ベートーヴェンのバガテル



早いもので、きょうで二月も終わり。あすはいよいよ弥生三月。年度末にあたるが、業務計画も一時期のビハインド状態から回復、ほぼ予定通り完了見込みになった。ヤレヤレ…。そんなことを考えつつ、きょうは少し早く仕事を切り上げ帰宅した。ひと息ついて部屋の片付けをし、さっぱりしたところで音盤タイム。久々にグールドのボックスセットを取り出して、エイヤっと引き当てた1枚がこの盤だ。


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ベートーヴェンのバガテル集。ちょっとした小品といった意味を持つバガテルだが、「ちょっとした」の意味は作曲家により、あるいは作品により様々だ。この盤には作品33の7曲と作品126の6曲が収められている。作品33はまさに「ちょっとした」モチーフ集のようでもあり、確かに彼のピアノソナタに使われているモチーフや音形が現れたりする。あるいは技術面での教育的ピースの側面もあるのかもしれない。一方作品126は作品33とはまったく世界が異なる。作品126の6曲はベートーヴェンの最晩年の作品としての意味が色濃く出ている。規模はいずれも小さく、その点はまさにバガテルではあるのだが、曲のイメージやモチーフの扱いは深く、ときに瞑想的だ。

ベートーヴェンは古典派からロマン派への扉を開けた存在と位置づけられるが、この作品33と126の二つのバガテル集を聴くとその意味がよく分かる。作品126は明らかにロマン派の音楽になっているからだ。感情の表出、モチーフの扱い、調性の位置づけ、それぞれが古典期よりも拡大され、大胆な試みがなされいてる。


作品126の3。深い呼吸で瞑想的な演奏を繰り広げるグールド



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きょうが命日パコ・デ・ルシア <LUZIA>


きょう2月26日は年に一度、二・二六事件を思い起こす日だ。きょうの午後、たまたまテレビを観ていたら1979年に放送されたNHK特集「戒厳指令「交信ヲ傍受セヨ」」ともとにした番組が放送されていた。もととなった放送は38年前の番組だが、これまでも何度か再放送されている。ぼくは1979年の放送を会社の独身寮の部屋で観ていて、番組の内容に大いに引き込まれた。ご覧になった輩も多いことだろうから、くどくどここで説明するつもりはないが、貴重な傍受記録の発掘と解読、まだ存命だった当時の関係者や家族への取材など、事の真否はおくとしても、ドキュメンタリーとしての説得力は絶大で、きょうの再放送も食い入るように観てしまった。


NHK特集「戒厳指令「交信ヲ傍受セヨ」」


続編ともいうべき、二・二六事件 消された真実~陸軍軍法会議秘録~
https://youtu.be/_Yu70Jp1g5A
 向坂資料によるさらに興味深い内容。


さて、天下国家と人生は語らない本ブログ。音盤ネタにいこう。
きょう取り出したのは、3年前のきょう2月26日に66歳で亡くなったパコ・デ・ルシア(1947-2014)が1998年に発表したアルバム<LUZIA>。ぼく自身、同じようなギターを弾きながらフラメンコはまったく不案内。フラメンコギタリストを5名あげよと問われたらギリギリ何とか答えられるかというレベルだ。まず、伊藤日出男だろう(^^; サビーカス、モントーヤ…古いなあ。


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この盤は彼の14作目のアルバムだそうだ。おそらく正統派というか、歴史的なフラメンコスタイルから見るとパコはフラメンコの技巧をベースにしながらもまったくの別物という評価なのだろう。しかし、それが故に70年代に頭角を現し、以降の人気を得るに至った。フラメンコに興味があったわけではないが、彼が初来日した際にNHKテレビで演奏したときの印象は強烈だった。ギターというのはこんなにも速く音階が弾けるのものなのかと。手元には70年から80年、人気のピークにあった頃のベスト盤CDと中古のLPが2枚、そしてこの<LUZIA>があるだけだが、このアルバムはとても気に入っていて時々取り出して聴く。ジャズやフュージョン系のアーティストとの協演も数多いパコのイメージだと、圧倒的なテクニックとノリと勢いとで弾き抜けるイメージがあるが、この盤は全体を通してどこか静けさが支配する。冒頭のBuleriaからして、超低音域の響きを伴うカホンに導かれてパコのトレモロが繰り出される展開されていくが、フレーズの合間にはふと寂しさが宿る。この盤の作成中に亡くなった母に捧げられたというのも偶然ではないだろう。そしてパコ自身も三年前のきょう66歳で亡くなった。


この盤の全曲。


若き日のパコ。


パコも激賞する現代の若手テクニシャン:グリシア・ゴリャチェフ。


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内田光子のモーツァルト第23番



プレミアムフライデーとか。かつての花金の焼き直し…だよね。花もプレミアムも縁のない地味な勤め人人生。本日もしっかり定時まで業務遂行いたしましたよ(^^ ところで先日、2011年に続いて二回目となる内田光子グラミー賞受賞の報。そのうち彼女の原点とでもいうべきモーツァルトを聴こうと思いつつきょうになった。


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取り出したのは80年代にジェフリー・テイトと組んで完成させたピアノ協奏曲全集の中の1枚。22番と23番が収録されている(現役盤はカップリングが変わっている様子)。ぼくの手元にある内田光子のアルバムはわずかに数枚。実演にも接していないし、彼女の演奏を語る資格もなく、ここは淡々と先入観無しにモーツァルトの音楽を楽しもうか。

この盤に収録されている22番と23番はセットで作曲されたとのこと。実際、オーボエに代ってクラリネットを使っている編成、第2楽章の緩徐楽章を短調にしている構成など共通点がある。22番は三つの楽章合せて35分を超える堂々とした構成。第1楽章はトランペットとティンパニを伴った典礼的な雰囲気で始まる中々華やかな楽章だ。途中には木管群による美しい掛け合いもあって楽しめる。第3楽章は典型的なロンド楽章。演奏時間12分と比較的長いロンドだが、展開と管弦楽の妙で飽きさせない。

23番は24番ハ短調のコンチェルトを並んで傑作の誉れ高い名曲だ。22番の華やかな曲調から転じて、第1楽章は弦楽中心の落ち着いた響きで始まる。編成上トランペットとティンパニを含まないことも落ち着いた曲想の要因だろう。第1楽章冒頭のE~C#の音形は、この曲の他クラリネット協奏曲、クラリネット五重奏曲の開始モチーフと同じとWikipediaで知ってなるほどと合点。調性も同じイ長調だし、この協奏曲でもクラリネットが活躍する点も共通だ。第2楽章、シチリアーノ風の嬰ヘ短調楽章も短いながら冒頭から弦楽群の繰り出すフレーズが切々と歌われ、ときにショパンを思い浮かべるようなロマンティックな表情すら見せる。聴き進めているいるうちに、この曲が18世紀終盤の古典派の楽曲であることを忘れてしまいそうになる。

内田光子のピアノの音色は美しく、以前取り上げたショパンのアルバムでみせた積極的な表現よりは、穏やかに曲に寄り添うように弾き進める。テイト指揮イギリス室内管弦楽団はもちろんピリオドスタイルではなく、オーソドクスなアインザッツと深みのある響きが心地いい。デジタル録音も定着した80年代後半のフィリップス録音。ピアノとオケがよくブレンドしながらもクリアな響きを失わない録音も二重丸だ。


この盤の音源。傑作第23番全曲。11分23秒から始まる第2楽章アダージョ。8分の6拍子でピアノがテーマを提示し、12分18秒からヴァイオリンと木管群がユニゾンでそのテーマを歌い上げる。12分35秒から45秒にかけての和声の移ろいが素晴らしい。低弦群の下降半音階進行が意味深く響く。



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モンポウのピアノ自作自演盤



きのうの<コンポステラ組曲>で思い出し、今夜はこんな盤を取り出した。


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スペインの作曲家;フェデリコ・モンポウ(1893-1987)のピアノ曲集。写真のCD4枚組のセットは彼のピアノ曲全作品を集めたもので、しかも演奏をしているのは作曲者モンポウ自身というアルバムだ。モンポウは1893年に生まれ1987年に94歳で亡くなった。ライナーノートを見ると、この盤の録音は1974年。彼が81歳のときに録音されたことになるが、音はすこぶるいいし、元々ピアニストも目指していたモンポウ自身のピアノも年齢をまったく感じさせない。自身の作品が持つ色彩感を過不足なく表現しているといえる。

モンポウはぼくらギター弾きにも馴染み深い。ピアノ曲の<歌と舞曲>から1曲が編曲されているし、ギターオリジナル作品として<歌と舞曲13番>ときのう記事に書いた<コンポステラ組曲>も名高い。作風はフランス印象派のイメージが色濃く、ときに最小限の音数で音楽構成したり、5音階を多用したりと、むしろドビュッシーやサティーを思わせる曲想が多い。<前奏曲集>もその路線と言えるが、ショパンの後期作品を思わせるような曲もあり興味深い。どの曲にも共通して流れている内省的で、選ばれた少ない音に凝縮されたロマンティシズムが、夜こうして聴くには相応しい。ドビュッシーほど先鋭的でなく、サティほど諧謔的でもなく、少々ゆるい(音楽としてはツメが甘い?)ところが、ちょうどいい塩梅という感じだ。


<歌と踊り>の中でも人気の高い第6番


同じ第6番をギターで弾くとこんな感じです。


全12曲ある<前奏曲>から10曲が演奏されていてる。



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モンポウ<コンポステラ組曲>



三寒四温のきょうこの頃。けさの当地は冷え込みMAX。通勤時、車の外気温計は零度を示していてオッタマゲェ~。あすは一転暖かい雨になるとの予報。寒暖の差が大きいのも季節の変わり目の証拠だろう。 さて本日も程々に業務に精励。帰宅後ひと息ついて、こんな盤を取り出した。


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先日のパガニーニのソナタで思い出したジュリアン・ブリーム(1933-)が弾くスペイン近代作品集。1983年録音。もう聴かないからと、知人から譲り受けた数十枚のLP盤に混じっていたもの。収録曲は以下の通り。

 ・トゥリーナ:ファンダンギーリョ Op.36/セビリャーナ Op.29
 ・モンポウ:コンポステラ組曲
 ・トローバ:ソナティナ
 ・ジェラルド:ファンタジア,
 ・ファリャ:讃歌~ドビュッシーの墓のために/粉屋の踊り
 ・オアナ:ティエント

ブリームにとってはいくつかの曲は再録。当時地元英国では彼の50歳の誕生日を記念して、やはり新録音のアランフェス協奏曲との2枚組で発売されたとのこと。名実共に当時のギター界トップに立ち、油の乗り切ったブリーム節が楽しめる1枚だ。

60年代から80年代初頭まで、クラシックギター界のビッグスリーといえば、セゴヴィア、イエペス、ブリームだった。もちろん実力派は他にもいたが、商業的にも代表格でかつコンサートもこなし、世界的なネームバリューがあったのはこの三人だろう。そして、たとえ小さなラジオから流れてくる貧弱な音であっても、この三人の音は一音聴いただけですぐに誰と分かるほど個性的でもあった。ブリームはセゴヴィアよりずっと新しい感覚ながら、いかにもギター的な甘い歌いまわしで見得を切るところもあって、好きなギタリストだった。
この盤でも当時の愛器:ロマニリョスから甘い音色を引き出し、近代スペインらしいロマンティシズムを奏でている。中でもモンポウ(写1893-1987)の<コンポステラ組曲>は彼の数少ないギターオリジナル作品であることにとどまらず、ギターの特性を上手く使い、教会旋法など古風な技巧を織り交ぜた佳曲で、ギターの美しい音色が一層よく映える。


この盤の音源。ブリームの弾くモンポウ<コンポステラ組曲>から前奏曲。


フランク・ウォーレスというギタリストによる全曲。楽器はハウザー1世1931年製とのこと。昨今、こういう右手のタッチは滅多に見かけなくなった。



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リヒテル&マタチッチのシューマン



きのうは夕方から夜半にかけて寒冷前線通過で関東地方は強風大荒れ。前線通過後は一気に気温が下がって、けさは真冬の寒さ。上越国境でブロックし切れない雪雲が当地平野部まで押し寄せ、小雪が舞うほどだった。さて、早いもので二月も下旬。きょうは居残り仕事少々こなし、9時少し前に帰宅した。ひと息ついてレコード棚を物色していたら、ジャケットのリヒテルの横顔に目が止まってしまった。


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ロマン派ピアノ協奏曲の中でもお気に入りの一曲。シューマンのピアノ協奏曲イ短調。リヒテルのピアノとマタチッチ指揮モンテカルロ歌劇場管弦楽団による演奏。1974年の録音。手持ちの盤は70年代終わりに2枚組廉価盤で出たときのもの。リヒテルの独奏でロマン派を代表するピアノ協奏曲が3曲、グリーク、シューマン、そしてブラームスの2番が入っている。注目すべきはグリークとシューマンで、その理由はピアノの巨人リヒテル(1915-1997)の録音であることはもちろんだが、ブルックナー振りとして人気の高かったロブロ・フォン・マタチッチ(1899-1985)が当時の手兵モンテカルロ歌劇場管弦楽団を振っていることにある。N響に客演して自作の交響曲を振ったとき、うまく振れずに苦笑いしたマタチッチ。およそ合わせ物を起用にこなすというイメージはないのだが、よく考えてみれば、オペラハウスでのキャリアも長く、晩年の手刀を切るようなぶっきら棒な指揮ぶりだけで彼を推し量ってはいけないのだろう。

シューマンに針を下ろす。曲はマタチッチのペースのなのか、第1楽章から思いのほか速めのテンポでもたれずに進む。リヒテルのピアノはフォルテ指示のフレーズでは強靭なタッチを聴かせ、その次の瞬間にはぐっとテンポと音色に変化をつけてギアチェンジもうまく、この曲のロマン派らしい側面をうまく引き出している。マタチッチの指揮はやはり細かいところにこだわっている風はなく、オケパートのアンサンブルはほどほど、木管群のソロも格別耳を引き付けられるほどでもなく、万事中庸というところか。3つの楽章のうちでは第3楽章が中々興にのって楽しい。ピアノとオケの掛け合いがこの第3楽章の聴かせどころだが、ここへきてマタチッチの棒も冴えてきたのが、オケもドライブ感が出てくる。とりわけコーダに入ってからの流れるような運びはこの曲を聴く醍醐味だ。晩年はバッハやグリークでかなり内省的な演奏したリヒテルだが、この録音の70年代半ば頃、60歳になったばかりの彼はまだまだ血気盛んだった。


この盤の音源で第1楽章


同じく第2・3楽章。第3楽章は5分07秒から。



ヴィジュアルのみならず個性的かつエネルギッシュな演奏で評判のグルジア出身カティア・ブニアティシヴィリ(1987-)による演奏。バックはパーヴォ・ヤルヴィ指揮hr響(旧フランクフルト放響)。



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セルのブルックナー第8



当地関東では金曜日の春一番のあと、二日続きで北風MAXの週末。きょうも晴天ながら、窓越しに差し込む陽射しだけでは足らずに、終日エアコン暖房オンの日曜日となった。さて、あすからまた一週間。今夜は少し早く休もうかと思いつつもアンプの灯を入れ、こんな盤を取り出した。


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ジョージ・セルとクリーヴランド管弦楽団によるブルックナーの第8交響曲。1890年第2稿ノヴァーク版による演奏。手元には70年代に廉価盤シリーズで出ていた頃の2枚組LPと数年前セルの録音がまとまった復刻されたときに手に入れた第3番との2枚組CDとがある。ブルックナーに開眼したのは70年代半ば大学2年の頃。ブルックナーやマーラーの大曲がブームになり、学生の仲間内でもよく話題になった。中でもブルックナーの第8番は、その規模や、豪放さと敬虔な祈りとを併せ持つ曲想から人気があった。クナッパーツブッシュや朝比奈隆のブルックナー録音が人気を得出した時期でもある。
この第8番は1969年10月ジョージ・セル最晩年の録音の一つ。この録音の翌年、セルはクリーブランド管弦楽団と1970年、大阪万博に合わせて来日公演を行い、そのあと帰国して程なく帰らぬ人となった。

セルのブルックナーは当時決してメジャーな人気を得たとは言えなかったが、どうして、素晴らしい演奏だ。セルらしく全体は古典的によく整い、楷書の趣き。いつも通りアンサンブルの縦の線はきっちり合い、聴いていてラフなところがまったくない。それではいささか肩肘張っていて面白くないのではないかという向きもあるだろう。しかし、これだけの大曲を自発性という言葉のもと、奏者の勝手に任せていては断片的な印象は残るかもしれないが、曲を大きく俯瞰して聴かせることは難しい。徹頭徹尾神経の行き届いた演奏という意味では、解釈は異なるがチェリビダッケの演奏に通じるところがある。古典的によく整いと書いたが、そこは後期ロマン派の大曲だ。ブルックナーと聞いて期待する重量級の響き、金管群の迫力、第3楽章での弦の歌、いずれも過不足なく充実している。またセルの演奏というと古典的でスッキリとした造詣から、テンポも速めというイメージがあるが、実のところはロマン派以降の曲ではときにゆったりとしたテンポと取り、スケールの大きさとロマン派風の味わいをみせることがある。この曲でも第2、第3楽章は他の演奏に比べるとテンポは遅く、特に第3楽章は29分を要し、多くの他の盤と比べてももっとも遅い部類に入る。音響的にはスッキリと見通しのよさを保ちながら、大きなフレージングと時に弱音を生かした表現で、実にロマンティックな表情を聴かせてくれる。手元にはこの曲の盤が10種ほどあるが、ケンペ&チューリッヒトーンハレ盤、チェリビダッケ&ミュンヘンフィル盤と並んで残しておきたい名演の一つだ。


この盤の音源で終楽章。



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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