小林美樹(Vn)来演
きのう土曜の夜は群馬交響楽団(群響=グンキョウ)の演奏会へ。昨年夏以降、群響の演奏会もすっかりご無沙汰してしまっていて久しぶり。きのうのコンサートは本拠地高崎で行われる定期演奏会とは別枠の、いわゆる名曲コンサートとして県内各地で行われるものの一つ。ちょうど一年前は成田達輝(Vn)が、夏にはマキシミリアン・ホルヌング(Vc)がそれぞれ来演したときに聴きに行った。


今回は新進気鋭のヴァイオリニスト小林美樹が来演。華やかな若手女性奏者来演で前評判も高かったようで、拙宅から徒歩15分の前橋市民文化会館は満席。プログラムは以下の通り。冬のこの時期に相応しいというべきか、オールロシア物のプログラム。
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グリンカ:歌劇<ルスランとルドミュラ>序曲
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調
―休憩―
ムソルグスキー(ラベル編):組曲<展覧会の絵>
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小林美樹(Vn)
指揮:マティアス・バーメルト 管弦楽:群馬交響楽団
2016年1月16日 前橋市民文化会館
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小林美樹は2011年にヴィニャフスキーコンクールで第2位になり一躍注目を集めた若手奏者。いつも古めの音盤ばかり聴いていて、「音楽界の今」にまったく不案内なぼくは、この演奏会のポスターを見て、初めて彼女のことを知った。スイス生まれの指揮者:マティアス・バーメルトも、名前だけは見知っていたが手持ちの音盤には見当たらず。60年代後半にモーツァルテウム管弦楽団でオーボエ奏者を務め、その後渡米。セルやストコフスキーの指導を仰いだとのこと。マゼール時代のクリーヴランド管では常任指揮者の一人。広いレパートリーをもつと同時に音楽史上で埋もれた曲の発掘に取り組んでいる由。
定刻の18:30に団員登場。客電が落ちて、お馴染みの<ルスランとルドミュラ>序曲で開演となった。
華やかな開幕に相応しい<ルスランとルドミュラ>。快速調を狙う演奏ではムラヴィンスキーの快演を前にすると、いずれも顔色を失うのだが、きょうの演奏は別な行き方もあるのだなあと思わせるもの。速からず遅からずの中庸のテンポながら、冒頭からずっしりと重量感のある響き。具体的には低弦群を強調しかつ適度なアクセントを施すことで、落ち着きと重量感を与えているように感じた。ドイツ風のグリンカか。曲中2回出てくるチェロの流れるようなフレーズの2回目には音量を極端に落とすというギミックも披露するあたりは、指揮者バーメルトの演出だろう。
あいさつ代わりのグリンカのあとは、本日のお目当て小林美樹が登場。すらりとした姿と長い髪に深紅のロングドレスが映える。ちょうど二十代半ばとのことだが、ネットで見られる写真と比べるとずっと大人っぽく、すでにコンサートヴァイオリニストとしての貫禄させ備わっているように見えた。
立派なチャイコフスキー。国際コンクールで上位入賞するほどだから、そんなことは当たり前なのだろうが、余裕のある歌いっぷり、急速部での技巧、まったく不安がない。第1楽章はテンポ中庸でよく歌う。指揮者のバーメルトは中間部のalla polaccaでテンポを落とし、グリンカで見られた重量感を感じさせる解釈だ。第2楽章はやや控え目な抑揚で品格が高い。第3楽章は一気にテンポを上げて入る。しばしば省略される主題の繰り返し部はすべて繰り返し有り。ソロとオケの受け渡しもスムースに進み、最後の掛け合いでは一層テンポを上げて白熱しつつ大団円となった。鳴り止まぬ拍手に応え、アンコールとしてクライスラーの<レチタチーヴォ・スケルツォ>が演奏された。
休憩はさんで後半のムソルグスキー。当夜のオケは12型。さほど大きくはない会場の前橋市民文化会館では過不足ない編成で、ステージ上には通常の楽器群に加えて各種の打楽器群、ハープ、チェレスタなどがところ狭しとならぶ。指揮者のバーメルトはソロとの合わせが必要なチャイコフスキー以外すべて暗譜で指揮。<展覧会の絵>もすっかり手の内のレパートリーなのだろう。テンポ、バランスなど違和感のないもので、曲全体安定した運びだ。

<S・ゴールドベルクとシュミーレ>のトランペットも好演。問題になる例の箇所(写真)はシャープ付きで奏され、また終曲<キエフの大門>後半のグランカッサは他のトゥッティの拍頭に合せて打たれた。合奏全体に弦楽を主体にした低重心の解釈はグリンカと共通で、どうやらバーメルトの個性のようだ。 ブラーヴォ入りの拍手に応え、チャイコフスキーVn協奏曲第3楽章と同じリズムの、くるみ割り人形<トレパーク>が奏された。
ちょっと濃い目のロシアンナイト。会場の熱気を身体に残しつつ、凍てつく冬の道を家路へと急いだ。
2011年ヴィニャフスキーコンクールでの模様。モーツァルトのVn協イ長調K.219第1楽章、ヴィオラとのドッペルK.364第1楽章。
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