ヘッドフォンその後



昨年の今頃、ヘッドフォンを新調した。あれから一年、その後のあれこれを記しておこう。
一年前、手に入れたのはゼンハイザーHD800とシュアSE535。当時購入に際してのポイントは以下の通り。

 (1) 夜半のリスニング用としてゆったりとした音場感のあるもの
 (2) 移動時のiPhone用として遮音性のあるカナル型で高音質のもの

通常のリスニング用として従来から使っていたソニーの定番モデルCD900STは、解像度とレンジ感共に不満があったわけでなかったが、業務用モニターとしての解像度重視の性格からユニットの振動ダイアフラムが耳に近く、それゆえに音場感の表現は苦手だった。つまり細かい音までよく聴こえるが、音の横方向、前後方向の広がりはあまり感じらず、ゆったりと音楽を聴くという感じになりにくかった。そこへゼンハイザーのいくつかのモデルのうちHD800が、その辺りの表現得意と知り、それではということになった。シュアの535は、それまで使っていたソニーの3000円程のインナーイヤー型のものではさすがに低音は出ず、音の抜けも悪かったため、遮音性があって、かつそこそこの低音域まで再現できるモデルということで選択した。購入したのが昨年の一月。その後しばらくしてヘッドフォン用アンプとしてフォステクスHP-A7を導入した。


Zen_HD800.jpg  Shure535.jpg


ゼンハイザーHD800は購入時点で同社のフラグシップモデルで、解像度、前後左右の音場感の広がり、装着感など、いずれもさすがの逸品だ。低音の量感は下位モデルのHD650より控え目だが、再生レンジは十分低いところまで確保されていて、YouTubeのオーディオチェック用音源で確認すると20ヘルツの手前からブルブルと鼓膜を揺すぶるのが分かる。駆動するHP-7の性格もあって中低音は極めてタイトで、それが高音域の解像度の高さをさらに際立たせる。

シュア535も少し前までには同社のトップモデルだったもので、こちらも遮音性と音質、共に期待通りのものだった。付属のウレタンフォームは耳の形にフィットしてよく馴染む。一年間かなりの頻度で使っているが、ウレタンフォームに劣化は見られず、引き続き良好なフィット感を維持している。音質もバランスアーマチュア型らしい高解像度で、低域は以前のソニーの安直なものとはまったく次元を異にし、移動中リスニング用途としては必要十分な性能だと感じる。

解像度、解像度とうるさく唱えているが、実際解像度の高い音で音楽を聴くと、単純にメロディーやハーモニーを楽しむというものから一歩進み、演奏しているオケやメンバーの編成やステージ上での並び、録音会場での音の広がり、ハーモニーを作る際のバランスや微妙な音程など、聴く側の耳や脳も高解像度になり、演奏者の音楽表現をより仔細に汲み取れるようになる。
昨今のオーディオ市場におけるヘッドフォンの隆盛は驚くほどだが、スピーカーによるハイエンドシステムよりひと桁かふた桁少ない予算で、同等以上の望みうる最高の音質がデスクトップ上で実現するメリットは大きい。今や6桁プライスのヘッドフォンも珍しくないが、そこまでいかずとも、良質なヘッドフォンとヘッドフォンアンプとで数万円ほどの投資で十分な見返りを得られるものと思う。

少し前に、知人がちょっと個性的なヘッドフォンとヘッドフォン用アンプを手に入れた。傳田聴覚システム研究所というところの製品。傳田聴覚システム研究所は独自の理論による聴覚トレーニングを展開している会社だが、派生的にオーディオ用ヘッドフォンシステムも商品化している。まだ手に入れたばかりとのことだったが、目的としていたPCベースの音楽視聴には十分とのこと。 オーディオ業界は個性的な中小メーカーが活躍できる市場でもある。ヘッドフォン業界にもいくつかそうした会社が存在する。くだんの傳田聴覚システム研究所、あるいは本ブログにも度々コメントを寄せてくれるマイスターフォークさん愛用の城下工業製のものなど、そうしたものの中から自分の感性にあったモデルを探し出すのも、比較的なお気軽にトライできる楽しみのひとつだ。


個性的かつ高性能なヘッドフォン(イヤースピーカー)を送り出し続けているスタックス社。そのハイエンドモデルの開発夜話。2010年の動画だが、その後このモデルがSR-009として発売された。技術部長の鈴木氏。話しぶりからして同社の誠実な製品開発の姿勢がうかがわれる。十年ほど前、埼玉にある同社の本社工場へ行き、映っている試聴室にお邪魔したことがある。そのときも鈴木氏が誠実で丁寧な対応をしてくれた。 以前は同社の製品は高いなあと感じたものだが、6桁プライスのヘッドフォンが珍しくない昨今にあっては、スタックスの製品はその高性能に対して、むしろ割安感さえある。SR-009の30万超は別格だが…



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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