ベーム&ベルリンフィルのブラームス第1



好天に恵まれた週末が終わり、そして四月も終わり。ひと月前には小雪が舞う日があり、そして桜が咲き、葉桜になったかと思っていたら夏日になり…。毎年感じるがこの時期の一ヶ月は一年でもっとも変化が大きい。明日からは風薫る五月。爽やかな曲をとも思ったが、先日来の流れで今夜もブラームスの第1交響曲を聴くことにした。取り出したのはこの盤だ。


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カール・ベーム(1894-1981)とベルリンフィルによる1959年の録音。手持ちの盤は60年代に出ていたグラモフォンのレギュラー盤。この録音の存在はもちろん昔から知っていたが、手に入れたのは十数年前。近所のリサイクルショップのジャンク箱にて@100円で捕獲。ほとんど聴いた形跡のないミントコンディションだった。
ベームといえば日本では70年代に入ってからウィーンフィルとのコンビで人気を博し、特に70年代半ばからベーム晩年までの人気はカラヤンと伍していた。そのピークが昨日の記事に書いた来日公演だった。この盤はベーム65歳のときの録音で、後年のウィーンフィルとの演奏とは随分と印象が違う。またオケがベルリンフィルというのも興味深い(契約の関係で当時のDGはウィーンフィルとの録音が事実上不可だった)。ベームは同団とのブラームスのステレオセッション録音はこの1番だけで(ベルリンフィルとは1956年モノラル録音の第2番がある)、結局70年代に入り、契約上の縛りもなくなったウィーンフィルと全曲を録音した。

さてこの盤。ベルリンフィルによる同時期のブラームス録音であるカラヤン盤(1963年録音)と同じオケかと思うほど印象が違う。一言で言えば、硬調・硬質・筋肉質のブラームスといったらいいだろうか。ベルリンフィルの音がカラヤン盤と違って非常に引き締まっている。各楽器の分離のよく、パートの動きがよくわかる。低音もしっかりとコントラバスの基音が聴こえてくるが、過度に肥大した響きではなく、きわめてタイトだ。第1楽章の序奏は悠然としたテンポで始まるが、主部は速めのテンポと短めのフレージングで畳みかけるように進む。緊張感の高い演奏といってもいいだろう。このベーム盤を聴いたあとにカラヤン盤を聴くと、すべてがゆるくあいまいにさえ聴こえる。後年全集を完成させたウィーンフィルとの盤も手元にあるが、このベルリンフィル盤ほどの緊張感や硬質感はない。巷間の人気とは裏腹に、70年代以降のベームにダメ出しをする拝が多いのも、この辺りの理由からだろう。ベームらしい(といったから少々語弊があるだろうが)硬派なブラームスとして、このベルリンフィル盤は貴重な録音だ。


この盤の音源。



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ベーム&ウィーンフィル@東京1975年 ブラームス第1



きのうの記事で久々にブラームスの第1交響曲を聴き、やはりいい曲だなあと感じ入った。今夜も続けて聴くことにしよう。


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ベーム&ウィーンフィル1975年来日公演ライヴのLP4枚組セット。その中からブラームスの第1交響曲に針を下ろす。思えばブラームスの1番を聴き始めてから40余年。今夜は一体何度目だろうか。ぼくにとってはクラシックの楽曲の中でもっとも聴き込んだ曲の一つだ。とくに二十歳前後の数年間、もっとも多感であった(はずの)時期にこの曲に触れ、音楽のもたらす多くのものをこの曲から学んだ。この盤の来日公演があった1975年と言えば我が青春真っ只中。FMから流れるこの演奏の中継放送を、四畳半下宿にしつらえた手製のB級オーディオセットで食い入るように聴いたものだ。すでにベームの全盛期は過ぎていたとの評もあったが、このウィーンフィルとの演奏は最後の力を振り絞ったかのような熱のこもったものだった。

第1楽章の冒頭からコントラバスがゴーゴーと軋むような音を響かせ、ウィンナホルンは音を割って強奏する。第2楽章のむせかえるようなロマンチシズム。おんぼろFMセットから流れる貧弱な音だったが、生中継で聴くウィーンフィルの音は、日頃N響の中継で聴いていた音と明らかに違っていて、弦楽群は艶やかで美しく、木管群のチャーミングな音色に心打たれたものだ。その後今日に至るまで、幾多のブラームスの音盤を手にして聴いてきたが、この演奏は青春時代の思い出という心理的バイアスを差し引いても、もっとも好ましい演奏の一つだ。


この盤の演奏はDVDにもなっている。ただただ懐かしいベームの指揮姿。終楽章のコーダでは腰を落として渾身の力を込める。この映像は音質にはやや難有り。オリジナルはもっとふくよかで重々しい。


公演初日での両国国家の演奏。



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エイドリアン・ボールトのブラームス



たしか三回目のプレミアムフライデー。仕事の区切りがよかったので、プレミアムとはいかないが少々早めに退勤。7時少し前に帰宅した。あすから連休の輩も多いことだろうが、ぼくはカレンダー通り。今週末は通常の土日だ。とはいえ一週間が終わり、ホッとひと息。今夜も夜半過ぎには例のアレがあるが、その前に音盤タイム。きのうのビーチャムで思い出し、こんな盤を取り出した。


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英国の指揮者エイドリアン・ボールトとロンドン・フィルによるブラームス交響曲全集から第1番ハ短調を聴いている。1989年生まれのエイドリアン・ボールト(1889-1983)がこの盤を録音したのは80歳を超えた70年代初頭。きのう記事に書いたビーチャムより10歳ほど若いがやはり19世紀生まれ。髭の風貌もちょっと共通点があって時々混同してしまう。ホルストの惑星を初演したことで知られるが、同国のビーチャムやバルビローリなどに比べると少々地味な存在だったのか、壮年期の録音は少ない。このブラームスをはじめ、多くの盤が晩年の録音だ。他の英国系指揮者同様、エルガー、ホルスト、ヴォーン・ウィリアムズといった自国作品を得意とした(一方でディーリアスやブリテンは訳あって取り上げなかったという)のはもちろんだが、ボールトは修行時代にライプツィッヒに渡り、ニキシュに私淑したということからも伺える通り、ブラームスやベートーヴェンなどのドイツ物にもよい演奏を残した。この1番を含むブラームスの全集もその一つだろう。 この盤を手に入れたのは十年程前。メージャーレーベルから版権を譲り受けて廉価ボックスセットを出すことで有名な蘭DISKY社からリリースされたもの。昔から評価の高い盤であることは知っていたが、実のところあまり期待もせずに手に入れた。しかしこれが存外によかった。

80歳を超えた晩年の録音であることから、おそらく徹底的にオケを絞り上げて練習を重ねた録音ということなく、半ばスタジオライヴ的に録ったのではないかと思う。それゆえかオケのアンサンブルは鉄壁というわけにはいかず、弦楽群のアインザッツにはいくらか乱れもあるし、前進する推力も圧倒的というものではない。しかし、対向配置を取るオケ全体の響きは十分厚く重量感に不足はない。テンポは意外にもほとんどインテンポで進む。また音色も派手さのないもので、共にブラームスに相応しい。特筆すべきはこの曲で重要な任を負うホルンセクションの素晴らしさだ。第1楽章では単純な音形のひと吹きにも深さを感じるし、展開部で聴かれるベートーヴェンの<運命>のモチーフに似たタタタ・ターンのフレーズもよく突き抜けてくる。第2楽章終盤、例のヴァイオリンソロとの掛け合いでも美しい音を聴かせてくれる。もちろん第4楽章でのホルンの活躍を言うに及ばない。思えば英国にはホルンの名手が多い。デニス・ブレイン、アラン・シヴィル、バリー・タックウェル等。その伝統がこのときのロンドン・フィルにも息づいているのだろう。

世には様々なブラームス演奏があるが、このボールト&ロンドン・フィル盤は一見すべてが中庸のようでありながら、スケール感、要所要所での力感、ブラームスらしい憧れを引きずるような歌、それらを過不足なくなくコントロールして具現化する手腕など、文句の言いようのない出来栄えだ。


この盤のLP音源。交響曲第1番の第1・2楽章。第1楽章の提示部は繰り返している。


エルガー<ゲロンティアスの夢>を振るボールト。長い指揮棒を優雅に操る。1968年とのことだから、ボールト79歳。なんと若々しい。


ボールトへのインタビューでその指揮法を語っている。



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トーマス・ビーチャムのディーリアス



天気下り坂との予報だったが、一日雨も降ることなくもちこたえた。
夕方、仕事を少し早く切り上げて退勤。ちょっとした野暮用を済ませて9時少し前に帰宅した。ひと息ついてPCを眺めていたら、きょうは英国の指揮者トーマス・ビーチャムの誕生日と出ていた。…ならば、と取り出しのはこの盤だ。


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サー・トーマス・ビーチャムは現在まで続く製薬会社の子息として1879年のきょう生まれ、1961年3月に81歳で没した。当時の裕福な家庭の常として教養としての音楽教育を受けたが、それが高じてオペラ劇団やオーケストラを私費で設立するにいたった。特に手兵ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団を指揮した多くの録音は彼の名を広めた。中でもイギリス近代の作曲家ディーリアスの管弦楽曲を集めたレコードは今もスタンダードな名演されている。手持ちの盤はセラフィムレーベルのLP輸入盤。ロイヤルフィルハーモニーを指揮した晩年のステレオ録音だ。確か70年代半ば、大学3年のとき手に入れた。ディーリアスの曲が一部のクラシックファンの間で、その穏やかな曲想から話題となり始めた頃だったと思う。

この2枚のLPには「春初めてのカッコウの声を聴いて」、「ブリッグの定期市」、「楽園への道」といったディーリアスの代表的な管弦楽曲が収められている。いずれの曲も、曲名からイメージできるような描写的な曲想が繰り広げされる。近代フランス印象派を連想するような部分や、フランス以外の近代ラテン系作品(スペインのファリャ、アルベニス、イタリアのレスピーギ等)、またイギリスの伝統的で穏やかかつ保守的な音使い、そういった要素が織り成す、ともかく気持ちのいい、それでいて表層的だけでない音楽だ。「ブルックの定期市」では冒頭、ハンガリー田園幻想曲を思わせるペンタトニックのフルートの旋律が出てきて、少々驚く。その後穏やかな曲想の変奏曲が続き、とりわけ管楽器のソロが彩りを添える。<春初めてのカッコウの声を聴いて>は、まさに春のまどろみの中で、ふと聴こえてきたカッコウの声に心躍るひとときと、少々気だるい春の空気感をよく表現している。


この盤の音源。<春初めてのカッコウの声を聞いて>


民謡をベースにした変奏曲<ブリッグの定期市>。穏やか曲想だが編成は大きく、コールアングレやバスクラリネット等も加わった三管編成。秋山和慶指揮する洗足学園のオケ。管楽器のソロもみな立派!


ビーチャムへのインタビューと練習風景。 (こちらは最晩年シカゴ響との演奏



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カラヤン&VPO1987年ニューイヤー・コンサート



きょうも穏やかで過ごしやすい一日だった。連休を前に世間も平穏。みな仕事に精出しているのかな…
音楽の季節要因というのは人それぞれにあると思うが、ぼくの場合この時期になると聴きたくなる音楽の一つにウィンナワルツがある。多くの日本人には新春のニューイヤーコンサートがすり込まれているだろうが、春本番を迎え、学校も仕事も新年度が始まるこの時期にも、明るくおおらかなウィンナワルツは中々相応しいと思う。と、そんなことを考えつつ、今夜はこの盤を取り出した。


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ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908-1989)が生涯にたった一度だけその指揮台に立った1987年ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートのライヴ盤。1987年・昭和62年…ニューイヤーコンサートの元旦中継もすっかりお馴染みになりつつあった頃、世間はバブル経済のお祭り騒ぎに突入する前夜、あれからもう三十年。歳もとるはずだ。

さてこのレコード。ウィーンフィルが奏で、ムジークフェラインに響く音はまことに立派で非の打ちどころがない。テンポ設定や歌いまわしも極めて自然。どこをとっても不自然さはない。反面これはという面白さやハッとする解釈はほとんどなく、この演奏でなければ…というものがあるかと問われると答えに詰まる。ぼくはカラヤンに対してはシンパでもアンチでもないのだが、世間的あるいは業界内での圧倒的な人気を博しながら、もうひとつ玄人筋にウケがよくないのはそのあたりのカラヤンの資質ゆえだろう。まあ、ニューイヤーコンサートというお祭りだ。解釈を四の五のいうこともない。飛び切りの美音でシュトラウスの豊かな歌にひたれればそれで十分だろう。

この年のニューイヤーはカラヤンが振るということに加え、ソプラノのキャスリーン・バトル(1948-)の登場も話題になった。この盤では彼女が歌う<春の声>が最後のトラックに収録されている。当時のバトル人気はすごかった。黒人ソプラノ歌手ということでは先駆者はもちろんいるが、彼女は取り分けヴィジュアルも物腰もチャーミングで日本でも大そうな人気を得た。
このニューイヤーを振ったカラヤンは2年後の1989年7月に逝去。日本のバブル景気はピークを向かえる。何万円もするクラシックコンサートのチケットが売れ、にわか景気に浮き立った人々がブランド物のスーツを着込んでサントリーホール集う光景。しかしそれも2年後には幕となる。二十数余年も前のことかと思いながらこの盤を久々に聴くと、この先二十年後はと考えてしまう。


ポルカ<観光列車><ピチカート・ポルカ>と続く。


バトルが歌う<春の声>



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アニア・アウアー(Vc)のドヴォルザーク



週末から暖かな日和続く。きょうも雲が少々多めながらも穏やかな一日だった。
週明け月曜日。きのう日曜の遊び疲れもあって出勤の足取りは重かったが、気を取り直して業務に精励。先週からつついていた案件も何とか片付け業務終了。定時少し前に退勤となった。帰宅後、ひと息ついて何日かぶりにアンプの灯を入れ音盤タイム。久々にこんな盤を取り出した。


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アニア・タウアー(1945-1973)の弾くドヴォルザークのチェロ協奏曲ロ短調。70年代前半に二十代の若さで亡くなったアニア・タウアー。ドイツグラモフォンに残したの2枚のレコードが唯一の公式録音らしい。コレクターズアイテムになっていたその2枚のレコードが、十年程前にタワーレコードの企画盤;ヴィンテージシリーズで復刻したのがこの盤だ。ドヴォルザークのチェロ協奏曲のほか、マックス・レーガーの無伴奏チェロ組曲第3番、ジャン・フランセのチェロとピアノのための幻想曲が収められている。

総じて奇をてらわずに生真面目に歌うタウアー。わずかに技巧的な難を指摘することも出来るだろうが、そうした良し悪しを語る以前に、享年28歳の一人の女性の若過ぎる死を思うと、胸を締めつけられる。前途洋々であったであろう時期に晴れ晴れとレコーディングをし、コンサートに臨み、しかし運命に翻弄されて迎えた死。切々と歌うチェロの哀愁を帯びた旋律が、一層切なく響く。同時に、同じく若くして演奏活動の一線から退いたデュ・プレを思い出す。
のだめカンタービレに指揮者役で登場したズデニェック・マーツァル指揮のチェコフィルのバックは、万事大仰にならず室内楽的なアプローチでタウアーのソロに寄り添う。時折聴こえてくるヴィブラートと伴ったホルンの音にこの時期のチェコフィルらしさを感じる。1968年3月の録音だから、プラハの春直前の録音ということになる。プラハの春を期に多くのチェコの音楽家が亡命をしたが、マーツァルもその一人であった由。嘱望されながら自ら命を絶った若き女性チェリスト、政変を期に翻弄された人々…そんなことを思いながら聴くドヴォルザークはいっそう心にしみる。


この盤の音源。ドヴォルザークのチェロ協奏曲全楽章。第1楽章の終わり途中で切れて第2楽章が始まってしまうのが残念。


ゴーティエ・カプソン(仏1981-)による演奏。パーヴォ・ヤルヴィ指揮パリ管。叙情性に富む素晴らしい演奏。



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カルカッシ教則本をさらう & 誤植も発見!



天気晴朗なれど風強し。昼をはさんでチョイと外出。帰宅後は昨晩録画しておいた例のアレを観て、そのあと楽器を取り出し、三時間ほど戯れた。きょうは久々にカルカッシ教則本を開き、各調性のカデンツァとそれを使った簡単なアルペジオ練習、さらに練習曲などを飽かずに弾いて楽しんだ。


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ぼくら世代のギター愛好家には馴染み深い<カルカッシ教則本>。黄色い表紙の溝淵浩五郎編の全音版はいまも版を重ねている。ぼくもギターを弾き始めた高校生の頃、部室にあったボロボロのカルカッシ教則本を使っていた記憶がある。しかし前半の初級向けページだけを順にさらい、あとはまともに見た記憶がない。そしてその後もこの教則本とは疎遠になっていたのだ、数年前に気になって今更ながらと思いつつ手に入れた。

あらためてこの教則本をみると中々興味深く、よく出来ているなあと感心することが多い。第1部;初等科ではギターでよく使われる調性(ハ・ト・ニ・イ・ホ・ヘの各長調とイ・ホ・ニの各短調)の終止形(カデンツァ)とスケール、アルペジオの簡単な練習曲がある。第2部;中等科ではスラーやグリサンド、装飾音などと、第4ポジションから第9ポジションまでの運指、ギターではあまり見かけない調性の基本、またカンパネラやハーモニクス、変則調弦などの特殊奏法が出てくる。第3部には50曲の小品が並び(オリジナルはここで終わる)、そして第4部;高等科ではカルカッシ以外の作曲家、ソルやコスト、タレルガなどの曲集になっている。中級レベルを自称する輩も、第2部中等科にある各ポジションの練習曲は初見力をアップさせるための基本を習得できるし、練習曲も古典的でチャーミングな曲が多い。音をひと通り出すに留まらず、楽曲形式の把握、アーティキュレーションやフレージングを考えながら弾くと十分な音楽的楽しみが味わえる。

とはいえ、多くのギター愛好家にとってカルカッシ教則本を通してしっかりマスターしたという輩は少ないのではないか。教室の先生もおそらくこの本のすべてを生徒に課すことはないだろう。そんな背景が影響しているのか、先日あまり目が向けられないであろうページに以下のような誤植を見つけた。

■溝淵浩五郎版■
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オリジナル:カルカッシ作品59
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手元にある溝淵浩五郎版は奥付によると1999年に改訂新版として出され、ぼくが手に入れた2010年までに16刷まで版を重ねている。その83ページ。初等科のページで出てくるギターでよく使われる調性以外の調についての解説で、シャープ6つの長調を<変ヘ長調>と記してあった。これは<嬰ヘ長調>の間違いだ。オリジナルのファクシミリ版をみても<FIS DUR>と書かれている(写真赤枠部分)。シャープ6つのdurの曲など通常出くわさないし、この本を手にした先生や生徒も、おそらく素通りしてきたことから、初版から半世紀以上経過しているにもかかわらずこれまで誤植が放置されていたのだろう。まあ、そんな重箱の隅をつついても意味のないことだが、このページ前後に記された<その他の調>と題され、ギターではあまり見かけない調性にも、この教則本でひと通り接することが出来ること確認し、もし手元にこの本がある愛好家諸氏はぜひこれらのページもひと通りさらってみることをおすすめしたい。この本で示される終止法(カデンツァ)とそれを使った簡単なアルペジオ練習では、単純に主要三和音だけということではなく、二、六の和音や減七なども使われ、古典的な和声感の基本的な響きが確認できる。また楽曲形式の把握やハイポジションでの左手のサンプルとして手ごろな練習曲が並んでいる。今更カルカッシ…という声が聞こえてきそうだが、あらためて手に取ると学ぶことが多い。クラシックギター愛好家にとっては<一家に一冊カルカッシ>と唱えたくなる。


愛媛県在住のギタリスト青木一男さんがご自身のホームページにカルカッシ教則本の全曲をYouTube動画でアップしている。その他にも初級から中級に進むにあたって必要な練習曲を多数アップしていて素晴らしい。特にカルカッシ教則本にある全練習曲を弾いた一連の演奏は賞賛に値する。曲によって19世紀ギターとモダンギターを使い分けているが、いずれも適切なフレージングとアーティキュレーションを施し、かつ時々ピリッとアクセントになるような表現も織り交ぜて弾いている。大曲、難曲にチャレンジするのもいいが、こうしたもう弾くことはないだろうと思っていた練習曲にスポット当てて、古典を味わうのも一興だ。

溝淵編;カルカッシ教則本P.72 Allegretto


溝淵編;カルカッシ教則本P.72 Vals 



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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