きょうが命日フルトヴェングラー


ぼくが子供の頃、ひと月の日数が31日以外の月を「西向く侍(二・四・六・九・士=十と一)」と覚えたものだが、今どきはどうなのだろう。その侍の月もきょうで終わり、明日から師が走る月だ。あっという間に今年も終わる。
さて、きょう11月30日はウィルヘルム・フルトヴェングラーの命日。1954年11月30日没。享年68歳。ぼくが生まれた二十日ほどあとに亡くなったことになる。今更彼についてぼくなどが語る余地もないので、今夜はせめてレコードを聴いて彼を偲ぼう。
フルトヴェングラーには、ぼくも学生時代に少々入れあげたが、幸い幾多の同曲異演盤や海賊盤に手を染めることもなく、ごく普通のクラシックファンとしてのフルトヴェングラー熱の域を出ず現在に至った。フルトヴェングラーならベートーヴェンやブラームスがまず最初に浮かぶが、手元にある何枚かの盤から選んだのは、ご覧のシューマンの第4交響曲。1953年5月、亡くなる1年前の録音だ。


201611_Furtwaengler_Schuman4.jpg


語る必要もない名盤。フルトヴェングラーの数ある名盤の中でも屈指といっていい。手持ちの盤は30年以上前にオリジナルモノラルカッティングで出たシリーズ中の1枚。マンフレッド序曲とウェーバー<オイリアンテ序曲>とのカップリング。70年代初頭までBPOのほとんどの録音が行われたベルリン・イエスキリスト教会での録音。まともなセッション録音が少ないフルトヴェングラーの盤の中では異例ともいえる録音条件の良さもあって、モノラルながら往時のBPOサウンドが聴ける貴重な盤だ。

シューマンは交響曲を4曲残しているが、ときとして専門家からは管弦楽手法の未熟さが指摘される。確かにベートーヴェンやブラームスのように限られたモチーフを有効に発展させて曲を構成するといった、計算された設計図といった面で見劣りしなくもない。しかし現代の優れたマエストロ達が楽譜に多少手を入れ、慎重に楽器間のバランスを取って演奏するシューマンを聴く限り、まさに「交響」としての管弦楽の響きや、数々の魅力的なモティーフなど、4曲の交響曲が他の独墺系作曲家の交響曲に大きく見劣りするようには聴こえない。実際、カラヤン、バーンスタイン、クーベリック、セル他、歴代の多くの名指揮者がシューマンの交響曲全曲の録音を残している。

フルトヴェングラーと手兵ベルリンフィルとのシューマンは、ぼくらが「ドイツ的」と聞いてイメージする曲想をことごとく具現化していく。深く尾を引くアインザッツ。シュバルツヴァルトを思い起こす重く、暗く、うっそうした音色。そうしたものを身体の芯から覚えているであろうベルリンフィルをフルトヴェングラーがドライブする。深く柔らかいアインザッツ、渋い音色の弦と木管群による重厚なサウンドバランス、そして晩年のフルトヴェングラーの幻想的な解釈に呼応し、素晴らしいアンサンブルとアーティキュレーションで応えるBPO。 悠揚たるテンポを基本にピアニシモから湧き上がるように息の長いフレーズを奏でる弦楽器群。第1楽章からぞくぞくとする感興の連続だ。第2楽章冒頭のオーボエや終盤のヴァイオリンソロの寂寥感も胸を締め付けられる。第3楽章スケツツォも重い足取りながら、トゥッティのヴァイオリン群の切れは素晴らしい響きだ。圧巻は終楽章。アチェルランドしながら曲を高揚させ、ピークに達したあと、ぐっとテンポを落とすときのカタルシス。一気呵成に走り抜けるコーダ。全4楽章を一気に聴いてしまった。

ベルリン・イエスキリスト教会でのこの録音は、ライブ以外の彼のセッション録音中、最高の出来ともいわれている。モノラルながら録音状態も良好。ここでは彼の名前からイメージする即興的かつ熱狂的な展開は影を潜めて、代わって落ち着きとすべてを高見から俯瞰するような冷静も併せ持つ。それゆえに、却って音楽は雄大かつ深く響く。第2次大戦終戦から8年たったこともあるだろうし、亡くなる前年の演奏であることも影響しているだろう。久しぶりにこのシューマンを聴いて、あらためてその素晴らしさを実感し、手元の盤を聴き直したくなってきた。


以下はこの録音のリマスタリング音源とのこと。手持ちのLPに比べ、明らかに周波数レンジは広く、音の深みも増している。 第1楽章。5分24秒:展開部へ入るところで、譜面音価の倍近く引き伸ばされるユニゾン。その後5分55秒から6分10秒:長い経過句も緊張が途切れない。コントラバスが意味深く鳴り続ける。その後6分23秒に向けてクレッシェンド。6分43秒からの付点音形トゥッティの深いながらもよく整ったアインザッツ。7分5秒~:一旦解決したあとの幻想的な弛緩。7分48秒~:次の山に向かって緊張を高める金管群・・・。 23分10秒~24分30秒:終楽章導入部の素晴らしさ。その直前第3楽章から終楽章にかけての接続も緊張感に富む。そして終楽章の最後、29分過ぎから次第に盛り上がり、29分45秒からは息をも付かせず突き進む。



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

閑話休題 2016年晩秋


美しき日本の四季…というけれど、日頃自然豊かな田舎暮らしのぼくなどは、「季節は都会で感じたい」などど思ってしまう。自然の絶対量で都会はローカルにかなわないだろうが、その分様々な演出で季節感を表現する。その多くは商業主義のベースにのっているのだろうが、それをとやかくいうことも昨今はなくなった。このところ仕事以外でチョイと東京おのぼりさんが続き、都会の季節感に触れ、そんなことを考えた。


DSCN5389 (640x480)


11月末神宮外苑。東京都内のイチョウ並木といえばまずはここだろう。この時期恒例のイチョウ祭りが今年は中止になったとのことだが、休日のイチョウ並木は小雨混じりの天気にもかかわらず大勢の人出で賑わっていた。隣りの神宮球場やラグビー場からは大学リーグ戦のものだろうか、時折り歓声が響く。そういえば…二十歳になった頃の夢は、都心の大学に通い、秩父宮ラグビー場で母校の試合を観戦、そのあと夕陽に輝く神宮外苑のイチョウ並木をガールフレンドと歩く…と、まあそんなピュアのものだった。結局、どれもかなわず今に至るわけだが、この時期になると気分だけはその頃に戻る。


IMG_4202 (640x478) IMG_4213 (640x478)

IMG_4217 (640x478) IMG_4223 (640x478)


三菱村の丸の内界隈もかつてはダークスーツのビジネスマンの世界だったが、ここ十年ほどで大きく変貌した。かつての丸ビル群の多くは新しく高層に建替えられ、ブランドショップやレストランが並ぶ。ぼくのようなおのぼりさんも多いのだろう、都会の夜景をバックにスマホのシャッターを押す光景があちこちにみられる。丸の内界隈はクリスマスまで丸の内ルミナリエと称してライトアップされる。


DSCN5397 (640x480)

IMG_4384 (478x640) IMG_4388 (478x640)

IMG_4389 (478x640) IMG_4395 (478x640)

IMG_4400 (640x640)


東京駅南口横の日本郵政本社ビルKETTEもこのエリアでは外せないスポット。旧東京中央郵便局の局舎を一部残した建屋内部には大きな吹き抜けがあって、この時期は巨大なクリスマスツリーが設置され、様々なイヴェントも開かれ。多くのテナントに加え、2・3階には東京大学博物館のコレクション展示があって無料で楽しめる。膨大な所蔵品をもつ東大博物館。その一部とはいえ一見の価値有り。ときどき関連イヴェントもあって、近くでは蓄音機でジャズを聴かせてくれるとか。


IMG_4414 (640x640) IMG_4412 (640x640)


おのぼりさんの一日は忙しく歩くのでお腹もすく。帰りがけの食事は八重洲の地下街で<いきなり>ではなく、予定通りにガツンとステーキ。一昨年あたりから話題の店<いきなりステーキ>八重洲地下街店にて300グラムのサーロインを平らげてご満悦。翌日のウェストは気になるが、毎日食べるわけでもないし、まあオッケー。かくして、おのびりさんの一日は暮れるのでありました。


★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

ワルター ドヴォルザーク交響曲第8番ト長調


終日日照なくやや肌寒い日曜日。昼前から野暮用外出。夕飯も外で済ませて帰宅した。あすはまた仕事。あまり夜更かしも出来ないが、何となくPCに向かいながらのナガラ・リスニング。久々にこんな盤を取り出した。


201611_Walter_Dvorak_8.jpg


ブルーノ・ワルター(1876-1962)とコロンビア響によるドヴォルザークの交響曲第8番ト長調。ワルターが晩年に行った一連のステレオ録音中の一枚。このドヴォルザーク8番を最初に聴いたのは高校3年のときだったろうか。FMかテレビで耳にし、最終楽章、変奏形式の何番目かでフルートが変奏フレーズを半音ずつ下降しながら吹くところがあって、そこだけが記憶に残ったのを覚えている。まとも全曲を聴いたのは大学に入ってからだった。FMからエアチェックしたテープを何度も聴いた。その後レコードが欲しくなり手に入れたのがこの盤だ。当時レコードを選ぶ基準は明快で、安い廉価盤がすべての前提だった。この盤は米オデッセイレーベルの輸入盤で、国内盤が2000円のレギュラープライスであったのに対して1000円ちょっとで買えた。

ワルター晩年のコロンビア交響楽団とのステレオ録音は賛否あるようだが、私はいずれも気に入っている。この盤でのワルターはまったく年齢を感じさせない生き生きとした曲の運びで、終楽章の主部以降がややゆっくりめのテンポであるが、他の楽章は快速調で音楽は前へ前へと進む。コロンビア響もワルターのための録音セッション用オケで編成は小さいのだが、録音の妙もあってまったく不足はなく、ワルターの棒に反応し、ぐいぐいと音楽を引っ張っている。
ドヴォルザークはチェロ協奏曲という名曲を書いたこともあって、この曲でもチェロの扱いが素晴らしい。第1楽章の出だしは何度聴いても印象的なフレーズだ。チェロのこの主題を聴くだけで、一気にこの曲のもつボヘミア調の郷愁に引き込まれる。有名な第3楽章も音楽がよく流れて、思わず一緒に口ずさみたくなるほどだ。終楽章では木管の冴え冴えとしたフレーズ、金管の強奏など随所の聴きどころでビシッと音楽をきめていく。
ワルターはフルトヴェングラーやトスカニーニらと同世代であるが、長命であったため1958~1961年の晩年に良好な音質のステレオ録音を多数残すことが出来た。モノラル時代のニューヨークフィルとの演奏もよいものがあるが、モーツァルト・ブラームス・ベートーベンなど、やはりコロンビア響とのステレオ録音が素晴らしい。


この盤の音源。全楽章。


マンフレート・ホーネック指揮hr響(旧フランクフルト放響)による中々エキサイティングな演奏。先に記した、高校生のとき最初に印象に残ったフレーズとは第4楽章。31分30秒の<コガネムシは金持ちだぁ~>のあと、31分40秒からの始まるフルートの下降音形フレーズ。32分からは<コガネムシ…>がズンドコ節になって繰り返され、フルートの下降音形フレーズも管楽器群によって奏される。


第4楽章のフルートパートの聴かせどころ。パユ先生の御手本。



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

グリーグ 抒情小曲集


11月最後の週末土曜日。所属している隣り町のマンドリン楽団が近隣施設へ慰問演奏とのことで参加。のどかな田園風景が広がる山間の施設で、小一時間の演奏を楽しんだ。ごく軽めの合奏曲と、今回は少し趣向をかえて、ギター弾き4名によるアンサンブルもお披露目。同じギター弾きメンバーと近々また別のイヴェントにも参加予定で今回はその前哨戦。ろくろく練習もせずに図々しく弾いて楽しんできた(^^。 さて、そんなこんなで夜も更けて…相変わらず寒気が居座り、安普請の拙宅内も冷え込んできた。少し前からアラジンストーブで暖を取りつつ、こんな盤を取り出した。


DSCN5369 (560x560)


日本在住のロシア人ピアニスト;イリーナ・メジューエワが弾くグリーグ作曲の抒情小曲集。おなじみ日本コロンビアの廉価盤シリーズ<クレスト1000>の中の一枚。数年前、まだ隣り町のタワーレコードが営業していた頃、給料日後の定期買い出しで手に入れた。

夜更けに聴くピアノ曲として相応しいのはどんな曲だろう。例えばその名の通り、ショパンの夜想曲などは定番だろうが、それと並んでこの抒情小曲集もよい選択肢の一つだ。グリーグの抒情小曲集は全部で66曲からなって、この盤ではその中から20曲が選ばれている。グリーグはこの曲集を管弦楽にも編曲していて、そちらもよく演奏される。どの曲も長くても数分の、まさに小曲集。ほとんどの曲にタイトルが付けられていて、「妖精の踊り」「子守唄」「夜想曲」「郷愁」…といった具合だ。そしてのそのタイトルからイメージする光景が、ピアノの多彩な表現を通して浮かんでくる。ショパンの夜想曲はその名の通り、夜にイメージするロマンティックな世界を再現しているすれば、このグリーグの抒情小品集は、自然や生活の光景そのものが音で再現されているといったらよいだろうか。中でもアルバムタイトルにもなっている「夜想曲」作品54-4や「森の静けさ」作品71-4などがよく知られる。

メジューエワの演奏は、弱音を主体にして、ガラス細工のような小品の一つ一つをいとおしむかのように丁寧に弾いている。録音は2000年3月、音響が優れていることからしばしば録音セッションにも使われる当地群馬県みどり市の笠懸野文化ホールで行われている。やや近めの音像でクリアに録られた音質も秀逸だ。


メランコリーな<郷愁>作品57-6


<夜想曲>作品54-4と<あなたのおそばに>作品68-3の2曲。



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

内田光子のショパン


この時期としては異例の降雪に見舞われた関東地方。けさはこの秋一番の冷え込みで、朝も完全冬支度での出勤となった。11月も末。業務少々停滞気味ながら本日は定時で退勤。ひと息ついて、もう日付が変わる時刻。部屋を暖め、熱い渋茶を一服。何か聴こうかと思い、こんな盤を取り出した。


201611_Mitsuko-Uchida_Chopin.jpg


内田光子が弾くショパンのソナタ第2番と第3番。1987年の録音。10年程前に廉価盤で出ているのを見つけて手に入れた。内田光子のネームヴァリューは国際的には相当なものだし、実際彼女の活躍の主体は海外だ。1970年のショパンコンクールで第2位になった実力派(現在まで邦人では最高位)だからショパンも悪かろうはずはないのだろうが、彼女のショパン録音はこの盤以外に見当たらない。

この盤の録音当時はモーツァルトのソナタや協奏曲を盛んに録音して話題となり、内外で認められる存在になった時期。この演奏はその勢いを感じさせるようなやや速めのテンポと中々強靭なタッチのショパンだ。曲がソナタということもあるが、ゆったりとしたロマンティシズムを期待すると裏切られる。強い集中力とそれを形にするテクニックと力感にあふれている。第2番は冒頭からせきを切ったような音の洪水、また第3番が晩年の作品であることを忘れさせる力感に満ちた表現を聴かせる。比喩は適当ではないが、まるでベートーヴェンのソナタのように聴こえてくるほどだ。
80年代に国際的な評価を受けるようになってから、彼女の演奏曲目はモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ドビュッシーと続くが、先に記したようにショパンの録音はこの盤以外にない。2000年代に入ってからザンデルリングと組んでベートーヴェンの協奏曲を録音したり、昨今はモーツァルトの協奏曲を弾き振りで再録している彼女だが、年齢を重ねた今、彼女が弾くショパン晩年のバラードやマズルカを聴いてみたいと思う。


エチュード作品10第2番。1970年ショパンコンクール前後のものとコメントがある。



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

クリュイタンス&BPO ベートーヴェン交響曲第2番ニ長調


予報通りではあったが、まさかの降雪。関東地方で11月の雪は54年ぶりだそうだ。東京都内ではみぞれ、郊外や関東北部の平野部では場所によって数センチ積もった。気温も下がって一気に真冬の様相。いくらなんでも早すぎるよなあ…。そんなことをぶつくさ唱えながら部屋を暖め、音盤タイム。きのうのベームに続いて今夜も60年代重厚長大路線でいこうかと、こんな盤を取り出した。


201611_Cluytans_LVB.jpg  201611_Cluytans_LVB_2.jpg


アンドレ・クリュイタンス(1905-1967)とベルリンフィルによるベートーヴェン交響曲集。1957年から60年にかけてベルリンのグリューネヴァルト教会で録音された。当時グラモフォンがベルリン・イエスキリスト教会をしばしば使ったの対し、EMIはグリューネヴァルト教会でのセッションが多かったと聞く。今夜はこの中から第2番を取り出して聴いている。手持ちの盤は十年ちょっと前に出た廉価盤ボックスセット。同じ音源でアラカン世代にはお馴染みの70年代セラフィムシリーズのものもいくつか手元にある。EMI音源のこのセラフィムシリーズシリーズはクリュイタンス&ベルリンフィルのベートーヴェン、バルビローリのブラームスなど、今から考えても魅力的なラインナップだった。惜しむらくは緑色のジャケットだけが廉価盤のチープさを物語っている。

それにしてもこの盤で聴けるベルリンフィルの音は素晴らしい。弦楽群の分厚く重い響きはベートーヴェンに相応しく音楽のそこここにウェイトをのせてくれる。それでいてEMIの録音ポリシーもあってか、中高音のしなやかさも兼ね備えて美しく歌う。木管も金管もやや遠くに定位し、弦楽群とブレンドした響きが部屋に満ちる。ベルギー生まれのクリュイタンスは仏系指揮者ということになっているが、幼少期には父からドイツ語やゲルマン文化の薫陶を受けたという。この録音当時、クリュイタンスのベートーヴェンチクルスは大そうな人気であったというし、仏系指揮者としては初めてバイロイトにも登場している。そんなクリュイタンスがベルリンフィルをしなやかに歌わせ、ときに熱くドライブする。まだカラヤン色に染まる前のベルリンフィルは低弦群のアインザッツが遅め、かつ深く響く。この演奏がもし独グラモフォンでなされていたら、いささかもたれ気味の響きになっていたかもしれないが、EMIの録音はヴァイオリン群の中高域がしなやかかつ解像度が高く、それが深い低弦群の響きにうまくのって素晴らしい響きを形成している。昨年タワーレコードからこのコンビのベートーヴェン録音がSACDでリリースされた。それだけの価値がある名録音の証しだろう。


第2番の音源を貼っておこう。とりわけ美しい第2楽章は12分48秒から。



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

ベーム&BPO シューベルト交響曲ハ長調<ザ・グレート>


勤労感謝の日。よわい六十を過ぎたが、いまだ勤労者。感謝されているかどうかはわからないけど…。予報通り冬型の気圧配置かつ寒波到来で、朝から強い季節風が吹き抜ける一日。気温も上がらず、何やら今夜からあすにかけては雪になるとか。11月の雪だなんて…どうなッテンの。 それでも日中は陽射しに恵まれ、先日の掃除でリフレッシュしたオーディオセットのスイッチを入れて、のんびり音盤タイムを楽しんだ。


201611_Bohm_BPO_Great.jpg  201611_Bohm_BPO_LP.jpg


カール・ベーム(1894-1981)がベルリンフィルを振ったシューベルトの交響曲<ザ・グレート>を取り出した(番号の付し方で諸説あって混乱するので、ここでは<ザ・グレート>としておく)。録音は1963年@ベルリン・イエスキリスト教会。例によって録音はカラヤンの耳とまで言われたギュンター・ヘルマンスが担当している。60年代のベルリンフィルはもちろんカラヤンの時代になっていたわけだが、その前後に残されているカラヤン以外の指揮者との録音には名演が多い。ベーム、フリッチャイ、クリュイタンス、マゼール、クーベリク、ケンペ…。多分この時期のベルリンフィルは誰のものとでも最高のパフォーマンスを発揮し、しかも戦前からの伝統的な色合いを残した演奏が可能だったのだろう。レコード会社もそういうベルリンフィルを使って録る盤には、それに相応しい指揮者を選んだに違いない。

さてベームのシューベルト。久々に針を降ろしたのだが、期待に違わぬ名演だ。60年代ベルリンフィルの素晴らしさが堪能できる。弦パートを中心にした完璧なバランス、よくまとまったアンサンブル、指揮者の意図を明確に把握し具現化する合奏能力、いずれもこの時代にあっては抜きん出ていたに違いない。ベームというと晩年のウィーンフィルとの演奏がより強くインプットされているぼくら世代には、60年代のベルリンフィルとの演奏は実に新鮮だ。テンポは総じて速く、音楽の作りは少々荒削りかとで思わせるほどだ。カラヤンのようにフレーズを磨き上げ、レガートにつなぐといった手法の正反対。実はこの盤を取り出したとき、のんびりしたテンポの退屈な1時間が待っているのかと予想していたが、ものの見事に予想は外れ、A面・B面一気呵成に聴いてしまった。

第1楽章は冒頭こそじっくりとしたテンポながら、主部に入るとグイグイと加速して飽かずに聴かせる。結尾部で冒頭の主題がグッとテンポを落として戻ってくるところなどは抜群の効果をあげている。第2楽章も指定のアンダンテより速めの設定。弦も木管もフレーズの入りが明確で、ややアクセントを付けて入ってくるのが特徴的だ。終楽章も冒頭からドライブ感満点で、ベルリンフィルの高い合奏能力が発揮され、いささかもゆるんだところがない。ベームは60年代がベストという人が多いが100%賛同したい。


同曲第2楽章のリハーサルの映像があったので貼っておこう。オケはウィーン交響楽団とある。
途中1分27秒から本番演奏に切り替る。1分57秒、2分5秒のフォルテ指示でみせるしぐさは晩年と同じ動きで懐かしい。エア・コンダクターでベームのまねをする際はこのアクションが必須だ。


1976年ザルツブルク音楽祭でのベームとウィーンフィルによるライヴ。この演奏は当時NHKFMをカセットテープでエアチェックし繰り返し聴いた記憶がある。投稿者のコメントによれば、この音源は当時オープンデッキ(1・3・4楽章は38/2トラ)でエアチェックしたものをデジタル化したのとのことだが、良好な音質が保たれている。ブラーヴォ!



★★追伸★★
ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。
■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

カレンダー
10 | 2016/11 | 12
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -
最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
リンク
QRコード
QR
閲覧御礼(2010.10.01より)