新日本フィル定期#543<ストラヴィンスキー三部作>



一昨日の週末金曜日。都内での仕事が夕方までに片付き、週末だしなぁ~と、その足でコンサートへ。その日折りよく、新日本フィルの定期があることを事前に確認していたのだ。5時過ぎに仕事先を出て、地下鉄を乗り継ぎJR錦糸町駅へ。雨もあがり、暑さも癒えて静かな梅雨の夕べ。時間もあるので隣接のターミナルビルで腹ごしらえをし、会場のすみだトリフォニーへ向かった。すみだトリフォニーは先月の室内楽演奏会からおよそひと月ぶりだ。


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プログラムは以下の通り。
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 ストラヴィンスキー/バレエ組曲『火の鳥』(1919年版)
 ストラヴィンスキー/バレエ音楽『ペトルーシュカ』(1947年版)
 ストラヴィンスキー/バレエ音楽『春の祭典』
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指揮:秋山和慶 ピアノ:三輪郁 管弦楽:新日本フィル
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ストラヴィンスキーの三部作を一夜に聴けるだけで、当夜の演奏会の価値は絶大だ。しかし同時に、指揮者やオケ団員にとって、そしてぼくら聴衆にも、魅力的ではあるが相当ハードなプログラムでもある。定刻の7時15分を少し回って団員がステージへ。チューニングの音と共に客電が落ち、指揮者秋山氏登場となった。

コントラバスの弱奏で<火の鳥>が始まる。オーディオセットで聴くときは冒頭のこのフレーズがどれほどリアルに聴こえるかで低音再生とSN比の確認ができるくだりだ。実演ではもちろんそんなことは気にする必要はない。音響良好なすみだトリフォニーの隅々まで、最低音が弱くしかし不気味に響き渡る。前半は各セクションの美しいソロを交え神秘的に進み、打楽器群の一撃と共に主役の火の鳥登場で一気に佳境へ。新日本フィルの高い合奏能力とダイナミズムで胸のすくような展開が続く。続く<ペトルーシュカ>ではピアノがステージ中央に移される。憧憬と素朴さ、バーバリズムが交錯しつつ、ピアノ付き幻想曲とでもいうべき展開もあって、終始飽きさせない曲だ。<火の鳥>以上に打楽器群が活躍。よくをいえば中間部に立て続けに現われるトランペットソロはもう一段切れが欲しかった。そういえば40年前、ニューヨークフィルの来日公演でこの曲を聴いた。そのときはバーンスタインとブーレーズが交代で振ったが、ぼくが聴いたときはブーレーズ。マイスタージンガー、ペトルーシュカ、そしてメンデルスゾーンのイタリアというプロだったのを思い出す。

休憩をはさんで<春の祭典>。この日の眼目はもちろん三部作を一度に楽しめるというところにあっただろうが、ぼくにとってはもう一つ、秋山和慶氏の指揮にあった。30年以上前から度々テレビでも目にし、そのタクトさばきは素人目にも素晴らしく鮮やかで美しく見えたものだ。75歳になった今も往時と変わりなく、当夜も複雑なストラヴィンスキーの管弦楽を鮮やかに振る姿に感銘を受けた。<春の祭典>の交錯するリズムの中で複雑なスコアの各パートに適確にアインザッツを送り、同時にマスの響きのバランスにも配慮する様がよく分かる。その結果、とかく迫力とノリだけが先行しそうなこの曲でも、まったく混濁感のない見通しのいい、整然とした演奏になっていた。もちろん、打楽器群の活躍、ベルアップしたホルン群の咆哮など、大編成の迫力にも不足なく、存分にストラヴィンスキーを堪能することができた。

当夜の演奏だけでも指揮者、団員には相当はハードワークだったと思うが、翌日20日はサントリーホールで、翌々日21日には多摩パルテノンでと、三日連続でこのプログラムを演奏する予定と知って驚いた。好演間違いなしを予感させる初日当夜の演奏だった。


この演奏会を前にした秋山氏へのインタヴュー。



<春の祭典>終曲。この曲の知名度を一層広めることになったモーリス・ベジャールによる振り付け。



昨今は地方のアマチュアオケもストラヴィンスキーを演奏する時代になった。富山シティーフィルという社会人オケによる<火の鳥>



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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