これはイイ!ヤマハCG192



ちょっと必要があってギターを買った。
エエッ!与太さん、ついにエステソ?サントス? いえいえ、そんな…。ヤマハのギターですよ。それも‘つるし‘の量産モデルCG192。 ところがどっこい、これが素晴らしくイイのだ。


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ヤマハは60年代の終わり頃から本格的にクラシックギターを作り出し、ヤマハグランドコンサートギター通称GCシリーズとして手工品の高級モデルをラインアップしてきた。同時に入門者用の量産モデル(CGシリーズ)も多数発売してきたが、音が硬くて音量感も乏しい、ネックが太く弾きにくい等々、量産モデルに関してはあまり良い評判はなかった。70年から80年代の入門者用ギターというと松岡製かアリア製あるいはコダイラ製と相場が決まっていた。そんなヤマハの量産モデルが2010年にラインナップを一新した。今回手にしたCG192はその量産モデルの中では最上位のもの。とはいえ、実売価格は6万円でおつりがくるレベル。入門用量産品とはいえ、かなり廉価だ。


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表板は松と米杉の2種類が用意されている(いずれも単板)。両モデルを試奏してかなり迷った。一聴したときの音量感で米杉のモデル192Cを選んだが、松モデル192Sも明るくクリアな音で十分に鳴っていた。横裏板はローズの合板。ネックはマホガニーで、かつてのカマボコ型の断面形状と違って半円形に近く、押さえやすい。指板にはこのクラスの量産品としては異例ともいえるエボニー(黒檀)を使用。それほど緻密な材ではないようだが、きれいに仕上げられている。ヤマハのカタログによれば、表板には5本のファンブレイシングとサウンドホール近くに短い斜めの力木が走っている。ペグは価格相応の見かけだが、巻き心地は滑らかで悪くない。弦長650mm。指板幅はナット部で52mm。全体の形、大きさ等はごくオーソドクス。その他見た目の特徴としては、ヤマハのHPにも書かれているように、ネックと駒の塗装がつや消しのマットな仕上げであること、ヘッド部に懐かしい音叉マークが復活していることなどがあげられる。細部の仕上げも、ヤマハ管理下の中国工場での量産製品として十分に品質管理されていて大きな不満はない。

以前のヤマハ量産モデルを知る者にとっては、このCG192の音は驚きだ。
まず低音から高音まで全体が豊かに鳴る。6本の弦を12フレットまですべて音出ししたが、どのポジションでもストレスなく音が出る。サステインも極めて優秀で、高音ハイポジションの詰まりも少ない。低音ウルフは60年代以降のモダンギターとしてオーソドクスなG#にあるが、それほど突出しておらず、その下Gから開放Eまで十分なボリュームをキープしている。和音の調和も良好で、ローポジションだけでなく、7フレット、8フレットあたりをセーハして出す和音も音量、音の調和感などでストレスを感じない。仕様書では高音弦が<ヤマハハイテンション弦>となっているのだが、そもそもヤマハハイテンション弦なる製品はカタログにはない。見るところ明らかに通常の弦より細くかつやや乳白色で、どうやらサバレス社のアリアンス弦が付いているようだ。

自宅に持ち帰り、手持ちのラミレス3世やハウザー3世他と弾き比べをしてみたが、音量感、全域の均一な鳴りっぷりは遜色ない。さらに、音色でもがっかりするようなところもない。量産モデルとしては異例に音の品位が高いのだ。 米杉とアリアンス高音弦という組み合せの特徴だろうか、高音域のピュアさが少し不足している感じはあったが、これも弦を例えばサバレスのニュークリスタルあたりに替えるとまた違った印象になるだろう。今回ぼくは、あえて表板が米杉のモデルを選んだが、音にクリアさと奥行きがほしいなら松のモデル(192S)を選んだ方がいいかもしれない。通常このクラスの量産楽器と、10倍の値付けの工房品とは、ちょっと弾いただけで世界が違い比較対象にはならないのものだが、このCG192は比べてみようかという気になるレベルに達している。

このモデルが発売になったとき、ヤマハのサイトで荘村清志が絶賛し、鈴木大介のブログにも量産モデルとは思えないとのコメントがあった。また設計担当の何木氏のコメントにもあるこのモデルの成り立ち等、今回手にしてじっくり検分して、それらのコメントがあながちリップサービスだけではないことを実感した。近いうちにこのギターを使って何か録音してみよう。


ヤマハによるこのモデルCGシリーズのプロモーションビデオ。…フランス語…わからない(^^;



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チョイと宅録<佐藤弘和:48のやさしい小品集>~続~



昼をはさんで少々時間があったので、久々にチョイと宅録。
二ヶ月程前に宅録した佐藤弘和小品集<風の間奏曲~48のやさしい小品集~>の続きで、前回とは少し雰囲気の違う曲を選んでみた。


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先回も紹介したように、この曲集は1997年4月から1998年3月までの一年間に渡って月刊現代ギターに連載されていた小品をまとめたもの。佐藤氏いわく、ピアノによくある「子供のための小品集」のようなものがギターにもあったらとも思いで作曲したとのこと。おおむね初級から中級向けの小品が並ぶ。中上級者ならほとんど初見で通せるだろう。いずれも1分にほどの長さ。コンセプトは「やさしく弾ける」「分かりやすく、親しみやすい」だそうで、その意図は十分に反映されている。

きょうはその中から先回の続編として5曲を録音した。録音は安直なレコーダーZOOM社Q2HD。真昼間だというのに照明がほしいほどのどんよりとした暗い空模様。逆光も手伝って画質は酷いが、ヴィジュアル重視でもないのでご勘弁を。付属ソフトのなんちゃってマスタリングでコンプレッションが盛大にかかっている。まともなオーディオセットで聴くと、酷いなあ〜という感じだが、スマホやノートPCのスピーカで聴くにはこのくらいでちょうどいいかもしれない。例によって初見+アルファでほころびだらけだが、のんびりつま弾いたひとコマということで、ひとつ…


佐藤弘和 48のやさしい小品集から<夏の朝>


佐藤弘和 48のやさしい小品集から<前奏曲>


佐藤弘和 48のやさしい小品集から<悲しいワルツ>


佐藤弘和 48のやさしい小品集から<子守唄>


佐藤弘和 48のやさしい小品集から<パストラーレ>



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黒磯詣で



栃木県北部のリゾートエリア那須。その玄関口のひとつである黒磯へ。隣県ながら同地を訪れるのは初めて。当地からは150キロ。高速使って二時間余。かねてより家人から訪問リクエストがあった評判のカフェとアンティークショップをハシゴするミーハードライブを楽しんできた。

■1988 CAFE SHOZO■
JR黒磯駅前から続く商店街。一見して古く閑散とした地方小都市の街並み。休日にもかかわらずか、休日ゆえか、人通りは少ない。そんな商店街を少し行ったところに<1988 SHOZO CAFE>はある。
かつて珈琲好きといわれた人種、昨今はカフェマニアというらしい。珈琲そのものに加え、付随するスイーツ、店舗の調度を含めてカフェカルチャーとして楽しむ。女性が多くを占めるそのカフェマニアらが「黒磯に行く」というとき、それはイコール「SHOZOへ行く」ことを意味するという。


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店名の通り1988年に店を開き、店主が好みに合わせて一つ一つ手作りしてきた店は、30年の時の重みも加わり、古く閑散とした商店街に異彩を放っていた。レトロな店内のヴィジュアル、店のコンセプトに魅せられて集まってきた若いスタッフ達のフレンドリーかつ丁寧な接客、そしてほろ苦さとマイルドさが絶妙にバランスしたブレンド珈琲とそれに見合ったスイーツ。どこから見ても完璧な調和。それがこれ見よがしでなく、ごく自然かつリラックスして提供される。カフェマニアならずともいつまでもその場にとどまりたいと感じる空間だった。


■NASU SHOZO CAFE■
黒磯駅前商店街の<1988 CAFE SHOZO>で朝の珈琲&スイーツをひとしきり楽しんだあと、そこから車で15分。那須高原の一角にある姉妹店<NASU SHOZO CAFE>へ。こちらは新しく、レトロモダンな店内はリゾート地に相応しい明るく雰囲気だ。こちらも開店早々から行列が出来ている。


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少し腹に詰め込もうと、ぼくはトースト、家人はスコーンとマスカットがのったレアチーズケーキを注文。こちらの店舗も若いスタッフ達のきもちのいい接客が印象に残る。この店で働きたいという気持ちが伝わってくる。珈琲も黒磯店同様に深入りながらクセがなくマイルド。チーズとマスタードをのせたトーストにもよく合う。


■タミゼ クロイソ■
カフェのハシゴで心もお腹も満足したのち、JR黒磯駅まで戻り、駅からほどないところにある<タミゼ クロイソ>へ。かつてタクシー会社の車庫だったという古い建物を改装した店。<1988 CAFE SHOZO>同様、無関心でいたら単なる古い店としか映らず、見過ごしてしまう。(店内No photo pleaseとのことで外観のみ。リンク先サイトに写真多数あります)


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アンティークショップといったらいいだろうが、古いものだけでなく、日本や世界の各地から集めた現代の物も置かれている。但し、現代の物といっても、それらは古くからの伝統的な方法や考えでしつらえられたもの。アンティーク類と同居する違和感のないものばかりだ。店主の吉田昌三さんは都内にも店をもち、アンティーク家具の修復と販売を手がける。店主夫人の高橋みどりさんは、食器や食文化に関する著作も多い人気のスタイリストで、日曜・月曜と黒磯の店舗に立って接客もしている由。きょうも初めて訪れたぼくらに気軽に声をかけてくれて、あれこれと話の花が咲いた。


■丸信ラーメン■
黒磯・栃木にとどまらず関東あるいは全国区で評判のカフェ&アンティークショップ巡りのあと、シメはやはり黒磯で評判店の一つ、ラーメンの<丸信本家>へ。


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平打ちの縮れ麺とあっさりとした鶏ガラ・醤油ベースのスープ。一見、同じ栃木県内のご当地グルメ佐野ラーメンを思わせるが、仔細に比べると麺の食感がより中華麺寄りに感じる。大ぶりのどんぶりになみなみと注がれたスープの上にはメンマ、チャーシューとネギのシンプルなトッピング。さっぱりとした味わいもあって、カフェ巡り後のスイーツ腹にもすんなり収まる。ラーメンだけのシンプルメニューも潔く、二重丸でありました。

最近テレビのバラエティー番組で、栃木県vs群馬県という、底辺争いのような展開を見かけるが、きょう一日の黒磯巡りの結果からは、どうも当地群馬県は分が悪いように感じる。カフェ、アンティークにラーメンと、リピート必至の黒磯レジェンドを前に、参りましたのひと言だ。


糸井重里主催の<ほぼ日刊イトイ新聞>が企画したアパレル製品が、東京南青山にあるSHOZO CAFEの姉妹店で採用された。


関連するイヴェントが黒磯本店<1988 CAFE SHOZO>で開かれた。



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ゲルヴィヒのバッハ



九月に入って、日中はまだまだ暑いが朝晩は幾分か過ごしやすい。もう少ししたら、音楽を楽しむには弾くにせよ、聴くにせよ、いい季節だ。 さて週末。きのう金曜の晩は少々遅くなり、帰宅後撃沈爆睡眠。おかげできょうはいつになく気持ちよく目が覚めた。野暮用外出前に、音盤チョイ聴き。きのう初めていただいた、しょうむらのりひこさんのコメントでも触れられていたこの盤を取り出した。


<70年代終り日本コロンビアから出ていたゲルヴィッヒの盤>   <手元にあるリュート関連LP>
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ワルター・ゲルヴィヒの弾くリュートによるバッハ作品集。BWV996、999、1000、1006、1007などが収められている盤。この盤や同じゲルヴィッヒのバロック作品集(ブクステフーデやパッヘルベルなどを収録)などは、ぼくら世代のギターやリュート弾きなら必ず聴いたことのある盤だろうし、同氏の編纂したバッハ作品集の楽譜は後年全音から出版されていて手軽に入手できた。ゲルヴィッヒのリュートはいわゆる歴史的なバロックリュートではなくルネッサンスリュートであったが、これはこれで雰囲気のある音色で楽しめる。20世紀前半から60年代初頭にかけての古楽復興の一翼を十分に担った存在だろう。バス弦による深い低音、豊かに響く中高音の倍音。こういう音と演奏で聴くと、輝かしい音色と緊張感の強い鳴りの現代の6弦ギターでこの時代の音楽を弾くのは少々そぐわないなあとあらためて感じる。リュート属もしくは6弦なら19世紀タイプのギターを使いたくなる。


ゲルヴィッヒの弾くBWV999と1000



リュートやギターで取り上げるバッハ作品の中いくつかはリュートチェンバロ用に書かれたものではないかとされている。リュートチェンバロは近年復元が試みられ、ぼくもYouTubeでバロック時代に人気を博したというその音に初めて触れた。バロックという言葉には「ゆがんだ真珠」という意味もあるとその昔ものの本で読んだが、確かに独特な幽玄な響きをもっていて、幻惑されるような不思議な感覚になる。


リュートチェンバロによるBWV1000


しばしばリュートチェンバロを演奏している渡邊順生氏による「禁じられた遊び」



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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