初夏はブラ2
五月も半ば。今週は台風一過のあと30℃超えの真夏日もあって、すっかり初夏だ。幸い湿度は低く、うんざりする夏の暑さには至らずホッとしている。一週間、そこそこ真面目に働いて週末金曜日。8時過ぎに帰宅してひと息つき、三日ぶりにアンプの灯を入れた。ここ何年か、初夏のこの時期に聴く定番曲とでもいうべきこの盤を取り出ことにした。


ブラームス交響曲第2番ニ長調。手元にある十種は下らないこの曲の盤の中から、ベーム&ウィーンフィルのLP全集盤を引っ張り出した。1975年の録音。90年代終盤に御茶ノ水の中古レコード店で手に入れた。もうすっかりCD時代になりLP大放出期になっていた頃で、確か千数百円程だった。ふた昔前であれば、憧れの存在だったカートンボックス入りLP全集盤。今では中古店でも誰も見向きもしないだろう。
いつものLPリスニング時の音量レベルにアンプのボリュームをセットして静かに針を下ろす。かすかなトレースノイズに導かれて冒頭の低弦群によるD-A#-Dの主題が部屋に響く。レコード時代は、楽音がないときのトレースノイズが気にならないレベルというのが適正音量のひとつの目安だった。一方で、なるべく大きな音で迫力を感じたいことから、愛好家はオーディオセットの改善や、レコード盤のコンディション維持に腐心した。トレースノイズのないCDになってから、多くの音盤愛好家の視聴音量は確実に上昇した。つまりノイズがないことをいいことに、デカい音で聴くようになった。管弦楽はもちろん、リュートやチェンバロまで実際のイメージからかけ離れた音量で聴きがちだ。しかし、こうしてLPを聴くたびに適正音量の必要性をあらためて考える。日本の一般的住宅環境での適正音量はそう大きくない。
さてベーム&ウィーンフィルの盤。今更コメントも不要だろう。過去に何度か記事にもした。ひと言でいえば、楷書の味わい。PCのフォント設定でいえば、日本語の体裁として読みやすく見た目にも美しい<正楷書体><教科書体>といったところだろう。筆跡太からず細からず。姿勢を整え、襟を正し、崩れたところや表面的な見栄えから何か強く訴えるものはなく整然としている。そんな音楽だ。リズムは正確に刻まれ、メロディーは美しく自然に流れ、全体の響きは過不足ないバランスで響く。録音はやや硬質ともいえる引き締まった音質で、低音をたっぷりと響かせた同時代のカラヤン&BPOの音とはかなり違う。エンジニアは同じギュンター・ヘルマンスだが、録音会場の違い、そして何よりベームの音楽作りによるところが大きいだろう。カラヤンと比較しても意味のないことだが、フレーズをレガートにつなぎ、音に隙間がないカラヤン流とは対照的な音作りだ。このウィーンフィルとの録音に関しては、第1番はベルリンフィルとの旧録音がいい、4番ではもう少し詠嘆調に歌えないか、2番は70年代のライヴ盤がベストだ等々、必ずしも好評価ばかりではないことは承知している。しかし、40年以上もブラームスの交響曲を聴き、あれこれブツブツ言いながら様々な盤に触手を伸ばしてきて、ここに至って思うのだ。このベーム&VPO盤だけあればいいかなと。身辺整理して、ブラームスの交響曲を1セットだけ残しておくとしたら、このベーム&VPO盤かセル&クリーヴランド盤かというのが、目下の結論だ。
条件のいいベーム盤の音源が見当たらなかった。こちらはティーレマン&SKD。
終楽章コーダのトロンボーンとチューバのパート練習。
★★追伸★★
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