D・R・デイヴィスのハイドン<熊>



穏やかな陽気の週末も終わり、あすから連休前一週間がスタートだ。今年のカレンダーは、間にはさまれた二日間を休みにすれば十連休となる。数年前までの、時間的あるいは精神的にプレッシャMAXの日々なら、逃げ出したい気分で何とか休みを取る算段をしただろうが、勤め人生活のピークも過ぎてほどほどのタイトさの今はそれほどでもない。暦通りに、はいそうですかと従う気分になってきた。そんなことを思いつつ、残り少ない人生、事情の許す範囲で音楽を楽しみましょか…


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昨年入手してボチボチ聴いている、デニス・ラッセル・デイヴィス&シュトゥットガルト室内管によるハイドン交響曲全集のボックスセット。D・R・デイヴィスがシュトゥットガルト室内管の首席指揮者になった1995年に計画し、以降ライヴ録音を重ねて、ハイドンイヤーとなった2009年にリリースされた。この盤のリリースを知ったのは数年前だったが、すでにA・フィッシャー盤の全集が手元にあるし、どうしようかなと思っているうちに年月が経ち、結局流通在庫も少なくなった昨年になってから手に入れた。きょう現在、HMVのサイトではすでに販売終了だが、アマゾンではまだ入手可能だ。きょうは全37枚のセットから29枚目の盤を取り出し、そこに収められている第82番ハ長調の交響曲を聴いている。第4楽章冒頭の音形から<熊>と称される作品。

第1楽章は序奏なしで、ハ長調主和音を分散奏して力強く始まる。随所にティンパニの打ち込みが加わり、中々恰幅のいい曲想。その間をぬって可憐な第2主題が奏され、その対比が中々面白い。展開部はその女性的な第2主題と、第1主題を短調であつかったモチーフなどが交錯する。第2楽章はアレグレットの指定で、緩徐楽章という位置付けよりも少し動きを感じさせる。第3楽章は典型的メヌエット。トリオではオーボエ、ファゴット、ヴァイオリンが絡んで美しいアンサンブルを聴かせる。第4楽章は<熊>の通称の元となった前打音を伴った低弦群のフレーズで始まる。以降この前打音のフレーズと他のモチーフとが繰り返されながら、第4楽章としては異例ともいえるほど、充実した展開を繰り広げ、まったく飽きさせない。

このデニス・ラッセル・デイヴィス&シュトゥットガルト室内管の演奏をまだすべて聴いたわけではないが、総じてテンポをやや遅めにとり、大らかにゆったりと奏される。ピリオドスタイルの楽器や奏法からイメージする急進性や緊張感は少ない。付点音符の扱いやフレーズのアクセントなども意図的にやや<ゆるく>設定している。モダン楽器による旧来の演奏スタイルに慣れ親しんだ向きにも違和感なく受け入れられるだろう。録音は、欲をいえば低音、それも低弦群の低い音域がもう少し響いてほしいところだが、演奏終了後の拍手がなければライヴと分からないほどバランスよく整備された音質。A・フィッシャー盤の残響豊かで流麗な響きとはやや趣きを異にするが、細かなところまでよく聴き取れる解像度の高さでは一枚上をいくだろうか。

ハイドンの交響曲全曲を聴こうか、などという酔狂な道楽は、ひと昔前はごく一部の好事家がドラティー盤を手にする程度であったが、ここ十年でA・フィッシャー盤、そしてこのラッセル・デイヴィス盤(現在もアマゾンで六千円ほどで入手可)により、すっかり身近な存在になった。CDデフレは一応歓迎である。


この盤の音源。デニス・ラッセル・デイヴィス&シュトゥットガルト室内管による第82番<熊>第4楽章。


シュトゥットガルト室内管の動画チャンネルにあるハイドン第44番<悲しみ>の抜粋。指揮はヴォルフラム・クリスト。



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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