益田展行ギターリサイタル@近江楽堂



週末金曜日。都内での仕事を五時ちょうどに終えたあと、新宿の隣り町、初台へ。久々にギターのコンサートを聴いてきた。


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すでに20枚余のCDをリリースし、多彩な活躍をしている益田正洋氏(G)の弟である益田展行(のりゆき)氏のリサイタル。益田展行氏は2003年に東京国際ギターコンクールで首席となり、翌年からドイツへ留学。ケルン音楽大学他で研鑽を積み、内外15の国際コンクールで上位入賞を果たしている。ヨーロッパでのコンサート活動ののち、2012年から日本に活動の拠点を移し、現在に至っているとの由。このたびファーストアルバム<バッハ作品集>をリリースしたのに合せ、まず大阪で、そしてきょう東京でリサイタルが開かれた。初台の東京オペラシティ3階にある近江楽堂。プログラムは以下の通り。CDリリースに合せて収録曲を並べ、さらにBWV998を加えた内容。ギター弾きならずとも、このプログラムが相当な重量級のプログラムであることは察しがつくだろう。

J.S.バッハ(編曲:益田展行):
プレリュード、フーガ、アレグロ ニ長調 BWV998
無伴奏ヴァイオリンソナタ 第3番 ハ長調 BWV1005
Adagio – Fuga – Largo – Allegro assai
  ―休憩―
無伴奏ヴァイオリンソナタ 第1番 ト短調 BWV1001
Adagio – Fuga/Allegro – Siciliana - Presto
無伴奏チェロ組曲 第6番 ニ長調 BWV1012
Prelude – Allemande – Courante – Saravande – Gavotte 1/2 – Gigue

近江楽堂は東京オペラシティ・コンサートホールに隣接し、礼拝堂をイメージして作られた小ホール。良好なアコースティクで<よく響くホール>として有名だ。ギターをはじめ、リュート、チェンバロなど比較的小音量の古楽器系の演奏会に好んでよく使われる。当夜も50席ほどの椅子が並べられた。
定刻の19時ちょうどに客電が落ち、益田氏登場。慎重にチューニングを確かめてから、BWV998が始まった。端整なアプローチ、適正なテンポ、粒の揃った音色でプレリュードが歌われる。音のバランスとしては中低音がしっかりと鳴り、高音域はその上に出しゃばらずにのる。フーガでの各声部のキープや幾度となく出てくる主題の提示も明確だ。アレグロは一転して高速スケールが冴える。スケールを下支えする左手の押弦とポジション移動も無駄な動きがない。以降の曲も変わらず、整った様式感と滑らかな音色で安心して音楽に浸れる。

あえて不足感を唱えるとした、蒸留水のようなその語り口と音色だろうか。アンコール含めて2時間近い演奏のうち、ぼくが見ていた限りでは右手の打弦はすべてアルアイレ。緩徐楽章ではアポヤンドでメロディーラインを際立たせるかと思っていたが、それもなかった。曲の性格からして、常に多声をコントロールし、高速のスケールを粒立ちよく弾く必要を考えれば、アルアイレ奏法が妥当だろうし、この日の会場は大声を上げなくても十分響くだろうという計算もあっただろう。しかし、どこか深みのある音、音色で訴える場面はなかった。もっとも古典期以前の作品で、<美音>を訴えるような右手のタッチや歌い回しは、悪趣味になりかねないので難しいところだ。

重量級のプログラム終了後のアンコールもすべてバッハで、無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番BWV1003からAndanteとAllegro、そして無伴奏ヴァイオリンパルティータ第3番BWV1006のプレリュードが演奏された。
会場にはCDのライナーノーツも書いている濱田滋郎氏、ギター製作家の今井勇一氏、都内のギター専門店の店主ら、兄の益田正洋氏、さらにmixiで見知った都内のアマチュアギター弾きらの姿も散見。使用楽器は、ヘッドデザインとボディーシェイプからカール・ハインツ・ルーミッヒかと思っていたが、終演後益田氏のうかがったところ、ピンポンッ!であった。
凍てつく夜に端整なバッハ。よいコンサートだった。


先週1月13日発売のファーストアルバムのPV。


山下和仁のBWV1012 Prelude



BWV1001の11弦ギターによる演奏。



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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