セルの<マーラー第6>



五月最後の週末日曜日。きょうも関東地方は軒並み30℃超えの暑い一日。風強く湿度が差程でもなかったためか、体感する暑さはきのう程ではなく、ホッとした。夕方を過ぎて陽射しも傾いた頃になって、きのうに続きトワイライト音盤タイム。先日届いたセルの盤から、もっとも注目していた一枚を取り出した。


DSCN3780 (560x560)  szell_2015053122060917f.jpg


マーラーの交響曲第6番イ短調<悲劇的>。今回リリースされた盤は第4番とのカップリングで、それぞれがCD1枚に収められている。第6番はセル唯一の録音で、1967年10月にクリーヴランド管の本拠地セヴェランスホールで行われた演奏会のライヴ録音。ライナーノーツによると同年10月12、14、15日と、この曲が三回演奏され、この演奏はおそらく12日か14日のものとのこと。クリーヴランド管にとっても、そのときがこの曲の初演だったそうだ。

マーラーの第6交響曲は今でこそ録音はもちろん実演でもしばしば演奏されるが、60年代以前はマーラー直系のメンゲルベルクやワルター、クレンペラーなども録音を残していないほど演奏頻度は少なかった。そんな中、マーラー録音の少ないセルがこの曲を選んだのはどんな理由があったのだろうか。前述のようにクリーヴランド管としてまだ演奏していなかったということは大きい理由かもしれない。それと音楽として<悲劇的>のタイトル通りのストイックな雰囲気と堅固な構成感がセルの美意識にマッチしたのではないかと思う。

第1楽章冒頭からやや遅めのテンポで始まる。聴きなれたセッション録音のセルとは響きがかなり異なり、分厚い低弦群と打楽器群の強打がこの曲の重々しい曲想を際立たせる。対照的に優しく穏やかなフレーズになるとクリーヴランド管の木管群がピタリと整ったピッチとアーティキュレーションで美しく歌い、聴いていて惚れ惚れするほどだ。第2楽章スケルツォも第1楽章の印象をそのまま引継ぎ、この二つの楽章をセットとする当時の通例に従っているようだ。美しい第3楽章アンダンテも過度に歌い過ぎないところがセルらしい。多くのマーラー指揮者なら、アウフタクトを持つフレーズでは、そのアウフタクトからタメを作ってやや引きずるように次の小節頭に入るだろうが、セルはそうしない。ごくわずかにルバートをかけるものの、それはほとんど自然の呼吸の域を出ず、フレーズはもたれずスムースに流れていく。

ライヴ録音の制約もあって、録音の音質はセッション録音ほどの明瞭度は持たず、左右の広がりもやや乏しい。しかし、全体としては低音域が厚く、この曲で活躍する打楽器軍の迫力も十分だ。終楽章は圧倒的なエネルギー感に満ち、次々と繰り出されて終わることのないマーラーの分厚いスコアの響きが続く。ライブだけあって、全編にみなぎるエネルギー感と緊張感が素晴らしい。セルに鍛えられたクリーヴランド管の響きもまったく弛緩することなく、熱くなる終楽章でもアンサンブルは極上だ。終楽章の最後、一旦静寂になったあとに奏されるイ短調主和音の強烈な一撃には、思わず声をあげてしまうほど驚いてしまった。

セルのマーラー録音は4番、6番、10番のみ。先の通り、セルの美意識からしてそれは必然だったかもしれないが、せめて第5番をさらの残して欲しかったというのが正直な気持ちだ。


この盤の音源。全4楽章。



アバド&ルツェルン祝祭管による2006年のライヴ。ルツェルン祝祭管はザビーネ・マイヤー(CL)、ナターリヤ・グートマン(Vc)他豪華メンバー。第4楽章、例のハンマー一撃は1時間5分50秒過ぎと1時間10分30秒過ぎ。中間楽章は2003年にマーラー協会が宣言した通り、第2楽章アンダンテ、第3楽章スケルツォの順。



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

ソニー・ロリンズ<橋>



五月最後の週末土曜日。朝から快晴。気温がグングン上がる中、埼玉県川越市まで2時間ほど車を走らせ、縁結びで有名な川越氷川神社へ。<わたしの神棚・展>なる催しがきょうまでの日程で開かれていた。現代を代表する建築家、工芸作家、グラフィックデザイナーなど、十一人が生活の中で使う<神棚>を提案するもの。出展者は以下の通り。
赤木明登(塗師)、大治将典(手工業デザイナー)、川合優(木工家)、熊田剛祐(東屋)、小泉誠(家具デザイナー)、竹俣勇壱(金工作家)、辻和美(ガラス作家)、中村好文(建築家)、西浦裕太(木彫刻家)、堀道広(漫画家)、山口信博(グラフィックデザイナー)


koizumi_02-1.jpg  DSCN3751 (560x560)


日頃神も仏もなく気忙しく俗な生活を送っているが、ときにかつての典型的日本の家庭のごとく、朝に神棚を拝み、清々とした気持ちで日常に向かう習慣もいいものだと思う。規模からすればささやかな展示会ではあったが、現代人の生活空間と心模様を映すような作品に感心。こんな現代風の素朴な神棚なら近くに置いてみてもいいかなと思った。


DSCN3768 (559x560)


さて帰宅後一服し、陽も落ちかけた時刻になってトワイライト音盤タイム。ちょっと久しぶりにジャズを。 取り出したのはソニー・ロリンズ(1930-)の名作<橋>。1962年NY録音。ソニー・ロリンズ(ts)、ジム・ホール(gr)、ボブ・クランショウ(b)、ベン・ライリー(ds)、H・T・ソーンダース(ds)/#5。手持ちの盤は80年代初頭にミッドプライスで再発された国内盤。90年代半ばに御茶ノ水の中古レコード店で手に入れた。50年代半ばまで活躍し、その後活動が不安定になり一線から姿を消していたソニー・ロリンズが復活を遂げた盤として有名な一枚だ。復活に際してロリンズは、ニューヨークのイースト川に架かっている吊り橋<ウィリアムズバーグ橋>の上で人知れず練習を重ねたという。収録された自作<橋>およびアルバム・タイトルは、このことによる。収録曲は以下の通り。

side1 ウィザウト・ア・ソング/ホエア・アー・ユー/ジョン・S
side2 橋/ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド/ユー・ドゥ・サムシング・トゥ・ミー

当時すでにコルトレーンやオーネット・コールマンなどの新しいジャズの潮流がメインになりつつあったが、このアルバムは全編きわめてオーソドクスなジャズイディオムで通されている。ピアノではなくギターによるバッキングは柔らかなトーンを生み出し、ソニー・ロリンズの太く滑らかに歌うサックスとよく合う。当時のステレオ録音によくあった左右完全分離の楽器配置で、ソニー・ロリンズのサックスはもっぱら右チャンネルから、リズムセクションは左チャンネルから聴こえてくる。ボブ・クランショウ奏するベースがたっぷりと響き、ピアノレスながらエネルギー感の不足はなく、全体のバランスや帯域感も良好だ。

タイトルチューンの<橋>はリズムが複雑に交錯する中、高速スケールが続き、難易度の高さをうかがわせるが、ソニー・ロリンズの吹きぶりは終始落ち着きと柔軟さを失わない。ビリー・ホリデイ作のバラード<ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド>では、まさに人の息づかいのようなトーンで、神棚無くしても心の底のもやもやが静まってくる。このアルバム以降、現在も活躍するソニー・ロリンズの復活を記念するこのアルバム。当時30代になったばかりの彼のジャケットポートレートも聴こえてくる音楽同様に、どこか静けさと確信を感じさせる。


この盤の全曲。



<橋>。このアルバム発売当時のものだろうか。ソニー・ロリンズはアルバムジャケットと同じ柄の上着を着ている。



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

癒しのピアノ曲集



天気図を見ると、途切れ途切れながらも梅雨前線が日本列島の南に見え隠れするようになってきた。きょうの関東地方は陽射しこそ少なかったが湿度高く蒸し暑い一日。五月も今週いっぱいで終わる。六月になるとそろそろ梅雨入りだ。
さて今週も後半を過ぎ、あすは金曜日。週明けにコンサートに行ったこともあって、今週はそれ以外音楽を聴いていなかったが、今夜は四日ぶりのアンプの灯を入れた。さて何を聴こうかと思案。ムッとする梅雨入り前の夜に相応しいかと、こんな盤を取り出した。


DSCN3694 (560x560)


写真の4枚。左上から時計回りに…
 グリーグ/抒情小品集
 ブルーベック/夜想曲集
 タンスマン/ピアノ作品集
 レスピーギ/ピアノ作品集

ブログタイトルに<癒しのピアノ曲集>などど、恥ずかしくなるようなタイトルを付けてしまったのだが、いずれの盤も分かりやすく言えばそんな曲集だ。ぼくの個人的な嗜好で<癒し>という言葉は極力使いたくないのだが、きょうばかりは仕方なく。まあ、和みの…、ロマンティックな…、心静まる…でも何でもいい。夜のしじまに一人心穏やかに聴く音楽だ。取り出した4枚のアルバムはいずれも過去にそれぞれ記事に書いている。きょうはそれをまとめてドンという次第。

◆まずグリーグの抒情小曲集。
弾いているのはロシア出身で現在京都在住のイリーナ・メジューエワ(1975-)。グリーグの抒情小曲集は全部で66曲からなっていて、この盤ではそのうち20曲が選ばれている。グリーグはこの抒情小曲集を管弦楽にも編曲していて、こちらもよく演奏される。どの曲も長くても数分の、まさに小曲集だ。ほとんどの曲にタイトルが付けられている。「妖精の踊り」「子守唄」「夜想曲」「郷愁」…といった具合だ。そしてのそのタイトルからイメージする光景が、ピアノの多彩な表現を通して浮かんでくる。メジューエワの演奏は、弱音を主体にして、ガラス細工のような小品の一つ一つをいとおしむかのように丁寧に弾いている。録音は2000年3月、音響が優れていることからしばしば録音セッションにも使われる当地群馬県みどり市の笠懸野文化ホールで行われている。

メランコリーな<郷愁>作品57-6


<あなたのおそばに>作品68-3


◆次いでブルーベックの夜想曲集。
もっぱら5拍子のジャズ名曲テイク・ファイヴの作曲者としてその名が知られているが、実際は中々多彩な活動をし、クラシックの素養ももちろんあった人。フランスのミヨーに師事していたこともあるそうだから本格的だ。このナクソス盤にはクラシカルなスタイルで夜想曲として作られた小品が25曲収められている。ジョン・サーモンというピアニストが弾き、2005年に録音されている。いずれも1、2分、長くても5分とかからない規模の曲。「子供たちと粋な大人たちのために」書かれた作品だそうだ。ときにやさしく、ときにノスタルジックに、ときにジャジーに、様々な表情を持った小品群が、夜想曲というコンセプトのもとに、静寂と安息のイメージをもって続く。アメリカのサティーとも言われたそうだが、さもありなんという曲調。

5曲が弾かれている。



◆次はタンスマンのピアノ曲集。
ポーランド生まれのアレクサンドル・タンスマンによるピアノ作品集。エリアンヌ・レイエというベルギー生まれのピアニストによる演奏。2013年録音。 タンスマンはクラシックの作曲家の中ではギター弾きに馴染みの深い作曲家だろう。ぼくも学生時代には<ポーランド風組曲>や、音友社セゴヴィアアルバムにあった<ダンスポンポーザ>など弾いて楽しんだ。ポーランドの民族的要素と、新古典主義的手法とが程よくミックスされていて、親しみやすくも新鮮な響きがあって好きだった。この盤ではタンスマンの持ついくつかの典型的な作風が示されている。ネオ・バロック調の「古風な様式による舞踏組曲」や、新古典主義風ながらロマン派の色濃い「5つの印象」、一筆書きの趣きの即興的な「アラベスク」、悲痛な心情告白にも似た「バラード」、8つの歌はバッハへのオマージュとして書かれている。

タンスマンのピアノ曲がいくつかまとまってアップされている。



◆最後にレスピーギのピアノ作品集。
一般のクラシックファンにとってレスピーギと言えば、管弦楽曲のローマ三部作、それと弦楽合奏のための『リュートのための古風な舞曲とアリア』あたりが思い浮かぶ。また他の近代ラテン系作曲家と同様、彼もフランス印象派の影響を受けた作風を示し、この盤に収められているいくつかの小品などはその成果だろう。6つの小品も粒揃いの美しさと多彩な表現。ワルツは可憐だし、夜想曲は深刻にならない程度に心を沈静させてくれる。どの曲もローマ三部作の色彩的な管弦楽曲からは想像しにくい曲想だ。美しくが甘すぎず、ときに渋さもただよう。これからの季節、夏の夜半に聴くもよし、

6つの小品から「優しいワルツ」。仏印象派の影響を受けた作風。サティーを思わせるサロン風小品だ。


6つの小品から<カノン>


昨今、自称音楽好きの中にも、カフェで流れるようなジャジーな曲やボサノバ調アレンジの曲などを「オシャレ~!」と言ってはばからない向きも多いが、あまりに子供っぽく、気恥ずかしい。ラヴェルやドビュッシーの弦四など流れていたら、心からオシャレだなあと思うのだが…。まあ、そこまでコアにならずとも、近代クラシック作曲家の裏芸とも思われるこうしたアルバムから、ナイトキャップ代わりに数曲聴いて一日を終わるのは、粋な大人のたしなみとして、中々上等ではないだろうかと思うのだ。


★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

新日本フィル室内楽シリーズ#92 @すみだトリフォニー



週明け月曜日の昨日、都内での仕事を夕方までに終える。時計をみるとまだ夕方5時だ。こんなときサラリーマン同胞の常としてはガード下で一杯となるのだろうが、幸か不幸かぼくはまったく下戸の不調法。周囲に女子がいれば、季節柄、千疋屋で極上フルーツにでも誘いたいところだが、そんな企画も有り得ない。仕方なく、自分の手の内にある選択肢から、新日本フィルメンバーによる室内楽のコンサートに足を運ぶことにした。実は少し前、チェロ&フルート両刀使いの知人から「近々室内楽の演奏会があって行くつもりだ。たまたま与太さんがブログ記事に書いた曲が2曲とも取り上げられるぞ。」との情報を受け取っていたのだ。知人にメールすると、6時に錦糸町駅で待ち合わせようか、という段取りになった。


DSCN3693 (560x560)


JR錦糸町駅横のテナントビルで腹ごしらえ。エレベータからはスカイツリーが間近に迫る。知人と<健康ねた>プラス<弦楽器調弦における平均律と純正調のずれ>という程々に道楽オタクなオッサン会話を楽しみつつ、鯖塩焼き定食を完食して準備完了。歩いて程ない会場のすみだトリフォニーへ向かった。240名ほど収容の小ホールは7割の入り。団員によるプレトークがあって、定刻7時30分に客電が落ち団員登場となった。曲目は以下の通り。

===========================
テレマン/4つのヴァイオリンのための協奏曲から
   ト長調TWV40:201 ハ長調TWV40:203 ニ長調TWV40:202
ブラームス/弦楽五重奏曲第2番ト長調op.111
 一休憩-
メンデルスゾーン/弦楽八重奏曲変ホ長調op.20
---------------------------
崔文洙、佐々木絵理子、古日山倫世、松崎千鶴[ヴァイオリン]
高橋正人、脇屋冴子[ヴィオラ]
森澤泰、スティーヴン・フィナティ[チェロ]
2015年5月25日すみだトリフォニー小ホール
===========================

この演奏会に行こうと思ったのは他でもない、ブラームス弦五メンデルゾーン弦八が一晩で楽しめるからだ。弦楽四重奏はレギュラーの団体もあって、しばしば聴く機会があるだろうが、そこから編成を拡大した室内楽、しかもこの2曲の組み合わせとなると貴重な機会だろう。

最初のテレマンはオケや鍵盤楽器の伴奏なしのヴァイオリン4本だけによる協奏曲。今回演奏された3曲はいずれも<緩・急・緩・急>の4楽章からなる。高音パートだけの編成だが、冒頭から不協和音のぶつかり合いで始まったり、4本のヴァイオリンが互いに競ったり合わせたりと、変化に富んでいて飽きさせない。第1ヴァイオリンの崔文洙(チェ・ムンス)さん以外の三名は妙齢女性奏者でドレスも目に鮮やか。音響も視覚も華やかなプロローグとなった。
ついでブラームスの弦五第2番は少し前にブログ記事にも書いて、このところ何度か聴いている曲。ブラームス晩年の作品ながら、同時期の間奏曲や歌曲などにみられる枯淡の境地とは少し趣きを異にする。第1楽章冒頭から力強さあふれる展開。詠嘆調の第2楽章。ラプソディックな第3楽章と続き、終楽章では明るさも増す。Vn2・Va2・Vc1という編成からしても音響はやや高域寄りになって、同じブラームスの弦楽六重奏曲とは随分と異なる。またこの曲は室内楽にあって異例ともいえるほどVaが大活躍する。そしてVcも負けずに忙しく弓を運ぶ。聴いている側も音だけではなく視覚的にも手に汗握る展開だ。

休憩をはさんでメンデルスゾーン。ブラームスから一転、若やいだ明るいロマンティシズムに包まれる。演奏時間の半分を占める第1楽章は、何度聴いてもこれが16歳の青年の作とは信じがたい。提示部が繰り返えされて展開部へ。あえて言えばこの展開部が少々弱いと言えなくもないが、寡聞ながらこの頃初期ロマン派の作品は展開部がそれほど重くないケースも少なくないように感じる。それはともかく、八重奏という編成を駆使した構成はもちろん聴き応え十分だ。いかにもメンデルスゾーンらしい第3楽章のスケルツォに続く第4楽章がまた素晴らしい。テクニカルにも奏者の技量が最大限に発揮されるようなフレーズが展開する。緊張感を維持しつつコーダに入ってスリリングに全曲を終えた。

新日本フィルの弦楽セクションから、コンマス以下ベテランと新人交えたメンバーの弾きぶりは、見ているだけで練習の様子が分かるほど。フレーズを繰り返しつつ盛り上がってトゥッティを決める下りなどは、全員の身体の動きまで同期する。コンマス:崔さんの一頭抜きんでたアグレッシブな音、新人達の丁寧な弾きぶり、加えて印象的だったのは第2ヴァイオリン佐々木さん。メンデルスゾーンでは時に第1ヴァイオリンに寄ってハーモニーを合わせ、時にヴィオラと一緒に力強いフレーズを弾き、その度にアイコンタクトと身体のモーションで、つなぎ役としての第2ヴァイオリンの重要性がよく分かる弾きぶりだった。

地味な室内楽プログラムにも関わらず来場した200名ほどの聴衆からの拍手に応え、アンコールが演奏された。曲はショスタコーヴイツチ<弦楽八重奏のための2つの小品>から<スケルツォ>。ロマン派の薫り高いアンサンブルから一転して、テクニカルかつ緊張MAXの快演で大団円となった。
終演後、ロビーでワンコインパーティー。指揮者の上岡敏之氏の姿を見かけた。ぼくは先を急いで帰途に。この新日本フィル団員による室内楽シリーズ、7月には<短調のモーツアルト>と題された演奏会が予定されている(モーツァルト/弦楽四重奏曲第13番、ピアノ四重奏曲第1番、弦楽五重奏曲第4番)。魅力的なプログラム。少し先だが、こちらも時間を作って出向きたい。


メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲。通称メンパチ。



ブラームスの弦五第2。



アンコールで演奏されたショスタコーヴィッチ<弦楽八重奏のための2つの小品>から<スケルツォ>。
初期の前衛的作品。エネルギー爆発!ハチャメチャかつ痛快・爽快!


前奏曲を含む全2曲はこちら


★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

アラン・シヴィル(Hr)のモーツァルト



気付けば五月も下旬。週末日曜日、天候下り坂との予報だったが、雨もなく穏やかな一日だった。ただ南から入る湿った暖気の影響で気温、湿度とも高めで、少しムッとする天気。爽やかな五月晴れも終わり、ぼちぼち梅雨の前哨戦になる頃だ。そんな天気の変わり目に、気分だけは湿らないようにと、こんな盤を取り出した。


DSCN3691 (480x480)  DSCN3689 (480x480)


モーツァルトのホルン協奏曲4曲とコンサート・ロンドK.317を収めた1枚。アラン・シヴィルのホルンにルドルフ・ケンペ指揮ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団がバックを付けている。1966年録音。手持ちの盤はジャケット裏に1968年の文字があり、国内初出時盤を思われる。これも大阪出張の折に梅田の中古レコード店で買い求めた記憶がある。

ぼくは取り立てて管楽器ファンでもホルンファンでもないのだが、モーツァルトのホルン協奏曲に関しては手元に4枚のLPがある。きょう取り出したアラン・シヴィル&ケンペ盤、シヴィルの師匠にあたる夭折したデニス・ブレインとカラヤンの盤、バリー・タックウェル&マリナー盤、と英国系名手による3枚、それと懐かしの日本コロンビア・ダイアモンド1000シリーズの1枚。こちらはエルネスト・ミュールバッハという吹き手と、フランツ・バウアー・トイスル指揮ウィーンフォルクスオパー管というコンビ。モーツァルトのホルン協奏曲<命>というわけでもなく、たまたまの結果なのだが…

それはともかく、モーツァルトのホルン協奏曲ほど明るい喜びに満ちた曲はないと、ある本で読んだことがあるが、まったくその通りだ。相当落ち込んだときや、暗い気分のときにも、屈託のないのこれらのホルン協奏曲を聴くと、心を持ち直せる。どんな音楽でも、そのときどきの心の有り様に関わってくるだろうが、このモーツァルトのホルン協奏曲集は音楽としての<薬効著しい>の筆頭だと思う。
ホルンの音色にコメント出来るほどの知見はないが、このアラン・シヴィルの演奏は、伸びやかな歌いぶりながら終始落ち着いていて、心穏やかに聴ける。トマス・ビーチャムが創設したロイヤルフィルハーモニーと、ビーチャム亡きあと遺志を受けて同団の首席指揮者となったケンペの好サポートも渋めの音色でシヴィルのソロとよく合っている。


アラン・シヴィルによるクレンペラー&POとの演奏。1960年録音。



当代きっての名手とも言われるチェコ出身のホルン奏者:ラデク・バボラークと水戸室内管弦楽団による第4番K.495。



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

HP-A7



今年始めにプチ大人買いしたヘッドホン、ゼンハイザーシュアがようやく本格稼動に至った。本格稼動などと少々大仰だが、物色していたヘッドフォンアンプを調達し、まともに聴けるようになったという次第。現用のアンプ、ラックスマンL-570にはヘッドフォン出力がなく、一時は改造か、スピーカ出力にドロップ抵抗を入れたアダプターを付けようか、手持ちの球で久々に自作しようか、とアレコレ思案していたのだが、結局出来合いのものを買うという安直な選択となった。


DSCN3682 (480x480)  HP-A7.jpg


手に入れたのはフォステクス社HP-A7。入力はデジタル4系統(USB1、同軸1、光2)、アナログ1系統。デジタル系統の対応周波数は、同軸192KHz、他96KHzまで。出力はヘッドフォン標準プラグ2系統とRCA1系統。RCA出力は固定と可変を選べる。また2系統のヘッドフォン出力はゲイン設定が異なっている。デジタル出力も光1系統(S/PIF)がついている。2010年の発売から数年が経っていて、すでに主力機種としては次のモデルHP-A8にバトンタッチしている。スペックとしては現時点では平凡だし、最近流行りのDSD再生にも非対応。総じてデジタル系統の充実を図りながらも、アナログ系統も十分配慮されている印象。当初アナログ入力専用のものを探したが適当なものがなく、また音の評価についてネットでは随分とネガティブなコメントも散見されたが、中身を見る限り丁寧に作られ、パーツも程々に厳選されている様子だったので手を打つことにした。

手元においてじっくり聴いてみた限り、音質についての文句はない。比較対象もないのでそれ以上のコメントもないが、手持ちのゼンハイザーHP800やソニーCD900は十分ドライブ可能。音の傾向としては、よくポータブルヘッドフォンアンプで見受けられるような低音での作為感がなく、きわめて引き締まった低音を繰り出す。少々量感が少ないかなあと感じる程だが、分解能はすこぶる良好で、タンノイ:スターリングのややボケた低音に比べる対照的。これが本来ソースに入っていたバランスなのかと合点している。中高域も同様で分解能はいい。最近手に入れたセルのCDを何枚か聴いて、セルのうなり声や弦楽群の微妙なアインザッツが聴こえてくる。

レコードとCDの再生はアンプL-570のRECOUTから本機のアナログ入力に接続し、PCからは本機USB入力に接続という、ごく基本的なセットアップ。CDプレイヤーとのデジタル接続は未確認。そうでなくてもオーディオセットの裏側は配線ジャングルと化しているし、CDプレイヤーとはアナログ接続でも特段の不満はないので、当面この状態でいくつもりだ。


フォステクス担当者によるHP-A7の紹介。コメントの内容はぼくが実際に聴いてみた印象と同じだ。



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

セルの<ドヴォ7>



きのうの記事の写真でチラ見せ済みだが、アマゾンに注文していたセルのCDが先週末到着し、ボチボチ検分中だ。今回手に入れたのは以下のアルバム。このうち何曲かはLPでも持っているが、リマスタリングでの音質改善他も期待してあらためて手に入れた。

 R・シュトラウス/家庭交響曲、ホルン協奏曲、ドン・キホーテ、ドン・ファン他(2)
 ブルックナー/交響曲第3番・第8番(2)
 マーラー/交響曲第4番・第6番(2)
 ムソルグスキー/展覧会の絵、リムスキー・コルサコフ/スペイン奇想曲他(1)
 ドヴォルザーク/交響曲第7番・第8番、スメタナ/モルダウ他(2)
 ドヴォルザーク/スラブ舞曲全曲(1)※
 メンデルスゾーン/交響曲第4番、「真夏の夜の夢」他(1)※


DSCN3678 (480x480)  DSCN3667 (480x480)


カッコ内はCD枚数。※は今春ソニークラシカルから出た<Great Recordings 100>と称する千円盤シリーズ中のもの。他は少し前から出ているレギュラーのシリーズだが、こちらのも1枚もので千円ちょっと、2枚物で2千円を切る価格設定。他にブラームス交響曲全集シューマン交響曲全集モーツァルト交響曲選集、輸入盤のベートーヴェン交響曲全集ハイドン交響曲選集などもかなり廉価で出ていることもあって、現在セルのCDはもっとも手に入れやすい状況になっている。LP時代にセルの盤をまともに聴いていなかったぼくのような者には、好機到来という感じだ。

今夜その中からドヴォルザークの7番を取り出して聴いている。この2枚組のアルバムには7番の他、第8番、第9番<新世界から>、<モルダウ>と歌劇「売られた花嫁」から4曲が収録されている。
ドヴォルザークの第7番は人気の8番や9番に勝るとも劣らない名曲で、ぼく自身は8番や9番よりもこの7番を好む。ブラームスの3番に触発されて作られたこともあって、いわゆるボヘミア色は少し控えられ、ニ短調という調性もあってか、渋く古典的な風合いが素晴らしい。セルとクリーヴランドの演奏はいつもながら精緻なアンサンブルで隅々まで神経が行き届き、一切の弛緩を感じさせないものだ。セルの気合の入り方も尋常でないのか、第1楽章から時折り力の入ったトゥッティでは、振り下ろす指揮棒に合わせて出ていると思われるセルのうなり声も聴こえてきて、聴いているこちらも思わず手に汗握る緊張MAX状態になる。第1、第2楽章の力強く構築的な雰囲気もいいが、第3楽章のフリアントによるスケルツォ、そして終楽章では内に秘めるエネルギーとその放出がスタジオセッションとは思えないライヴ感あふれる音となって表出する。録音もかつてLP時代のネガティブな印象はなく、細部までくっきり録られている。低音レンジもコントラバス基音までしっかりと聴き取れ、このコンビの実力のほどを細部まで確認できる。


この盤の音源。第7番全曲。



ジョン・エリオット・ガーディナーがストックホルムフィルを振った演奏。残念ながら録音のため強奏部分で音が少々割れる。



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

カレンダー
04 | 2015/05 | 06
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -
最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
リンク
QRコード
QR
閲覧御礼(2010.10.01より)