メンテナンスに出していたアンプ:ラックスマンL-570がきのう無事帰還した。今回は故障でも不具合でもなく、予防保全として少し前に同社サービス部門へ依頼したもの。
1989年にラックスマンのフラグシップモデルとして発売され、現在でも愛好者が多いアンプだが、その音の良さと引き換えに、純A級動作からくる発熱による不具合に泣かされるケースも多い。もう四半世紀も経過しているモデルなので、普通の家電メーカーならとっくに修理不能で返されるところだ。しかし、そこは老舗メーカーのいいところ。ライバルのアキュフェーズ共々、可能な限り修理・メンテナンスの応じてくれる。特にこのモデルに関しては、数年前から保守キャンペーンを実施していて、必要と思われる処置をパッケージ化し、毎年夏になると受付けている。今回はまだそのタイミングではないが、同内容でメンテナンスをしてくれるというのでお願いすることにした。
本体重量30キロ超。一人で持つのも限界だ。


施した内容は以下の通り。
<基本作業>
・スピーカー出力リレー交換
・バランスボリューム交換
・パワーアンプ部電解コンデンサー交換
・パワーアンプ基板ハンダ修正
・全ボリューム・スイッチクリーニング
・アイドリング電流調整
・RCA端子・スピーカー端子クリーニング
・各部動作確認・点検
<追加作業>
・アルティメート・アッテネーターの分解清掃
・電源スイッチ交換
・スピーカー端子交換
・銅スチロールコンデンサー交換
本体の発熱でもっとも影響を受けるのがコンデンサ類と基板のハンダだ。コンデンサ類のうちスチロールコンデンサと、大型ブロックコンデンサを除くパワー部の電解コンデンサの交換、それと各基板のハンダ修正がこれに当る。コンデンサ類は通電中の温度環境によるもの、ハンダ劣化は温度サイクルによる膨張収縮で機械的なストレスが加わり次第に劣化して最終的にはハンダ部にクラックが入って接触不良に至るもの。ぼくも仕事で何度か出くわした経験がある。
整然としたレイアウト。MM/MC独立のイコライザ基板は厳重な銅シールド内に配置。

ツマミ類のローレット加工がマニア心をくすぐる。

幸い大型のブロックコンデンサや出力トランジスター、放熱の要であるヒートパイプなどは交換不要との判断で温存。これらについても必要に応じて代替品で対応するようだ。調整の中では出力段のアイドリング調整が肝。今回は動作点を少しAB級にシフトしてアイドリング電流を減らし、いくらかでも発熱を減らそうと思って、同社のメンテナンス担当者に相談したが、可能ではあるが、きちんとセッティングして放熱されていれば問題ないとのことで、これもオリジナル通りの動作点を維持することにした。
巨大なヒートパイプは当時のハイテク。パワー段のドライブ基板も左右独立。右chは本体下部に対象配置。

子供の拳ほどの大きさのアルティメートアッテネータと左右独立のプリアンプ段。

美しい佇まい…と自己満足

昨日の帰還から一夜明けて本日音出し。もちろん問題になるところはない。イコライザのSN比も変らず良好。内部もリフレッシュされ、本機が誇るアルティメイトアッテネータ(音量ボリューム)の感触も一段と良くなった。スピーカーポストも新型に交換され太いケーブルやバナナプラグにも対応可能。これでまたしばらくはアンプのことを気にせずに音楽を楽しめる日々が続くだろう。
★★追伸★★
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今週は雨まじりの寒い日が続いた。きょう土曜日はきのうの雨はあがったが、雲が垂れ込め、気温も相変わらず低い一日だった。昼をはさんで少し車を走らせて野暮用外出。夕方帰宅した頃には西の空に晴れ間がのぞいていたので、あすは天気回復するだろうか。
さて、先日NHKFM<きらクラ!>を聴いていたら、例のきらクラ・ドンの正解曲として、スメタナの<モルダウ>をセル&クリーヴランド管の演奏で流していた。移動中のヘッドフォンから流れるその素晴らしい演奏に接し、この曲の良さと難しさ、そしてセル&クリーヴランド管のうまさにあらためて感銘を受けた。今更ながらCDを手に入れようかと考えたのだが、ふと手持ちの盤にオリジナルがあったことを思い出した。

セル&クリーヴランド管による<ボヘミアン・カーニバル>と題されたLP。1963年、セル(1897-1970)楽壇生活50年を記念して録音された一連の録音のひとつ。手持ちの盤は1964年の国内盤。発売時期とライナーノーツの記述からすると国内初出盤と思われる。レーベルには米CBS傘下のEPICと記され、日本の販売はまだ<CBSソニー>になる前の日本コロンビア時代。はっきり記憶がないが、これも大阪出張の折に梅田の中古レコード店で手に入れたはずだ。アルバムタイトルに従い、以下の曲が収録されている。
スメタナ:交響詩<モルダウ>
スメタナ:オペラ<売られた花嫁>から3つの舞曲(ポルカ、フリアント、道化師の踊り)
ドヴォルザーク:序曲<謝肉祭>
ドヴォルザーク:スラヴ舞曲から4曲(作品46-1、3 72-2、7)
演奏はいずれも圧倒的な素晴らしさだ。このコンビの持ち味である完璧なアンサンブルだけでなく、ときにみせるロマンティックな表情に、これらの曲がハンガリー生まれのセルにとっては望郷の音楽でもあったことを強く感じる。
FMで聴いて感銘を受けたモルダウは、冒頭のフルートの掛け合いそしてクラリネットが加わってやがて弦に引き渡される下りだけ聴いても惚れ惚れする。アンサンブルのみならず音色までも完全に整い、同時にフレーズの隅々にまでしなやかに歌う。<売られた花嫁>から選ばれた舞曲やドヴォルザーク<謝肉祭>での活き活きしたリズムは、もうこれ以上のものはないと思うほどだ。同時に、こうした闊達な表現を決して速すぎないテンポで展開するところもセルの素晴らしさだ。これでテンポも煽るような設定だど、勢いだけのイケイケな演奏になりかねない。スラヴ舞曲でもテンポの切り替えが胸のすくように決まり、ライヴ感あふれる展開にスタジオセッションであることを忘れそうだ。
60年代のプレスではあるが音は予想以上にいい。高音域にやや硬さを感じるが、SN良好。コントラバスのピチカートも重量感十分に響き、オケの重量感も過不足ない。現在、この盤のカップリングによるCDは出ていないようだが、スメタナもドヴォルザークも異なるカップリングで入手可能だ。
この盤の音源で<モルダウ>
スラヴ舞曲ホ短調作品72-2。晩年1970年のEMI録音と思われる。
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花散らしの雨で気温も低く、ちょっとした寒の戻り。もっとも、どしや降りにならず、程々に降る雨は風情もあって悪くない。そんな中、通勤帰りもゴアテックスにしっかりガードされつつ9時過ぎに帰宅した。
実はちょっと事情あって、先週末から写真のミニコンポを引っ張り出して使っている。ビクターJVCと経営統合する前のケンウッド社製R-K700。随分前に一度紹介記事を書いたことがある。2008年、そろそろ生産終了かという時期に3万円ほどで手に入れた。この手のコンポとしては例外的にロングセラーだった。ソースとしてはAM/FMにCD。そしてこの時代の遺産ともいうべきMDのドライブも付いていて、ラジオやCDからの録音が可能。更にこのコンポを選んだ理由であるフォノ入力があって、数ミリボルトのMM型カートリッジが接続可能。デジタル入力はオプティカル入力が1系統あるが今風のUSB入力はない。総じて2000年代中庸のスペックだ。

このセットは現役時代から素性の良さで評判になっていた。販売もスピーカーがセットされておらず、お好きなスピーカーでどうぞという姿勢で、裏を返せば、どんなスピーカーでもそこそこ鳴らせますよという自信の現れでもあった。実際このセットでJBLの大型器を鳴らしている輩もいたし、ぼくも三菱2S-305を接続し、何の問題もなく音楽を楽しんだ経験がある。スピーカーの能率が80dB後半以上あれば、8畳程度の部屋で常識的な音量を出すのにパワー不足は感じない。音質も極めて真っ当で、意図的な色付けがなくSNも良好だ。
このセット、回路的に少々面白い構成を採っている。プリアンプ段が完全デジタル化され、トーンコントロールや付属のマイクロフォンを使った簡単なルームイコライゼイションをデジタル処理で実現している。一方パワー段はオーソドクスなアナログ構成。このルームイコライゼイションは中々の出来で、ホワイトノイズを間欠的に発しながら、部屋の影響からくる左右の音量差、周波数応答等を測定、補正してくれる。デジタル処理のおかげで、目立った音質劣化なく音の印象が一変するのには驚いた。
現在、オルトフォンSPU-Gを手持ちの昇圧トランスを通して、このセットのフォノ入力につないでいる。カートリッジ1個でこのセットが3台買えてしまうという、とんでもなくアンバランスなセッティングながら、接続したタンノイ:スターリングSEから出てくる音は実に素直で堅実。MC型に付きもののSNに悩まされることもない。SN比に関しては先日のA級アンプ頂上対決にこのセットを持ち込んでも、L-570といい勝負だったろう。唯一の難といえば、機械としての存在感、風格、そういう愛すべきメンタリティーを感じる要素は少ないことだろうか。もっとも、当時の他のミニコンポよりは大人のデザインで、かつスイッチやボリュームの操作感も良好だ。
昨今のミニコンポ事情は寡聞にして不案内。このモデルの後継機種も続いているようだが、その後のネットワークやハイレゾ等への対応で、各社のミニコンポも仕様変更の時期を迎えている。少なくてもフォノ入力を持つセットは皆無になるだろう。いずれ30キロもあるアンプは手に負えなくなるだろうから、そのときにこんな良心的なセットが残っていてほしいものだと思う。
★★追伸★★
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