モントゥー&LSOの<エニグマ>



関東は梅雨空続き。きょうは気温も少々上がり、蒸し暑い一日だった。週も後半そして六月も終わり。変化の乏しいオッサン年代になってまたたく間に月日は過ぎる。青春再び帰らず…嗚呼
さて、三日ぶりにアンプの灯を入れ、こんな盤を取り出した。


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イギリス近代を代表する作曲家エルガーの傑作<エニグマ変奏曲>。フランスの大家;ピエール・モントゥー(1875-1964)と、彼と親しい関係にあったロンドン交響楽団による1958年の録音。手元には1980年に廉価盤として再発されたときのものと、60年代にデッカ盤がビクターからリビングステレオシリーズで出ていたときのものがあるが、きょうはそちらの国内初出ビクター盤を取り出した。

第1曲の主題の提示から身体と心の芯にまで染み渡るような響き。充実した管弦楽というのは、まさにこういう曲のことをいうのだろうと思う。主題は意味深く、しかし過度に深刻にならない適度な重みを持つ。弦楽を主体としたオーケストラレーションも常に中庸の節度を保ち、厚く、深く、音を重ねていく。単独でも演奏されることの多い第9変奏;Nimrod(狩猟家=独Jager)のアダージョは、数ある管弦楽曲の中でも取り分け優れた曲。英国の出版社ノヴェロ社のいたA.J.Jager氏の物静かな人柄を表したという佳曲だ。エルガー自身を描いたとされる終曲では金管群の充実した響きも加わり、壮大なエンディングとなる。
1958年の録音ながら栄光のデッカサウンドは素晴らしく、中高音の輝くしい音色と解像度、低域の充実、いずれもこれ以上は必要ないのではと思わせるほどだ。

エルガーにはこのエニグマ変奏曲のほか、チェロ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲など、充実した作品がある。<愛の挨拶>にとどまらずに聴いてほしい曲だ。併録されているブラムースのハイドンの主題による変奏曲も名演。モントゥー&ロンドン響は、弦楽や木管のよくブレンドされた響き、明るい音色ながら突出せずバランスのいい金管群。リズム感やアインザッツも十分ドイツ的で、このブラームスの名曲に相応しい。同コンビは同じブラームスの交響曲第2番でも名演を残している。


この盤の音源。ジャケットも同じもの。


もっとも有名な第9変奏<ニムロッド>。 コリン・デイヴィス(1927-2013)とロンドン響@2004年京都


簡易スコアを眺めながらどうぞ。



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佐藤弘和 <48のやさしい小品集>



クラシックギターの楽譜は専門店で手に入れるのが一般的だが、少し大きめの書店にある楽譜コーナーにも最近ときどき見かけることがある。もちろん珍しいものではなく、国内出版社の流通品ではあるが、わざわざ取寄せるまでもなく、見かけたついでに手に入れるときもある。つい先日も近所のショッピングモール内の書店にこんな曲集があったので買ってみた。


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佐藤弘和の小品集。<風の間奏曲~48のやさしい小品集~>と題されている。現代ギター社からこの4月に発売。1997年4月から1998年3月までの一年間に渡って月刊現代ギターに連載されていた小品をまとめたもの。佐藤弘和氏は1966年弘前市生まれ。弘前大学教育学部音楽科を卒業後、ギタリストとして、またギター曲を中心にした作曲家として活躍している。この曲集に関して佐藤氏いわく、ピアノによくある「子供のための小品集」のようなものがギターにもあったらとも思いで作曲したとのこと。おおむね初級から中級向けの小品が並ぶ。中上級者ならほとんど初見で通せるだろう。いずれも1分に満たないほどの長さ。コンセプトは「やさしく弾ける」「分かりやすく、親しみやすい」だそうで、その意図は十分に反映されている。

クラシックギターの初級者向け小品というと、カルリやカルカッシなどの小さなエチュードが上げられる。確かに音数は少なく、古典的でシンプルな和声で出来上がってはいるが、弾いていて楽しいかといわれると、残念ながらノーだろう。最大の理由は和声があまりにシンプルすぎるからだ。もちろん19世紀初頭の古典和声以上のものを求めるわけではないが、ギターの場合、技術レベルを限定すると和声はどうしてもごくごくシンプルになり、面白さはない。その点この佐藤氏の曲集は、音数を極力少なくし、ローポジションを主体にしながらも、和声的には6,7,9といった和音が多用され、近代的あるいは現代ポップス風の響きが使われている。いわゆる<オシャレ~!>な感じといえば分かりやすいだろうか。佐藤氏の他の作品に接したことのある輩なら「いつもの佐藤節!」とでも感じるだろう。クラシック音楽全般に精通している佐藤氏ゆえ、小品ながらも舞曲、行進曲、変拍子など様々な曲形式を含み、長調短調の按配も考えられている。音楽にノリやすい三拍子系の曲が多いのも特徴だろうか。
大曲チャレンジもいいが、こんな曲集を初見で雰囲気よく、すなわち音楽様式を感じ取って、さらりと弾く技量も身に付けたいものだ。近々時間をみつけていくつか宅録してみようと思っている。


だいぶ前に宅録した<素朴な歌>。佐藤弘和氏の作品中もっともポピュラーな曲。


同じく佐藤氏作曲の<小シシリエンヌ>
https://youtu.be/7_arDhun6xA



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ベルリオーズ <ハンガリー行進曲>



早いもので六月最終週。相変わらずの梅雨空。先週末からちょっとややこしい案件対応に追われ、あれこれ思案もタイムリミット。エイヤッと一気に片付けて帰宅と相成った。 帰宅後、ヤレヤレとひと息ついてリラックス。先週の<はげ山の一夜>がきっかけで、このところちょっと派手目のオーケストラピースが気になり、こんな盤を取り出した。


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お馴染みベルリオーズの<ハンガリー行進曲>。手持ちの盤からCD三点を取り出し聴き比べ(この曲に関するうんちくあれこれはネットにたくさん書かれているのでそちらを参照のほどを)。
まずはサバリッシュ先生(1923-2013)。1987年に手兵バイエルン国立歌劇場管と録音してCD2枚でリリースされた管弦楽名曲集の中のもの。いかにもサバリッシュというべきか、終始インテンポをキープ。各パートともバランスを崩さず、教科書的模範演奏という感じだ。言い換えれば、この曲に多くのリスナーが求める即興的な味わいは乏しく、いささか精彩を欠く。欠点のない演奏だが、この曲を四角四面にやっても、はいそうですか…で終わってしまうお手本かな。

続いてジョージ・セル(1897-1970)&クリーヴランド管1970年来日のライヴ盤。1970年5月22日東京文化会館での演奏。シベリウス交響曲第2番のあとアンコールとして演奏されたもの。おそらくシベリウスで最高潮に達した会場の熱気を受け、その勢いのまま演奏されたのだろう、冒頭から速めのテンポで進む。録音条件もあるだろうが、ややデッドながら響きは透明を極め、低域までよくとらえられているが、決して肥大化せず、このコンビらしい筋肉質とでもいうべき音響バランス。鉄壁のアンサンブルをキープしたまま終盤一気にテンポを上げ、そのまま大団円となるあたりは鳥肌物の名演だ。

最後はポール・パレー(1886-1979)&デトロイト交響楽団による盤。<幻想>とこの曲の他、<海賊><ローマの謝肉祭><トロイアの人々>が収録されている。1958、59年録音。録音の良さで知られたマーキュリー・リヴィングプレゼンスシリーズの1枚。冒頭から輝かしい音色と広々とした音場感に圧倒される。やや強調感があるとも言えるが、少なくてもこの手の曲には相応しい音作り。フランス系指揮者ながらドイツ物も得意にしたパレーらしくやや遅めのテンポとどっしりとした低重心の響き。ジワジワと緊張感を高めつつ終盤へ。一旦テンポを上げておきながら、最後の最後で一気にテンポを落とすギミックが飛び出し、これまた大興奮のエンディングとなる。


セルの1970年来日ライヴ盤の音源。グランカッサの裏打ちは2分42秒から。出来のよいオーディオシステムなら、小音量ながら部屋の空気を揺るがす響きが楽しめる。3分15秒辺りから一気にアチェルランド、3分35秒辺りからさらにテンポアップ。音楽が最高潮に達したところで3分52秒から大きくリタルランド。そして4分02秒でテンポを戻して駆け抜ける。


小澤&ボストン響の1978年来日時の演奏。当時FMで聴いていた。最後のインタビューの声も記憶にある。アナウンスは当時のNHK中江陽三アナかな。


この曲では見せ場が多いロトンボーン以下ローブラスの練習。これを聴くと、セルのテンポで演奏するのがいかに難しいかよく分かる。



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ギターで通奏低音



しばらくご無沙汰しているチェロ相方から、ヴィヴァルディのチェロソナタで遊ぼうと思うのだが、与太さん、通奏低音で入ってくれないかしら…とのリクエストがあって検討中だ。もともと今年三月に同曲の第5番ホ短調をあるところで演奏する計画があったのだが、ぼくの一方的な都合でキャンセルしてしまった経緯がある。今回は本番お披露目はともかく、一度合わせて遊びまショ!…というお誘いで、近々合わせることになりそうだ。ソロパートを弾くチェロ相方に加え、相方知人のチェロ弾きも入って通奏低音パートとして書かれた旋律を受け持ち、ぼくのギターが通奏低音用数字で示される和声を加えるという編成。


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ヴィヴァルディのチェロソナタは6曲が古くから知られ楽譜やCDも出ている。オリジナルに近い楽譜はチェロのメロディーパートと、通奏低音パートで書かれ、その通奏低音パートは定石通り低音部記号の旋律と和声を示す数字で記されている。古楽同好者、チェンバロ奏者、あるいは通奏低音楽器としてのリュートやバロックギターを愛好する輩ならば、その番号を見ながら和音の展開を考えつつ、即興で合の手を入れられるようにトレーニングを積むのが一般的だろう。しかし多くのモダンギター弾き、あるいはモダンピアノだけを弾く鍵盤奏者にとって、この作業は馴染みがない。ぼく自身、アルファベットのコード記号でジャンジャカ伴奏する程度は出来るが、通奏低音の番号譜にはまったく不案内でお手上げだ。仮に和音構成は分かったとしても、合の手のリズムや即興的な旋律などが、バロック作品の様式について学びトレーニングを積んでいないと不可能だ。そこで頼りにするのは、やはり通奏低音に馴染みのない鍵盤楽器奏者でも弾けるように、鍵盤楽器用の二段譜に一つの例示が記譜された楽譜。鍵盤楽器伴奏による多くの演奏がおそらくそうした楽譜を使っているものを思う。そこでその鍵盤譜の高音パート譜を参考にすれば、ギターでも比較的容易に通奏低音の真似事くらいは出来るのではないかと考えた。


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流通している数社の中から二つ、インターナショナル・ミュージック社版(レナード・ローズ編)=写真左とシャーマー社版=写真右のものを取寄せてみた。いずれも通常ヴィヴァルディのチェロソナタとして認められている全6曲が収められている。ポピュラー音楽で言えば、コードネームだけが書かれている楽譜を元に、実際のコードポジションやストロークのリズムなどを、編者が編者の意図で曲の様式を考慮しつつ書き記したものなので、二つの楽譜は当然異なる。
近々遊びで合わせる予定の曲は第3番イ短調。ギターでは弾き易い調性で、この二つの楽譜を見た限りでは、鍵盤楽器でほぼ右手が受け持つ高音部パートがそのまま弾けそうな感じだ。但し、実音がオクターブ低いギターの特性と、2本のチェロ(ソロパートと通奏低音パート)の中で音量の乏しいギターの音を有効に響かせるための工夫が必要になりそうだ。具体的には1弦、2弦の3~7ポジション辺りの音が選べるように、和声を変えない範囲で音のシフトと展開を施そうかと考えている。


全3楽章。この演奏では通奏低音として、コントラバス(あるいはヴィオローネ)、チェンバロ、リュート属の音が聴こえてくる。


通奏低音について解説。ベーレンライター版でのサンプルとオリジナル楽譜からのリアライゼイションについて解説している。


上に貼った演奏のメンバーのよる第3番第1楽章ラルゴ。



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気分だけでもラテンでGo!



相変わらずの空模様。どうやら関東の今年の梅雨は正統派のジメジメ型か。きのうもきょうも気温は程々だったが湿度MAXで、少し動くと汗が吹きだす。梅雨明けまでにはまだしばらくあるしなあ…と思いつつ音盤棚を眺めていたら、この盤が目に入った。だいぶ前に一度記事にしているが再掲しておこう。


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以前何度か書いた通り、ぼくは暑さ、そして夏が苦手だ。赴任先はシベリアかインドネシアかの二択だと言われたら、迷わずシベリアを選びたい。でも夏にはちょっとした憧れがある。若い頃、海だ山だと酔狂に遊びまわる連中を尻目に、どうせオレには無縁だぜと斜に構えて、暗くギターを弾いていた。内心はビキニの似合うガールフレンドと明るく海岸沿いをドライブして、トロピカルなレストランで夕日を見ながら食事をして…と妄想猛々しく思っていたのだ。しかし、いずれもかなわず地味な勤め人を続ける人生となった。男ばかりの高校でネクラな青春を過ごしたことと、酒が一滴も飲めないことで、どれほど人生損をしているが計り知れないのだ。 そんなわけで、ビキニが似合うガールフレンドはもうかなわぬ夢だが、気分だけはと、時々ホットなラテン音楽が聴きたくなる。

熱帯JAZZ楽団は、パーカッション奏者で元オルケスタ・デ・ラ・ルスのカスロス菅野が1995年に結成したラテンジャズビッグバンドだ。これまで10枚以上のアルバムを出しているが、手元にはデヴューアルバムの<ライブインヨコハマ>ほか数枚がある。このバンドの魅力はなんといっても、ドラムスの神保彰、高橋ゲタ夫のベース、トランペットの松島啓之ほか実力派メンバー揃えた抜群のテクニックとグルーヴ感だ。どのアルバムも音が出て数秒後には、気分は夏の太陽が降り注ぐ白い砂浜へワープしてしまう。写真のセカンドアルバム;Septemberは彼らのメジャーデヴューアルバムで、アース・ウインド&ファイアーのアルバムタイトルチューンのSeptemberから、ミッション・インポッシブルまで、ノリノリのラテンビッグジャズの醍醐味にあふれている。


YouTubeにライブ映像があったので貼っておこう。気分だけでも夏Loveになろうか。





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<はげ山の一夜>記念日?



帰宅後ネットを覗いていたら、きょう6月23日は<はげ山の一夜>記念日?とあった。ちなむ日、ということらしい。何でもこの曲の背景として、「聖ヨハネ祭(6月24日)の前夜に不思議な出来事が起こる」というヨーロッパの伝承があるようで、その伝承による「はげ山に地霊チェルノボグが現れ手下の魔物や幽霊、精霊達と大騒ぎするが、夜明けとともに消え去っていく」というロシア民話がベースになっているとのこと。極東の片田舎のオジサンなどはとんとお呼びでない史実だが、まあそんなものかと合点して、それではと、この盤を取り出した。


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エルネスト・アンセルメと手兵スイスロマンド管によるロシア管弦楽曲集。
いまさら解説するまでもないだろうが、エルネスト・アンセルメ(1883-1969)は元数学者にして、のちフランス物やバレエ音楽を得意とする指揮者として活躍した。特にスイスの仏語圏(スイスロマンド)を代表するオーケストラであるスイスロマンド管弦楽団を振って英デッカに残した一連の録音は、ステレオ初期の名盤として人気を博した。今夜取り出した盤はタイトル通りロシア近代の管弦楽曲を集めたもので、収録曲は以下の通り。

 1. 交響詩「はげ山の一夜」(ムソルグスキー-リムスキー=コルサコフ編)
 2. 歌劇「サルタン皇帝の物語」~くまんばちは飛ぶ(リムスキー=コルサコフ)
 3. 序曲「ロシアの復活祭」(リムスキー=コルサコフ)
 4. 歌劇「ルスランとリュドミーラ」序曲(グリンカ)
 5. 同「イーゴリ公」~ダッタン人の踊りと合唱(ボロディン-リムスキー=コルサコフ編)
 6. 交響詩「中央アジアの高原にて」(ボロディン)
 7. 歌劇「三つのオレンジへの恋」~行進曲とスケルツォ(プロコフィエフ)

久々にフルボリュームで聴いてみたが、60年代英デッカ黄金期を伝える実に鮮やかできらびやかな音質にあらためて驚いた。ゴージャスという言葉がぴったりだ。日本では東京オリンピック以降60年代後半から70年代にかけてステレオ装置が一般家庭にも普及し出したが、英デッカ録音は独グラモフォンの重厚さや米コロンビアのやや乾いた音質に比べ鮮烈に響いたに違いない。この盤もマイクロフォンを各パートごとに設置してそれぞれ楽器の音は明確にピックアップした上でミキシングするという、英デッカのマルチポイント録音の特徴がよく出た録音だ。コンサートホールで聴くオーケストラのバランスとは明らかに違うのだが、これはこれで再生音楽としての楽しみを堪能させてくれる。

「はげ山の一夜」で鳴るグランカッサの音は、音というよりは部屋の空気を静かに揺すぶるように響き、不気味な妖怪達のうごめきや周囲を吹き抜ける冷ややかな風をイメージさせる。但し、これ(コンサートホール聴くグランカッサの空気感に近いイメージ)を実感するには40Hz程度の低音域まで素直に出るオーディオシステムが必要だ。こういう録音を聴くと作曲家や演奏家の意図をきちんと理解するには相応のオーディオシステムが必要だと思ってしまう。ほどほどのシステムだと、どうしても耳につきやすいメロディーや中音域のハーモニーだけに神経がいきがちだ。従来この曲はもっぱらリムスキー・コルサコフ編曲の版が演奏されてきたが、近年はその他の版でも演奏されるようになってきた。その辺りの事情は<展覧会の絵>に似ている。下記に貼ったアバドによる演奏が一つのサンプル。

アンセルメが1969年に亡くなったあとスイスロマンド管弦楽団は長らく低迷。一方英デッカは80年代のデジタル録音時代を迎えてフランス物・ロシア物の色彩的な管弦楽曲の再録音を迫られ、アンセルメと同じくスイス生まれのフランス系指揮者シャルル・デュトアと手兵;モントリオール交響楽団のコンビに白羽の矢を立てて録り直すことになる。


この盤の音源。アンセルメとスイスロマンド管。14秒過ぎからのグランカッサの響きが出ればオーディオの低域再生能力は及第か。


原典版の演奏。ムソルグスキー・フリークと言われたアバドとベルリンフィルによる演奏。


ジャズ・フュージョン界の大御所ボブ・ジェイムスによって70年代半ばに大ヒットした版。



★★追伸★★
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武満徹 ピアノ作品集



今週も関東は梅雨空続く。利根川水系の水不足が深刻な状況だが、水源地へのまとまった雨はないままだ。一方、九州からは大雨の報。自然の摂理、中々うまくはいかない。
さて、わが身辺は、週明けから少々ややこしい案件をかかえて四苦八苦。満点とはいかないが、何とかきょうの夕方までに見通しつけて帰宅した。ひと息ついて音盤タイム。今夜はこんな盤を。


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福間洸太朗(1982-)という若いピアニストが武満徹の主要なピアノ作品を弾いたナクソス盤。武満徹の熱心な聴き手でもないぼくばどが語る資格はまったくないのだが、ときにこうして彼の作品に触れるのは、何と言うか音楽の栄養バランスをとっているようなところがある。第1曲の「ロマンス」、第2曲「二つのレント」と透明な武満サウンドが静かに部屋に広がる。1949年19歳のときの作品だというが、静寂からクライマックスへという武満初期作品の様式がすで出来上がっている。よく演奏される「フォー・アウェイ」、50歳代になってからの「雨の樹素描」などを聴いていると、ピアノから解き放たれる音響としての音の粒と余韻によって、普段聴く音楽とはまったく別の空間が作られ、当然ながら聴く側のぼくらも普段聴きなれている西洋クラシック音楽の様式感から感じるものとは次元の異なる感覚で聴くことになる。そのあたりが「栄養バランスを取っている」という感覚を感じるゆえんだ。近年は彼の作品のうちポピュラリティーの強い曲ばかりが取り上げられているように感じる。それはそれで彼の一面で素晴らしい作品に違いないが、あまり口当たりのいいスイーツばかり食べているのもどうかなと思う。


「雨の樹・素描II」~オリヴィエ・メシアンの追憶に~


以下2つは極上のスイーツ。
「めぐり逢い」…ソングブックから。ショーロ・クラブの脱力感もいい。


「波の盆」



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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