ボエルマン<交響的変奏曲>作品23



関東地方は終日冷たい雨。山梨や北関東の山間部は時ならぬ降雪に見舞われた。あすにかけて関東南岸を深い気圧の谷が通過するようで、関東平野部でも雪の予想だ。
三月最後の日曜日。格別の用事もなく終日在宅。一昨日注文した楽譜が届いたので、さっそくギターを取り出し初見大会。昨年末、若くして亡くなった佐藤弘和氏が闘病中に書き残した小品集が先日リリースされたので、さっそく注文していたもの。いずれも佐藤作品のエッセンスがこめられた小品で、昨年発売された<48の小品集>に通じるもの。機会をみて演奏録音を試みよう。 さて、あすから今年度最終週が始まるという晩。先日の<APAチェロの会>でのチェロ名曲の数々を思い起こしながら、こんな盤を取り出した。


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フランスのオルガニストにして作曲家であり夭折したレオン・ボエルマン(1862-1897)によるチェロと管弦楽のための<交響的変奏曲作品23>。先日来久々に聴き直しているトルトゥリエのボックスセット中の1枚。きのうの記事に書いたシューマンの協奏曲同様、トルトゥリエの息子ヤン・パスカル・トルトゥリエがロイヤルフィルハーモニーを振って伴奏を付けている。録音も同時期の1978年。日付からみても同じセッションで録られたようだ。取り出した#8のディスクには、ラロ、サン=サーンスの協奏曲、フォーレのエレジー、そしてボエルマンのこの曲が収録されている。

クラシック音楽全般を長年聴き親しんでいる輩でも、特定の楽器の世界に入り込むと、多くの見知らぬ名前に出会うことが多い。例えばクラシックギター弾きが当たり前のように口にする、カルカッシ、ソル、ジュリアーニ、カルリ、タレガといった名前も、他の楽器愛好家や一般のクラシック愛好家からみるとほとんど無名に近いだろう。チェロの世界でいえば、ロンベルク、デュポール、ドッツァウアー、ポッパーといった名前はチェロ弾きにはベートーヴェンやブラームスと同等以上に馴染み深い。そうした作曲家は教則本や練習曲といった教育的段階でよく使われる曲の作者であることが多いのだろうが、もちろん立派なソナタや協奏曲も書いている。ぼく自身もそうした作曲家に通じるべくもなく、先日の会のような、その楽器の愛好家が集まる機会で、同時にそうした作曲家による作品を知ることになる。ボエルマンもそんな作曲家の一人。たまたまぼくはこのディスクを持っていたので名前は知っていたが、先日の会でボエルマンのチェロソナタを聴いて、あらためのその名を思い出した。
交響的変奏曲は後期ロマン派の作風を持ち、三つの楽章から成る。第1楽章はモデラート・マエストーソの指定があって、劇的かつ濃厚な管弦楽に支えられながら、独奏チェロが主情的な旋律を歌う比較的短い導入部としての位置付け。第2楽章はアンダンテの指定になり、第1楽章の劇的な様相から転じて穏やかな歌が奏でられ、ヴァリエーションを繰り広げる。第3楽章はテンポが上がり、切迫するオケパートに追われるようにテクニカルなパッセージが続き、最後は第2楽章のテーマが大きく回帰されて大団円となる。


この曲<交響的変奏曲>の音源。


ボエルマンのチェロ作品としてもう一つの重要な作品。チェロソナタ作品40。この作品を広めたというアンドレ・ナヴァラによる演奏。サン=サーンスやフォーレの作品と並ぶ仏系チェロソナタとして、もっと演奏されてもよいと思われる美しい曲想だ。



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シューマン チェロ協奏曲イ短調



早いものできょうは三月最後の週末土曜日。ここ数日、関東では気温低めで、先日開花宣言した東京都内の桜はいったん足踏み状態の様子。北関東の内陸部では開花宣言もまだこれからだ。それでも、何日か暖かい日が続けばあっという間に春爛漫。いつもながら、この時期の陽気の劇的な変化には驚く。 さて、あすも日曜ということで夜更かしMAX。夜半過ぎになって、こんな盤を取り出した。


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シューマンが唯一残したチェロ協奏曲。先日久々に聴いたトルトゥリエのボックスセットから#5を引っ張り出した。1978年の録音。トルトゥリエの息子ヤン・パスカル・トルトゥリエがロイヤルフィルハーモニーを振って伴奏を付けている。

シューマンはピアノ、ヴァイオリン、チェロのためにそれぞれ1曲ずつ協奏曲を残し、そのいずれもがロマン派の薫り高い名曲だ。チェロ協奏曲は全3楽章がアタッカで演奏される。第1楽章の出だしの4小節から一気にドイツロマン派の特徴とでもいうべき、たゆたうような息の長いメロディーにひきつけられる。しかもソロとオケが渾然一体となって曲を構成し、ソロ+伴奏という単純な構図に終わらない。第2楽章は短いながらも美しいアンダンテ。弦のピチカートにのってチェロがレシタティーボ調に歌う。ときに木管群との対話も交わしつつ第1楽章の主題を回顧する。第3楽章になって音楽は躍動的になって技巧的なパッセージが続き、この曲が屈指の難曲であることをうかがわせる。チェリストには腕の見せ所だ。トルトゥリエの演奏はいつもながら張りのある音色と活き活きとした歌いっぷり。決して技巧派というチェリストではなかったが、終楽章の難しいパッセージも歯切れのいいボウイングでピタリと合わせていてさすがのひと言だ。


ロストロポーヴィッチとバーンスタインの協演。70年代半ばにこのコンビはEMIにこの曲を録音しているが、その前後のものと思われる。


第1楽章。ベネディクト・クレックナーという若手。バックを小編成の弦楽オケにアレンジしている。この曲には相応しい編成に感じる。ソロもオケもよく歌っている。


第2楽章
第3楽章


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再会



盲導犬育成のボランティアとしてラブラドールレトリヴァー犬のパピーをお預かりした話は以前書いた。2015年初秋に我が家にやってきて、一年後の昨年秋に協会へお返しした。その後、盲導犬としての本格的な訓練が始まり、途中の経過についても報告を受けていた。訓練に入ったパピーが最終的に盲導犬になる確率は10頭中、2、3頭程度とのこと。途中何度かの試験があって、訓練の成果や適正が試される。その結果は都度、パピーを育てたぼくらボランティアへも報告があり、わが子のことのように一喜一憂することになる。今回は最終段階へ進むテストに無事合格したとのことで、面会のチャンスを与えられ、久しぶりに会いに行ってきた。

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わが家ですごしているときは、マイペースののんびり屋であったが、さすがに数ヶ月の訓練で一つ一つの行動に対する集中力が格段に高まっているのがよくわかる。体重はほとんど変わっていないとのことだったが、胸や足の筋肉が発達していて、逞しくなっていた。それでも仕事モードから解放されると、幼ないパピーの面影もまだあって、家人の腕の中に入るといつまでものんびりしていたそうな表情を見せる。

面会時間の一時間はあっという間に過ぎる。この先、無事盲導犬として仕事をするようになるのか、あるいは別の道に歩むことになるのか…。結果のいかんに関わらず、彼女と会うのはこれが最後になるのだろうと、いささかセンチメンタルになりながらも、明るくバイバイ(^^)/~~。 彼女はこちらを振り向くこともなく、訓練士に連れられて軽い足取りで犬舎へ戻っていった。


~~~閑話休題~~~

栃木県中部にある協会まで行ったついでに、那須黒磯まで足を延ばすことにした。お目当ては<丸信本家>と<SHOZO_CAFE>。昨年の9月以来半年ぶりだ。ちょうど昼時だったので、まずはJR黒磯駅近くの<丸信本家>でラーメンを食す。相変わらずの盛況ぶりながら、感じのいい店主夫婦の呼吸はいつも通り絶妙で、混雑にイライラすることもない。見掛けは何の変哲もないラーメンだが、あっさりしたスープと平打ち縮れ麺、香り高い青ねぎと自家製チャーシューのベストミックスはスーッと腹に納まりもたれない。同じ栃木県内の佐野ラーメンに近い感じだが、いっそう軽い味わいながらも物足りなさはなく最高だ。

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炭水化物で腹もおとなしくなったところで、那須高原へ車を進める。全国からカフェマニアが巡礼に訪れるという<SHOZO_CAFE>も半年ぶり。いつもなら行列待ち必至だが、この日はたまたま待たずに案内される。人気店らしくスタッフの接客もジェントルかつフレンドリー。フレンチローストの珈琲はもちろん、家人が注文した紅茶も丁寧に淹れてあって、やや濃い口のスイーツ類と共にゆったり楽しめる。

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昨今テレビの県民性比較バラエティー番組では、何やら底辺争いを繰り広げているような栃木・群馬・茨木の北関東三県であるが、どうやら栃木県が総合的には頭一つリードしているのではないかと感じる。日光は外人観光客に相変わらず人気だし、那須高原も別荘地、冬のリゾート地として第一級だろう。さらにご当地ラーメンと人気カフェが加わる。おらが群馬はどうも分が悪い。


SHOZO_CAFEは栃木県黒磯周辺のほか、東京南青山にも<SHOZO CAFE_STORE>という店舗を出している。



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ソニー・ロリンズ <橋>



週末土曜日。休みを取ったきのうに続き野暮用外出。中距離ドライブで心地よい疲労感もあって、夕飯を済ませたあとソファでちょいとうたた寝。夜半過ぎにやおら目を覚まし、深夜の音盤タイム。久しぶりにこんな盤を取り出した。


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ソニー・ロリンズ(1930-)の名盤<橋>。1962年NY録音。ソニー・ロリンズ(ts)、ジム・ホール(gr)、ボブ・クランショウ(b)、ベン・ライリー(ds)、H・T・ソーンダース(ds)/#5。手持ちの盤は80年代初頭にミッドプライスで再発された国内盤。90年代半ばに御茶ノ水の中古レコード店で手に入れた。50年代半ばまで活躍し、その後活動が不安定になり一線から姿を消していたソニー・ロリンズが復活を遂げた盤として有名な一枚だ。復活に際してロリンズは、ニューヨークのイースト川に架かっている吊り橋<ウィリアムズバーグ橋>の上で人知れず練習を重ねたという。収録された自作<橋>およびアルバム・タイトルは、このことによる。収録曲は以下の通り。

side1 ウィザウト・ア・ソング/ホエア・アー・ユー/ジョン・S
side2 橋/ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド/ユー・ドゥ・サムシング・トゥ・ミー

当時すでにコルトレーンやオーネット・コールマンなどの新しいジャズの潮流が注目されつつあった頃。このアルバムもオーソドクスなジャズイディオムを中心に据えながらも、そうした時代へのチャレンジも聴き取れる。ピアノではなくギターによるバッキングは総じて柔らかなトーンを生み出し、ソニー・ロリンズの太く滑らかに歌うサックスとよく合う。当時のステレオ録音によくあった左右完全分離の楽器配置で、ソニー・ロリンズのサックスはもっぱら右チャンネルから、リズムセクションは左チャンネルから聴こえてくる。ボブ・クランショウ奏するベースがたっぷりと響き、ピアノレスながらエネルギー感の不足はなく、全体のバランスや帯域感も良好だ。

タイトルチューンの<橋>はリズムが複雑に交錯する中、高速スケールが続き、難易度の高さをうかがわせるが、ソニー・ロリンズの吹きぶりは終始落ち着きと柔軟さを失わない。ビリー・ホリデイ作のバラード<ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド>では、まさに人の息づかいのようなトーンで、心の底のもやもやが静まってくる。このアルバム以降、現在も活躍するソニー・ロリンズの復活を記念するこのアルバム。当時30代になったばかりの彼のジャケットポートレートも聴こえてくる音楽同様に、どこか静けさと確信を感じさせる。


この盤の全曲。


<橋>。このアルバム発売当時のものだろうか。ソニー・ロリンズはアルバムジャケットと同じ柄の上着を着ている。



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<人生フルーツ>



朝夕は冷え込み、日中は程々に暖かい、この時期らしい陽気の日曜日。格別の用事もなく、だいぶくたびれてきた卓上PCの入れ替えをしようとネット相手に機種選定。いくつかの候補に絞って近々最終決定というところまでいった。早めの夕飯を済ませたあとは家人の提案で隣り町のミニシアターへ。ドキュメンタリー映画<人生フルーツ>を観る。


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愛知県春日井市にある高蔵寺ニュータウン。その一角に住むある老夫婦の日常を追った作品。2016年東海テレビが制作し、今年初めから劇場公開が始まった。 登場する津端修一さん(1925-2015)は建築家として60年代に手がけた高蔵寺ニュータウンに自ら入居し、その後その一角に土地を求めて家を建てる。ニュータウン開発で失われた雑木林や田畑を自らの宅内で再現するべく、夫人の英子さん(1928-)と共同生活がスタート。結婚から60年、家を建ててから40年。ふたり合わせて177を超える歳になり、実り多き人生となってからも、日々小さなことを淡々とひとつひとつ積み重ねていく様子が描かれる。

資質、能力、適正、相性、意志、偶然、境遇…様々なものの組み合わせによる、ひとつの結果事例…ではあるが、毎日毎日同じことを淡々と繰り返し、小さなことを積み重ねて時を刻むことの素晴らしさと大切さをあらためて感じた。人も物も庭の木々も、等しく年月を重ねていく様が美しく描かれた映像。樹木希林の語り。音楽担当:村井秀清。アルベルティバスにのるシンプルなメロディのピアノ曲がこころ和ませる。


作品予告編



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APAチェロの会@川崎



来る3月20日(月)祝日の午後から夜にかけて、NPO法人:日本アマチュア演奏家協会(APA:エイパ)によるイヴェントがあって、チェロ相方と参加予定。この会は毎年開かれているが、ぼくが参加するのは一昨年2015年2月に行われたとき以来2年ぶり。


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アマチュア音楽愛好家の集まりであるAPAは1974年に設立され、すでに40年を超える歴史を持つ。全国に一千名を超える会員を有し、アンサンブル練習やコンサートなど日常的に活発な活動を続けている。会員構成をみると中高年パワー全開という感じだが、聞くところによれば長いキャリアを持つハイアマチュアが主体で、クラシック音楽に使われる楽器がほぼ網羅されている。
今回催されるのは、その中のチェロ会員による内輪の発表会。十数名のアマチュアチェロ弾きが集い、ピアノ伴奏あるいは無伴奏で日頃の練習の成果をお披露目する。主な曲目とおおよその時間を以下に記しておこう。

◆3月20日(月) 於:ミューザ川崎・市民交流室 15:45開場後ただちに開演◆

<15:45開演>
ヴィヴァディ:チェロソナタ変ロ長調 <<<<< ここが出番です(^^;
L.ボエルマン:ソナタイ短調より
ポッパー:道化師作品3/1
バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番よりプレリュード・アルマンド
メンデルスゾーン:チェロソナタ第2番より

<17:20頃~>
サン=サーンス:チェロソナタ第1番より
マイナルディ:無伴奏チェロのための日本歌曲
ビアッティ:カプリス第7番
フォーレ:チェロソナタ第2番

<18:40頃~20時頃終演予定>
ブラームス:チェロソナタ第1番より
C.P.Eバッハ:協奏曲イ短調より
バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバソナタ第1番
ラフマニノフ:チェロソナタより

ご覧の通り、チェロの本格的なレパートリーが並んでいて、レベルの高さが伺われる先日の記事に書いた通り、今回チェロ相方がソロをとるヴィヴァルディで相方知人のチェロと共に通奏低音パートとして参加。プログラムの最初に演奏することになっている。 これだけのチェロ名曲を一度に聴けるチャンスは滅多にない。さらに今回はチェリスト、ピアノ伴奏者とも一部プロフェッショナルの方も参加予定。ご都合つく方はぜひご来場のほどを。会場はJR川崎駅至近のミューザ川崎。もちろん入場無料。お時間の許す範囲でチェロの響きをお楽しみいただければ幸いです。


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ヴィヴァルディ <チェロソナタ集>



穏やかな日曜日。外はまだ肌寒いが陽射したっぷりの室内は小春日和。野暮用外出から戻ってひと息つき、渋茶をすすりつつ、こんな盤を取り出した。


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モーリス・ジャンドロン(1920-1990)の弾くヴィヴァルディのチェロソナタ集。1967年録音。手持ちの盤は1978年に出た国内盤。十年程前、例によって出張先の大阪梅田の中古手コード店で見つけて買い求めた。通奏低音をマリケ・スミト・シビンガ(ハープシコード)とハンク・ランク(チェロ)という奏者が受け持っている。収録曲は1740年にパリでセット出版された以下の6曲が収められている。

 第1番変ロ長調 RV47/第2番ヘ長調 RV41/第3番イ短調 RV43
 第4番変ロ長調 RV45/第5番ホ短調 RV40/第6番変ロ長調 RV46

チェロソナタというとベートーヴェン他古典期以降の作品がまず思い浮かぶ。バッハは有名な無伴奏作品を残しているが、ソナタは書いていない。ソナタとしてよくチェロで演奏されるのはヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタだ。バロック期を通して、チェロのためのソナタは古典期以降から現代までのチェロの位置付けからすると予想以上に少ない。そんな中、このヴィヴァルディのセットは当時まだ通奏低音担当楽器の役割が強かったチェロにスポット当てた作品として現在でもチェロ弾きに愛好されているようだ。本盤のライナーノーツによれば、ヴィヴァルディは6曲をセットとして書き、調性的にも考慮されているとのこと。形式としては、緩・急・緩・急の教会ソナタ形式を採っているが、いくつかの曲ではアルマンドやクーラントという舞曲名が指定されていて、バロック期組曲形式の室内ソナタの様相もみせる。

さてジャンドロンのヴィヴァルディ。穏やかな音色と過激にならない弾きっぷりで、陽気なイタリアン・バロックのイメージのヴィヴァルディが落ち着いた宮廷音楽に聴こえてくる。当時、楽器指定のない通奏低音パートにはハープシコードに加え、ガンバ族やリュート族が主流だったろうが、この盤ではソロと同じチェロが使われている。もちろん通奏低音側のチェロは控え目な音量と弾きぶりだが、ハープシコードだけの通奏低音に比べ音楽は厚みを増して2本のチェロが絡み合いながら進み、その間をハープシコードのリアライゼーションされた通奏低音が響くというもので、さながらトリオソナタを聴いているかのように感じる。とりわけマリケ・スミト・シビンガによるリアライゼーションが雄弁で、独奏チェロ以上に聴き惚れてしまう。

実はこのセットの中から第1番変ロ長調を近々チェロ相方が弾く予定で、その通奏低音に相方知人のチェロと共にぼくもギターで参加することになっている。昨年のちょうど今頃にも同じ企画(第5番ホ短調)があったのだが、ぼくの都合でドタキャンし迷惑をかけてしまった経緯がある。今回は予定通り実現見込み。通奏低音の素養もないので、リアライゼーションされた出版譜(レナード・ローズ版他)を参考に、和音もコードネームで付して対応予定だが、さてどんな首尾になるか…。


ジャンドロンによるこの盤全6曲音源。たっぷりとしたボウイングとヴィブラートは、今となっては懐かしい響きだ。


第1番変ロ長調。ピリオドアプローチのチェロ、オルガンによる通奏低音。



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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