クーベリックのマーラー第5ライヴ



週半ばの水曜日。三月中旬に帯状疱疹とインフルエンザで数日を棒に振ったが、その間の業務停滞がボディブロウにように効いてきて、本日もリカバリに精を出す。それでもそう遅くなく帰宅。ひと息付いて、ちょっとした片付け事をしながら、絞り気味のボリュームでマーラーを聴いている。


Kubelik_20160330.jpg  Kubelik_GM5.jpg


取り出したのはクーベリックが手兵;バイエルン放響を指揮した1981年のライヴ盤。2000年を前にした頃に輸入版としてリリースされ、好事家の間で評判となった盤だ。この5番のあと同時期のライヴ盤が1番、2番と出ている。この盤についても以前記事にしているので再掲しておく。

マーラーの声楽を伴わない純器楽の交響曲の中でも、第1番や第9番などと並んでこの第5番の人気は高い。各楽章の構成がしっかりしていることに加え、何といっても第4楽章アダージェットの美しさに負うところが大きいだろうか。手元にはバーンスタイン&NYフィル、アバド&シカゴ響、ショルティ&シカゴ響、カラヤン&ベルリンフィル、バルビローリ&ニューフィルハーモニア管、クーベリック&バイエルン放響(DG盤)、インバル&フランクフルト放響、テンシュテット&ロンドンフィル、ラトル&ベルリンフィルなどの盤がある。

かつてクーベリックに対する評価は『堅実温厚ではあるが面白みには欠ける』といったものだった。誰が言い出したのか、まったくひどい言い方だ。派手で過激なら面白いとでも言うのだろうか。あるいは、カラヤンやベームといったドル箱スターがいた当時のグラモフォンレーベルでは、それ以上のポジションは与えられなかったのかもしれない。手元には独グラモフォンに残されたクーベリックの録音がいくつかあるが、そのいずれもが勢いがあり、充実した音と前向きな表現意欲に満ちている。彼は60年代からマーラーに取組み、全集を残した。そのスタジオセッションの第5番も十二分に素晴らしく、マーラーを聴く醍醐味にあふれている。いずれをみても温厚で日和見という印象はまったくない。きょう取り出したこの盤はそうしたクーベリックの資質に加え、ライヴならでは緊張感と臨場感にあふれている。

第1楽章の冒頭、ホール全体に浸透するトランペットの響き、それに続く葬送調のトゥッティを聴いただけで圧倒される。放送用録音とのことだが録音状態はすこぶる良好。空間の広がりを感じさせ、強奏でも柔らかに音がブレンドされ、ヨーロッパのホールで聴く趣きがある。決して大音量でなくても、絞り気味のボリュームで聴いても奥行きのある響きを楽しめる。第1楽章はその後、静寂と高揚を繰り返しながらも全体として沈うつな表情に終始する。第1楽章を抑え気味に終えあと、楽章が進むにつれてライヴならではの高揚感も加わり、楽章を追うごとに音楽は一層充実してくる。第4楽章アダージェットも意欲的な表現で、起伏の大きさを感じる演奏だ。全楽章を通じてクーベリックのコントロールするバイエルンのオケは、弱音での緊張感、フォルテシモでの余裕のある響き、共に充実していて、この曲を聴く醍醐味を存分に味わえる。このコンビによる最上の記録の一つと言っていいだろう。


クーベリックの独グラモフォン盤1971年スタジオ録音の音源。第4楽章



バーンスタインとウィーンフィルの練習風景。



ゲルギエフの指揮で全曲。2010年BBCプロムスでの演奏。オケはワールド・オーケストラ・フォア・ピース。コンマスには日本でもお馴染みの元ウィーンフィルのコンマス;ライナー・キュッヘルが座っている。


■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

ニコル・ヘンリー Embraceable



週明け月曜、火曜と暖かな日が続く。本日も終日業務に精励。8時少し前に帰宅した。ひと息ついてアンプの灯を入れスタンバイ。たまには現役の人気歌手も聴きましょうかと、こんな盤を取り出した。


Nicole_Henry_2.jpg  Nicole_Henry_1.jpg


ニコル・ヘンリーのアルバム「Embraceable」。ジャケ買いの1枚。2011年リリースの輸入盤。隣り町のTWRで数年前に手に入れた(店はその後閉店)。これもだいぶ前に一度記事にしているでの再掲しておこう。
彼女は2000年代前半にデビューしてすぐに人気を得たとのことだが、ぼくはとんと知らず。この盤で初めて聴いた。もちろんジャズシンガーだが、この盤ではジャジーなものもあれば、ポップチューンもあるし、ソウルフルなものもあって、多彩な彼女の魅力を楽しめる。バラードからミディアムテンポまで選曲もよく、還暦オヤジの夜の友には好適な1枚だ。硬派!のぼくをジャケ買いに走らせた(^^;ビジュアルも魅力。歌はもちろん上手い。アルバムタイトルのEmbraceableは8曲目のガーシュインの曲Embraceable youによる。


あらためてYouTubeをみたら随分たくさんのビデオがあったが、音の状態のいいものを二つ貼っておく。





■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

イョラン・セルシェル<ソル作品集>


三月最後の週末日曜日。曇りがちの一日で桜の開花も足踏み状態。野暮用ひとつふたつで日が暮れる。近所の寿司屋で夕飯を済ませて帰宅。さて、ちょっとゆっくりしましょうかと、アンプのスイッチを入れ、こんな盤を取り出した。


Sollscher-Goran_1.jpg  Sollscher-Goran_Sor.jpg


イョラン・セルシェルの弾くソル作品集のCDを取り出した。セルシェルがデヴューしてから早いもので30年近くになる。当時出たLPを何枚か買い、その端整で古典的かつ普遍的な演奏に大そう関心したものだ。きょう取り出した盤は十年近く前に廉価盤で出たシリーズの中にあったもの。オリジナルは1985年の録音。ソル作品集と題されたこの盤、以下の通り中々玄人好みの選曲がいい。この盤についても過去に一度記事にしているでの再掲しておく。

 1. 「魔笛」の主題による変奏曲op.9
 2. 悲歌的幻想曲op.59
 3. スコットランド民謡「小川の岸辺」による幻想曲op.40
 4. 幻想曲op.7/「大ソナタ」第2番op.25~ラルゴとメヌエット
 5. 2つの主題,変奏と12のメヌエット~メヌエット第1番
 6. 「2つの愛唱歌による華麗な変奏曲」~幻想曲第7番op.30-7

魔笛ヴァリエーションはお約束としても、作品59の悲歌幻想曲は滋味あふれる曲だし、「小川の岸辺」による幻想曲も珍しい。ソルの傑作と一つとして評価の高い第7幻想曲も入っている。作品11のメヌエットは高校時代、何かのイベントがあって、市内の女子高まで出向いてステージで弾いた懐かしい曲だ。セルシェルといえば11弦ギターを連想するが、この盤はオーソドクスなモダン6弦ギター(ジャケット写真によればラミレス)で弾いている。演奏は古典的な様式感から逸脱することのない楷書の趣き。ギター曲である前に、きちんと作られた19世紀古典曲であることを感じさせる。


若き日のセルシェルの演奏で第7幻想曲作品30の7<その1>。この盤のジャケットを同様、楽器はホセ・ラミレス。


第7幻想曲作品30の7<その2>



ソルの楽譜アーカイブはこちらのリンクから。
http://www.guitareclassiquedelcamp.com/partitions/fernandosor.html



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

バルビローリ マーラー<悲劇的>第3楽章



何となく続きそうな大曲の細切れ聴き&つまみ聴き。マーラーの第2番第2楽章第3番終楽章に続き、今夜は同じくマーラーの第6交響曲イ短調<悲劇的>の緩徐楽章をつまみ聴きすることにした。


barbirolli_1.jpg  barbirolli_GM6.jpg


バルビローリとニューフィルハーモニア管弦楽団によるマーラー第6交響曲のLP盤。1967年8月ロンドン・キングスウェイホールでのセッション録音。手持ちの盤は80年代初頭の再発盤で、R・シュトラウスのメタモルフォーゼンがカップリングされている。この時期のバルビローリのマーラーとしては、同じNPOとの5番とベルリンフィルとの9番がある。いずれも名演のほまれ高いもので、ぼくの手元にもある。今夜は第6番の第3楽章に針を下ろした。かつてはバルビローリのこの録音の通り、第3楽章にアンダンテ・モデラートをおくのが一般的だったが、2003年マーラー協会の宣言以降近年では、アンダンテ・モデラートの楽章を第2楽章として演奏することが多いようだ。

マーラーの緩徐楽章、それもバルビローリとくれば、濃厚なロマンティシズムとたっぷりとした歌心に満ちた演奏を想像する。しかし6番のこの第3楽章は、アンダンテ・モデラートの指定もあるように、それほどこってりとした音楽ではない。もちろん出だしの数秒を聴いただけでマーラーのそれと分かる音楽であるには違いないが、美しくも淡いロマンティシズムに満ちた音楽が静かに流れていく。途中、カウベルも響き、どこか幼き日への憧憬もイメージさせる。この楽章だけ聴くと、第1楽章のあの勇ましい開始は想像すらできない。ニューフィルハーモニア管の音もよく整っているし、録音も低く深いコントラバスのピアニシモまでよくとらえられていて申し分ない。


この盤の音源。第3楽章。


第6番全曲。ゲルギエフとワールド・オーケストラ・フォア・ピースの演奏@2014年プロムス。この演奏では先に記した通り、第2楽章にアンダンテ・モデラートをおく(25分30秒から)。



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

ビクトリア<聖週間のレスポンソリウム集>



復活祭を前に、きょうは<聖金曜日>にあたる。極東の片田舎に住む宗教的バックボーン皆無なボンクラ与太にはよく分からないところではあるが、キリスト教においてもっとも重要な時期でありイヴェントでもある。敬虔な祈りをサポートするかのように、古来<聖金曜日>のための音楽も多く作られた。
先日知人から、「与太さんの悪行は、帯状疱疹とインフルエンザくらいじゃ償えないだろう。これでも聴いて、自省せよ」と、こんな盤を借り受けた。


TomasLuisdeVictoria.jpg  DSCN4786 (560x560)


スペインルネサンス期のもっとも偉大な作曲家の一人であるトマス・ルイス・デ・ビクトリア(1548-1611)による<聖週間のためのレスポンソリウム>。ピーター・フィリップス指揮タリス・スコラーズによる歌唱。1990年録音。 「聖週間のためのレスポンソリウム」は、聖週間のための聖務曲集に含まれるもので、復活祭の前、キリストの受難をしのぶ週に教会の礼拝で歌わる。聖金曜日がいわゆる「受難の日」で、「死」「受難」というテーマを扱う。本盤の収録曲は以下の通り。

聖木曜日の為のレスポンソリウム
 ・わが友は
 ・悪の商人ユダは
 ・わが弟子の一人が
 ・われは罪なき羊のごとく
 ・一時間われとともに
 ・人々の長老らは

聖金曜日の為のレスポンソリウム
 ・汝らは強盗に向かうがごとく
 ・暗闇となりぬ
 ・われ、わが愛する生命を
 ・彼らはわれを悪人の手に引き渡し
 ・不信心なる者、イエスを引き渡しぬ
 ・わが目は涙にくれぬ

聖土曜日の為のレスポンソリウム
 ・われらが牧者は去りたまいぬ
 ・おお、道ゆくすべての者よ
 ・見よ、いかに正しき者死すとも
 ・地上の王らは立ち上がり
 ・われは墓穴に下りし者のうちに
 ・主が葬られたまいし後

ルネサンス期の音楽は高校時代(70年代初頭)に、NHKFM朝の皆川達夫氏の名調子による「バロック音楽の楽しみ」でいくらか親しんだ。当時の興味はもっぱら器楽曲、ギターやリュートによる演奏であったが、宗教曲、世俗歌曲に関しても、作曲者名や作品名を気に留めることもなく、ただ16世紀の独自の響きを楽しんでいた記憶がある。おそらく当時聴いた曲の中に、ビクトリアの宗教曲も混じっていたものと思う。
久しぶりに聴くこの時代の宗教曲。清廉な響きは天上で調和し、敬虔で神秘的な光景を想像させる。平均律楽器では得られない和声の調和は、どこまでも透明で、不協和音ですら濁りなく、本来の不協のみを響かせ、不気味な不安さを提示する。


この曲の音源。米テキサス大学のコーラスとのこと。



実は知人の参加する合唱団が来月のコンサートでこの曲と取り上げる。ご都合付く方はぜひどうぞ。
concert160410_01.jpg


★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

マーラー 交響曲第3番ニ短調 終楽章



先日の記事でマーラー第2交響曲の第2楽章にふれたが、今夜はその続きで、マーラーの緩徐楽章を聴こう。どれにしようか思案したが、交響曲史上もっとも長い演奏時間を要する曲の一つであるこの曲を取り出した。


GM.jpg  GM_3_1.jpg


マーラーの交響曲第3番ニ短調。数年前に出たラトルのEMIマーラー全集ボックスセットからDISK3に入っている終楽章の第6楽章を聴く。オケは当時の手兵バーミンガム市交響楽団。1997年録音。

マーラーが書いたアダージョ楽章はいずれも美しいが、中でもこの第6楽章のそれは天国的でとりわけロマンティックな傑作だ。<ゆるやかに、安らぎに満ちて、感情を込めて:Langsam. Ruhevoll. Empfunden>と指示されたニ長調4/4拍子。
マーラーのこうした歌謡性を俗っぽいものと解す向きもあるが、これだけ徹底してくれれば文句も出ない。出だしの弦楽合奏で奏される主題を聴くだけで、その美しさにノックアウトされる。
次々に繰り出される美しい旋律は、センチメンタルな夜に甘く切なく響き、20分超の演奏時間はあっという間に過ぎていく。15分過ぎに向かって徐々に盛り上がり、そして一旦沈静化したあと、再び20分に向けて最後のピークへと登りつめ、ティンパニ2台の連打を伴って堂々と終わる。ヘッドフォンで聴いていると、何か異次元に連れ去られるような気さえしてくる。けだし名曲。


チョン・ミョンフンとN響による終楽章。20分あたりから最後の山を登る。22分17秒のピークを前にした22分、ベルアップする木管群のパフォーマンス!



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

畠山美由紀


畠山美由紀。アラフォーの女性ヴォーカリスト。畠山みどりにあらず。デヴューは十年以上前だが、メジャーになったのは数年前からだろうか。ぼくも名前はかなり以前から知っていたが、彼女の6作目というこのアルバムを手にしたのは三年ほど前のこと。以降、ときどき夜ひそかに取り出して聴いている。以前、一度記事にしているので再掲しておこう。


hatakeyama_1.jpg  hatakeyama_2.jpg


極上の美声ではないし、CDで聴く限り声量もある方ではなさそうだ。舌を巻く巧さということでもない。がしかし、その声の幾ばくかのあやうさとはかなさに何ともひかれるのだ。そして曲によってかなり多彩な表情を聴かせる芸域の広さもいい。すでに十分メジャーな存在だろうが、それを裏付ける魅力がある。あまりくどくど説明するのは本意ではないので、ここまでにしておこう。
アルバムはいくつも出ていて、少し大きめの店なら置いてあるだろう。邦楽の<は>の棚を探すと、<畑中葉子:ゴールデンベスト>の隣りあたりに見つかるはずだ(^^;。 もちろんAmazonにも。
YouTubeにもかなり数の動画がアップされている。但し、圧縮されたオーディオフォーマットでは、彼女の声のニュアンスをとらえた素晴らしい録音の魅力は半減してしまうかもしれない。


このアルバムの中から「夜と雨のワルツ」。ありがちなノスタルジックなワルツかと思うとそうではない。中々凝った転調も仕組まれている。「あなたが思うよりも人生は短く、あなたが思うよりもはてしもない」…まったくだ。


「わが美しき故郷よ」 気仙沼生まれの彼女が歌うから、こうした強い表現になるのだろうか。クラリネットのオブリガートが効果的だ。


フラメンコギターの沖仁とのコラボレーション



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

カレンダー
02 | 2016/03 | 04
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
リンク
QRコード
QR
閲覧御礼(2010.10.01より)