茶を濁している次第で、熱心な愛好家からすれば話にならない体たらくだ。それでも宗教声楽曲のもつ独自の響きには惹かれるものがあって、ときどき聴く。

メンデルスゾーンの多くの偉業の中にバッハ再興がある。バッハからは充実した構成と緻密な対位法を、そしてヘンデルからは大規模なドラマ性を学んだと言われる。彼がいなかったら19世紀から今日に至るバッハ演奏の系譜は随分と違ったものになっていただろう。この<エリア>はそうしたメンデルスゾーンのバッハそしてバロック音楽様式への深い理解と、ぼくらがメンデルスゾーンという名からイメージする初期ロマン派らしさとが最良の形で結実した傑作だ。冒頭のエリア(バス)が歌う序奏に続く序曲から充実した響きに包まれる。速いテンポのフーガが展開し、その頂点で合唱が加わる瞬間は鳥肌が立ちそうになる。以降も美しいアリアと素晴らしい合唱が一切の弛緩なく続く。

指揮者のミシェル・コルボは様々な合唱作品で名演を残した。この盤で歌っているリスボン・グルベンキア合唱団の指揮者も長らく務め、同管弦楽団と一緒にいくつかの録音を残している。独唱陣はソプラノ:ラシェル・ヤカール、メゾソプラノ:ブリジット・バルレイス、テノール(ステファノ他):マルクス・シェーファー、バリトン(パウロ):トーマス・ハンプソンという布陣。演奏は大仰な表現の一切ない、室内楽的ともいえるもの。もっと大規模なオケを鳴らし切る演奏も感動的だが、この盤の楚々とした表情もとてもいい。<エリア>というと、メンデルスゾーンとゆかりの深いライプツィッヒゲヴァントハウス管がサヴァリッシュ、マズア、ブロムシュテットらと、それぞれの時代の録音を残している。機会があれば聴いてみたい。


ダニエル・ガッティ指揮フランス国立管とフランス放送合唱団による全曲。2014年6月とのこと。
序曲(1分03秒~)に続く第1曲<主よ助けたまえ…>(4分36秒~)から圧倒的な高揚感。 長い曲だが最初と最後の5分間だけでもどうぞ。



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ゴアテックス



冬から早春、そしてまもなく春爛漫。冬のコートも脱いで、春らしく軽装で通勤といきたいところだが、朝晩はまだ時折り冷え込む。そんなときにと思って、軽めのコートを手に入れた。実はこの時期に羽織る適当なコートを持ち合わせず、不自由していたのだが、これから雨の多い時期にもなるし、レインコートと兼用できればいいなあと物色していたところ、ちょうそいいものを見つけた。 機能性素材ゴアテックスを使ったコート。マーガレットハウエル社製。ナイロン素材一枚の薄いコートだが、風よけと雨よけの機能性は十分。ステンカラーのボックススタイルもオーソドクス。色はダークネイビー。スーツでもカジュアルでもOKだ。


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ゴアテックスが世に出てからすでに30年以上が経つ。ぼくが山登りをしていた20代の頃に出回り始めた。当時、貧乏学生あがりでろくな装備もなく山に登っていて、雨に見舞われるとビニール製の雨合羽を着込んだ。当然雨は防げるが、身体からの発汗がこもってびしょぬれになった。着ようが着まいが同じ状態という情けなさ。そこに登場したゴアテックス素材は、水が通さないが水蒸気は通すという画期的な機能性で、あっという間にアウトドアウェアとして定着した。その後山登りも縁遠くなり、ゴアテックスの性能を体験することもなくきたが、先に記した通り、今更ながら試してみようかなと…
実はコートの先立ち、ゴアテックス素材を使った靴を昨年から履き始めていた。こちらはすでに何度かの実戦体験があって、なるほどと感心する性能だった。コートは先週から着用しているが、まだ雨の日は無い。こうなると雨が降るのが楽しみになってくる。


ゴアテックスのプロモーションビデオ。



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ピアソラ@新杉田



過日、横浜郊外のレストランで開かれたランチタイムコンサートに行ってきた。
フルート&チェロ両刀使いの知人から、「ギター・チェロ・フルートのアンサンブルが聴けるが、与太さん行く?」との誘いがあって、その知人といつものチェロ相方の三人、以前ブログ記事にも演奏を載せた例のPorroの三重奏(モーツァルトVnソナタホ短調のアレンジ)をやったメンバーで聴きに行った。


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その日はちょうど年度末で仕事が一段落していたこともあって休暇を取り、のんびりと演奏と食事を楽しんできた。演奏が行われたのはレストラン<パレ・ド・バルブ>という店。横浜から何駅か先のJR新杉田という駅近くにある。店内ではしばしばイヴェントが開いていて、毎月ランチタイムのコンサートではギター関連もしばしば取り上げられる様子。この日も予約席だけで40名ほど、ほほ満席の盛況だった。ピアソラばかり40分ほど演奏があつて、そのあと食事。演奏されたのは…

 チキリン・デ・バチン(FL,Vc&Gr)
 タンゴの歴史(FL&Gr)
 オブリヴイオン(FL,Vc&Grト
 リベルタンゴ(FL,Vc&Gr)
 たのうち惠美(Vc)、吉野裕子(FL)、篠原正志(Gr)

…というお馴染みのピアソラ定番曲。<チキリン・デ・バチン>はギタリスト國松竜次氏が公開している楽譜のものを弾いたことがあるし、<タンゴの歴史>はチェロ相方と一度遊んだことがある。<オブリヴィオン>と<リベルタンゴ>も、顔を突っ込んでいる隣り町のマンドリン楽団で取り上げた。楽譜を眺めて弾いたことがある曲を聴く側にまわって鑑賞すると、どうしてもあそこはどう弾いているのかという弾き手側の立場になってしまい、ときとしてリラックスして音楽そのものを楽しむ気分でなくなることがある。今回も<タンゴの歴史>に関してギターの難所を篠原さんがどんな風に弾くのか少々気にはなったのだが、幸いランチコンサートという気安い雰囲気と演奏者三名のリラックスした様子もあって、純粋に聴く側で楽しむことができた。

<タンゴの歴史>は4曲を逆順、つまり第4曲「現代のコンサート」から時代をさかのぼるように、「ナイトクラブ1960」「カフェ1939」そして最後に「ボーデル1900」が演奏された。おそらく「現在のコンサート」が一般的視点からは馴染みにくい曲想であることから冒頭にし、終止感の強い「ボーデル1900」でフィニッシュという演出上の配慮だろう。ギターもフルートも難所が続くことに加え、折からの好天で背後から強い陽射しが当ることもあって、演奏者のお二人はいつもの二倍はエネルギーを消費しただろう。(お疲れ様でした…)
<タンゴの歴史>以外はチェロのたのうち惠美さんが加わったトリオ編成。チェロが入ると音の厚みと表現の幅が広がり、音楽が俄然豊かに響く。ギターの前にはマイクが置かれ、ごくごく控え目にPAを入れていたが不自然さはない。ぼくはほとんど演奏者の目前の席で聴いていたが、少し遅れて来て部屋の後ろで聴いていた知人の感想では、バランスもよく音もよく通っていたとのことだった。

演奏メンバーは<たのシック>という企画グループとして、様々なアンサンブルのリクエストに応えているようだ。たのうち惠美さん、吉野裕子さんは初めて接したが、ギターの篠原正志さんはギターデュオ他、様々なアンサンブルもこなしているベテランで、当地へもしばしば来演している。演奏終了後は、三名のメンバーも食事に席に加わり、ぼくらも気安く話を交わすことができた。ぼくらもアマチュアとして同じ楽器のアンサンブルを楽しんでいると言うと、ぜひきょう演奏した曲も取り上げてほしいとエールを送ってくれた。


<チキリン・デ・バチン>國松竜次氏の演奏。


帰りがけに篠原さんから<風花が舞う日>という朗読DVDブックをいただいた。YouTubeにその一部があったので張っておこう。原作者の高橋徹氏自身が作曲したギター曲を篠原さんが演奏している。



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A級プリメインアンプ頂上対決!



先日のCDプレイヤーの記事にも書いたが、オーディオ機器の音質は、エネルギー変換に関るトランスデューサ部であるスピーカーとカートリッジに大きく支配される。その中間で電気信号の処理と増幅をつかさどるアンプの影響力は相対的には小さい。他方、スピーカーやカートリッジを構成する部品点数に比べ、アンプのそれは桁違いに多く、また実際の操作で人間とのインターフェースとなるのもアンプの操作部だ。いきおい、その存在は音質への影響度ほどには無視できなくなり、細かな回路構成、操作性やその感触などの感性ポイントが気になってくる。つまり、アンプ選びは実質的な性能追及より<お楽しみ>的要素が強いように感じる。実は以前から気になっていたアンプがあって、機会があればじっくり検分したいと思っていた。思いはいつかは通じるもの。先日そのアンプを使う機会を得て、当方所有の現用機ラックスマン社L-570と比較試聴することができた。備忘を兼ねて、その結果を記しておこう。

借用したのは同じラックスマンのL-590A2。ベースモデルのL-590Aが同社設立80周年記念モデルとして2005年に発売され、ほんのわずかなマイナーチェンジを受けて2007年に590A2となった。その後現行機590AXが筐体他のモデルチェンジを受けて2010年に出ている。10年間の変遷があるのもの、終段A級増幅による同社プリメインアンプのトップモデルとしてのポジションは変わらない。

L-590A2
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横幅467mm重量27キロの堂々たる存在感とシーリングパネルによる洗練されたデザイン。シルバーパネルに映えるアンバー色バックライトに照らし出された二つのメーターを見ていると、音量ボリュームを0dBまで上げ、<春の祭典>あたりでメーターの針を目盛のレッドゾーンまで叩き込みたくなる(よい子は真似をしてはいけません)。いやいや、そんな粗野な聴き方は野暮だ。清涼感あふれるバロックのチェンバーオケを控えめの音量で聴こう。と、まあ、そういう情緒的なイメージ(妄想か)が湧いてくるモデルだ。出力はA級30W。もちろん強力な電源部のおかげで、数値以上の出力でも破綻することはない。スピーカーの2系統切換にヘッドフォン出力、プリとメインの分離、録音機器の2系統制御にトーンコントロールやラウドネスコントロール、フォノ入力はMM/MC対応等々。一体型プリメインアンプが伝統的に備えている機能をすべて搭載。これはラックスマン社のプリメイン機ラインナップのすべてに共通している。

L-570
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迎え撃つ現有機L-570はバブル最盛期の1989年、それ以前から続く同社A級アンプの最終形と銘打って発売された。横幅は標準的な438mm。重量は30キロに及ぶ。入力切換のプッシュスイッチ群と音量調整等の従来型丸型ノブとが共存し、シャンパンゴールドのパネル色と相まって、今となってはレトロモダンな雰囲気を醸し出す。出力はA級50W。電源部は590A2劣らず強力で、出力インピーダンスに対してリニアに追従し、4オーム負荷で100W、2オーム負荷で200Wを叩き出す。音質にいささかでも悪影響を与える要素は徹底的に排除され、スピーカー出力切換やヘッドフォン出力、トーンコントロールやプリメインの分離等はない。一方で、まだLP愛好家も多かった時代背景もあって、フォノ入力に関しては徹底した高音質化が図られている。MM/MC独立したイコライザー回路を用意し、しかもその回路中のトランジスタもすべてA級動作という念の入れようだ。

さて能書きはこのくらいにして結論を急ごう。付加機能やデザインは使う人の要不要と感性で価値が変わるだろうから、ここは音のみに絞って結論を記す。

まずラインレベルのCDでの音質だ。これは当初の予想通り大差はない。いずれのアンプも何の不足もないと言っていい。しかしわずかな違いは感じた。音への影響度が少ないアンプにおいては、このわずかな違いは実は大きな違いであって、人によっては決定的な要素となるかもしれない。ラインレベル入力レベルでのSNは同等か古い570がやや優れる。570のノイズは、音量調整ノブを通常よりやや高めの位置にセットし、音圧感度91dBのタンノイに耳を付けてみると、サァーという違和感のないホワイトノイズをごくわずかに確認できるレベル。一方の590A2はノイズの音色にやや濁ったような違和感を覚える要素があって、結果的に570よりも耳につく感じがした。しかし、いずれもCDを聴くにあたり障害になるレベルではない。音質は全域でよく調和し滑らかな印象の570に対して、590A2はメリハリ感が強調される。フォルテもピアノも元気がいい。極端な表現をすると、590A2の音は最近の若年層向けJPOP録音のように音が圧縮されたかのように平板に響く。570の音の滑らかさは、かつての真空管式プリメインアンプSQ38FDに通じる。SQ38FDは以前、マーク2モデルをしばらく使ったことがあり、よく覚えている。最初に音出しをしたときは、そのメロウな音色に驚いた記憶がある。残念ながらシーメンス式スイッチの接触不良に泣かされたのと、出力管50CA10のメンテ用予備確保に懸念を感じて手放した。結論として、CD等のラインレベル入力を聴く限りは、感性ポイントで選んで間違いはないと感じる。

つぎにフォノ入力を確認した。
CDではほぼ互角の勝負となった両機だが、フォノ入力では決定的な違いがあった。CDの枚数以上にレコードを抱える者としては、フォノ入力モードでの良し悪しは重要な評価ポイント。特にフォノ入力に関してぼくがもっとも神経をとがらせるのはSN比だ。先のCDでの比較同様、音量調整ノブを通常よりやや高めの位置にセットし、音圧感度91dBのタンノイに耳を付けて確認する。フォノ入力にはMC型としては低インピーダンスに属するオルトフォンSPU-Gをつないだ。ライン入力同様の違和感のないやや高音寄りのホワイトノイズがわずかに確認できる570に対し、590A2はスピーカーから2メートル半ほど離れたリスニングポジションでもはっきりとノイズが聴こえてくる。その音色は低域にもかなりの成分を含んでいるようで、低音側のトーンコントロールを回すとはっきりその増減がわかる。最初に何か不具合があるのかと思ったが、左右両チャンネルとも同レベル同音質のノイズが出てくるので、おそらく正常仕様範囲だろう。もちろんフォノ入力をMM側に切り替えるとノイズが低減し、リスニングポジションでの聴こえ方も許容範囲をなるが、一方の570はさらに静寂となり、その差は縮まらない。一般にはレコードを回して針を落とせば、レコード盤のトレースノイズに紛れ、アンプから出ているセットノイズがほぼマスクされる。しかし今回の590A2はMCポジションでやや大きめの音量にすると、完全にはマスクされきらない感があった。またノイズ以外の音質要素に関しては、ライン入力のCD試聴の印象がそのまま当てはまる。570のよく調和しかつ清涼感のある音色は文句なしだった。

カートリッジからの微小入力を一気に数十dB増幅するフォノイコライザアンプは昔から設計者泣かせであり、また腕の振るいどころでもあった。25年前の570はその点、まったくぬかりがない。先に記した通り、570ではMM/MC独立した回路構成。各段A級で構成し、かつ入念にゲイン配分を設定しているのに対し、590A2はフォノ入力をFETで受けたあとはオペアンプで一気に(無造作に)増幅。MM/MCの切替えは帰還抵抗を切替えて増幅度を変えて(安直に)対処している。それなりの音響用パーツを使っているとは思うが、570の念の入れ様に比べると旗色が悪い。ある関係者とこの辺りのことを話した際には、やはり時代背景の影響は大きく、以前ほどフォノ入力の処理に力点が置かれていないのだろうということになった。

いまだ色あせない名器L-570
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以上の通り、CDに関しては互角(但しぼくの好みは570)、フォノ入力に関しては570圧勝というのが今回の結論となった。ラックスマンの名誉のために付しておくが、同社のライバルメーカーであるA社製プリメインアンプでも、以前そのフォノ入力の処理で手を焼いたことがある。つまりフォノ入力の増幅は中々難しい技術ポイントだということだろう。また気にしないユーザーも多いようだが、音量調整ノブ(ボリューム)の操作感は、リモコン駆動が導入されボリューム後部に駆動モータが付属するようになって以来その感触は<あそび>が多く、グニャッとした妙に柔らかな感触になり、古いアンプのようなリジットにピシッと決まる感触がなくなった。その点でも570はそもそも構造がまったく異なり、回転式連続可変抵抗ではなく、多段抵抗切換式になっていて、その操作感は全くぼく好みだ。590A2に関しては、洗練されたデザインや万全の機能、A級アンプで心配な発熱も570に比べるとずっと少なく(出力50W対30Wの違いが大きい。単純計算で4割減)、長期使用にも不安がないなど、惹かれる点も多い。また590A系のユーザーからはそんなノイズが出るような状況はないという反論があるかもしれない。以上はあくまで今回の拙宅でのひとつのサンプルに過ぎないし、現ユーザーとして570への心情的なバイアスもかかっていることを付記しておく。同時に、現行のラックスマン社プリメインのみならず、アンプの導入検討している諸氏には、手持ちソースを勘案し、特にフォノ入力を重視する際はくれぐれも試聴・確認すること、また残留ノイズの確認は余程静寂な試聴室でもない限り難しいので、ヘッドフォンによる確認が可能ならば試みることをお薦めしたい。あるいは、そんなリスクにびくびくしたくなければ、デザインが気に入り、中古品もいとわないという前提で、整備済み美品中古のL-570が見つかれば、それが幸せへの近道だと断言したい。


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セルの<ハフナー>



週半ばの木曜日。朝晩はまだまだ肌寒いが、昼間の空気はすっかり春。同時に花粉もMAXだ。オフィスの中にいる間がいいが、ちょっと油断して無防備で外に出ると一気にやられる。最近は抗アレルギー薬も進歩しているので、さっさと飲めばいいのだが、医者に行くのが面倒なのと、症状もさほどでないことから、相変わらず原始的な日々を送っている。 さて、きょうは少々遅く9時少し前に帰宅。床に就くべき時間まであまりないが、少しだけと思い、こんな盤を取り出した。


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セル&クリーヴランド管によるモーツァルト交響曲集。年頭にアマゾンで少しまとめて手に入れたセルの盤の一つ。モーツァルトの交響曲第28、33、35、39~41番それと序曲が二つ。<フィガロ>と<劇場支配人>がCD2枚に収録されている。録音は1958年から1967年。DISC1を取り出して、第35番ニ長調<ハフナー>を聴くことにした。
モーツァルトの交響曲というと最初に聴くのは第40番、そして第41番。そのあとに36番以降。そんな感じだろうか。ぼくの場合も高校に入ってクラシックを聴き始めて間もない頃、最初に40番のレコードを手に入れた。そしてその盤でカップリングされていたのが第35番<ハフナー>だったことから、ぼくにとって<ハフナー>は40番についでもっとも早い時期から親しんできた曲だ。

セル&クリーヴランドの<ハフナー>はベートーヴェンやハイドン以上にハイテンション。第1楽章冒頭のトゥッティ主題から目覚ましい音で一気に立ち上がる。第2主題もあまりゆるむことなく提示される。弦も管も完璧なアンサンブル。音の一つ一つに活力があふれ、いま生まれたばかりのようなフレッシュさに満ちている。こうした特性は第1、3楽章で顕著、そして終楽章はそれに輪をかけるように圧倒的な推進力だ。
一昨年からセルの録音がまとめてリリースされているが、リマスタリングの成果は著しい。特にスピーカで聴いたときのフレッシュな高音域、全体をしっかり支える低音域、いずれも素晴らしい。他方、解像度の高いヘッドフォンで聴いていると、高音域の特にヴァイオリン群の音は滑らかさに欠け、少々ざらついていることがはっきりと分かってしまう。所々に入るプツプツといったノイズも耳につく。しかしこれは60年代初頭の、米国クラシックレーベルとしては当時格下だったEPICレーベルでの録音であることから、やむをえないと諦めるしかない。もちろん演奏そのものは、そうした録音上の僅かな不具合を補って余りある演奏だ。


この盤の音源。



ベーム&VPO。まったく別の曲のように聴こえる。



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新しいCDプレイヤー



先日CDプレイヤーを新調した。入手したのはDENON製DCD-1500RE。数機種のラインナップを持つ同社コンシューマ用CDプレイヤーの下から二つ目のモデル。まあ、エントリーモデルといっていい。これまで使っていたラックスマンの往年の名機D-500に音の不満があったわけではないのだが、PC音源をUSB経由で取り出すためのDACを物色中に、いっそCDプレイヤーのDACで兼用できれば機械を増やさず済むし、フィリップス製スウィングアーム式ピックアップの最終型を搭載しているD-500とはいえ、25年間の歳月でデジタル系回路の進歩もあることだろうし…といった複数の事情から入れ替えを決めた。ひとつ上位のモデル1650REも考えたのだが、発売が1500RE(2013年8月発売)より少し前で、USB経由のDSD再生に対応していないこと、また、日頃からアレコレとオーディオの講釈を言う割には、CDプレイヤーの音質を判別できる自信がないことを素直に認めようと観念したこともあって、あえて下のモデルを選んだ。おそらく1650REは年内にもモデルチャンジするのではないかと予想している。

DENON DCD-1500RE
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Luxman D-500
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外装ケース、CDトランスポートや電源トランスあたりがコスト相応のようだが、内部構造や基板構成などは整然としていて、このシリーズが十数年のロングランであることを感じさせる成熟した作りだ。また心臓部のデジタル信号処理部はほぼ上位モデルを継承している。その結果、USB・DACとして192KHz/24ビットまでのPCM、また2.8/5.6MHzのDSD再生が可能で、現時点の世間並みのスペックは満たしている。音は…前述したように、CD再生に関してはっきり指摘できるほどの変化は感じない(そもそも、そんなもんだろうと念入りな比較などしていないのだが)。操作性やレスポンスも特記すべきことはない。ノートPCにメーカーサイトからダウンロードしたドライバーを入れ、USBケーブルでCDプレイヤーに接続すると簡単に認識され、YouTube音源も随分改善された。<らじる★らじる>を起動すればNHKFMのストリーミング放送もほぼ仕様(HE・AAC・WMA形式48kbps)通りのまずまずの音で再生可能だ。また、パネル前面のUSB端子にはiPhoneが接続できる。オマケ程度と思っていたボリューム付ヘッドフォン出力はオペアンプ使用の簡単なものだろうが、インピーダンス300オームのゼンハイザーHD-800は問題なくドライブできて重宝する。


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昔から音質を決めるのはトランスジューサ部、つまり機械⇔電気のエネルギー変換部分と言われた。スピーカーやカートリッジによって音が一変するのはそのためだ。それに比して、オーディオ帯域の電気系統は素子と回路技術の進歩もあって差が極めて小さくなった。手の平に載る9800円デジタルアンプと子供の体重ほどある300万円超ハイエンドアナログアンプとが対等に勝負するようになったのだ。またカートリッジに相当するCDプレイヤーの光ピックアップ部も、後段のデジタル処理もあって優劣の差が縮まった。アンプとプレイヤー関しては、スペックや価格ランクではなく、使い勝手、デザイン、手触りといった感性ポイントで選んでほぼ間違いないと感じている。そういう意味で1500REは実用的な機械としては文句ない仕上がり。一方、感性ポイントではD-500の存在感には及ばず。25年前もモデルとはいえ当時のラックスマンフラグシップ機。明らかに格上の老兵D-500に戦力外通知を出すかどうか思案中だ。


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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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