クリップスの第九



PCに日付を入力してEnterキーを押すと、たいがいはwikipediaがヒットして、その日にまつわる出来事や、誕生日あるいは忌日にあたる人物のリストをみることができる。きょう10月13日をみると、荘村清志、大和田獏、ジョン・ローン、森昌子、松島菜々子が生まれ、太地喜和子、丸谷才一、やなせたかし、アダチ龍光(知ってるかな?)が亡くなっている。そんな中に指揮者のヨーゼフ・クリップスの名前を見つけ、それではと、こんな盤を取り出した。


201610_krips.jpg  201610_Krips_LVB9.jpg


1902年4月2日ウィーンに生まれ、1974年のきょう10月13日ジュネーヴで亡くなった指揮者ヨーゼフ・クリップス。そのクリップスがロンドン交響楽団を指揮したベートーヴェンの第九交響曲。1960年録音。このコンビによるベートーヴェン交響曲全集の中の1枚。 手持ちの盤はぼくら世代には懐かしい70年代半ばに出ていたコロンビアの廉価盤シリーズのもの。70年頃には1000円盤だったが、折から1073年の第一次オイルショックのあおりで諸物価高騰。1000円盤のジャケットを変えて1500円で再発となった時期のものだ(それにしても、黄色いロゴが目に付くこのジャケットデザイン。どうみても名門独グラモフォンのパクリ)。この時代の1枚物第九の定石通り、第3楽章の途中で盤面が切り替わる。 過去何度かCD全集版のボックスセットで出ているが、昨年SACDで再発された

クリップスというとウィーン情緒にあふれる正統派モーツァルトなどで有名だが、ぼく自身はほとんど馴染みなく、手持ちの盤のこの第九くらいかもしれない。少なくても、ベートーヴェンの一つのイメージである、力強さ、悲壮感といった面からおよそ遠い感じがする指揮者だろう。しかし、クリップスとロンドン響との全集は意外に玄人受けするようで、HMVに寄せられている購入者のコメントも総じて評価が高い。そんなことを思いつつ針を降ろしてみた。

第1楽章は中庸のテンポ。16分で通している。迫力不足という感じはないが、やはり力強さや巨大な構築性といった側面は控えめ。聴きどころの畳み掛けるような展開部も追い込みは程々。全体にしなやかで見通しのいい展開が続く。第2楽章は速めのテンポで一気呵成に進む。録音セッションだからそんなこともないだろうが、ライヴであれば、ようやく第2楽章でエンジンがかかってきたという感じだ。第3楽章はクリップスの良さがよく出た演奏。丁寧に弾き進めつつも歌い過ぎない室内楽的なアンサンブルで、まるでディベルティメントを聴いているかのよう。神がかったところはなく、屈託なく歌う。 第4楽章は冒頭の低弦群のレチタティーヴォがまさに歌うように奏される。明るい雰囲気が伝わってきて、この曲全体に対するクリップスの方向性が集約されているように感じる。合唱とのやり取りが続く後半も、過度な思い入れを差し挟む間もなく速めのテンポで進み、コラール風の中間部も、常にリズムを感じさせながらよく歌う。

この演奏、中庸を心得たウィーン風の味わい深いものという世評が大勢であるが、言い換えれば、管弦楽の緻密なアンサンブルや劇的な展開、崇高な美的表現といった側面からは一歩引いた演奏。歌劇場叩き上げのクリップスらしいというべきか、声楽が入る第4楽章を中心に、この曲のエンターテイメント性を感じさせる解釈という印象をもった。


この盤の音源。オケは対向配置をとっているようで、左奥からコントラバスが聴こえてくる。手持ちのレコードではいまひとつはっきりしなかったが、この音源ではよく分かる。


第4楽章コントラバスのパート練習。これを聴いて曲のどこかわかる程度には聴き込むべし(最初はわかるよね)。スコアをみて、かねてより「ここは合うのか?」と思っていた6分30秒からのフレーズ。これをチェロ・バスがユニゾンで弾いて、どれほど合うのだろうか…。



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音楽とクラシックギターに目覚めて幾年月。道楽人生成れの果てのお粗末。

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