ペペ・ロメロ ギターとピアノのための作品集



きょうの関東地方は時折り冷たい雨まじりで気温も低く、晩秋の訪れを感じさせる一日だった。今週もあたふたと終わり週末金曜日。ひと息ついて、もう日付が変わる時刻だが、渋茶を一杯やりながらこんな盤を取り出した。


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今や大御所の風格となったぺぺ・ロメロがフォルテ・ピアノを弾くウィルヘルム・ヘルヴェックと組んで、19世紀古典ギター黄金期の室内楽作品を弾いている。ぺぺが使っているギターはアントニオ・デ・トーレス1856年作とライナーノーツに記されている。1981年の録音。収録曲は以下の通り。

◇フェルディナンド・カルリ
 ソナタ イ長調 Op.21 no.1
   1. Moderato 2. Adagio 3. Rondo
◇アントン・ディアベリ
 グランド・ソナタ・ブリリアンテ ニ短調 Op.102
   1. Adagio-Allegro 2. Adagio 3. Allegro
 ソナチネ イ長調 Op.68
   1. Andante sostenuto 2. Rondo
◇フェルディナンド・カルリ
 ソナタ ニ長調 Op.,21 no.2
   1. Moderato 2. Thema con variazioni 3. Allegretto

ここに収録されている曲には使用楽譜に関していくつかの問題がある。旧友Y氏の指摘によると、カルリはオリジナルではなくハインリッヒ・アルバートの編曲(ツインメルマン社社刊)、 ディアベッリも本来の姿ではなく、ベーレントが4楽章パストラールを丸ごとカットしたもの(ボーテ&ボック社刊)とのこと。原典からかなり大きな改編(楽章が一つ無くなっているといった)がなされているにもかかわらず、使用した楽譜の出典が記されていないことは少々問題だ。この盤が録音された当時のギター界の状況を反映しているともいえる。今なら弾く側も音盤製作側も、もう少し気を使うだろう。そのことは横に置くとして…

曲は19世紀初頭の簡素な古典様式からなるもので、カルリ(1770-1841)の曲もこうしてアンサンブル版になると、その楽天的な曲想にいくらか重みが加わって鑑賞に値する曲になる。ディアベリ(1781-1858)の2曲はカルリに比べより感興に富んでいて、ピアノパートもカルリの曲より充実している。もっとも同時期のウィーン古典派大御所とは比べるべくもないが…

父セレドニオから受け継いだという名器トーレス(この楽器についてはこちらに詳細がある)を操るペペ・ロメロは技巧の切れもよく、同時に無理をしない弾きぶり。フォルテピアノとのバランスも良好だ。録音上の操作で音量のバランスを取ったり、ギターをより明瞭にピックアップしたりという作為がほとんど感じられない自然な音で収録されている。古典から初期ロマン派の端整な様式感をもった曲想にもマッチしている。こうした古典期の合わせ物はただ聴くよりも、やはり弾いて楽しみたい。この盤のいずれの曲も機会があれば合わせてみたいものだ。


アントン・ディアベリのソナタOp.102 第1楽章。


19世紀当時、市中のサロンで繰り広げられたギターをピアノのデュオの雰囲気はこんな感じではなかったかと思わせる音源。メルツ<フォルテピアノとギターのための歌劇「リゴレット」の主題によるディヴェルティメント>作品60.



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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