マティエカ・ソナタ集



旧友Y氏から楽譜が届いた。


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少し前から旧友Y氏が編纂を進めていた私家版<マティエカ・ソナタ集>。
ウィーン古典派ど真ん中の作曲家ヴェンチェル・トーマス・マティエカ(1773-1830)が書いたギター作品の中から<ソナタ>と題されている作品を集めたもの。海外図書館アーカイブ等から集めたファクシミリ版ベースの楽譜をあらためてまとめたもの。もちろん一部は現在も出版譜が流通しているが、こうしたまとまった曲集はない。少し前に出来し、プロのギタリストも含む愛好家諸氏に配布され、また先日4月9日にひたちなか市で行われてY氏も講師を務めた<バロックギターと19世紀ギターによるレクチャーコンサート>のテキストとしも使われたとのこと。収録曲は以下の通り。

 大ソナタ1番
 大ソナタ2番
 ソナタ 作品16
 ソナタ 作品17
 <交響曲形式による>(第3ソナタ) 作品20-21
 <ハイドンによる>ソナタ 作品23
 6つのソナタ 作品31

Y氏によれば「不当に無視されているマティエカ、その実力に応じた正当な評価を得られるよう、また演奏会・発表会で演奏されるよう、作成した」そうだ。また巻頭言にはこうも記している。「…上記のように理解されるウィーン古典派だが、ギターではどう現れるか…。その時代・様式にあてはまるのは、S.モリトール、J.キュフナー、W.マティエカ、A.ディアベリそして有名なジュリアーニ…共通するのは彼ら(モリトール・ジュリアーニを除き)がギターがメインの作曲家ではなかったことです。キュフナーには交響曲・弦楽四重奏曲・ヴィオラ協奏曲・軍隊用の多数の曲があり、マティエカやディアベリには宗教音楽や歌曲、多数の室内楽曲がある。モリトール、ジュリアーニにも多数の室内楽がある。…ギターにおけるウィーン古典派の充実したソナタ、緩徐楽章の純粋に器楽的な美しさ、ギタリスティックな外連(けれん)味は皆無である。しかし一度は練習・演奏して欲しい…」

クラシックギターの世界は不思議な世界で、クラシックギター愛好家といいながら、ほとんどクラシックを聴かない、知らない輩があまりに多い(プロもアマも)。カルリやソル、ジュリアーニを弾きながら「ウィーン古典派、それってナア~に?」…。残念なことだが、それがクラシックギター界の現実だ。 ピアノにおけるバイエルのような古典的素養(日本において…)の第一歩もマスターせずに、いきなりバッハやソルの大曲に取組み、アマチュアの遊びだから何でもアリと平然と言い放つ人も多い。バイエルを終えたばかりのピアノ初心者が、「弾きたいから」という素朴な理由で、すぐにベートーヴェンの後期のソナタに取り掛かって、イヤー、弾けないなあ、もっと練習しないと…と言っているようなものだ。作品に対して失礼とさえ思える。古楽器奏者:竹内太郎氏も以前日記に書いていた。難しい曲を選びすぎる、バッハなんてプロでもおいそれと手を出せないバロック期の最高峰だと。

先日の私家版作曲家年表の記事にも書いたが、クラシックギターという特別な歴史があるわけではなく、古典ギター全盛期のカルリ、ソル、ジュリアーニ、メルツといった作曲家の作品はまぎれもなくクラシック音楽全般の古典派・初期ロマン派の中に位置付けられ、それらの様式感や解釈を会得するには18世紀末から19世紀初めてのクラシック音楽全般に親しむことがもっとも手っ取り早い。 もちろんギターでベートーヴェンやモーツァルトというわけにいかないが、マティエカやキュフナー、ディアベリの作品があることに気付くべきだ。Y氏は古典を<楷書>と位置付け、古典に対する理解と敬意なくしていは、その後のロマン派もそれ以前の古楽もないと論じるが、まったくその通りだ。

今回のマティエカの続編も計画中とのこと。私家版もいいが、現代ギター社あたりがきちんと出版してくれたらと願うところだ。


6つのソナタから第4番。


マティエカの作品としてもっとも知られる作品21<ノクターン>のオリジナル三重奏版の演奏(シューベルトがチェロパートを加えたという四重奏版もよく演奏される)。シュタウファースタイルの19世紀ギターレプリカを弾くのは古典作品を積極的に取り上げている益田正洋氏。ウィーン古典派ど真ん中の作風。


同時代のディアベリによる<協奏風セレナータ>作品105



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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